LOGIN「社長とのあの記事では熱愛って書かれてましたけど……」なので、あたしはその理由をわかってても、あえてそこに触れてみる。「フフ。あの記事だけ見たら、いい感じの仲みたいに思えますよね♪」はい。きっと実際付き合ってるあたしや、片想いだと先に伝えていたここのチームメンバー以外は、あなたが彼女なんだと誤解しそうな記事でした。「あ~あ。こんな報道すぐ出るんなら、ここの人たちにも片想い宣言するんじゃなかったなぁ~」「え?」すると、あたしにコソッと耳打ちしながら。「だって、そしたら、そのままホントにあたしが付き合ってるって皆思ったじゃないですかぁ」と、耳を疑う信じられない言葉を、あたしに囁く。え……、それは周りを騙して勘違いさせてでも付き合ってるフリをしたいってこと……?あたしはさすがに、そのしたたかであざといこの女性に唖然としてしまう。付き合ってもないのに、そんなの利用するとか、何考えてるんだろう……。あたしは予測できないこの人に、少し怖くなる。そして実際付き合ってるのはあたしなのに、そんなの意味がないと突きつけられてるような気分になって、思わず黙っていられなくなりそうになる。「でも……、もし、実際付き合ってる女性がいたらどうするんですか……?」だけど、さすがにあからさまな言葉は伝えられなくて、そんな言葉で聞き返す。「え~。別に関係ないです」すると、美山さんは、少しも動揺せず平然とそんな言葉で返す。え……? 関係ない……?それは一体どういう……。「関係ない、って……?」あたしはその言葉に理解が出来ず尋ねる。「彼女いたらいたで奪うだけです♪」美山さんは、ニッコリ微笑んで悪魔のような言葉を呟いた……。「え? う、奪う……!?」「だって~。もし今そういう人がいるとしても、こんな風にあたしと撮られるってことは、それだけ社長は隙見せてくれるっていうか、あたしに気を許してるってことですし~、こんな風に別の女性と報道が出るくらいなら、その彼女も、それだけの存在ってことじゃないですか~?」美山さんが最もだと思いそうな言葉を並べてまた余裕そうに微笑む。「それ、は……」完全に違うとは、なぜか言い切れなかった。美山さんといたからこそ、そういう雰囲気が醸し出されてて、そんな風に見えたのかもしれないと、そんな風に少し思ってしまったから。だけど
だけど、まだ美山さんが片想いだって言ってくれててよかった。これがホントに付き合ってるとか言い出したら、ホントに慧さんを疑うことになっちゃう。それだけは嫌だ。ちゃんと慧さんの目を見て、直接慧さんの言葉を聞きたい。慧さんに安心させてもらえる言葉さえもらえれば、今のあたしならきっとそれだけでちゃんと安心出来る。だけど慧さんが出張から帰ってくるまでは、真実か嘘かわからないこの状況の中、耐えなきゃいけなんだな……。強い意志で負けないつもりではいるけど、自分一人でどこまで頑張れるかは、少しだけ不安。結局はただの片想いとしても、慧さんを好きだと言ってしまえる美山さんの方が、真実かどうかはわからなくても、それはそれで成り立ってしまう。上手く誤魔化せば、どこまでの仲かなんて他人にはわからない。あたしは慧さんを信じているから、美山さんの言葉に惑わされることはないけど、でも、他の人は、いい感じの二人なんだと思うんだろうな。付き合ってるのに好きだとも公言出来ないあたしは、結局はなんでもない存在でしかない。だけど、あたしが別に好きだとか憧れてるとか言ったところで、誰も興味もないし現実的にも思ってもらえない。真実はどうであれ、結局は美山さんみたいな人が影響力あるってことだ。それからずっとその試作の時間が終わるまでは、ずっと最後までその話で持ちきりだった。正直どこまでホントかわからないけど、だけど、美山さんはこの慧さんとの熱愛報道で、多分きっと慧さんとどうにかなりたいと思っているのが伝わってくる……。こんな時、あたしが彼女だから手を出さないでと言えればどんなに楽か……。今までは慧さんと付き合えることだけで幸せだったから、それを誰かに言ってしまいたい衝動なんて起きたことなかった。自分が彼女だと言えないことに、こんなにモヤモヤすることもなかった。自分が彼女だと宣言する自信もなかったし、そんな勇気もなかった。だけど、慧さんにちゃんと想ってもらえてるのを、ちゃんと自分自身感じるから、だから、今のあたしは言えないことが悔しいと思った。勇気がなくて言わない選択じゃなく、この言えない状況が、とてももどかしく感じた。「お疲れ様です♪」すると、また一人離れて最後の片付けをしていると、一人その話に乗っからないあたしが気になったのか、美山さんがまた声をかけてきた。「お疲
