Share

20.変態

last update Huling Na-update: 2025-05-22 15:05:24
「美果ちゃん ! 美果ちゃん美果ちゃん !!

 あっははは ! 同じだよ !! 美果ちゃんもケイに拘ってるじゃない ! 」

「こ、拘りじゃない ! わたしはケイくんを心配して……」

「違うね」

 ルキは美果を見据えると、キッパリと言い放つ。そして悪意のある笑みで語り始めた。

「俺は思う。君、ケイの事なんか気にしてないだろ ?

 君が住むのは自己肯定感の世界だ。

 ここに来た本当の目的は復讐さ。前回、君を評価しなかった俺への恨みが動力源。ケイを助けるなんて口実だろ。

 美果ちゃんも、俺たちの仲間に変態したんだよ。だから、自分を俺に認めさせないと気が済まない。

自分の興味のない相手なら二度と会わなくていいのに、どうしても俺が許せなかったんだね ? 」

「……っ」

 何も言い返せなかった。

 美果は蛍と関わり、蛍を知れば知るほど深みにハマってしまったのだ。

 歪んだ世界は一度触れると、時に、飲み込まれてしまうほど魅力的に溺れることがある。

「あぁ、そだそだ。絵をおしえて一ヶ月くらい経つんだっけ ? 知ってるよ ?

 美果ちゃん、ケイの絵ってどうなの ? よくシリアルキラーの描いた絵の展覧会やってるじゃん ? あんな感じ ?

 それとも……その様子だと、もっとイイの ? 」

「…………」

 蛍が描く絵はどれも個性的だが、芸術的センスが飛び抜けて目立つ訳では無かった。

 だが、独特な狂気が存在した。

 アートセラピーと言うカウンセリングがある。上手く自分を表現出来ない、または説明が上手く出来ない感情をケアする目的で絵を描くのだ。

美果の専攻では無いが、その絵を見た時。自分に関しての話をあまりしない、蛍の中にいる獣が、ようやく美果に可視化出来た瞬間でもあった。

 そしてその奇妙なドス黒い感情をぶつけたスケッチブックに、とてつもない魅力を感じてしまったのだ。

「ねぇ、美果ちゃん。教えてよ」

「貴方になんか教えたくも見せたくも無い。触れさせないわよっ !! 」

「くすくす。そんなにムキにならなくても !! 美果ちゃん、君は蝶だったんだね ! さぁ、その羽の色を見せてご覧よ。

 この俺にお願い事をするんだ。君が俺に差し出せるものはあるの ? 」

「え ? ……えと、お金は……」

「まずオークションを一旦、止める事。

 ケイを家に帰す事
Patuloy na basahin ang aklat na ito nang libre
I-scan ang code upang i-download ang App
Locked Chapter

Pinakabagong kabanata

  • PSYCHO-w   game-4 1.隠れ家

    トツン……  軽い音を立てたドアに気付き、蛍は目を覚ました。  暗いが大きな出窓から、月明かりが部屋を照らしていた。  真理の家の三階。  屋根裏の三角形の部屋。そこにはシングルベッドと少しの家具、消耗品だけしかない。  寝る前に軽食でトーストを真理に用意され、二人はこの部屋に通された。 □『まさか本当にアイスを買いに行かせられるとはね。いつも我儘なんだよ』『お疲れ様。寝ていい ? 』『ああ。昨日は車だったからね。ゆっくり休もうか。  俺も隣に。はは。あったかい』 掛け布団の中で笑うルキを、蛍は戸惑った気分で見詰める。  どうしてそんな笑って自分といられるのかと。『おやすみ、ケイ。お父さんにはいつまで美果ちゃんといることになってるの ? 』『シルバーウイーク中は……ずっと……』『なんだ……あと二日かぁ……』 ハンガーにかかっている上着と武装コルセット。コルセットの重みに、針金がしなっている。それほど重い装備と、キツく締める為のバックル。以前から長く付けているのだろう、現にルキの腰は細く身長ほどの厚みが無い。  今、ルキはシャツ一枚で目の前にいる。その腰つきは、蛍は獲物を見たような妙な気分になるのだ。  目を閉じようとするルキの腹をそっと撫でる。『なんだよケイ……ふくく。くすぐったいってば』『細いなって……』『それだけ ? ケイ、素直じゃないな』 そう言い、布団の中へ潜って行く。『はぁ ? 違っ ! そんなつもりじゃねーよっ ! 』『アダッ !! 』 暴れた蛍の膝が、ルキの顔面にヒットしてしまった。『あ……ごめ……』『痛ったァ〜。てっきり、そうかと思うじゃん』『思わないよ。寝るってば。おやすみ』 固く目を閉じる。自分から寝てしまったら、もう何も気にならない。そんな蛍を胸に抱き寄せ、そのままルキも目を閉じる。(なんだよ

