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【第11話】強気な弁護士と受けて立つ覚悟

last update publish date: 2026-09-13 05:10:42

弁護士事務所の重厚な応接室。 対面に座る直樹は、怒りと焦りで顔を真っ赤にし、テーブルを叩く勢いで身を乗り出してきた。

「俺には金がないんだよ! お前が通帳も金も全部持って行ったからだ! これは違法だろ! 生活費を返せ!」

まじめな顔をして叫ぶ元夫を前に、私はピクリとも動かず、ただ冷ややかな視線を向ける。弁護士さんからの事前の指示通り、私は一言も発しない。私が直接言葉を交わす価値など、この男にはないのだ。

私のかたわらに座る担当弁護士が、静かに眼鏡の奥の目を光らせ、書類に目を落としたまま淡々と口を開いた。

「佐伯直樹様。生活費とおっしゃいますが、あなたの給料はずっと手取り十万円ほどですね。保険会社に入社された初年度だけ、月給三十五万円という時期が一年間ほどあったようですが&

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    『真尋、俺が悪かった。やり直そう』『君がいないと、この家は冷たいんだ。やっぱり俺には君が必要なんだよ』『一度ゆっくり話し合おう。二人でやり直せるなら、俺は何だってする』スマートフォンの画面に次々と表示されるメッセージに、私は思わず呆れ混じりの溜め息をついた。弁護士からの受任通知が届いたというのに、直樹は未だに事態の深刻さを理解していないらしい。それどころか、あんなに上から目線でモラハラを連発していた男が、今さら急にしおらしくなって「君が必要だ」「やり直そう」などと気持ちの悪い「ロミオメール」を連日送りつけてくるのだ。自分の世話をしてくれるタダの家政婦がいなくなって困り果てたのか、あるいは暗闇の家で寂しさに耐えかねたのか。どちらにせよ、そこに私への本当の愛情や反省など一ミリも存在しない。(……本当に、こんなマザコン男を運命の人だと思い込んで結婚したなんて、私の人生最大の黒歴史だわ)一読して背筋が凍りつくような不快感を覚えた私は、一切の躊躇なく通知を消去し、彼の連絡先を完全にブロックした。自分の愚かな過去を一つずつ清算していく感覚は、驚くほど晴れやかで爽快だった。風の噂……というか、弁護士経由の報告によると、直樹はどこかで知恵をつけてきたらしく、停止していた電気、水道、ガスのライフラインを自分名義で再契約したらしい。 暗闇と猛暑の部屋で義母と途方に暮れるのに耐かねて、慌てて手続きをしたのだろう。「ふふ、別にいいのよ。好きなだけ再契約すれば?」新居のベランダで風に当たりながら、私は冷ややかに呟いた。 どうぞ、どうぞ。電気も水も思う存分使えばいい。本当の「地獄」がやってくるのは、これからなのだから。◇そして、脱出から一ヶ月が過ぎた頃。直樹は自宅で、あるいは銀行のATM前で、狂ったように頭を抱えて叫んでいるはずだ。「なんだよこれ……!? 金がまったくないじゃないか! 全部持っていったのかよ!?」そう、彼は今頃

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