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7.こんな髪あんたにくれてやるわよ。

last update 最終更新日: 2025-06-05 16:51:39

「レオハード帝国、アラン・レオハード皇太子殿下とエレナ・アーデン侯爵令嬢のおなーり」

入場を知らせる声と共にアランにエスコートされながら会場に入った。

戴冠式には間に合わなかったが、その後の宴会になんとか間に合ったようだ。

「奇襲を受けたと聞いたが大丈夫か?」

アランが心配そうに聞いてくる。

「ドレス以外は無傷です。後ほど詳細をご報告させてください」

ダンスをしながら彼の質問に答える。

流石に、敵地でするにはリスクがありすぎる内容の会話だ。

ダンスを終え周りを見渡す。水色髪がエスパル王国の貴族だろう。

その時、殺気を漂わせる視線に気がつく、振り返れば欲深そうな水色の瞳をした老人が私を見ていた。

あれが、ヴィラン公爵ね。

年齢を重ねるほど顔に内面がでるとはいうけど、一筋縄ではいかなそう。

ライオットの話だと現ヴィラン公爵が宰相である間に3代国王が変わっているらしい。

そうなると、おそらくエスパル王国での発言力も相当なものだろう。

考えを巡らせていると、急に周りが騒がしくなった。

なぜだか周りの視線を集めている気がする。

「エレナ・アーデン侯爵令嬢。令嬢と踊る栄光を私に与えてくれませんか?」

私に声をかけて来た彼は誰だろう。

豪華絢爛な衣装に水色髪に水色の瞳、20代後半くらいのその男は周囲の視線から察するにこの宴会の主役。

「光栄です、クリス・エスパル国王陛下⋯⋯」

私は彼の手をとって踊りはじめた。

なんとなく辿々しいステップに感じるのは、戦争に興じて社交には興味がないということなのだろうか。

ライオットから前国王は独裁者で、クリス・エスパルも残虐で切れ者だと聞いていた。

しかし、先ほどのヴィラン公爵の視線に比べて威圧感を感じない。

むしろ、子犬のようとも言える人懐こさを感じる眼差し、見覚えがるようなこの視線。

♢♢♢

私は高校時代、一番苦手だった人物、三池勝利を思い出してた。

高3の時、私の後ろの席に座っていた人物。

髪を金色に染め

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