  • PSYCHO-w   43.乳母

    ルキが片足をあげて、踵から靴の中の水を流す。「ぐっちょぐちょ。靴くらい脱がせてくれてもいいでしょう。高いのにー」「知ったことじゃないわ。なんなのその格好。相変わらずおかしな事してたんでしょ……」「仕事だからさ」「あんた昔から嘘が下手よね。その血は仕事じゃないでしょ ? ケイくんかぁ。可愛いわね〜。 いい事考えた ! あの子を連れて隠居しちゃえば ? 」「彼も仕事の……半分は仕事の付き合いですし……彼には彼の生活がありますよ」「あ〜ヤダヤダ。その隙の無い返事。 それじゃあ、いつまでもあの子と恋人にならなくない ? あんたに恋人が必要とは言いきれないけど。 だいたい何 ? なんでゴースト ? あんなのおっさんが乗る車じゃん。趣味悪 ! マセラティにしなさいよ」「言いたい放題ですね……」 真理は一度煙草を消すと、今度はミントタブレットを口の中に流すようにしてボリボリ噛み砕く。「ふん。あんたがあたしの生活を奪ったんだもの。恨みたらたらよ」「貴女をMから離したかった。仕方が無かったんです」「別に……頼んでないわ。あんたをこんな馬鹿なイベント担当にだけはさせたくなかった」「……引退する時、御自身が暴れて過激なショーをしたせいでしょう ? 俺はそのままのスタイルを引き継いだだけです。 ……ケイには真理さんの事は言わないで置こうかと思ってたんです。でも気が変わって……」「ふぅーん。珍しい事もあるものね。あんた、他人に執着するんだ。 ねぇ……あの人も日本に来てるの ? 」 不意に真理の表情が曇る。「ええ。でももう日本を発ちましたよ。十日前です」「そう……

  • PSYCHO-w   42.一色 真理

     時は過ぎ、午前十時。 目的地に着いたルキと蛍は、想定外の事態に陥っていた。「……ッく」 青々とした芝生に膝を付き、ルキは両手を頭の上にゆっくりと上げる。 場所は湊市駅前。日々野高校や図書館と目と鼻の先の住宅地。ニュータウンとして山を切り崩した土地で、30坪程の一般的な住宅がひしめき合う。 その家は一般住宅と同じ様な外観だった。 だが造りまでそうでは無い。洋風建築の窓は厳重にフィルムが貼られ中は見えず、車庫もいつも締めっきり。二層の外壁で、隙間に硬質材料を流し込んだ防弾防音に特化したキングダム。 鳥避けの為に広げられたネットは二階建ての屋根から庭を巡り、空からの侵入経路も簡単ではなく、その不自然さを緩和するためにゴルフボールがこれ見よがしに転がっている。「…… ! 何故なんだ……こんなっ」 ルキが奥歯を噛み締めるそばで、蛍は同じく戸惑っていた。ルキがこんな醜態を晒している姿にだ。第二ゲーム戦に引き込まれたのを「醜態だ」と言っていたルキだが、蛍には今現在の方が余程ピンチに見えた。「早く ! 」 目の前で銃口を向けられルキは仕方なく手を上げた。「もっと上に手を !! 早く !! 」 蛍には元々危険認識というものが欠けている。しかし、目の前のモノを天秤にかけることは得意なのだ。 だからこそ困惑した。 目の前にいるのは女だ。それもルキは今、武装している。 しかしこの女は、ルキの車が敷地に入るな否や、恐怖の大王のように二階から降りてきた。 女は凄まじい剣幕で、庭先の銃を手に取るとルキと蛍を跪かせて、それを躊躇いなく二人に向けたのだ。「死ね ! 」 引き金が引かれた。 あのルキが誰かに命令されて、Mの他にも従うような……この女はそんな間柄の存在だったのだろうか。だとしたら、この扱いは何なのか。 もう終わりだ。 ブシャーーーっ !!!!

