The mask of love: Scent maker witch and noble vampire

The mask of love: Scent maker witch and noble vampire

last update최신 업데이트 : 2022-08-10
에:  Elliana Léas연재 중
언어: English
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7챕터
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시놉시스

Scent witch, beautiful female assassin, or innocent tea shop owner? Mafia family's young master, terror vampire, or outstanding handsome genius? Gotha Edward Ethelbert and Coronis Emma meet on a snow-covered winter night in December, where the old tea shop has warm embers of a fire. He is a handsome genius with a cold and quiet personality who is a descendant of the illustrious Mafia family Gotha. She is a girl with a lively, innocent, and pure personality and a starlight smile. When fate brought them together, the genius Ethelbert discovered the hidden secrets behind Coronis's origin - a calculated assassin with a tragic past buried in the case of more than 15 years ago. A terrible fire destroyed the UVS orphanage. Even his true love is also not the real Coronis! More specifically, her always-hidden past is directly related to the Gotha family's bloody criminal scheme. His true background is also beginning to emerge. When everyone in the masquerade is wearing mysterious masks, Where will this love go?

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1화

Chapter 01

「……来ない」

 元彼と、元親友の披露宴開始まで、あと十五分。

 私が五万円で雇ったはずの“隙のない恋人”は、まだ式場のエントランスに現れなかった。

 シャンパンゴールドのドレスの下で、背中を冷たい汗が伝う。スマートフォンは沈黙したまま。充電は、とっくに切れている。

 あの重い扉の向こうでは、私を裏切った二人が、きっと笑っている。

(彼氏はどうしたの? まさか、嘘だったの?)

 そんな声まで聞こえた気がして、喉の奥がひゅっと狭くなった。

 私、茅野朱里(かやのあかり)、二十五歳。職業はブライダルコーディネーター。

 誰かの一生に一度の幸福を整えるのが仕事なのに、よりによって今日は、自分を裏切った元彼と親友の結婚式に、偽物の婚約者を連れて乗り込むはずだった。

 こんな馬鹿げたことになったのは、三ヶ月前。私が人生のどん底へ突き落とされた、あの日からだ。

 私の職場である高級ブライダルサロン『Felice Luce(フェリーチェ・ルーチェ)』。

 柔らかなダウンライトが照らす打ち合わせスペースは、未来への希望に満ちたカップルたちの幸福な空気で満ちていた。その一角で、私は全身の血液が逆流するような悪寒と戦っていた。

「あ、朱里。久しぶり……だね」

 気まずさを隠そうともせず、しかしその瞳の奥に明らかな優越感を滲ませて手を挙げた男。

 三ヶ月前、「他に好きな人ができた」というありきたりな理由で、一方的に私を切り捨てた元彼、拓也だ。

「朱里、元気だった? 私たち、今日はどうしても朱里に『お願い』があって来たんだ」

 拓也の腕に甲斐甲斐しく絡みつき、悪気のない子供のように屈託なく笑う女。

 大学時代、私の部屋に入り浸り、服も化粧品も、悩み事さえも共有し合った親友――美咲。

 二人の左手薬指には、これ見よがしに揃いのプラチナリングが嵌められている。サロンの照明を反射して鋭く光るその輝きが、私の網膜を焼き切るように痛い。

(……久しぶり、なんてよく言えるわね)

 拓也が「好きな人」と言った相手が美咲だと知ったのは、別れの直後だった。

 それだけではない。共通の知人からの情報で、二人が私と付き合っていた半年前から、すでに肉体関係を持っていたことも知っている。私の誕生日に「仕事が忙しい」と嘘をついた拓也が、美咲のマンションへ消えていった夜があったことも。私が美咲に恋愛相談をしていた時、彼女が心の中で私を嘲笑っていたことも。