だけど、当然騒いでるその中に入って、『あたしが社長の本当の恋人です!』とは言えるはずもなく。騒いでるその一連を見ているただの傍観者でしかすぎない。だから、あたしは変わらずその輪には入らずに仕事の準備をし始める。だけど、そんなにみんなが大声で騒いでるせいで、聞かなくていい話も自然に耳に入ってきてしまう。「やだ~まさかあの日撮られてなんて思わなかったんでビックリです~。あの日、社長と一緒にお食事行って、すごい酔っぱらってたんですよね~。そのあとうちのマンションに来たとこまで撮られてるなんて思わなかった~」鼻につく甘ったるい声を出して、その日のことを嬉しそうに話す美山さん。そんな美山さんにいつだったとか詳しく聞き出す人たちに対して、その日を思い出し伝えた日が、まさしく慧さんが酔っぱらって帰ってきたあの日だった。確かにあの日以外、慧さんがひどく酔っぱらって帰ってきた日はなかった。帰ってきた時間の遅さや、酔っぱらったタイミングやその日着てた服装。いつもと違っていたから、やけに鮮明にあたしも覚えてしまっている。だからこそ、この美山さんが話す撮られたその日の相手は、間違いなく慧さんなのだと自分の中で確信してしまう。あ~、そういうことか……。だから慧さんあのとき、あんなに自分を信じてほしいって言ってたのかな……。珍しくあの日はあたしを好きだという想いも、あたしに対して伝えたい想いも、ちゃんと言葉にしてくれた。あれは、ただ酔っぱらっただけだと思っていたけど、その酔っぱらった裏には、こういうことがあったってことなんだ……。実際この日撮られたことを、慧さんがわかっていて、あたしにあんな言葉を伝えてくれたかどうかはわからない。だけど、多分少なからず、美山さんとのこういう時間があって、慧さんの中で何かを感じたから、あたしに想いを伝えてくれたのだということはわかる。それがどういうことを考えて伝えてくれたのかはわからないけど……。「え~。酔っぱらった社長ってどんな感じなんですかー!?」「あのクールな社長が酔っぱらった姿なんて想像出来ないですー!」すると今度は、慧さんが酔っぱらった姿に関して興味を示し始めるメンバー。「フフ。なんか可愛い雰囲気でしたよ♪ いつもより柔らかい感じになって。そんなギャップ見て、ますます好きになっちゃったっていうか~」美山さん
こんなとことでやっぱり慧さんは自分とは別世界の人なんだと改めて実感してしまう。そしてあたしはなんてことない何者でもない、ただの一般人で不釣り合いな存在なのだとも突きつけられてるような気分にもなる。実際その記事を見た瞬間、今まで感じたことない心臓がえぐられそうな衝撃で、尋常じゃないくらい鼓動が早くなって。今目にしているそれが現実のことだと理解するにはかなりの時間もかかった。だけど、それは慧さんであるのは間違いないんだけど、なぜか現実味がなくて。最初は衝撃でショックを受けてダメージがハンパなかったけど。でも、やっぱりどうやったって受け入れることが出来なくて。それはもちろん二人がそういう関係なのだと信じたくないという気持ちがあるのだけど。でも、それと同時に、その写真の二人も書かれてる記事も、どれも信憑性も現実味も感じなくて、どうやっても納得が出来ない。それは、あたしを好きだと言ってくれた慧さんの言葉や気持ちを、信じたいからっていう気持ちもきっと大きくて。自分の中でも、そんなことは絶対にない、何かの間違いなんだと、頭で心で何度も繰り返す。だから桜子に知らせてもらった時は、あたしは案外そこまで激しい反応にならなくて、案外冷静な自分がいた。そして、そんなあたしを見て、逆に桜子は壊れてしまったんじゃないかと心配してくれた。