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5. 運命の番――は、犬?

ผู้เขียน: 風雅ありす
last update วันที่เผยแพร่: 2026-09-05 08:00:20

 突然、後ろから私に抱きついて来たのは、犬男……コウヤだった。

 着る服のないコウヤのために、私が恥を忍んで買って来た服(下着込み)を公園の公衆トイレで着替えて、戻って来たのだ。

 突然抱きつかれた私も驚いたが、目の前にいる純也と百合の方が更に驚いた顔で、

 私と、私の背後に現れた男イケメンを見つめている。

「ちょ、ちょっと、急に後ろから抱きつかないでよ。

 びっくりするじゃない」

「ごめん。つい、嬉しくて。だって、やっと見つけたんだ。

 俺の<運命の女神ファムファタル>……」

 そう言って、コウヤは、純也と百合が見ている目の前で、私の頬に口づけした。

「ちょっと、何するのよっ。

 恥ずかしいから、そういうことを外でやるのはやめてよね」

 私は、コウヤを押しのけると、口づけされた頬を隠すように手を当てた。

 元が犬なのだ。

 口づけされたというよりも、犬に舐められた、という感覚に近いのかもしれない。

 そう自分に言い聞かせるが、コウヤの整った顔立ちを前に、

 私は、胸の鼓動が早くなるのを止めることができなかった。

 コウヤがにやりと笑みを浮かべる。

「そうか、外じゃなかったら良いんだな」

「なっ……」

「西野、そいつ、誰?」

 低く少し怒ったような純也の声で、私は我に返った。

(なんで、あんたが怒ってるのよ)

 何故か不機嫌そうな純也の横で、百合は、顔を赤くしてコウヤの方を見ている。

 私は、何となく嫌な予感がした。

「えっと、この人は……」

 私がどう説明しようかと迷っていると、コウヤが代わりに答えた。

「俺は、ファムの一生の番つがいになる男だ。

 お前こそ、俺のファムに何の用だ?」

「何勝手なことを……」

「番つがいって…………そいつには、名前で呼ばせてるんだな」

 純也が傷ついたような怒った顔で私を見る。

 一体何の事かと思ったが、私が聞き返す前に、百合の黄色い声がそれを遮った。

「きゃー♡

 先輩ったら、いつの間に、そんなカッコイイ彼氏作ったんですか?

 紹介してくださいよぉ」

 百合は、純也に絡ませてた腕を解くと、コウヤに向かって、はにかんだ様な笑顔を見せる。

「私、先輩と同じ大学の一個下で、水谷百合って言います。

 いつも先輩には、恋愛相談とか乗ってもらってて……」

 私は、その光景にデジャブを覚えた。

 何故なら、純也の時もそうだったからだ。

「先輩が卒業しちゃってからも、よく電話やチャットでお話するんですよ~。

 それなのに先輩ったら、あなたのこと、何も話してくれないんです。

 水臭いじゃないですか~」

(よ·く·?)

 正確には、純也と私が別れてからは、一切連絡はなかった筈だ。

 それまでも、時々、電話やチャットを送ってきてはいたが、どれも、純也に対する自分の気持ちを吐露するものや、純也が百合にしてくれて嬉しかったことなどを事細かに報告する内容ばかり。

 少なくとも私の記憶では、百合が私のことについて訊ねたことなど一度もなかった筈だ。

(もういいから、早く帰りたい……)

  ♡  ♡  ♡

 しかし、そんな私の気持ちが百合に伝わる筈もなく、百合のコウヤへの質問が続く。

「先輩とは、どうやって知り合ったんですか?

 もしかして、同じ職場の人とか?」

「いや、俺は、ファムに拾われたんだ」

「え~やだぁ、拾っただなんて。

 そんな犬や猫じゃないですからぁ」

(いや、本当に犬だったんだけどね)

 ひとり心の中で突っ込むのも虚しくなってくる。

 まさか異世界から来た獣人ですと言ったところで、きっと信じてはもらえないだろう。

(もちろん、言うつもりもないけど……)

 それよりも私は、コウヤが変なことを口走らないか、そちらの方が心配だった。

「何のお仕事をされてるんですか?

 あ、もしかして、学生だったりします?

 まさか、本当にヒモだなんて言わないですよね~??」

 冗談交じりに笑いながら、コウヤにモーションをかけまくっている百合。

 何故か先程から私の方をじっと睨んでくる純也。

 そして、さっきから私の肩を抱いたまま話そうとしないコウヤ……

 私は、もう我慢の限界だった。

『ごめん、ちょっと用事が……』

 とでも言って、この場を立ち去ろうとしたその時、私の足元に黄色いボールが転がってきた。

「すみませ~ん、ボール拾ってもらえますか~?」

(これは、チャンス!!!)

 ボールを拾って返したら、そのままダッシュでここを去ろう。

 そう考えた私は、コウヤの拘束から逃れると、ボールを手に取り、持ち主のところまで思い切り投げた。

 力が入り過ぎていたのか、思った以上に高く跳んでしまったボールを私と百合と純也が目で追う。

 その視界の下方から、見覚えのある、一匹の黒と白の毛皮を着た犬が現れ、飛んで行ったボール目掛けて一目散に走って行く。

(え?)

 まさかと思い、私がベンチを振り返ると、そこに居た筈のコウヤの姿がない。

「あれ、先輩の彼氏さんは……?」

 同じくコウヤがいなくなったことに気付いた百合がきょろきょろと周囲を見回すが、もちろん、コウヤの姿が見える筈がない。

「あー……この後、レストランの予約してたんだよね。

 時間に間に合わなくなっちゃいそうだったから、先に行ってもらったの」

 かなり苦しい言い訳ではあるが、咄嗟に思いついたにしては、我ながら機転が利いていると思う。

 すると、百合が急に慌てた様子で自分の腕時計を見ると、純也を振り返って言った。

「やだ~、私たちも、この後、映画を見る予定だったの忘れてたわ~」

「そう言えば、そうだったな」

「それじゃあ、先輩。彼氏さんに宜しく伝えてくださいね♡」

 百合は、それだけ言うと、さっさと純也の腕を取って、公園の入口へと向かった。

 私は、二人の姿が見えなくなるのを確認して、大きなため息を吐く。

(一体、何だったのよぉ~もう~……)

 百合は、ともかく。

 何故、純也が私に対して怒っていたのかが全く分からない。

(浮気したのは、そっちじゃない。

 なんで私が悪いみたいになってるのよ)

 コウヤとのことも、純也に私を問い詰める権利などない。

 既に私とは別れて、今は、百合と付き合っているのだから。

(考えても仕方ないわね。とにかく今は……)

 私は、コウヤを連れ戻すため、黄色いボールを追い掛けて楽しそうに遊んでいる犬の方へと足を向けた。

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