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374話

Penulis: 籘裏美馬
last update Tanggal publikasi: 2026-04-28 19:11:43

「茉莉花ちゃん!」

「虎おじさま!」

慰労会最後の参加者、虎おじさまが家にやって来て、私は虎おじさまを出迎えていた。

私の姿を見るなり虎おじ様はぱあっと表情を明るくして私の肩を叩いてくれる。

「元気にしていたかい、茉莉花ちゃん」

「はい、虎おじ様もお怪我は大丈夫ですか?」

以前、虎おじ様も危ない目に遭っている。

その事を聞くと、虎おじ様は豪快に笑って「大丈夫だよ」と答えてくれた。

「ほんのちょっと足を捻っただけだからね。あっという間に完治したよ」

「それは良かったです……。本当に……藤堂に関わったせいでごめんなさい」

「それを言ったら駄目だよ、茉莉花ちゃん。悪いのはそんな事を平気でする人達が悪いのであって、茉莉花ちゃんや馨熾先輩には何の責任もないんだから」

私の言葉に、虎おじ様は困ったように眉を下げて笑う。

怪我をしている虎おじ様に気を使われてしまって、私は自分が情けなく感じた。

「そう、ですよね……ごめんなさい虎おじ様。最近、弱気になってしまう事が多くて……」

「それは駄目だね、茉莉花ちゃん。今日は憂鬱な気持ちなんて吹き飛ばすように楽しもう!とっておき
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  • あなたの「愛してる」なんてもういらない   374話

    「茉莉花ちゃん!」 「虎おじさま!」 慰労会最後の参加者、虎おじさまが家にやって来て、私は虎おじさまを出迎えていた。 私の姿を見るなり虎おじ様はぱあっと表情を明るくして私の肩を叩いてくれる。 「元気にしていたかい、茉莉花ちゃん」 「はい、虎おじ様もお怪我は大丈夫ですか?」 以前、虎おじ様も危ない目に遭っている。 その事を聞くと、虎おじ様は豪快に笑って「大丈夫だよ」と答えてくれた。 「ほんのちょっと足を捻っただけだからね。あっという間に完治したよ」 「それは良かったです……。本当に……藤堂に関わったせいでごめんなさい」 「それを言ったら駄目だよ、茉莉花ちゃん。悪いのはそんな事を平気でする人達が悪いのであって、茉莉花ちゃんや馨熾先輩には何の責任もないんだから」 私の言葉に、虎おじ様は困ったように眉を下げて笑う。 怪我をしている虎おじ様に気を使われてしまって、私は自分が情けなく感じた。 「そう、ですよね……ごめんなさい虎おじ様。最近、弱気になってしまう事が多くて……」 「それは駄目だね、茉莉花ちゃん。今日は憂鬱な気持ちなんて吹き飛ばすように楽しもう!とっておきのお酒も持ってきたから、一緒に飲もうか」 「ふふっ、ありがとうございます虎おじ様」 虎おじ様は、敢えて明るく振舞って下さっているのかもしれない。 私と苓さんの事だって、耳に入っているだろう。 藤堂の家に纏わる一連の事件や事故だって知っているはず。 虎おじ様は忙しい身なのに、こうして慰労会に参加してくれているだけで本当に嬉しい事だ。 私は、今日この日だけは楽しく過ごそうと決めて虎おじ様に笑みを返した。 ◇ 藤堂家の大食堂。 そこに、今日の慰労会のメンバー10人が集まっていた。 大食堂は普段は使用されていないけど、昔は度々この大食堂を解放して仕事の取引先や懇意にしている家を招いて大宴会を行っていたらしい。 だけど、それも数代も前の事。 まだお祖母様も、お祖父様も健在の頃は何度か使用した事があるけどそれもお父様が子供の頃の遠い昔の記憶。 今は殆ど使われる事なく、ただひっそりと大食堂が家の中に存在していた。 だけど、今日は久しぶりにお客様を招くから、とお父様がこの大食堂を使用する事にした。 「今日はずっと料理をしっぱなしで疲れたんじゃないか?病み上がりなんだし、も

