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第三章:告白

ผู้เขียน: 佐薙真琴
last update วันที่เผยแพร่: 2025-12-08 19:56:55

 Stellar事務所からの提案は、すぐに現実のものとなった。

 翌週の月曜日、澪は上司から呼ばれた。

「澪、ちょっといいか」

 編集長が、珍しく柔らかい表情で澪を見ていた。

「はい」

「Stellar事務所から、君を指名で映像編集の仕事を依頼したいという話が来ている」

「指名、ですか」

「ああ。通常の雑誌の仕事とは別に、彼らの公式YouTubeチャンネル用の映像編集をしてほしいらしい。もちろん、報酬も別途出る」

 澪の心臓が高鳴った。

「柊蓮本人が君の編集を気に入ったそうだ。才能を認められたんだな、澪」

 編集長の言葉に、澪は複雑な気持ちになった。嬉しい。でも同時に、罪悪感もあった。

 自分は、ただのファンだ。プロとして蓮の仕事を評価されているのに、心の奥底では、彼に会いたいという個人的な感情が渦巻いている。

「受けてくれるか?」

「はい、喜んで」

 答えは、既に決まっていた。

 その日の午後、澪は事務所から送られてきた映像素材を確認した。Stellarの最新ライブ映像、リハーサル風景、メンバーたちの日常。膨大な量のデータ。

 そして、その多くに蓮が映っていた。

 澪は一つ一つの映像を丁寧に見ていった。編集者として、最も効果的なカットを選ぶ。でも同時に、ファンとして、蓮の表情を追ってしまう。

 矛盾している。

 でも、やめられない。

 編集作業は深夜まで続いた。澪は自宅で、ヘッドフォンを耳に当てながら、タイムラインを調整していく。蓮の歌声が、直接脳に響き込んでくる。

 そして、ある映像に気づいた。

 リハーサルの合間、蓮が一人でスタジオの隅に座っている場面。カメラは彼を捉えていないはずだったが、たまたま広角レンズの端に映り込んでいた。

 蓮は顔を両手で覆っていた。

 肩が小さく震えている。

 泣いている?

 澪は映像を一時停止し、拡大した。確認できない。でも、明らかに彼は何かに耐えているように見えた。

 その瞬間は、ほんの五秒ほど。すぐにメンバーの一人が声をかけ、蓮は顔を上げて笑顔を作った。

 澪の胸が締め付けられた。

 彼は、苦しんでいる。

 誰にも見せない場所で、一人で。

 この映像は、使えない。いや、使ってはいけない。彼のプライバシーを侵害することになる。

 澪はその部分を完全にカットした。そして、蓮が最も輝いている瞬間だけを残した。

 でも、心の中に、あの五秒間の映像が焼き付いていた。

 翌日、澪は編集した映像を事務所に提出した。すぐに返信が来た。

「素晴らしい出来です。柊本人も大変満足しています。ぜひ、直接お礼を言いたいとのことです。明日、スタジオに来ていただけますか?」

 澪は返信を何度も読み返した。

 直接お礼。

 また、会える。

 翌日、澪は指定されたスタジオに向かった。今回は美咲も他のスタッフもいない。澪一人だけ。

 スタジオに到着すると、マネージャーが出迎えた。

「お待ちしていました。柊は中にいます」

 ドアを開けると、広いスタジオに蓮が一人で立っていた。

 黒いシャツに細身のパンツ。シンプルな服装だが、彼が着ると全てが芸術作品のように見える。

「澪さん」

 蓮が振り返り、微笑んだ。

「こんにちは」

 澪は緊張しながら挨拶した。

「今日は、直接お礼が言いたくて。映像、本当に素晴らしかったです」

「いえ、当然のことをしただけです」

「いや、そうじゃないんです」

 蓮は真剣な表情になった。

「澪さんの編集は、他の人と違う。僕たちを『商品』として見ていない。一人の人間として、尊重してくれている」

 澪の胸が熱くなった。

「だから、もっと澪さんと仕事がしたい。いや、仕事だけじゃなくて……」

 蓮が言葉を詰まらせた。彼の表情に、迷いが浮かんでいる。

「もっと、···········

 澪の思考が停止した。

 今、彼は何を言った?

「あの、それは……」

「変ですよね」

 蓮が自嘲気味に笑った。

「僕、こんなこと言ったことないんです。でも、澪さんと話していると、不思議と……楽になるんです」

 澪は言葉を失った。

「僕、··········。アイドルとして。················

 蓮の声が、少し震えていた。

「でも、澪さんの前だと、なぜか素の自分でいられる気がする。澪さんは、僕の『完璧じゃない部分』も見てくれている気がするから」

 昨日見た映像が、澪の脳裏に蘇った。一人で苦しんでいた蓮の姿。

「柊さん……」

「蓮でいいです。蓮と呼んでください」

「蓮、さん」

 その名前を口にした瞬間、澪の心が震えた。

 蓮が一歩近づいた。

「澪さん、僕と……もっと話しませんか? 仕事抜きで」

 澪の頭が真っ白になった。

 これは、どういう意味?

