Accueil / ファンタジー / お持ち帰りした異世界の皇子を返品したい / 6.機会をみて皇子殿下を誘惑してきなさい。腐っても皇子だ!(レノア視点)

Partager

6.機会をみて皇子殿下を誘惑してきなさい。腐っても皇子だ!(レノア視点)

last update Date de publication: 2025-06-04 16:50:50

「レノア! ライオット・レオハード第一皇子殿下がリース子爵領でおきてる反乱の制圧に向かわれるらしい。お前も救援支援として参加しなさい」

コットン男爵、血が繋がっていることさえ恥ずかしくなるような私の父は、

娘がどうなろうとどうでも良いらしい。

リース子爵領はうちの領地と同じくらい田舎で貧しい。

鉱山などの資源もなく土壌も悪く食物を育てるにも向いていない。

そこで私の父と同じくらい欲が深いリース子爵が自分が贅沢がしたいがためにしたことは、

土壌に対し何ら対策を施すわけでもなく、領地の税率を上げたことだった。

そこに暮らす民も貧しく他の領地に引っ越すような余力もない。

どうしようもなく追い詰められ、反乱を起こしては制圧されるそんなことの繰り返しだ。

下位貴族の領地の反乱などに駆り出される不遇の皇子、それがライオット・レオハード皇子殿下だった。

「機会をみて皇子殿下を誘惑してきなさい。腐っても皇子だ」

本当に下衆な父親で吐き気がする。

私の母は男爵邸で働くメイドだったが、私を産んだ後、数少ない男爵邸の宝飾品を持って逃げてしまった。

逃げ出した母が惜しいのではななく失った宝飾品が惜しくてたまらないコットン男爵は、私を換金したくて堪らないらしい。

貧乏男爵令嬢で平民の血が混じった私は周囲から卑しい血筋などと心無い言葉を浴びさせられてきた。

しかし、そんな私から見てもライオット・レオハード皇子殿下の境遇は失礼ながら可哀想に思えた。

弟君が生まれて以来、皇太子の座も、母親も、婚約者になる人も全てを奪われ、

死を望まれ、戦地に送られる皇子。

「了解しました」

子爵領の反乱は、生きるか死ぬかの激しいものだと聞いた。

父は私が戻って来なければ食い扶持が減ったと喜び、皇子の誘惑に成功したら大喜びするだろう。

しかし、反抗したところでムチで打たれるだけだ。

ならば、父から離れられる機会と思い皇子軍に参加しようと思った。

「レノア、こっちをお願い」

救援に参加しているのは平民の娘ばかりで苗字がなく、

戦地では男爵令嬢ではなく、レノアと呼ばれた。

もともと自分を貴族令嬢とは思ったことはないが。

皇子の誘惑などする暇もないくらい怪我人が運ばれてきた。

「税率をさげてください!」

子爵領の私と同じくらいの年の女の子が狂ったように鍬を振り回し、皇子軍の騎士に制圧されていたりした。

「生きていけません! 人殺しー!」

悲鳴のように暴動する人たちをみて、私は自分の心の叫びを代弁してくれているような気がした。

救援活動に必死になり、最初はぐちゃぐちゃだった包帯の巻き方も慣れてきた。

「一度、仮眠をとったらどうだ?」

振り返ると真っ赤な髪に黄金の瞳をしたライオット皇子がいた。

初めて近くでみたけど、思ってたよりずっと親しみやすそう。

「大丈夫です。こちらの列の方たちの手当てが済んだら休みます」

区切りの良いところまでは、手当てを終えておきたかった。

「そんなことやっていたらお前が倒れるんじゃないのか?」

心配をされたことなどないので、少し驚いた。

「体は丈夫なので平気です。それにこれが私の仕事ですから」

救援が目的で来ている仕事はしっかりしなければと思った。

「お前名前は?」

皇子殿下が私に興味を示して来た。

「レノア・コットンと申します。ライオット・レオハード皇子殿下にお目にかかります」

私に苗字があったことに驚かれたようだ。

「貴族令嬢なのにこんなところで救援支援をしているなんて珍しいな?」