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    慰労会の件を経営戦略チームのメンバーに伝えると、皆笑顔で参加したいと頷いてくれた。 場所は藤堂の家で行う事を伝えると、矢田主任は興奮に目を輝かせ、楽しみだとはしゃぎ。 志木チーム長も言葉少なではあるが頷いてくれた。 そうして、あっという間に迎えた慰労会当日。 仕事を定時で終わらせ、私はチームの皆と一緒に自分の家に帰って来た。 今日の戦略チームの慰労会参加者は、私を含めて6人だ。 他のメンバーはご家庭の事情だったり、既に外せない用事が入っていたりでとても残念そうにしていた。 また、次の機会を作ると伝えると今日参加出来なかった人達も嬉しそうに笑ってくれて、私は自分のチームの雰囲気がとても良い事がとても嬉しかった。 「せっかく仕事が終わったのに、上司や社長の家で慰労会、なんてあまり寛げないかもしれないですが……今日は上司とか部下とか、あまり気にしないでくださいね」 私はチームの皆を案内しつつ、苦笑いを浮かべてそう告げる。 すると、矢田主任が笑顔で答えてくれる。 「お気遣い、ありがとうございます!社長がご一緒なのは少し緊張しますが……本部長と色々お話出来るのを楽しみにしていたんです!だからこのような場を設けて頂いて、嬉しいです!」 「ふふっ、私も矢田主任とお話出来るのが嬉しいです」 私たちが談笑しつつ家に入ると、使用人が出迎えてくれた。 「いらっしゃいませ。ゲストルームをご用意しております。ご案内させていただきますね」 頭を下げ、そう告げる使用人にチームの皆を任せて私は自分の部屋に向かう。 今日は人数が多いから、離れにあるゲストルームに案内するのだろう。 チームの皆が荷物を置いたりしている間に、私も着替えを済ませてしまおうと廊下を歩いていると、既に家に到着していたのだろう。 廊下の先から苓さんが歩いて来るのが見えた。 「藤堂さん」 「小鳥遊さん。急なお誘いにも関わらず、今日はご参加ありがとうございます」 「いえ……、声をかけていただけて嬉しいです。それに、お母様も退院されたのですね。おめでとうございます」 「ありがとうございます」 苓さんとの接触をなるべく避けるため、私は色々な仕事を詰め込んでいた。 だから、今日こうして苓さんに会うのはとても久しぶりだった。 当たり障りのない、仕事相手としての適切な距離──。 これが、

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    ◇ それから、数日後。 会社に出勤する前にお父様から一緒に出社しないか、と誘われた。 「こうしてお父様と一緒に出社するのは久しぶりですね」 「ああ。たまにはいいだろう?」 車に乗りこみ、走り出して少し。 お互い、朝の経済ニュースのチェックが終わり、少しだけ空いた時間。 お父様に話しかけると、タブレットから目を上げたお父様が笑って答えてくれる。 そして、タブレットの電源を完全に切ったお父様は、私にある提案を口にした。 「昨夜、琥虎と話していたんだがな」 「虎おじ様と!?おじ様はお元気でしたか?」 「ああ。茉莉花の事も心配していた。仕事に没頭して、体調を崩したりはしていないか、と」 「まぁ。虎おじ様は私の事をまだまだ幼い子供だと思っていらっしゃるから」 私がくすくすと声を漏らして笑っていると、お父様も私の言葉に同意する。 「ああ。あいつの中では茉莉花はまだまだ子供なんだろうな」 「ふふ、もうしっかり成人して数年経っているのに……早く頼れる大人にならないとですね」 「琥虎も茉莉花を頼りにはしているさ。だが、可愛い姪っ子のような存在だからな……いつまででも心配なんだよ」 「ふふふっ、早く虎おじ様にお会いしたいです」 私がそう告げると、お父様が私をちらり、と見て口を開いた。 「──ああ。私も久しぶりに会いたくなってな。パーティーまではまだ1ヶ月以上あるだろう?だから、1度私の家で慰労会をしようかと思っている」 「慰労会!?いいですね、お会いしたいです!」 「そうかそうか。それなら良かった。今回、カフェオープンの記念パーティーに先駆けて、茉莉花のチームと……取引先──苓くんや琥虎も呼んで、慰労会をしようと思っているんだ。……日にちは、今月末に連休があるだろう?連休前の夜だったらゆっくりできるし、酒に酔ったらそのまま家に泊まればいいし、茉莉花のチームにも話しておいてもらえないか?」 お父様の言葉に、私は一瞬だけ言葉に詰まってしまった。 だけど、慰労会には私のチームの皆も呼ぶし、虎おじ様も招待する。 その流れで、苓さんを呼ばないのは確かにおかしい、し……。 私は無理やり笑みを作るとお父様に頷いて返事をした。 「とっても良いと思います。チームの皆に伝えておきますね」 「──ああ、そうしてもらえると助かる。もちろん、ご家庭がある

