ログイン《sideある公爵家騎士》
私は長年、エルトール公爵家に勤めてきた。
それは私にとって誇りであり、代々エルトール家の人々が優秀で、領民思いであったからこそ、騎士でいられることを誇りに思えた。
そして、新たに公爵家に二人の男子が生まれたことは、とても喜ばしい。
特に、長男であるエリック様は、神童と呼ばれるのに相応しい魔力の才をお持ちであった。剣術は人並みではあったが、努力すれば問題はない。
だが、我々を驚かせたのは、次男であるフライ様であった。
真面目で実直なエリック様に対して、フライ様はどこか呆然としていることが多い子供だった。
それは逆に言えば子供らしくて、我々の訓練を見つめる姿を、我々も微笑ましく見ていたものだ。
しかし、ある日……我々の訓練に混じるように、騎士見習いの少年が使う子供用の木刀を持ち出して、素振りを始めたのだ。
誰かが教えたのかと問いかけても、誰も知らないという。
最初は重さによって、木刀に振り回されていた。
我々も素振りぐらいならばと、その姿を微笑ましく見ていた。
だが、その剣は日を追うごとに鋭くなって、いつの間にか木刀を扱えるようになっていた。
信じられるだろうか? 五歳だぞ。
五歳の子が、十三歳の騎士見習いが使う木刀を、素振りで振り回している。あり得ない。いや、あり得たとしても、あのように鋭い振りはできない。
しかも、最初はただ振り下ろすだけだった訓練は、さらに日を追うごとに、横薙ぎになり、振り上げになり、八方から剣を振るう型に昇華していた。
一年後、六歳になられる頃に、手合わせをしたいと言われた。
皆が戸惑った。
こんな子供と打ち合ってもいいのか? そして、打ち合ったとしても、あの素振りをしている子供に負けたなら、自分たちの自信は打ち砕かれるのではないか?
「ダメ?」
ウルウルとした瞳で見上げるのはズルい。容姿は可愛い少年なのだ。
しかも、公爵家の次男様を無下に扱えるわけがない。
「私が相手を致しましょう」
仕方なく、私が名乗りを上げた。
私が負けたとなれば、他の騎士が負けても恥にはならぬ。そう、その時の騎士団では、私が最強の剣士だったのだ。
「ありがとう! 初めてだから、お手柔らかにお願いします!」
「こっ、こちらこそよろしくお願いします。フライ様」私は緊張していた。
にっこりと笑って剣を握る少年。
だが、その背後には、長年生きてきた自分と同じような壮年の影が見えた。
そして、勝負は一瞬だった。
フライ様は信じられない踏み込みのもと、一刀に全てをかけたような凄まじい一撃を放たれた。
私はその攻撃にたじろいで、一歩後ずさった。
あり得るだろうか? 私は戦場でも引いて負けたことはない。圧倒されるなど、騎士になってから一度もなかった。
その私が圧倒されて、一歩後ろに下がったのだ。
だが、それが功を奏したのか、フライ様の一撃は地面に穴を開ける。
木刀で開けられる穴ではない。だが、その衝撃でフライ様が動きを止めたところへ、私が木刀をフライ様の首に添えた。
二の剣で振り上げられたら、負ける。
「うわ〜、手が痛い。負けちゃった。やれると思ったのに……うん。やっぱり本物の騎士は凄いね。見切られちゃった。僕はやっぱり才能がないや」
才能がない? とんでもない。あの一撃の気迫は、今まで出会ってきたどんな猛者よりも素晴らしいものだった。
あなたに才能がないなら、誰に才能があるというのか?
「いえ、フライ様は才能がありますよ」
「はは、ありがと。お世辞を言わなくてもいいよ。余裕で躱されて、軽くあしらわれちゃった」 「わっ、私ではなく、別の者で試していただければ!」 「そう?」 「はい!」私は、私の次に剣が得意な騎士に相手をするように伝えて、フライ様と手合わせをさせた。
結果は、あっさりとフライ様の勝利だった。
今度は一撃に全てをかけるのではなく、素早い動きでの撹乱を混ぜた剣術で、騎士の剣は飛ばされてしまった。
一体、どれだけ多彩な剣をお持ちなのか?
