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百鬼夜行⑮

Author: 佐藤紗良
last update Huling Na-update: 2025-05-30 21:20:08

何が浩太をここまで駆り立てるのか。

幼い頃から家庭では特別な扱いを受け、母からは溺愛されていた。が、それは父の前でだけだと気づいてしまった瞬間があった。

なんでも卒なくこなす血の繋がりのない優秀な浩太を母は気味悪がり、彼よりもはるかに劣る兄たちを可愛がっている事は、浩太の目からも明らかだった。

「さてと、今日は何して遊ぶ?」

「お、おじさん。すぐ帰ってくるって言ってたから……」

「タイヤがパンクしたら、すぐには帰って来られないよね」

「え?」

浩太は包丁の刃先で、佐加江の腹を十字に切るふりをする。

「痛く、しないで」

「どうして?痛くされるの好きでしょ。我慢できなくて、すぐ射精しちゃうもんね」

浩太はゲラゲラと笑い、シュンシュンと湧くやかんの火を止め、佐加江を部屋へと引きずって行った。

昼間、宅配業者が佐加江宛の荷物を届けにやってきた。それは、その場で浩太に取り上げられたのだが、送り主の名前も住所も佐加江の身に覚えのない配達物だった。それを浩太が佐加江に渡してくる。

「ほら、佐加江さんのファンからだよ」

「ファンって……」

「佐加江さんを見て、毎晩ヌいてるってんだって。よかったね、オカズにしてもらえて佐加江さんも嬉しいね」

「送ってくれたって、ここの住所を……ッ」

浩太が手を振り上げる仕草をしただけで、佐加江は頭を隠し、畳の上へうずくまった。

「早く脱げよ、もう分かってるだろ」

「いや、もう本当に嫌なの」

着ていたカーディガンを剥がれた。爪を噛んでいた手を取られ、いつものように後ろ手に縛られる。そして面倒だったのか、浩太は佐加江のシャツに両手をかけ引きちぎった。

「いやぁ……」

ボタンは飛び散り、佐加江の顔は涙でグチャグチャだった。毎日、糸で縛られる乳首は醜いほどに肥大し、つい一ヶ月前まで、どこも未使用だった身体が日々、変形して行く。

「ヒ……ッ」

「かわいい」

爪弾かれた鬱血した赤黒い乳首に青藍が愛撫した形跡は、もう残っていなかった。

マスクをした浩太が、興味深げに届いた箱の中を覗いている。手にしたポーチのファスナーを開けると形状は同じだが、太さが異なる表面が滑らかな金属製の棒が数本あった。尿道を開発するためのプジーだ。

「これ、リクエストみたい。手紙が入ってた。『彼氏さんも言うこと利かないメス穴にお困りでしょう。すぐ射精してし
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    少しのお金と駅までの地図、自転車の鍵を部屋へ置きっぱなしにしなっていた浩太のスマホの横へそっと置いて、佐加江はいつも通りに夕飯の支度を始めた。 肉じゃがの肉を少し多めに浩太の皿によそってやった。患者さんからおすそ分けしてもらった鬼治の山で取れた自然薯は、手袋をつけて作った海老のすり身と合わせ、ふわふわの海老しんじょうの吸い物にした。そして浩太の椀だけ、小鞠麩を一つ多く浮かべた。手作りの栗の渋皮煮は、去年つくって保存していたものだ。それをデザート代わりにして座卓に並べた。 この世でたった一人の血縁者と思えば何かしてやりたいと思うが、佐加江にできる事はその程度だった。 言葉少なに残さず食事を終えた浩太が、部屋へ戻ったのは七時半頃だった。 夕飯の片付けを済ませ、風呂へ入ろうと着替えを取りに行った佐加江を待っていたかのように、浩太は無言であらかじめ用意してあったスニーカーを履き、身近なものだけを持って佐加江の部屋から庭へ出た。 「佐加江さん、一枚だけ写真を撮らせて」 「え?」 「……兄さんの写真を一枚だけ欲しい。藤堂の兄貴達だったら、こんな風にはしてくれないから」 「兄さんって、呼んでくれるの?」 「弟だと思ってくれる?」 返事の代わりに微笑んだ佐加江にレンズを向けた浩太の指先は、震えていた。 「一人じゃ、怖い?一緒に逃げようだなんて」 「そ、そんなはずないだろ。親に刃向かうの、これが初めてだから緊張はしてるけど」 「でも僕たち、ずっと一人じゃなかった?」 佐加江は裸足のまま庭へ降り、カメラをしまう浩太の背中を抱き締めてやった。 「大丈夫だよ。この村でのこと、間違ってるって気付いただけで浩太さんは立派だから……、行きなさい」 「たくさん酷いことして、ごめん」 「許されるはずないじゃない。……だから、僕のこと少しだけでいいから覚えていてね」 「忘れない。俺が初めて――」 雨音にかき消され、浩太の最後の言葉は聞き取れなかった。 佐加江の言った通りライトを点けず、浩太が自転車で走り出す。すぐに闇に溶け、姿は見えなってしまった。と、ポツリポツリとコウモリ傘に雨粒が当たる音がする。 「佐加江、ありがとう」 もう何も驚かなかった。いつも通りに笑った越乃が、佐加江の頭上に傘をかざす。 「……

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