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    ◇ 「茉莉花、これが今茉莉花に届いているお見合いの釣書だ」 「──ありがとうございます、お父様」 ある日の夜。 私はお父様の書斎に呼び出され、お見合い予定の方達の釣書を受け取った。 私が釣書を受け取るのを、何とも言えない表情で見つめていたお父様が迷うように口をもにょり、と動かしたのが見えた。 「茉莉花、本当に──本当にお見合いを進めてもいいのか?」 「ええ。もう決めましたから」 「……茉莉花が見合いをした後、万が一苓くんの記憶が戻ったら……?そうしたら、どうするつもりだ?もしかしたら今日──、明日にでも苓くんの記憶が戻るかもしれない。記憶を取り戻した苓くんが、茉莉花がお見合いをしたと知ったら……ショックを受けるかもしれない」 お父様はそこで1度言葉を切ると、真っ直ぐ私を見返して続けた。 「だから、もう少し待ってみてはどうだ……?せめて、琥虎が企画してくれているオープン記念のパーティーが無事に終わるまで……」 「……確かに、今はまだカフェオープン前で仕事がバタついていますね。パーティーが終わり、少し仕事が落ち着いてからお見合いを進めます」 「──!ああ、その方が良いだろう。今お見合いをしても、茉莉花は忙しいだろう?体調だって崩してしまう可能性だってある。全部落ち着いてからにした方がいい」 「分かりました、お父様。それでは、先方にはそのようにお伝えいただいてもよろしいですか?」 「ああ。そこは私が責任を持って伝えておこう」 お父様がほっと、安堵したように表情を緩める。 何だか、苓さんとの事でお父様にも心配をかけてしまって申し訳ない。 私はお父様に頭を下げてから書斎を後にした。 ◇ 茉莉花が去った書斎の中。 馨熾は慌てたようにスマホを取り出し、急いで文章を打ち込む。 「不味い……、このままだと本当に茉莉花が他の男と結婚してしまう……!」 馨熾のメールの送り先は、谷島だ。 谷島は苓と友人だけあって仲は良い。 記憶を失っている苓は、今回の事件についてもうろ覚えだった。 だが、担当刑事が谷島と聞いて、それ以降は密に連絡を取り合っているらしい。 馨熾が谷島に連絡を入れると、すぐに谷島から返信が返ってきた。 苓にそれとなく話をしてみると返信が来て、馨熾はほっとした。 「記憶を取り戻さなくてもいい……。どうにか苓くんが茉莉花

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    「──っ」 まさか、お母様にそこまで聞かれていたとは、と私は驚いてしまった。 お母様の質問にすぐに答えられなかった。 それがもう、答えのような物だ。 その証拠に、お母様はとても悲しげに目を伏せた。 「どうして小鳥遊さんを諦める事になったのか、聞いてもいい?」 「……お母様も、苓さんの記憶がなくなってしまったのは……」 「ええ、聞いているわ。だけど、彼の記憶がもうすぐ戻るかもしれないでしょう?私も、長年目覚める事ができなかった。だけど、今は目が覚めて……そして家に帰ってくる事ができたわ。希望を捨てたら駄目よ、茉莉花」 「──ありがとうございます、お母様。お母様のお気持ちは嬉しいです。……だけど、虎おじさまが襲われた事は聞いていますか?」 「田村さんが──?」 お母様は、私の言葉に驚き目を見開いた。 虎おじさまが危ない目に遭った事は知らず、初耳のようだった。 だから、私はずっと考えて、そしてお父様と相談していた事をお母様にも伝える。 「……私が大切に思う人達が、次々と事故に遭っています。……例え苓さんの記憶が戻らなくても、私にとって苓さんはかけがえのない人です。これ以上、危険な目に遭って欲しくない……」 「だからと言って──!」 「ええ、だからと言って。私と苓さんが恋人じゃなくなったからと言って、苓さんに危険が及ばないとは確証が持てません。……だけど、私と恋人でいる方が確実に危険な目に遭います」 私の決意が固い事を、お母様は悟ったのだろう。 私は、頑固な所がお祖父様にとてもそっくりだ、と言われているから──。 1度、自分の中で「こうする」と決めた事は、曲げない。 私の目を見返していたお母様の目が、悲しそうに歪んだ。 「私は、苓さんが幸せでいてくれればいいんです。私の知らない所でもいい。危ない目に遭わずに、誰かと一緒になって……幸せになってくれればいいです」 「茉莉花……だからと言って……」 お母様は一旦言葉を切ると、苦しそうに俯いた。 そして、言葉を続ける。 「だからといって……、他の方とのお見合いをするなんて……!」 お母様の言葉に、私は苦笑いを浮かべて答える。 「……藤堂には、跡継ぎが必要ですから」 そうだ。 藤堂は、私が継いで行く。 以前は養子を取る可能性があったけど、今は私が家に帰ってきているから。