皇子なのに田舎の領地の反乱の制圧にきている方が珍しいですよ。

言えるはずのないことを、心の中で呟いた。

「本当に、関心するよ。危険を顧みず人々を助けようとするなんて⋯⋯」

私に好意的な視線を向ける彼を見て、皇子の関心を得るチャンスかもしれないと思った。

「皇子殿下を誘惑するように父から言われて参加しただけですよ。本当はこんな所来たくなかった」

しかし、私はいつのまにか本音を口にしていた。

父の思い通りになりたくない反抗心だろうか。

「正直なんだな。じゃあ俺の凱旋祝いのパートナーを頼もうかな。そうすれば、あとで父親に怒られないだろ」

そんなことがあって、私はライオット・レオハード皇子の凱旋をお祝いする宴会にパートナーとして付き添うこととなった。

ドレスを着て皇子様にエスコートされる、夢心地な時間だった。

♢♢♢

「ライオット・レオハード皇子殿下から伝言です。負傷兵の50人程の受け入れと、馬車を2台お願いします」

皇子軍の騎士が急いで伝令してきた。

「分かりました」

突然のことに驚いたけど、負傷兵には悪いが私の心臓は別の高鳴りを感じていた。

あの凱旋の宴会以来だわ、ライオット皇子とお会いするのは。

父がいない時でよかった、父の監視のない場所ならライオット皇子が好感を持ってくれた自然な私でお迎えできる。

彼がエレナ・アーデン侯爵令嬢を連れて来た時は、驚きとともに少し落ち込んでしまった。

彼女はライオット皇子を捨てアラン皇太子と婚約した人だ。

そんな事実は私のような田舎の令嬢でも知るところで、皇子軍ではアラン皇太子やエレナ嬢のことは口にしないという決まりもあった。

それくらい気まずい関係なのかと思っていたのに⋯⋯

エレナ嬢はこういった現場は初めてとは思えない程、手際が良く指示出しも的確だった。

彼女のような高位貴族は着替えや入浴さえも自分でしないはずなのに、包帯の巻き方一つとっても迅速かつ丁寧だった。

「剣や矢など、奇襲してきた相手を特定できる可能性があるので全てとっておいてください。まあ、エスパル王国でしょうが、証拠が必要です」

剣や矢などどれも同じだと思うが、エレナ嬢の言われる通りにした。

彼女は血しぶきを浴びて痛々しいドレス姿なのに、恐れなど何もないというような強い眼差しは有無を言わせないものがある。

「やはり、剣の柄に同じ紋章がありますね」

エレナ嬢は剣の柄を指し示しながら言った。

「エスパル王国のヴィラン公爵家の家紋だな」

ライオット皇子が覗き込んで言った。

「他国の公爵家の家紋まで把握しているとはさすが皇子殿下ですね。矢の方も素材や形状を分析し出荷元を特定しましょう」

この悲惨な状況に動転するでもなく、彼女は犯人を特定しようとしているようだ。

「証拠を集めてヴィラン公爵に叩きつけるのか?」

ライオット皇子が尋ねると、エレナ嬢は淡々と返した。

「まさか、そんなことはしてあげません。周辺国に協力を仰ぐ時にエスパル王国の暴挙の証拠として使うのです」

エレナ嬢の赤い瞳がキラリと光った。

「なるほど、他国と協力をしてエスパル王国を叩くというわけか」

ライオット皇子は彼女の意図を汲み取ったようだ。

「武力行使は最終手段です。まずは、他国と協力しエスパル王国に経済制裁を加えます。王国民の生活が厳しくなったところで、難民としてエスパル王国民を受け入れます」

エレナ嬢が彼らを受け入れるつもりでいることに驚いてしまった。

「エスパル王国の国民の愛国心と選民思想はやばいぞ。危険じゃないのか。」

皇子の意見は正しい、エスパル王国の民は危険だと言うのが帝国民の共通認識だ。

「難民として受け入れたら移民の学校をつくり、そこで再教育します。他の国からも移民と一緒に受け入れ授業を無償で提供し仕事先も案内すれば良いでしょう」

再教育して、帝国民として受け入れようと思っているのだろうか。

これが、未来の皇后になる人の器なのか。

「そこまでしてやる必要あるのか? 散々帝国を脅かしてきた国だぞ」