「う〜ん、やっぱり公爵家の次男とは本気で戦えないよね」
「えっ?」何を言っておられるのだ、この人は? 騎士は本気だった。
本気で負けたのだ。
六歳にして、この方は剣の鬼であった。
「ごめんね。子供の相手をさせて、僕も自分の限界を悟ったよ。みんな、邪魔してごめんなさい。やっぱり騎士のみんなのほうが強いや。僕もみんなみたいに強くなりたいって思っていたけど、無理そうだね。これからは君たちの力で公爵家を守ってね。よろしくお願いします!」
この方は、どこまで賢い方なのだ? 確かに騎士が負けては、名誉が傷つけられる。それを見越して、自分が子供だから手を抜いて、わざと負けたことにしてくれたのだ。
しかも、自分よりも騎士たちのほうが強いと鼓舞することで、皆の心はフライ様に救われた。
「はっ! 必ずや、エルトール家のことは我々がお守りします!」
フライ様に向けて膝を折り、誓いを立てる。私に続いて、他の騎士たちも同じように膝を折る。
「うん。今日までありがとう。お邪魔しました」
その日から、フライ様は訓練所に来なくなった。だが、騎士たちの心には、幼い子供に負けぬほどの訓練と、フライ様に頂いた言葉が刻まれた。我々は強くなろうと誓った。
《sideノクス》 学園都市に来てから、毎日が新鮮だった。 広大な敷地に異種族たちが行き交い、それぞれが自分の目標に向かって努力を重ねている。 貴族もいれば平民もいる。強い者も弱い者もいる。 しかし、平民出身の俺にとって、この場所は平等なようでそうではなかった。 貴族たちの集う華やかな社交場には近寄ることすらできず、彼らが見下すような視線を向けてくることも珍しくない。 だが、それでも俺はここに来たことを後悔していない。 俺は「自分の力」を証明するために、学園都市に来たのだから。 《グラディエーター・アリーナ》 それは、そんな俺にとって絶好の機会だった。 学園都市全体を巻き込むこの競技で、俺は自分の剣術と努力が通用するのか、試してみたかった。 初戦、相手は筋骨隆々の獣人だった。 彼は身体能力に絶対の自信を持ち、俺を一瞬でねじ伏せるつもりだったのだろう。 だが、俺は速さで勝負した。 相手の動きの癖を見抜き、わずかな隙を突いて剣を振るう。何度か相手の攻撃をかわし、反撃を加えた結果、獣人の剣を弾き飛ばし、勝利を収めた。「勝者、ノクス!」 審判の声が響くと、観客席からは少しばかりの拍手が聞こえた。 しかし、俺にとってその拍手は何よりも大きく聞こえた。戦いの中でなら俺は胸を張っていられる。あまり頭が良い方ではない。だけど、自由を求める気持ちは変わらない。 二戦目の相手は、魔法使いだった。 派手な呪文を使う魔法使いが相手。遠距離から俺を攻撃してくるのに対して、どうやって距離を詰めるのか。 魔法使いの相手は初めてではなかったが、やはり剣士にとっては不利な相手だと思う。だけど、それを承知で受けた戦いだから、乗り越えたい。 何よりも、俺は負けるつもりはない。「足元がお留守だぞ!」 障害物を使って魔法を避けながら、なんとか距離を詰めた。 魔法使いは魔力量に限りがあるから、無駄に魔法を撃たせれば、隙が狙える。 障害物と魔法の消費によって接近戦に持ち込むことができたので、剣を振るって、魔法を放つ触媒を破壊することで勝利を手にした。「勝者、ノクス!」 この試合の後、俺の名前は少しずつ観客たちの間で話題になり始めた。 無敗で二勝した者は、俺を含めて数名だけ。そこに自分の名前があることが誇らしい。 そして迎えた三戦目、相手は三年次のレ
