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7.噂と防犯カメラ

last update Dernière mise à jour: 2025-06-13 05:58:28

放課後の図書館。

話を聞いた美果はトートバッグを抱えたまま固まってしまった。

「え ? じゃあ、わたし……その子に紹介されるの ? 」

困惑した顔色で蛍と向き合う。

多目的ルームの鍵を借りる為に、学生証を出した蛍が首を横に振る。

「いや。そんな事があったってだけ。そいつの距離感がおかしいから、ちょっと関わりたくない。『変な繋がり』かなって警戒したんだ」

「ああ……成程」

ルキからの監視なら蛍に付き纏いもありうることだ。しかしそれは結々花の仕事なはずである。トラブルもなく大人しい蛍の学校生活において、ルキが知りたいことなど何も無いはずなのだ。

「うーん。転校生がピンポイントでケイくんに話しかける……かぁ。不思議よね」

「ほんとに鬱陶しい……」

考え込む二人の背後。

「あ、あれ。山本 美果じゃん ! 」

自動ドアをくぐって入館した男女数人のグループが声を上げた。

「ほんとだ ! そばの弟 ? 」

「さぁ ? 」

「うわ、普通にしてるし。まじか神経図太〜 ! 」

声をかけてくる訳でもない。無遠慮に美果の背後で騒ぎ出している。

「行きましょ」

美果は振り向きもせず、蛍を連れ多目的ルームへ入った。

「はぁ……全く」

「なにあれ。大学の人 ? 」

「ん……。そう」

苦い顔で頷く。

「わたしさ、なぜか大学の防犯カメラに拉致されるところ……映像に残っててさ……」

「学校ゲームの時 ? 」

「そう。多分、最初はルキもわたしが生き残るとは思ってなかったのかなって」

「そうかな…… ? 証拠を残すって事が、絶対有り得ないよ。ルキ側の落ち度だ」

「……だよねぇ。あの防犯カメラ、かなり際どい所にあったから見逃したのね。

学校で拉致されてから、かなり時間が経ってたみたい。……起きたらケイくんが来てたって感じ。

その間、噂話に尾ヒレがつきまくっちゃって。あんな風に騒がれてんの」

「今は映像は無いんだよね ? 」

「うん。見つかったとも報道無いし、行方不明になったのは無かったようになってる。

でも最初に映像見た連中が録画してたりで……止めらんないわ」

「大学……行けてるの ? 」

「平気。元から他人と群れるの苦手だし。好きなだけ言えばって所に落ち着いたわ」

「ならいいけど……一日あんなの言われてるの我慢ならないね」

「まぁね。さてと ! 」

美果が椅子を整
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  • PSYCHO-w   7.噂と防犯カメラ

    放課後の図書館。 話を聞いた美果はトートバッグを抱えたまま固まってしまった。「え ? じゃあ、わたし……その子に紹介されるの ? 」 困惑した顔色で蛍と向き合う。 多目的ルームの鍵を借りる為に、学生証を出した蛍が首を横に振る。「いや。そんな事があったってだけ。そいつの距離感がおかしいから、ちょっと関わりたくない。『変な繋がり』かなって警戒したんだ」「ああ……成程」 ルキからの監視なら蛍に付き纏いもありうることだ。しかしそれは結々花の仕事なはずである。トラブルもなく大人しい蛍の学校生活において、ルキが知りたいことなど何も無いはずなのだ。「うーん。転校生がピンポイントでケイくんに話しかける……かぁ。不思議よね」「ほんとに鬱陶しい……」 考え込む二人の背後。「あ、あれ。山本 美果じゃん ! 」 自動ドアをくぐって入館した男女数人のグループが声を上げた。「ほんとだ ! そばの弟 ? 」「さぁ ? 」「うわ、普通にしてるし。まじか神経図太〜 ! 」 声をかけてくる訳でもない。無遠慮に美果の背後で騒ぎ出している。「行きましょ」 美果は振り向きもせず、蛍を連れ多目的ルームへ入った。「はぁ……全く」「なにあれ。大学の人 ? 」「ん……。そう」 苦い顔で頷く。「わたしさ、なぜか大学の防犯カメラに拉致されるところ……映像に残っててさ……」「学校ゲームの時 ? 」「そう。多分、最初はルキもわたしが生き残るとは思ってなかったのかなって」「そうかな…… ? 証拠を残すって事が、絶対有り得ないよ。ルキ側の落ち度だ」「……だよねぇ。あの防犯カメラ、かなり際どい所にあったから見逃したのね。 学校で拉致されてから、かなり時間が経ってたみたい。……起きたらケイくんが来てたって感じ。 その間、噂話に尾ヒレがつきまくっちゃって。あんな風に騒がれてんの」「今は映像は無いんだよね ? 」「うん。見つかったとも報道無いし、行方不明になったのは無かったようになってる。 でも最初に映像見た連中が録画してたりで……止めらんないわ」「大学……行けてるの ? 」「平気。元から他人と群れるの苦手だし。好きなだけ言えばって所に落ち着いたわ」「ならいいけど……一日あんなの言われてるの我慢ならないね」「まぁね。さてと ! 」 美果が椅子を整

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