皇子はそう言うけれど、全ての民にまで帝国を害そうとした責任があるかと言われればそうではない気がした。

「仕事の訓練といって安い労働力で使ってやれば良いではありませんか。こちらにとって得なことしかするつもりはありませんよ」

突然、人を利用するようなことを平気で言う彼女に驚いてしまった。

私は二人の会話を聞いていてあっけにとられていた。

負傷した騎士たちに接する彼女を見て奉仕と慈愛の心に満ちた方だと思っていたけど、割と黒いことを悪い顔してサラッと言う。

しかし、そんな瞬間の彼女は女の私も見入ってしまうほど美しかった。

彼女のような生まれであれば私もお姫様になれたのではと思ったけれど、

恐ろしいほどの頭の回転としたたかさに皇后になる人というのはこれ程なのかと驚かされた。

「コットン令嬢。負傷した私の騎士たちをお任せしてもよろしいでしょうか。私は今からエスパル王国の戴冠式に向かいますので」

彼女は血だらけのドレスを着て先程奇襲にあったばかりなのに式典に予定通り向かうと言っている、普通じゃない。

「今から行くのか? その血だらけのドレスで?」

皇子殿下、ごもっともです、私はおもわず大きく頷いた。

「確かに、このドレスは刺激が強すぎるかもしれませんね。コットン令嬢ドレスを一着頂けますか? 汚損してしまう可能性があるので返せる保証がありません。

もう捨てても良いようなドレスで良いのですが。後日、騎士達の面倒を見ていただいたこととドレスのお礼をさせて頂きたく存じます」

刺激が強いとか、そういうレベルではないと思うが彼女が淡々としていた。

「は、はい」

私より身長も20センチくらい高い。体型も大人っぽいエレナ嬢が私のドレスを着たいといっている、サイズは合わないし安っぽくて結局着られない気がする。

ふと、赤く血だらけのドレスを着たエレナ嬢と彼の赤い髪と揃いの皇子軍の赤い騎士服のライオット皇子を見る。

戦地に駆り出された皇子軍が自虐で返り血が全く目立たないような色の騎士服でよかったと言ってったっけ。

昔、ペアになった赤いドレスを着た2人が本当にお似合いだったと騒がれていたのを聞いた。

きっと、こんな感じだったのだろう。2人は今でもお似合いに見える。

「このドレスにします。何から何までありがとうございます。コットン令嬢」

エスパル王国での戴冠式まで時間もなく、私のドレスを着たエレナ・アーデン侯爵令嬢。

ピンクのドレスは彼女には丈も短く、生地も安いもので、彼女が普段着ているドレスのように細かな刺繍や宝石もついていない。

フリルの多さで安っぽさを誤魔化せていると思っていたが、滲み出る高貴さをもった侯爵令嬢が着ると仮装でもしているように見えた。

「やられたらやり返す当然のことですよ」

昔、遠目に見た優雅なエレナ嬢がこんな強気で勝気な人だとは思わなかった。

「侯爵令嬢は昔から変わりませんね」

そんな2人の会話をぼんやりと聞きながら、はじまる前に終わってしまった自分の恋を自覚した。

ライオット皇子とエレナ嬢が惹かれあったとしても2人が結ばれることはないだろう。

彼女はアラン皇太子の婚約者で、高位貴族ましてや皇族の婚姻は2人の感情だけでどうなるものでもない。

それでも、私はライオット皇子が望むならその恋を応援したいと思った。

何もかも奪われてきたのだ。

想い人と添い遂げることくらい叶ってもよいじゃないか。

2人が一緒になる可能性がないことなど当人たちが一番分かっているだろう。

たくさんの大切な人との別れを知っているライオット皇子なら彼女のことを諦められるはず。

もし、上手に彼女が忘れられなかったら私の方法を教えてあげたい。

「そんな人初めからいなかったと思えば良いのですよ」と。

Continuez à lire ce livre gratuitement
Scanner le code pour télécharger l'application