《sideバクザン》 俺の名前はバクザン。 鬼人族の中でも強者として、これまで数多の戦場を渡り歩いてきた。 俺たち鬼人族は、誇り高き血を引く。 刀と呼ばれる東方特有の武器と武術を使って戦いを行う。 生まれつき持っていた桁外れの力で、同胞からも「将来は鬼神の名を継ぐだろう」と期待されてきた。 獣人や竜人が変化の能力を持つのに対して、鬼人族は鬼神への進化を遂げると言われている。 戦いに明け暮れる日々。力こそが正義であり、力を持つ者が尊敬され、弱き者が淘汰される。それが鬼人族の掟だ。 そして俺もまた、その掟を信じ、疑うことなく己の力を誇って生きてきた。 いつかは最強の鬼人として、鬼神への進化を遂げ、最強の名を継ぐ。「バクザン、そろそろ顔役の集まりに参加する時だ。貴様を連れていくが、良いな?」「オルバス様、ありがとうございます」 先代の鬼神である祖父にそう言われた時、俺は少しばかりの高揚感を覚えていた。 顔役の集まり。 それは、各種族の実力者や裏社会の権力者たちが一堂に会する特別な場だ。そこに若き俺が出席することは、鬼人族の未来を担う存在として認められた証でもある。「分かった。俺の力を見せつけてやる」 そう返事をした俺には、自信しかなかった。 鬼人族最強と呼ばれる俺の力を見れば、誰もが俺を称賛し、恐れを抱くだろう。そんな期待を胸に秘めて、学園都市の地下にある集会場へ向かった。 国を出て西方にある帝国に行くだけで、俺にとっては興奮する出来事だった。♢ 到着した帝国は、鬼人族の街よりも遥かに発展しており、王国から乗った列車は、物凄いスピードだった。 まだまだ発展途上ではあるが、鬼人族に取り入れたい技術が溢れていた。 学園都市と呼ばれる街に着いて、地下に続く階段を降りる。 広い空間に各種族の顔役たちが集まっていた。そこには人間、エルフ、ドワーフ、獣人族といった多種多様な顔ぶれが揃っており、俺を出迎える視線が集まる。「おお、バクザンか。鬼人族の若き猛者がやって来たな」 ドワーフのトーマスの声が響く。彼は俺の存在を知っていてくれたようで、満足そうに頷いてくれた。 俺は胸を張り、自信に満ちた態度でその場を見渡す。 だが、その自信は次第に揺らぎ始めた。 各種族の顔役たちは、見ただけでただ者ではないと分かるような威圧感を放っ
《sideフィル》 とうとうこの時が来たぞ!!! ワシにもついに後継者ができた。 それはこれまで後継者を決めきれんかったワシにも問題があるが、そのおかげでとびきりの後継者を見つけることに成功したんじゃ。 夜の学園都市は、昼間の喧騒が嘘のように静まり返り、街の隅々まで灯るランタンの明かりが静かに揺れている。この時間帯は最も落ち着く時間じゃ。 人の目が少なくなり、人の本音が曝け出される。夜にこそワシらは輝き始める。 今夜は特別だ。毎年恒例の「顔役たちの集い」の日。 各国の裏社会のボスたちが一堂に会し、自らが後継者と目する若者を連れてくる。学園都市で行われるフェスティバルの裏で、この集まりは密かに続いてきた。 名目は親睦会だが、実態は「孫自慢大会」じゃ。 どこのボスが、いかに優れた後継者を育てているかを競い合う場でもある。 ワシもこの集いに参加するようになって長い。だが、毎年のことながら、ワシには自慢する「孫」がいなかった。 おかげでいつも、他のボスたちの自慢話を聞かされるだけだ。「あの坊主は将来、国を動かす器だ」「うちの若いのは抗争で百人を屠った猛者だ」 そんな話を横で聞かされるたび、ワシの中には小さな劣等感が募った。 もちろん、ワシは裏社会の中でもそれなりに名の知れた存在じゃ。じゃが、後継者となる若者がいなかったことに、心のどこかで引け目を感じていた。 だからこそ、今年は違う。 ワシは「フライ・エルトール」という孫を見つけた。 若いが、ギャンブラーとしての度胸と抜け目のなさ、どこか掴みどころのない性格。しかも、公爵家の子息とは感じさせない余裕と、堂々とした態度。 何よりも、あの少年には不思議なカリスマ性がある。