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私は弟の

Author: イコ
last update publish date: 2026-10-05 11:59:11

《side エリック・エルトール》

 フライ観察日記

「天才! いや、フライは奇跡の弟だ」

 弟、フライ・エルトールは、生まれたときから周囲を驚かせる存在だった。

 彼が初めて歩いた日、普通の子どもならつまずくような小石を器用に避けて歩いていたことを、今でも鮮明に覚えている。

 その瞬間から、私は確信していた。彼はただの弟ではない。この世界に生まれるべくして生まれた、奇跡の存在だと。

 それを顕著に理解したのは、魔力量の増強についてだ。魔力を使い果たした後、回復するたびに魔力量が増えるという、あり得ない結果をもたらした。

 フライは子どもとは思えない柔軟な発想で、新たな成果を残したのだ。

 それだけではない。

 成長したフライは、干ばつの原因究明に乗り出した。

 フライは、まだ十五歳に達していなかったと思う。

 領地内で突如として干ばつが発生した。帝国全体が水不足に陥り、エルトール公爵領は最も被害が酷かった。<

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     《side エリザベート・ユーハイム》「エリザベート、私……フライ様が好きなの」 その言葉を聞いたとき、私は思わず目を見開いた。 アイリーン姉様がこんなことを言い出すなんて、全く予想していなかった。「……それは、そういう意味なのですよね? アイリーン姉様?」 声が上擦り、少し硬くなってしまったのは仕方がない。だって、フライ様を先に好きになったのは私で、アイリーン姉様もそれを知っているから。 それに、私がエルトール家へ婚約者候補として嫁ぐことを決めたのは、アイリーン姉様の薬代を私たちの家では賄いきれなかったから。 だけど、フライ様がアイリーン姉様の病を治してくれて、私にとってフライ様は恩人であり、大好きな人になった。 そして、それは私だけでなく、アイリーン姉様も同じだった。「もちろん、そういう意味です。私はフライ様をお慕い申し上げています」 いつも優しくて、私に遠慮ばかりしていたアイリーン姉様が、はっきりとフライ様への気持ちを口にした。「フライ様に憧れないなんて無理だった。あの優しさ、あの力強さ……何より、命を救っていただいただけでなく、家族まで救っていただいたのよ。フライ様から受けた恩は計り知れないわ」 それは分かっている。エルトール公爵家にも恩を感じているけれど、フライ様個人に感じる恩は、何よりも大きい。「でも、エリザベートの立場を考えると、私は言い出せなかった。だから、ずっと黙っていたの」 アイリーン姉様は目を伏せながら語る。 その表情には、躊躇いと覚悟が混じっていた。「では……フライ様が、二人の婚約者を持つということですか?」 自分でも、なんて冷たいことを言っているのかと思う。けれど、これは私にとって簡単に受け入れられる話ではなかった。 エリック様が公爵家の後継を辞退し、フライ様に継いでほしいという意向は、すでにユーハイム家の両親にも伝えられて

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     《side エリック・エルトール》 フライ観察日記「天才! いや、フライは奇跡の弟だ」 弟、フライ・エルトールは、生まれたときから周囲を驚かせる存在だった。 彼が初めて歩いた日、普通の子どもならつまずくような小石を器用に避けて歩いていたことを、今でも鮮明に覚えている。 その瞬間から、私は確信していた。彼はただの弟ではない。この世界に生まれるべくして生まれた、奇跡の存在だと。 それを顕著に理解したのは、魔力量の増強についてだ。魔力を使い果たした後、回復するたびに魔力量が増えるという、あり得ない結果をもたらした。 フライは子どもとは思えない柔軟な発想で、新たな成果を残したのだ。 それだけではない。 成長したフライは、干ばつの原因究明に乗り出した。 フライは、まだ十五歳に達していなかったと思う。 領地内で突如として干ばつが発生した。帝国全体が水不足に陥り、エルトール公爵領は最も被害が酷かった。 原因が分からず、領内は混乱を極めた。 だが、その原因が火ドラゴンだと分かったのは、私がフライの動きを観察していたからだ。 フライは、帝国全土に水をもたらす湖の近くにドラゴンが巣を作っていると言い、あの気楽な調子で剣一本を手に襲撃を仕掛けた。 私はあまりの強さに絶句した。同時に恐怖した。だが、その後すぐに戻ってきた彼の手には、討伐した火ドラゴンの尾が握られていた。「何を怖がってるの? ただ少し、喉が渇いていただけのドラゴンだったよ」 ……いや、普通の少年がそんな簡単にドラゴンを討伐できるわけがない! 私が後から聞いた話だが、アイリーン嬢を助けたのもフライだった。 あれは、私が学園に入学する前のことだった。 ユーハイム伯爵家の長女、アイリーン嬢が不治の病に侵されているという噂を耳にした。どんな魔法使いも、医者も、彼女を治す手段を見つけられなかった。 そのためエリザベート嬢は、エルトール家の支援を求め、私の