だけど、多分きっとそういうんじゃなくて。壊れるまではいかなくて、ただ一つ一つ消化していってるというか、自分の中で一つ一つ確かめていってるというか……。今までの慧さんのこと、あたしに対しての慧さんの言葉や態度や想い。すべてを全部思い返してみる。だけど、やっぱり思い返せば思い返すほど、やっぱり自分のことや慧さんのことじゃないように思える……。ホントは慧さんに直接確かめれば一番早いし確かなんだけど。今慧さんは出張中だし、昨日連絡もらった時は、今日は一日打合せと大切な取引も入ってるから連絡は今日出来るかわからないと伝えられていたから、そんなことで連絡も出来ない。たとえ大切な仕事が入ってなくても、それを慧さんにそんな形で連絡して問いただすことは違うと思った。だから慧さんには連絡してないし、連絡するつもりもない。もしホントだったとしても、そんな遠く離れた場所からメッセージ送ったとしても、それだけで伝えられる話でもないと思うし、違
そんなふうに思っていた矢先、数日経って、美山さんがその想い人との熱愛報道が出た。その熱愛相手が、あの美山華帆が新たに射止めた相手として、いつものようにまた注目され話題になるのは、いつものことなんだけど。だけど、その熱愛相手が驚く相手で、世間や社内でもまた話題が持ちきりになる。そしてその報道が出たあとに定期で訪れた美山さんとの試作打合せの日。試作どころじゃない女性社員のメンバーは、まさに今、美山さんにその真相を突き止めてる最中だ。そう、その相手というのが、うちの社長……、あたしの恋人の慧さんだったのだ……。美山さんが打合せに現れた瞬間、当然チームメンバーのみんなは、美山さんの元へと詰め寄る。「美山さん! この前話してた相手って、うちの社長だったんですか!?」「もう社長と付き合ってるってことですか!?」疑問に思うことをどんどん投げかけ聞き出そうとしている。あたしもこの話を知ったのは、数時間前。今朝報道されたその記事を桜子に見せられ、同じく詰め寄られていた状況。「ちょっと依那! これ見た!?」その時の桜子は携帯片手に血相を変えてあたしに伝えてきた。まだその記事を目にしていなかった、あたしはその時点で、その衝撃を知ることになった。桜子に見せられたその記事は、慧さんと美山さんが夜の街で寄り添って顔を近づけて二人で話している写真。よくデートに使われる有名な店から出てきた二人は、そのあと美山さんのマンションへと二人消えて行ったという内容。それは見たことある他人事の熱愛記事のような感覚で。ただその相手が慧さんだということ。そして多分この人物は違う人だと思いたかったけど、残念ながら慧さん本人で。あたしが知ってる服を着て、しっかり慧さんの顔もわかるほどで。元々メディアに顔出ししてる慧さんだから当然話題になって狙われやすい対象なのはなんとなく感じてはいたけど。でも、あたしと付き合っててもこんなことなかったし、慧さんも特にそれについては何も言わなかったから、撮られることに関しては特に意識もしてなかった。だけど、本当の恋人のあたしじゃなくて、実際撮られたのは、恋人じゃないこの世間でも有名な美山さんだった……。
「ちなみにその相手はもう彼氏だったりするんですか?」美山さんはそういう話題もなんでも答えてくれるタイプらしく、チームメンバーは、ここぞとばかりに突っ込んで聞く。そんなに突っ込んで聞いて大丈夫なのかなと思いながらも、密かにあたしも興味津々で料理を作る手を動かしながら、聞き耳を立てる。「え~。実は、今回はまだ片想いなんです~」「えっ、そうなんですか!?」「もしかしてその相手に向けての料理ですか?」美山さんの言葉が意外だったのか、チームメンバーが次々と質問していく。「はい。食通の人なんで、実際いろんな料理作って食べてもらってるんです♪ どれも美味しいって言ってくれるから、あたしもついはりきっていろんなの作りたくなっちゃって♪」わかります、わかります。あたしも慧さんに対してそうですもん。慧さんも、なんでもあたしの作った料理美味しいって食べてくれるもんな。なんてことない家庭料理が多いのに、最初に作った時も喜んでくれて嬉しかったな。