「あの、私は……」

「嫌だったら、断ってください」

 蓮の瞳が、まっすぐ澪を見つめている。

「でも、僕は澪さんともっと話したい。澪さんのことを、もっと知りたい」

 沈黙。

 スタジオに、二人の呼吸音だけが響いている。

 澪の心の中で、様々な感情が渦巻いていた。

 嬉しい。でも怖い。

 彼は、自分が三年間のファンだということを知らない。知ったら、どう思うだろう。

「蓮さん、私は……」

「待って」

 蓮が澪の言葉を遮った。

「もしかして、澪さん、僕のファンだったりしますか?」

 澪の心臓が止まった。

「いや、違う意味で。悪い意味じゃなくて」

 蓮が慌てて付け加えた。

「澪さんの編集を見て、思ったんです。この人は、僕たちのことを本当によく見ている。ファンでなければ、ここまで細かい部分に気づかないって」

 澪は答えられなかった。

「もしそうなら、嬉しいです。澪さんみたいな人に応援してもらえているなら」

 蓮が微笑んだ。

「でも、今の僕は、アイドルとしてじゃなくて、················

 その言葉に、澪の心が揺れた。

「正直に言います」

 澪は覚悟を決めた。

「私は、三年前からStellarのファンでした。いえ、蓮さんのファンでした」

 蓮の瞳が、少し驚いたように見開かれた。

「でも、隠れファンです。誰にも言ったことがなかった。握手会にも行ったことがない。ただ、画面越しに見ていただけ」

 澪の声が震えていた。

「だから、取材であなたに会えたとき、信じられなかった。そして、こうして話している今も、夢みたいで」

「澪さん……」

「でも、こんな立場で仕事をするのは間違っています。ファンが編集をするなんて、倫理的に問題があります」

 澪は深く頭を下げた。

「申し訳ありませんでした」

 沈黙。

 澪は頭を下げたまま、蓮の反応を待った。

 そして――。

「顔を上げてください」

 蓮の声が、優しく響いた。

 澪がゆっくりと顔を上げると、蓮が微笑んでいた。

「ありがとうございます。正直に言ってくれて」

「え?」

「僕、嬉しいです。澪さんが僕のファンだったなんて」

 蓮が一歩近づいた。

「でも、もう·············

 澪の息が止まった。

「澪さん、僕はあなたのことが好きです」

 時間が止まった。

 蓮の言葉が、澪の心臓に直接響いた。

「初めて会った時から、気になっていました。取材の時、控室で目が合った瞬間、不思議な感覚があったんです」

 蓮の瞳が、澪を真っ直ぐ見つめている。

「そして、澪さんの編集を見て確信しました。この人は、僕を本当に見てくれている。表面的な『アイドル柊蓮』じゃなくて、一人の人間としての僕を」

「待ってください」

 澪が思わず声を上げた。

「それは……おかしいです。私はただのファンで、普通の編集アシスタントで……」

「澪さんは··········

 蓮の声が、強くなった。

「僕、今まで何千人、何万人のファンと会ってきました。でも、誰一人として、澪さんみたいに僕を見てくれた人はいなかった」

「でも、私は特別じゃありません。ルックスも普通だし、才能もないし……」

「そんなことない」

 蓮が澪の言葉を遮った。

「澪さんは、僕が今まで会った誰よりも特別です」

 澪の目に、涙が滲んだ。

「蓮さん、私は……私なんかに、あなたは釣り合いません」

「釣り合う、釣り合わないなんて関係ない」

 蓮が澪の手を取った。温かい。

「僕は、澪さんが好きです。その気持ちに、理由なんていらない」

 澪の涙が、頬を伝った。

「でも……」

「澪さん、僕と付き合ってください」

 告白。

 明確な、告白。

 澪の世界が、ぐらりと揺れた。

「そんな……無理です」

「なぜ?」

「だって、あなたはアイドルで、私はただのファンで……世界が違いすぎます」

「世界が違う? そんなの関係ない」

 蓮の声が、切実に響いた。

「僕、ずっと一人だったんです。誰にも本当の自分を見せられなくて、いつも完璧を演じていて」

 蓮の瞳に、涙が浮かんでいた。

「でも、澪さんと話していると、やっと息ができる気がする。やっと、自分でいられる気がする」

「蓮さん……」

「お願いです。拒絶しないでください」

 澪は混乱していた。

 三年間、画面越しに見ていた彼が、今、目の前で自分に告白している。

 信じられない。

 でも、彼の手の温もりは本物だ。彼の涙も本物だ。

「私、どうすれば……」

「ただ、受け入れてください」

 蓮が澪の手を握りしめた。

「僕の気持ちを」

 澪の心が、激しく揺れた。

 受け入れる? この現実を?

 でも、これは夢じゃないのか? 明日目が覚めたら、全部消えているんじゃないのか?

「時間をください」

 澪はやっとの思いで言葉を絞り出した。

「考えさせてください。私には、まだ整理できていないことがたくさんあって」

 蓮は少し寂しそうな顔をしたが、すぐに微笑んだ。

「分かりました。待ちます。でも、逃げないでください」

「逃げません」

「約束ですよ」

 蓮が澪の手を離した。その瞬間、澪は寒さを感じた。

「連絡先、交換してもいいですか?」

「はい」

 二人はスマホを取り出し、連絡先を交換した。

 柊蓮のLINE ID。

 それが、澪のスマホに登録された。

 スタジオを出る時、澪は何度も振り返った。蓮は入り口に立ち、手を振っていた。

 その姿が、どんどん遠ざかっていく。

 澪は駅まで歩きながら、起こったことを反芻した。

 告白された。

 柊蓮に。

 現実なのか、夢なのか、もう分からなかった。

 その夜、澪は一睡もできなかった。ベッドに横たわりながら、天井を見つめ続けた。

 スマホが何度も振動した。蓮からのメッセージ。

「今日はありがとうございました」 「急なことを言ってごめんなさい」 「でも、気持ちは本気です」 「澪さんの答えを、待っています」

 澪は返信できなかった。何を書けばいいのか分からなかった。

 そして、自分の心に問いかけた。

 本当に、この告白を受け入れていいのか?

 ファンとアイドル。

 普通の女性と、輝くスター。

 その距離は、埋められるのか?

 でも、心の奥底で、小さな声が囁いていた。

「受け入れたい」

 澪は目を閉じた。

 運命は、もう動き始めている。

 止めることはできない。

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