Dernier chapitre

  • お持ち帰りした異世界の皇子を返品したい   外伝8.俺は最後の恋がしたいのだ。

    日本に帰ったら、俺は『異世界クラッシャーえれな』を書いて出版社に持ち込むつもりだ。主人公は現役東大生松井えれなだ。名前を少し変えようかと思ったが、主人公「えれな」という名前にすることで俺は愛情を持って執筆できていた。名字を変えて松井えれなの名前を変えて、松田えれなにしようか悩んだ。松田は俺の大好きな野球選手の苗字で、聖域なので使いたくなかった。松井も某有名野球選手の苗字だと気づいたが、松井えれなはどこにでもいそうな名前だと思いこのままにしようと思った。現役東大生に松井えれながいたら迷惑をかけるかもしれないが、そもそも東大は女が少ないから確率は低そうだ。「もしかして、お嬢様か?松井えれなは。」元々お嬢様であるなら素地があるなら、エレナ・アーデンの真似ができるかもしれない。演技は女優の線もあるが、酸いも甘いもしったような女優がライオットと脱獄を試みて正体を明かす愚かな行動はしなそうだ。「社長令嬢とか、大病院の娘とかにするか。社長令嬢はラノベに多いから、大病院の娘設定にしよう。」病院は過労やメンタルの病でお世話になっていて、身近な存在になり俺は松井えれなを大病院の娘で現役東大生の設定にした。自分より明らかに優秀な人間を書くのは難しい。23歳にもなれば分かる、世の中には生来の能力差がある。東大に入るような人間は、元々の能力が他者とは異なっている。思考回路や物事を分析する能力が全く違うのだ。「俺だって地元じゃ神童と言われて来たじゃないか。」俺はスペックの高すぎる松井えれなという主人公を書いてやることで失った自分の自信を取り戻せる気がしていた。東京に出てくるまで、地元では無双状態だった。ルックスもそこそこ、学年でもトップの成績しかとったことがなかった。それが、井の中の蛙、大海を知らずということを東京に出てきて知った。自分は特別でもなんでもなく量産型だと分かってしまったのだ。自信を失うと落ちていくしかなかった。就職してコケにされ、彼女に捨てられコケにされた。損なわれて、病んで、失われた自尊心。松井えれなの存在に俺は元気付けられた。異世界での自己中心的なふるまい。自尊心マックスの人間にしかできないだろう、欲望に従ったKY行動。天使のような心を持つアラン君を傷つけまくっていることにさえ気がついていないかもしれない。物語の中心

  • お持ち帰りした異世界の皇子を返品したい   外伝7.ライオットがレノアを好きには見えない。

    「あら、残念。」俺はイヤホンから聞こえた、エレナ・アーデンのサンプルボイスに恐怖のあまりイヤホンをはずしてしまった。声だけで男を誘惑できる。超人気声優さんらしく、見た目が可愛いらしい。でも、この声優さんのスゴさは東京女らしいクレバーさだ。このセリフはエレナがライオットに無理な要求をして、初めてライオットが断った時のセリフだ。エレナはライオットに断られても別プランを持っているので、全く残念とは思っていない。だから、残念そうに言わないのが、このセリフを言う時の正解。適当に言われたことで、ライオットはエレナの要求をのまないと彼女に切り捨てられると思って焦る。結局、ライオットはエレナの無理な要求に従い、帝国に不利なことをしてしまう。このセリフをこんな風に適当に魅惑的に言うということは、脚本からライオットやエレナの関係性や心情の理解をしていないとできない。こんな声でこんなセリフを聞いたらオタクはいくらでもお金を貢いでしまいそうだ。この声優さんは東京で生き残るだけはある。可愛くて声が良いだけでは生き残れない、どういう風な話し方をすれば、人の気持ちを惹きつけるか常に計算している強かな女だ。俺の思っているエレナ・アーデンそのものだ。そんなことがあって楽しみにしていたアニメ第1話を見ようとしていた時だった。俺はオープニングを見た時点で今までにない、吐き気と冷や汗に襲われた。アニメのオープニングのクオリティーがとてつもなく高かったのだ。短期間でこれだけものを作ったアニメ制作会社の人たちを思い浮かべてしまった。きっと、俺のいたようなブラックな職場だ。やりがいを感じるように強制され、寝る間も惜しみ仕事に没頭させられる。『赤い獅子』はネタ元があったから書けた。その上、メディア界のフィクサーにエレナが気に入られたから運良くヒットした。フィクサーのおじさんのように成功していると美女に振り回されたい願望でも出てくるのだろうか。俺はもう強かな東京女に振り回されるのはたくさんだ。

  • お持ち帰りした異世界の皇子を返品したい   外伝6.サンプルボイスできたので聞いてみますか?