見た目は呆然としておるが、人を惹きつけ、どんな場でも一歩も引かない強さを持っておる。 何よりも赤龍王の娘をあしらう実力まで兼ね備えておるのは、予想外じゃった。「今年こそ、自慢できるぞ!」 ワシは集いの会場に向かう道すがら、胸を高鳴らせていた。これまで何度も屈辱を味わってきたこの場で、ついにワシも孫自慢を披露する番が回ってきたのじゃ。 会場に着くと、そこにはいつもの顔ぶれが揃っておった。 鬼人族で地下闘技場の総元締めであり、奴自身もかなりの強さを誇る、禿頭に傷が走るオルバス。 冷たい目つきで、闇の武器商人と呼ばれる
うん。やっちゃったよね。勢いに任せて暴れたのは、火龍の時以来かな。領地を干上がらせていたから、ブチギレて尻尾を切っちゃって以来だよ。 ギャンブルを取り仕切る顔役のお爺さんたちを黙らせたのは、やりすぎだったなぁ〜。だけど、メムのことを物扱いするのがダメなんだよ。「ご主人様〜メムは嬉しいです」 先ほどから、メムがフェロモンムンムンでスリスリと頬を擦り寄せている。まぁ、夢魔としてメチャクチャ可愛いから嫌ではないんだけど、たくさんの人たちに見られながらは恥ずかしいかな。「いっ、意外にやるじゃない」 シーバは来た時とは違って、何やらオドオドとしながら、僕に視線を向けては頬を染めている。まぁ、綺麗な女性に向けられる視線としては悪くないですね。 それにしても、地下会合の雰囲気は一変してしまった。 先ほどまで僕を値踏みしていた視線や、敵意を感じさせる態度は消え去り、代わりに全員が好意的で、どこか親しみを感じさせる空気に変わってくれたのは楽でいいね。「フライ・エルトール殿、お若いのに見事な腕前じゃった。さぁ、こちらへどうぞ。ぜひ上座にお座りください」 先ほどまで威圧感を放っていた頭に傷のあるオジさん。名前はオルバスさんで、深々と頭を下げて言った。 周囲の顔役たちも次々と口々に賛辞を述べながら、僕をテーブルの上座へと案内する。「まぁ、みんなが言うなら座らせてもらうよ」 僕は少し困惑しながらも、椅子に腰を下ろした。メムとシーバは、僕の両脇に控えて、じっと周囲を警戒しているのが分かる。 二人とも、本来は強い種族に分類される。 夢魔族のメムが持つ魅了の魔力は人を支配する。 精霊族のシーバが持つ精霊魔法は強力で、属性魔法とは異なる理で魔力が使われることで、強力な魔法を生み出す。「フライ殿、これはワシらの失礼をお詫びする証です。どうかお納めください」 一人の顔役が、金の縁取りが施された豪華な杯を差し出した。その中にはキラキラと輝く琥珀色の液体が注がれている。「ありがとうございます。でも、僕は酒は強くないんですよ。代わりに、メムとシーバに飲ませてあげてください」「ほう、それではこちらのお嬢さん方に……」 周囲の視線が二人に集まる。メムは少し怯えたように身を縮めるが、シーバは毅然とした態度でその場に立っている。「ご主人様、それはメムたちが飲んでもいいので
夜の学園都市は、昼間の喧騒が嘘のように静まり返り、時折吹く冷たい風が肌に刺さる。どこからか聞こえる酒場のざわめきや馬車の音が、静寂の中にかすかな命を感じさせる。「フライよ、今夜は特別な集まりだ。美しい女性を連れてこいと言った意味が分かるだろう?」 フィル爺さんに呼び出された僕は、夢魔族のメムと精霊族のシーバを連れて夜の街を歩く。 二人とも綺麗に着飾って、いつもの雰囲気とは全くの別人のようだ。夢魔のメムは、生まれ持った魅力が溢れている。 精霊族のシーバもエルフと呼ばれる整った容姿の種族なので、黙っているだけでとても美しい。 フィル爺さんから面白い者たちを紹介してやると言われて、今日は夜に呼び出しを受けた。「まぁ、フィル爺さんの友達だから、美人が好きなんでしょ? メム、シーバ、緊張しないで。僕がいるから大丈夫だよ」「はいなのです、ご主人様。