  • PSYCHO-w   41.結々花と美果

     蛍たちと別れた後、結々花はまっすぐ美果をアパートまで送り届けていた。 結々花の車の中、美果は目の前にある自室に着いてからも別れの挨拶を返さない運転席の結々花を覗き込む。「結々花さん ? 」「ねぇ、美果ちゃん。 中野みたいな男に靡かない、強いあなたが好きだわ」「えっ !? はぁ……。ど、どうしました ? 急に」「美果ちゃんはさ。ケイくんを助けたいけど、ルキをわたしがどうしようと関係無いよわよね ? 」「ええ。それは勿論」 結々花は小さく微笑むと、エンジンを止めて美果に向き直る。「美果ちゃん、わたしの組織に興味は無い ? 勿論、それなりに訓練はしてもらうけど……まだ二十歳でしょ ? 大学卒業からでも十分間に合うし……」「ゆ、結々花さん。待って ! わたしにそんな気はありません、わたし絵描きですよ ? 」「美果ちゃん、それもカモフラージュとしてとてもいいわ。留学してフランスで絵を学ぶとかどうかしら ? 」 突然の申し出に美果も困惑してしまう。「あの……結々花さんってICPOでしょ ? わたし、警察官になるほどの体力とか無いし、英語もままならないのに……。一般の警察官がなるものじゃないんでしょ ? 」「仏の本部に推薦するわ」「いえ……そういう問題じゃなくて……。そもそも警察にはなれませんよ。体力無いですし、警視庁にいても一握りのエリートじゃないですか」「そうよね。急に言われても困るわよね。 でも、わたしも諦め悪いから付き合ってね♡」「え……えぇ…… ? 」 ルキまで短期間で踏み込んだ美果の手腕を買っての事だったが、美果からすればクズのようなゲームの狂気だけが繋いだ間柄だ。 