    エレナ・アーデンに憑依していたという松井えれなちゃんだ。「本当にとんでもなくバカな子なんだろうな。」そう、きっと彼女はとんでもなく愚かで本能に正直な子だ。だけど、自分自身が異世界だろうと主役であるふるまいができる子。そして実は強かなたくましさのある子に違いない。自分の婚約者の兄の脱獄を手引きしようとしたんだ。あんな完璧ボーイのアラン君より、パンツを履いているか心配のライオットが好き?にわかには信じがたい、男の趣味が悪すぎる。恋愛経験がない恋に恋する女の子なのかもしれない。赤い髪に黄金の瞳をもったワイルドな見た目。「ワイルド系が受けるのは若い時だけなんだよな。経験を積めば、包容力のある男の方が良いってえれなちゃんも分かるだろうに。」俺がライオットに憑依した時、彼はルックスも含めてティーンに受けそうな主人公だと思った。登場人物の見た目も含めて参考にさせてもらった。でも、松井えれなちゃんは俺のようなニートではない。異世界に1度目憑依した時は30分くらいだった。それでも、異世界では自分の世界以上にいる時いじょうの無力感を感じた。自分の世界で何もできない人間が異世界に行って何ができるのだろう。今も前にライオットに憑依した時も俺は何もかもが違うこの世界で何かできる気がしない。松井えれなちゃんが異世界でやらかしたと言うことは、彼女が自分の住む世界である程度の万能感を持って暮らしている人間だということだ。そうでもなければ、全く常識も何もかも通用しない世界でやらかすことさえできない。その上、手紙から察するにアラン君以外松井えれなちゃんがエレナ・アーデンのフリをしていたと誰も気づいてなかったとのこと。ものすごく本能的なバカに見えるけど、完璧令嬢エレナのフリをできるレベルだったということだ。俺がパンツもはいてるかわからないライオットのフリをしているのとは次元が違う。それに、アラン君の手紙の20通目までに書かれていた松井えれなの行動記録。たった2ヶ月のことなのに、凱

  • お持ち帰りした異世界の皇子を返品したい   外伝5.アラン君のお手紙を読もう。

    兄上、帝国に兄上を迎える準備が整いそうです。また、兄上とお話しできるのを楽しみにしています。アラン君の268通目の手紙の最後にそう書いてあった。俺はその言葉に震撼した。俺は彼と会うわけにはいかないのだ。彼は絶対に俺が本物のライオットではないと気がつくだろう。彼は俺が本物の兄ではないと気づいても大切にしてくれると思う。どれだけ彼が器の大きい優しい男かは知っている。しかし、彼はとんでもなく過保護で重い愛を兄に対して持っている。俺にも7歳年下の弟がいるが、もっとドライな関係だ。東京に出てからは盆暮れ正月に会うくらいだ。連絡なんて取り合わないし、年の離れた男兄弟なんてそんなもんだと思っていた。アラン君の兄への想いは、とてつもなくウェッティーだ。なにせ、俺は本物でないことがバレないように1度も手紙の返事をだしていない。それにも関わらず、毎週のように手紙を送ってくる。本物の兄が自分の知らない異世界にいるなんて知ったら、彼は心配のあまり卒倒するのではないか。手紙でアラン君に俺は島生活が気に入っているから帝国に戻りたくないと伝えれば良いかもしれない。でも、ライオットがどういう手紙の書き方をする人物なのか分からない。筆まめなアラン君のことだ、兄弟間でお手紙回しをしていたかもしれない。俺はこの優雅でのどかな生活に甘えていた。弟のアラン君のヒモか現地妻のようなポジション。彼から惜しみない愛を注がれている。傷ついた心を癒されて、今なら普通に東京でまた頑張れそうだ。俺はのんびりした生活で日本での生活を忘れそうになっていた。だから、アラン君の年表ラブレターを見習って自分の日本での生活を書き留めていた。今まで俺が生きて来た自分史みたいなものだ。地方出身の男が東京に夢見て、その非情さに打ちひしがれる話だ。それを出版して、あとがきに俺からアラン君へのメッセージを書いて俺の動向をチェックしてそうな彼に伝えようと思った。「島生活は執筆活