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    お母様の言葉に、私は何て言葉を返せば良いのか分からなくなった。 確かに、無理をして仕事に没頭している部分はある。 そうしないと、ふとした時に苓さんの事を考えてしまうから。 「そう、ですかね……?」 だから私は、お母様に対して曖昧に笑って言葉を返して見せた。 だけど、お母様の表情は芳しくない。 私が無理をしている事がお母様にバレてしまっているのだろう。 お母様は、私の手から紅茶の入ったカップを優しく取ると傍にあるテーブルに置いた。 「ねえ、茉莉花。私と一緒にお庭の散歩でもしない……?暫くあそこの庭園を歩いていないから……久しぶりに歩きたいの」 「庭園、ですか?」 お母様の言葉に、私は一瞬だけ迷ったけれどすぐに頷いた。 ◇ 庭園。 私はお母様と一緒に懐かしい思い出のある庭園にやって来ていた。 1番新しい思い出は、ここで苓さんと一緒に歩いた事。 1番古い思い出は、お母様と一緒に縁側から庭園を眺めた思い出。 「茉莉花、縁側で座ってお話をしましょうか?」 「──はい、お母様」 お母様もその頃の事を思い出していたのか、私に顔を向けるとにこりと微笑みを浮かべてそんな提案をしてくれた。 お母様の足は、まだ筋力が戻っていなくて覚束無い。 私はお母様を支えつつ日本家屋に向かい、玄関を開けて中に入る。 「お母様、私に掴まってください」 「ありがとう。ふふ、嫌ね……娘の手を借りないと少しの段差も上がれないなんて……」 「事故に遭ってからずっと寝たきりだったのですもの。しょうがないですよ、お母様。お医者様もおっしゃっておりましたが、お母様の回復はとても早いと。驚いておりましたよ?」 「あらあら、本当?それは嬉しいわ」 ふふふ、と上品に笑うお母様。 私はお母様の手を取って、一緒に縁側に向かった。 縁側に座り、他愛ない話をお母様として。 少し肌寒くなって来た頃。 これでは、お母様のお体が冷えてしまう。 体調を崩されたら大変。 だから、私はそろそろ中に戻りましょう、とお母様に提案するつもりでお母様に顔を向けた。 そうしたら、お母様も私を見ていて。 お母様の真っ直ぐ、芯の通った瞳が私を見つめていた。 「──お母様?」 お母様は私の手をそっと握ると、話そうか話さまいか一瞬悩んだ素振りを見せた。 だけど、覚悟を決めたようにお母様

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    苓さんはちっとも痛くなさそうに「痛い」と笑いながら、車のドアを開けてくれる。 促され、車の助手席に乗る。 運転席側から苓さんも乗り込んだ。 私がシートベルトをし終わり、ふと顔を上げた瞬間。 ハンドルに手を置いたままの苓さんが、ふと体を傾けて私の唇を塞いだ。 「苓さん……っ」 「すみません、我慢できなくて。じゃあ、車出しますね」

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    「ぇ……」 頭の中が、真っ白になる。 どうして、苓さんのすぐ近くから女の人の声が。 それに、苓さんの名前を呼んでいて……。 そう、考えた瞬間、スマホの向こうから恐ろしいほど冷たい苓さんの声が聞こえた。 そんな会話が聞こえ、女性の泣きそうな声が聞こえたが最後、ようやく向こう側が静かになった。 私はさっきまで不安

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    ◇ 苓さんの車の中、私の唇を何度も何度も塞ぐ苓さんに、最初は押し戻そうとしていたけど、いつの間にか私の手は縋るように苓さんの首に回っていた。 会社を出て、家まであと少し、という所で苓さんは路地に方向を変えて、車を停車した。 私が不思議そうに窓の外を見た時に、運転席側からシートベルトを外す音が聞こえた。 何か話でもあるのだろうか。 そう考えた私が、苓さんに顔を戻した時。 シートベルトを外し、体を私に寄せた苓さんに唇を塞がれたのは数分前だった。 「──んぅっ、ちょっ、苓さ……」 「すみません茉莉花さん、あと少し……」 「んっ」 何度も唇を合わせ、可愛らしいリップ音が車内に満

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    御影さんの言葉に、私は彼に視線を向ける。 けど、御影さんはお母様の眠る姿をじっと見つめたまま、言葉を続けた。 「昔は、あんなにお元気そうだったじゃないか……。病気……、か?」 気まずそうにそう問われ、私は首を横に振って答える。 「……いいえ、交通事故です」 「事故……。だが、もう手術は成功しているんだろう?何故、目覚めない?」 「お医者様にも、原因は不明だと言われております。……私たち家族だって、お母様に早く目覚めて欲しいです」 「いったい、いつ事故に……?犯人は捕まっているのか?」 「5年ほど前、です。……もちろん、犯人は捕まっています」 「5年──」 御影さんの眉間

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