でも……なんだか怖い雰囲気なのです」 臆病なメムは珍しく声を小さくして答えた。彼女の目が何かを捉えたのか、街の空気にはどこか異様なものが漂っている。 フィル爺さんが連れてきたのは、薄暗いながらも高級感を感じさせる広いパーティー会場だった。 シーバも雰囲気に呑まれながらも、無表情で周囲を警戒して耳をぴくりと動かしていた。 フィル爺さんに案内されたのは、学園都市の繁華街の奥まった一角にある、ひっそりとした建物だった。 外観は古びた倉庫のようで、特に目立つところはない。だが、重厚な鉄の扉と、それを守るように立つ無骨な大男たちが、この場所がただの倉庫ではないことを示している。「フライ、ワシの後についてまいれ」 扉の前で待っていたフィル爺さんが低い声で言う。彼の表情にはいつものような軽さはなく、むしろその目にはどこか冷たさすら感じられた。「フィル爺さん、ここは……?」「いいから入れ。面白い者たちを紹介してやるからな」 重厚な扉の向こうにある広い倉庫から階段を降りると、地下空間が広がっていた。 薄暗い明かりが空間全体を照らし、どこか湿った空気が漂っている。床は磨き抜かれた石畳で、その中央には重厚な木製のテーブルが置かれていた。 そこに座る男たちは、一目でただ者ではないと分かる。豪奢な衣服を身にまとい、堂々とした体格を持つ者もいれば、細身で鋭い目つきをした者もいる。だが、全員に共通しているのは、その場を
グラディエーター・アリーナの予選も終盤に差し掛かり、学園都市は大いに盛り上がっていた。「キンキンに冷やすと飲みやすいのですね」「アリーナ内は暑いからね」 僕は、みんなに飲み物を提供して、キンキンに冷やしてあげた。僕はもちろん、エールに、今日はフランクフルトを片手に持ってモニターを見ていた。 戦いの模様は学園都市中に設置されたモニターに映し出され、多くの観客が次の勝者を予想して賭けに熱中していた。 エリザベートやジュリア、アイリーン、レンナたちも、それぞれの戦いに熱が入り、観客席に陣取り、応援しながら試合の行方を見守っていた。「次の試合は、三年次のレオポルド・シュトラウス選手と、一年次のノクス選手です!」 実況者の声が響き渡り、会場がざわつく。「レオポルド選手は過去の大会で決勝進出を果たした実力者です。正統派の剣術の使い手であり、一方でノクス選手は、ここまで勝ち上がるだけでも奇跡とされる無名の一年生剣士だ!!!」 剣士同士の戦いではあるが、筋骨隆々な体格を持つレオポルド選手。 それに対して、発展途上の体格をしたノクス選手。「さすがにレオポルド選手の圧勝でしょうね。ノクス選手が勝てるとは思えませんわ」 エリザベートが予想を述べると、ジュリアは少し眉をひそめた。「でも、ノクス選手もここまで勝ち上がってきたのです。実力があるからじゃないですか?」「ジュリア、それはただの偶然よ。一年次が三年次の実力者に勝つことは難しいわ。この年代の一年や二年の差は凄く大きいもの。あり得ませんわ」 エリザベートがきっぱりと言い切る中、僕は賭け票を見せながら微笑んだ。「僕はノクスに賭けたよ」「えっ!?」 エリザベートが驚いた様子で僕を見る。ジュリアは嬉しそうに微笑んだ。「フライ様、本気ですの?」「もちろん、波乱が起きる方が面白いからね。それに、ノクスはここまでの試合でかなりいい動きをしてたよ」「フライ様……それ、それは勘ですか?」 アイリーンが不思議そうに問いかけてきた。「う〜ん、どうだろう? だけど、こっちの方が面白いと思ってね」「ご主人様、大丈夫?」 ジュリアが不安そうに問いかけてくる。「私は、いい勝負だと思うぞ」 レンナは僕の判断に賛同してくれる。獣人や竜人である彼女たちの方が、戦闘面では敏感にノクスの強さに反応を示すのだろう。