  • お持ち帰りした異世界の皇子を返品したい   外伝4.なでしこの花だ。優しい感じに咲くな。

    この世界そのものが一夫多妻制で、男尊女卑な傾向があった。しかし、アラン君の行った改革によって急速に男女平等に傾いていった。年齢も性別も関係なく能力によって要職に就けてしまうのだ。貧乏貴族令嬢や貧しい平民が家のために、望まぬ結婚をしなくてもすむ道筋が作られていた。貴族間においても、恋愛結婚する人も増えて来た。ほどなくして、北部の3つの国も帝国領となった。俺は、その1つの国に1時的に身を置いていたことがあった。驚くことに国民たちはエスパル王国が帝国領になったことで豊かになったのを見て、自分の国が帝国領になることを期待していた。愛国心より、自分の生活が豊かになることの方が大事なのだ。エスパルの出身者が帝国において一切の差別を受けておらず、能力さえ示せれば夢のような生活を送れることを示していた。帝国史を学んだり、帝国の要職試験への対策をすることがブームになっていた。そしてその国も、帝国領となり、俺はまた帝国外に移動した。アラン君に判断してもらうことを、人は平等な判断と思うようになっていた。アラン・レオハードという神の前で人は平等で、彼が献身的に帝国民に尽くしているのは誰の目にも明らかだった。彼が同等の権利を与えているエレナ・アーデンも女神のように思われていた。最初はアラン君は幼く皇帝としてどうかと不安を持たれていたらしい。俺の見た彼の姿は地上に舞い降りた天使の子だったからわかる。その外観からは彼を愛でたいという感情は湧いても、彼に従いたいと思わせるのは難しかっただろう。人々の生活を目に見えて変えることで、アラン君は自分が皇帝という地位にふさわしい人間だと納得させていったのだ。今は誰もがひれ伏すほどの絶世の美男子になっていて、その姿が余計に彼を余計に神格化しているようだった。毎週のように届くアラン君の手紙には、いつも花の種が入っていた。その花を育てるのが俺の楽しみだった。「さあ、次はどんな赤い花が咲くのかな?」水をあげていると、とても優しい気持ちになれた。いつ

  • お持ち帰りした異世界の皇子を返品したい   外伝3.登場人物が生きてないんですよ。

    「登場人物が生きてないんですよ。」2作目もダメ出しをくらった。心理描写については1作目より褒められたが、キャラクターに魅力がないらしい。それは、そうだ俺自身が女や人間に失望している。そんな俺に魅力的なキャラクターなど書けるはずもない。適当な甘い言葉にフラフラする薄っぺらい人間しか俺には書けない。人間という存在に魅力を感じていない、今すぐ人間をやめて鳥にでもなりたいくらいだ。俺の信じた人間は、結局俺のことをそこまで愛してもくれていなかったじゃないか。困った時に手を差し伸べてくれる人など1人もいなかった。女なんて調子の良い時だけ近づいてきて、俺を暇つぶしに使っていただけだ。出版社のブースで気落ちしながらダメ出しをくらっていたら、急に辺り一面が光って、ライオット・レオハードに憑依した。ライトノベルをひたすらに書く毎日を送ってたせいか、俺は異世界に転生したとすぐ判断した。あの時の俺はラノベ作家として成功することしか考えてなくて、ひたすらに異世界の情報を集めた。しっかりとモデルがいるから魅力的な登場人物が書ける気がした。兵士達は不幸皇子ライオットに気を遣って言いづらそうにしていたが、6歳の弟に乗り換えた強欲美女が気になって仕方なかった。一時的な記憶喪失を装い、とにかく彼女を中心とする人物の詳細を集めた。女性不信を最高に極めていた俺は彼女を徹底的に悪として書くことにした。俺の知っている女の強かさやズルさを詰め込んでやろうと思った。物語の中で思いっきり破滅させてやることで、俺を傷つけた女という存在そのものに復讐してやろうと思った。アラン君は自分の一番の後ろ盾であるカルマン公爵家を粛清しただけではない。皇帝に即位するのと同時に公の場で紫色の瞳の逸話も完全否定してしまった。彼が自分の立場を弱くすることを自らしていることが心配だった。俺の心配をよそに帝国の領土はとてつもないスピードで拡大していった。俺はその都度、帝国外の国に引越しをした。どこにいっても豪邸暮らし