  • PSYCHO-w   40.邪な蛇

    「だから ? 殺しと性欲は同じだ。色恋なんかいらない」「別に何も。俺は止めたりしないって言ったろ ?  望み通りにするさ。ほら、脱いでごらん」 ルキはケイの下部を剥き出しにすると、自分の露出したものを合わせて手に包む。「エアコン付けないと暑いんじゃ……んぁ、 そんなとこ……一緒に擦るなよ…… ! 」「せっかくの血が乾く前に、俺にも分けてよ。ね ? 全部混ざって気持ちいいだろ ? 」「お前……っ ! 動か……すな」 ルキの手の中。二匹の淫らな蛇がしごかれる。その上、ルキの腰は手の中でもゆっくり動き、二つの刺激に蛍は悶え息が上がる。「こんなケイを見せられちゃ……俺も我慢は出来ないよ」「う……むっ」 深く。  息を吹き込む様に口付けを交わす。  溢れた二人分の体液で蛍のものをするすると愛撫しながら、ルキの視線がふと犯行現場に向く。暗闇に目が慣れて、人体が重なるように路上に積もっているのが車内からでも分かる。「ふふ……通行人が来て、あの現場に反応するのも見てから帰りたいね……」「っ……この車こそ、見られて大丈夫なのか ? 」「俺が証拠の一つ消せないとでも ? 」「ああ。あんた、そう言う奴だったな……あっ……」 首筋に這うルキのピアス。「はぁ……っ、あっ……あぁ……っ」 蛍は躊躇いなく吐息を漏らし、煽る様にルキの背に手を回す。「……ん……んぅ。わっ、うくっ ! 舐め回すなよ、くすぐったい ! 早くしろよっ」 車内に響く蛍の震えた声と、ルキの立てるリップノイズ。「……ふふ」 血と臓物の匂いの中、二人は赤く染まりながら互いの肌を合わせていく。  蛍がルキの肩に力を入れると、ルキはそれに答えるように後部座席へと蛍を連れ込んだ。上下逆になった蛍が、ルキの反り立った部分を口に含む。  小さな舌が淫らに動くのを見ると、ルキは容赦なく蛍の髪を掴み、思い切り自分に押し付ける。「ング

  • PSYCHO-w   39. Serial Killer Lv.XXX

     まず蛍が笑顔で集団に近寄ると、グループのリーダー格に手を伸ばす。恐らくあれが中野なのだろう。  人懐こく笑顔で中野を見上げる蛍の手を、ヘラヘラとその手を握った。次の瞬間、思いがけない電撃に、中野が苦悶の表情で仰け反った。  蛍の身体が揺らぐ。  中野の腹を蛍のナイフが横に滑っていた。ボロボロとホースのような物体が地面に落ちる頃、隣にいた女の髪を掴み、素早く首を掻っ切った。「う、うわぁぁぁっ !! 」 ようやく悲鳴が車まで届いたが、蛍のナイフは既に逃げようとした別な男の背を捉え、立ちすくんでしまった最後の女にも容赦無く襲いかかった。  一瞬だ。  蛍は倒れ込んだ四人を見下ろすと、念入りに全員の首をしっかりと斬り付け、確実に致命傷を与えて戻って来た。「ちょっとケイ〜。その格好で俺のゴーストに乗るつもり ? 」「知らないよあんたの車なんて」 全身に血を浴びて戻ってきた蛍に、ルキは高揚感を抑えられなかった 。「まだまだ殺人鬼として蛍は未発達だ」と思ったからだ。「一撃で殺しきってしまうなんて……勿体無い事するなぁ〜」「今日は殺れればいい」 ぐしょぐしょのグローブをリュックに詰め込み、ナイフをシャツの裾で拭う。顔から靴まで生臭い血に塗れた蛍を見たルキは運転席から蛍に抱きつく。 ルキが見慣れた人殺し──蛍は殺し屋にとても近しい。手早く、痕跡を残さない殺人。蛍は自身の『趣味趣向での殺人』も犯すが、今のルキに見せたのは作業的なものだった。欲望のセーブが出来る上に、金や地位では買収出来ない自己世界が強い殺戮者。「ケイ〜♡」「……いや。どっか行くんだろ ? ……行けよ早く。運転しろ」 突然絡みついてきたルキに蛍が顔を背ける。「無理じゃん。こんな姿見せられたらさぁ。それに、初めから俺を誘ってたろ ? 」「誘ったのはゲームだけだよ」「ふーん ? そうなの ? 」 ルキは素っ気なく窓の外を見る蛍の上に、スルリと跨った。「はぁっ !? なんだよいきな

Higit pang Kabanata
Galugarin at basahin ang magagandang nobela
Libreng basahin ang magagandang nobela sa GoodNovel app. I-download ang mga librong gusto mo at basahin kahit saan at anumang oras.
Libreng basahin ang mga aklat sa app
I-scan ang code para mabasa sa App
DMCA.com Protection Status