「じゃあ今回の特集に上げてるやつは全部作ってあげたんですか?」「はい♪ 忙しい人なので時間出来たら、常に作って食べてもらってて。仕事柄料理にも詳しい人なんで、作り甲斐あるんです♪ 家庭料理とかは食べ飽きてるらしいんで、あたしが得意とする凝った料理作ってあげてて。これはどうとかいろいろアドバイスや感想くれたりするんで勉強にもなるし今後の参考にもなるので、ホント理想の人なんです♪」へ~。確かに同じように料理詳しい人なら美山さんにとったら理想だろうな。でも家庭料理食べ飽きてるとか、あたしなら絶対その時点で不満持たれそうだ……。よかった。慧さんはそういうの喜んでくれる人で。「そんな常に作ってあげてるのに、まだ彼氏じゃないんですか!?」「フフ。焦りは禁物です♪ じっくり胃袋掴んで虜にしようと今頑張ってるとこです♪」おぉ~。なんかすごいな。ホントまさに話聞いてるとハンターだわ。そりゃラブハンターと言われるわな。「だけど彼いろんなお店にも食べに連れて行ってくれたり、二人きりの時はそれなりにいい感じの雰囲気になるんで、きっと脈ありだと思います♪」うわ~その自信羨ましい。今でこそ慧さんはあたしのこと好きになってくれたから、そういう確信はちゃんと持ててはいるけど、同じように片想いの状態で、そこまではさすがにあたしは自信は
「はい。撮れた」「え!? 今!?」「ん。ホラ」「は? ちょっと、めっちゃブサイクじゃないですか!」「いや。大丈夫(笑) 可愛い可愛い(笑) フフッ」「いやいや、笑ってるからー!」「気にすんな(笑)」「気にしますって~! もう~!」「わかったわかった(笑) ちゃんと撮るから、もっかい立って(笑)」「絶対ですよ?」「うん(笑)」「ちょっと笑ってるし(笑)」「大丈夫(笑) はい、ホントにちゃんと撮るから」「お願いします」「ん」そして改めて気を取り直してポーズを撮る。「はい。これでど?」「あっ、はい。大丈夫です。ありがとうございます」写真を確認して、ようやくちゃ
それから近くに停めてあるからと社長の車へ二人移動してきた。「今日車で来られてたんですね」「あぁ。ここ以外にもいろいろ動く予定あったから車のが移動しやすかったし」「そうなんですね。でも、もっと混んでるのかと想ったらそうでもないんですね」「あぁ~。ここちょっと離れたし、皆帰るの逆方向だからこっち来るとそこまで混んでないんだ。まぁ少し歩かせて悪かったけど」「いえ。その間また慧さんにくっついて十分恋人時間堪能出来たので満足です♪」「それは確かに」「はい」「ん。お待たせ」「ありがとうございます」それから車に乗り込んだあとは、いきなり泊まりだと大変だろうと、ホテルまでにある遅くまでや
「はい。こんなとこで偶然会えるなんて、ホント奇跡みたいですね」「奇跡?」「はい。こんないつもと離れた場所に偶然お互いいて、こんなたくさんの人の中で会えたんですよ? 奇跡以外なくないですか?」「まぁな」「でも。その奇跡にも、ちゃんと意味があるのかも」「意味って?」「社長は仕事でたまたまここに来て。あたしはルイルイ応援する為にここに来た。お互い違う目的で来てるはずなのに、今はこうやって二人でいれる。それってすごい確率だと思いません?」「まぁ確かに」「それにお互い元々大切にしているモノを選んでいても、こうやって今二人で過ごせているこの時間と場所に繋がっていくとか、運命としか思えない
瞳に、記憶に、すべての花火とこの幸せな時間を焼き付けて、最後の打ち上げ花火が終わると同時に皆から拍手と感嘆の声も上がる。「綺麗でしたね」「あぁ」そして、あたしも隣の社長に声をかけるも。もう終わってしまった寂しさに少し肩を落とす。もう社長とお別れかな。もう帰らなきゃだな。終電なくなる前に、あたしも人混みの中帰らないと。さっき綾ちゃんたちも心配してくれてメッセージくれたから、その時に知り合いと会えたから一緒に見るって伝えて安心はしてくれてたけど、さすがに今からこの人混みじゃ合流は出来ないし。今から一人でこの人混みの中帰るのか……。社長とも明日には家で会えるのに、まだ離れたくない