  • お持ち帰りした異世界の皇子を返品したい   10.髪は私の命じゃない。

    「皇子殿下、すぐにでも帰宅したいのですがお送りいただけますか?」私がライオットを訪問し、微笑みながらそう言うと彼は驚いたように返してきた。「アランは? それに、その髪!」彼は驚いたように私の髪を凝視していた。「まだ日程が残っております。皇太子殿下はまだお残りになるようです。私は負傷した私の騎士も気になりますし、先にお暇することにしました」驚くのも当然だ、私は髪をさらに短くショートカットに切ってしまっていた。「分かった準備するから、少し待ってくれ」ライオットはすぐに数名の皇子軍の騎士と馬車を

  • お持ち帰りした異世界の皇子を返品したい   9.どれだけ男好きなんだ?

    「全く何を考えているのですか、侯爵令嬢らしくない。国際問題になりますよ」ライオットがバッサリ切った髪の毛先を撫でて来る。周りを見渡すと人気のない庭園の外れまできたようだ。妖しい光をはなつ王宮が少し小さく見える。「ごめんなさい。感情的になってしまったわ」素直に謝ると頭をポンポンとされた。そんな事、誰かにされた事ないので気恥ずかしくなる。「まあ、大丈夫だよ。何か言われたらお祝いに駆けつけたのに奇襲しされて人質にさせそうになり困惑していたのですわ、って言えばいいよ」ライオットが彼

  • お持ち帰りした異世界の皇子を返品したい   8.俺の子じゃないだろ、できがよすぎるー(三池視点)

    小さい頃から、俺、三池勝利は賢かった。三兄弟の長男として生まれたが、弟たちの自慢の兄であり、両親の自慢の息子であった。小学校5年生の時、学校の前で無料で模試が受けられるというチラシが配られていた。週末一緒にサッカーをする予定だった友達がその模試を受けるというのに誘われて、受けた模試で何と俺は全国で7位をとってしまったのだ。その後、授業料無料で特待生として迎えると言われて塾に通うことになった。サッカーの時間が削られるのが嫌だと感じたのは初めだけだった。その後サッカーが上手い転校生が入ってきて、俺様を讃える声

  • お持ち帰りした異世界の皇子を返品したい   7.こんな髪あんたにくれてやるわよ。

    「レオハード帝国、アラン・レオハード皇太子殿下とエレナ・アーデン侯爵令嬢のおなーり」入場を知らせる声と共にアランにエスコートされながら会場に入った。戴冠式には間に合わなかったが、その後の宴会になんとか間に合ったようだ。「奇襲を受けたと聞いたが大丈夫か?」アランが心配そうに聞いてくる。「ドレス以外は無傷です。後ほど詳細をご報告させてください」ダンスをしながら彼の質問に答える。流石に、敵地でするにはリスクがありすぎる内容の会話だ。ダンスを終え周りを見渡す。水色髪がエスパル王国の貴族

Plus de chapitres
Découvrez et lisez de bons romans gratuitement
Accédez gratuitement à un grand nombre de bons romans sur GoodNovel. Téléchargez les livres que vous aimez et lisez où et quand vous voulez.
Lisez des livres gratuitement sur l'APP
Scanner le code pour lire sur l'application
DMCA.com Protection Status