 すべて知っている。

 けれど、目の前の二人は、私がその事実を知らないと信じ込んでいる。「可哀想な、何も知らずにフラれた元カノ」だと、私を見下しているのだ。

「……で、何の用? 私、これから新規のお客様のアテンドが入っているのだけれど」

 喉の奥から絞り出した声は、自分でも驚くほど低く、冷たかった。

 テーブルの下で組んだ両手は、指先が白くなるほど強く握りしめられている。爪が掌に食い込む鋭い痛みだけが、煮えくり返りそうな怒りを辛うじて繋ぎ止めていた。

 ここで泣き叫び、テーブルの水を浴びせかけてやれば、どれほど楽だろう。

 だが、それはできない。私はプロだ。この『Felice Luce』のチーフコーディネーターとしての矜持が、無様な醜態を晒すことを許さなかった。

 そんな私の必死の理性などお構いなしに、二人は信じがたい爆弾を投下した。

「それで……朱里。俺たち、結婚することにしたんだ」

「そうなの! それでね、朱里にお願いがあって。私たちの結婚式、朱里に担当してほしくて」

 言葉だけなら、即座に断れたかもしれない。

 けれど二人は、すでにサロンの上層部にも話を通していた。拓也の勤務先は、うちのサロンと提携しているホテルグループの大口顧客で、美咲の実家も紹介客を多く持つ家だった。

 チーフである私が私情で突っぱねれば、担当変更だけでは済まない。店にも、後輩たちにも迷惑がかかる。そういう逃げ道のなさまで計算して、二人はここへ来たのだ。

 時が止まった気がした。

 呼吸の仕方を忘れた肺が、小さく悲鳴を上げる。

 担当? この私に?

 私の目を盗んで背徳の蜜を啜り合い、今また私の目の前で「真実の愛」の体現者のような顔で笑う、この裏切り者たちを? 私が、心を込めて祝福しろというの?

「やっぱり、朱里のセンスが一番だって、美咲とも話してたんだ。朱里なら、俺たちのこと一番わかってくれてるだろ? 一生に一度のことだし、信頼できる人に任せたくてさ」

 拓也の言葉が、鼓膜を不快に撫でる。

 信頼? 一番わかってる?

 どの口が言うのだろう。その薄っぺらい誠実さの皮を剥いで、中身の腐臭を嗅がせてやりたい。

 ああ、そうだ。美咲は昔からそうだった。私が努力して手に入れたものは、何でも欲しがる。限定のコスメも、私の夢だったこの仕事も、そして、彼氏も。

 奪うことでしか、自分の価値を確認できない哀れな生き物。

 ふつふつと、腹の底からドス黒いマグマが湧き上がる。

 それは単なる怒りではない。もっと粘着質で、重く、内臓を雑巾絞りにされるような屈辱だった。

 ここで断れば、私は「未練がましく逃げ出した負け犬」になる。一生、あいつらの酒の肴にされる。

 それだけは、死んでも御免だ。

「……いいわよ。喜んで」

 顔を上げた瞬間、私はいつもの「ブライダルコーディネーターの微笑み」を顔に貼り付けていた。

 唇の端を美しく上げ、目は優しく細める。鏡の前で何千回と練習した、営業用の仮面。

「ただし、条件があるの」

「え?」

「私、その日は別の結婚式にゲストとして招待されているから、担当プランナーとして当日仕切ることはできないわ。準備は手伝うけれど、当日はゲストとしてお祝いに駆けつける形になる」

 一瞬、二人が顔を見合わせる。

「もちろん、私の『大切な人』と一緒にね」

「え、朱里……彼氏、いたの?」

 拓也が鳩が豆鉄砲を食らったような顔で目を見開く。その間抜けな表情に、胸のすくような暗い快感が走る。「自分以上にいい男がいるはずがない」「朱里はまだ俺を引きずっているはずだ」という傲慢な自意識が透けて見えるようだ。

「当たり前でしょ。拓也と別れてから、ずっと熱烈にアプローチしてくれていた人がいて。もう、その人と婚約しているの」

 一度口をついて出た嘘は、止まることを知らずに加速していく。

「拓也なんかより、百倍素敵な人よ。背も高くて、仕事もできて、お金持ちで……何より、嘘をつかない誠実な人」

 嘘だ。全部、その場しのぎの真っ赤な嘘。

 ズタズタに引き裂かれたプライドを、ボロボロの端切れで必死に繕っただけの虚勢。けれど、今の私にはこの「見えない恋人」だけが、自分を守る唯一の盾だった。

「そ、そうなんだ……。でも、よかった。朱里も幸せそうで」

 美咲が心底ホッとしたように胸を撫で下ろす。その安堵の表情が、何よりも憎かった。私の「幸せ」を確認することで、自分たちの罪悪感を消し去り、正々堂々と幸せになろうとしているのだ。

 ふざけないで。

 絶対に、あんたたちの思い通りにはさせない。

 こうして私は、自ら退路を断った。引き返すことのできない、断崖絶壁の淵へと。

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