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168.佐倉希純の場合(前世)Ⅰ

Author: 美桜
last update Last Updated: 2025-12-04 21:26:25

2週間後。

希純は父親の純孝と共に霊園へと向かった。

彼は妻の好きだった花を花束にして供え、僧侶の言葉が終わるのを待った。

そして係の者が美月の骨壺を取り出そうとして、戸惑ったように振り返るのを見た。

「どうしました?」

「それが……」

彼は視線を泳がせ、僧侶の顔を見て、最後に希純に言った。

「ありません…」

「は…?」

ありません?何が?何が無いっていうんだ?

「まさか…?」

その言葉に、彼は慎重に頷いた。

「佐倉美月様の骨壺が見当たりません」

「あり得ない…」

希純は唇を震わせながら呟いた。そして、一気に激昂した。

「なぜだ!?」

希純は目の前にいる男の胸ぐらを掴み、答えのない問いを繰り返した。

僧侶はこの事態に眉をひそめ、ひとまず希純を宥めた。

「ここの管理者を呼べ」

純孝は周りで青褪めている職員にそう言い、深いため息をついた。

少し待つと、管理者の男が急いで走り寄って来た。

「佐倉様…」

彼は純孝に声をかけた。だが、

「ここの管理はどうなってるんだ!?墓泥棒が入ったのにも気がつかなかったのか!?」

希純がそう怒鳴りつけてきた。

肩を怒らせて、ふーふーと息を荒げていた。

「も、申し訳ありません。ですが、私共にも何がなんやらー」

「言い訳はいい!!早く監視カメラを確認しろ!」

希純の言葉に、男は慌てて事務室に駆け戻って行った。

「希純…」

それを見送って、純孝が無念そうに口を開いた。

「とりあえず、警察に連絡しろ。彼女を取り戻したいなら冷静になれ」

「……っ」

希純はその場に膝をつき、頭を抱えた。

誰だ?誰がやった!?ライバル社の連中の誰かか?それとも、骨壺と引き換えに金を要求しようとしてる奴がいるのか!?

希純はギュッと目を瞑り、爆発しそうな怒りを堪えていた。

純孝は周りが見えなくなっている息子の代わりに僧侶に頭を下げ、また改めて供養をお願いする旨を伝えた。

「希純、とりあえず事務室に行こう」

彼は、未だどうしたらいいのか分からずにオロオロしている男に片付けを頼み、希純を伴って移動した。

「これを想定して遺骨を移したいと言ったのか?」

「まさか!そんなこと、考えたこともないっ」

希純は父親の質問に驚いて強く否定した。

2人はそのまま、この霊園を管理している者がいる事務室へと入って行った。

そしてわかったことは、今月始めにこの霊園内外の清掃などを請け負っている
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