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あのときの恋心は、昨日に置いてきた
あのときの恋心は、昨日に置いてきた
作者: 春山(はるやま)

第1話

作者: 春山(はるやま)
周平が洗濯洗剤をボトルから注ぐ手が、ぴくりと止まる。次の瞬間、いつもの何倍もの量がドバッと流れ出す。

彼は、信じられないものを見るような目で私を見る。

「お前、頭おかしくなったのか?昨日婚約したばかりだろ。今さら別れるなんて言い出して、俺たち二人の家族を笑いものにしたいのか?」

私は淡々とうなずく。「そう。私、頭がおかしくなったの」

昨日は私たちの婚約パーティーだった。この日を、私は丸七年も待ち続けていた。

婚約パーティーのために半年以上前から準備を始め、自分の理想を細かくまとめて、式場のプランナーにすべて伝えている。

ところが、当日会場に着いてみれば――私が気に入ったものは、ひとつもない。

私はシャクヤクの花が好きなのに、会場中を埋め尽くしているのはジャスミンの花。

私はピンクが好きなのに、会場は一面、ゴールドで彩られている。

しかも、受付に飾られている写真まで、私が周平に何度も「嫌い」と愚痴をこぼしていた写真だ。

そのとき、私はすぐにプランナーの責任者を呼んで説明を求めようとする。

けれど、周平が眉をひそめて私を止める。「俺がそうするように頼んだ」

その瞬間、私の感情は一気に崩れ落ちる。なぜそんなことをしたのかと、私は周平を問い詰める。

だって私は、今回の婚約パーティーをどれほど大切にしているか、何度も何度も彼に伝えてきた。

周平は面倒くさそうに舌打ちする。「紗綾、そんなに自分勝手になるなよ。婚約は俺たち二人のことだろ。俺が自分の好きなように変えちゃいけないのか?」

私は言葉を失う。何も言えないまま、ただ立ち尽くす。

そして婚約パーティーが終わる頃、周平の幼なじみの紗英が、恥ずかしそうにグラスを手にして私の前までやってくる。

「紗綾さん、今回は本当にありがとう。紗綾さんが協力してくれなかったら、私と俊介(しゅんすけ)の婚約パーティー、どうしたらいいのか分からなかったよ」

その瞬間、全身から血の気が引いていく。周平はそんな私には目もくれず、優しい眼差しで紗英を見つめる。そして、彼女の頭をそっと撫でる。

「これくらいどうってことないよ。次は結婚式も、先に俺たちで試してみるか?」

ジャスミンの花も、ゴールドの装飾も、好きなのは最初から周平じゃない。

そのことを思い出し、私はかすかに口元を歪める。「ご両親には、私からちゃんと話す。私もできるだけ早くここを出ていく」

周平は新しいイヤホンを耳につける。まるで私の言葉など、最初から存在しないかのように。

私は部屋の隅にいる猫に目を向け、そのまま続ける。「マンゴーは、私が買った子だから。連れていくね」

周平は、それでも何の反応も示さない。

私は拳をぎゅっと握る。「ご両親が買ってくれた婚約指輪やネックレス一式は、全部置いていく。それから、紗英に貸しているあのマンションも、もう引き払ってもらって」

数年前、私は自分で必死に働いて、一軒のマンションを買っている。周平と付き合い始めたあと、彼は私にこう相談してきた。

紗英も女の子一人で東都に出てきて頑張っているんだから、安く貸してあげよう、と。

格安で貸すという話だった。けれど実際には、この数年間、紗英から家賃を一円も受け取っていない。

それどころか、周平は私に家賃を請求することすら許さなかった。「そんな細かいことを言うなんて、器が小さい」と。

周平はようやくイヤホンを外す。そして、どこか嘲るような冷たい笑みを浮かべる。

「紗綾、お前そんなに金に困ってるのか?俺と付き合ってきたこの数年間、俺がお前に使った金なんて、あの程度の家賃とは比べものにならないくらい多いだろ。

喧嘩するたびに、紗英を持ち出して俺を脅す必要があるのか?

紗英がいくつだと思ってる?一人で東都に出てきて、どれだけ大変だったと思う。そこまで言う必要あるか?」

私は俯き、唇を噛みしめる。目の奥が、じんと熱くなる。

でも、周平。覚えている?私だって、紗英より半年も年下なのに。

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