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     《side フライ・エルトール》 領地に戻ると、懐かしい景色が広がっていた。 石畳の通りでは子どもたちが笑い声を上げ、商店街の店主たちが威勢よく声を張り上げている。その賑わいを目にするたび、「帰ってきたな」としみじみ感じた。 だが、そんな穏やかな空気を楽しむ間もなく、公爵家の執事が慌ただしい様子でやってきた。「フライ様、旦那様と奥様が至急お話ししたいことがあるとのことです」「えっ、何かあったの?」 私は怪訝に思いながら、公爵家の屋敷へ急いだ。久しぶりに会う両親が、どんな用件で私を呼びつけたのか見当もつかない。「フライ、よく戻ったね」 父のユルゲン公爵が満面の笑みを浮かべて迎えてくれた。母のクラリッサ公爵夫人も、にこやかな顔で私を見ている。「どうしたの、そんなに嬉しそうな顔をして?」「そりゃあ嬉しいさ。今日からお前が、この公爵領の当主になるんだからな!」「え……?」 突然の宣言に、私は耳を疑った。だが、父は真剣そのものの顔をしている。「前から考えていたが、そろそろ代替わりの時期だろう。領民たちも、お前が公爵になってくれるのを大歓迎しているよ」「えぇぇぇ……いやいやいや! エリック兄上から、公爵家の後継を僕に譲る話は聞いたけど、いきなり公爵はおかしいでしょうが?!」 その言葉に、私は思わず頭を抱えた。確かに公爵家の跡取りになることは分かっていたけれど、まだそんなつもりはなかったのに!「ちょ、ちょっと待ってよ。僕、まだ学園都市でのこともあるし……急にそんなことを言われても……」「なぁに、心配することはないさ。お前には立派な婚約者が二人もいるんだからな!」 父がさらりと口にした言葉に、私はさらに混乱した。「婚約者って……エリザベートのことだよね? いや、エリザベートも兄上の婚約者だったはずだよね? それは知ってるけど…&

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     《side フライ・エルトール》 破壊と混乱に見舞われた街は、住民たちの手で復興し、元の賑やかな姿を取り戻した。これほど早く復興できたのは、建物への被害が比較的少なかったことと、魔法の力が大きかったことを物語っている。 魔法はやっぱり凄い。自分でも使えるのだが、前世の記憶がある私からすると、やっぱり奇跡のような力だった。 広場の噴水は再び優雅な姿を見せ、通りには笑顔を取り戻した人々が溢れている。 そして今日、フェスティバルの最終日を迎えていた。 私も特別審査員として、表彰式に参加することになっている。「さぁ、皆さん! こんにちは! 実況ちゃんです! これからフェスティバルで最も活躍した選手たちを表彰していきます!」 実況ちゃんの声が響き渡る中、広場には多くの人々が集まっていた。復興への感謝とともに、フェスティバルを盛り上げた者たちを祝福する時間だ。「まずは、今回の大変な状況の中、街の復興に尽力した人たちを讃えたいと思います!」 特別賞として選ばれたのは、街を支えた人々だった。「まず、鍛冶屋のローさん! 彼の武器と防具は、多くの人々の命を守りました! また、復興の際には皆を鼓舞していただきました!」 私の声を聞いてくれたおじさんは、ローさんというんだね。 ローおじいさんが大きな手で帽子を取り、照れくさそうに頭を掻いている。「次に、リズさん! 彼女の料理は、多くの人々の心を癒やしました!」 あのおばちゃんは、リズっていうんだね。明るい笑顔で手を振りながら、広場の人々に応えている。「自由同盟のリーダー、フリーダムさん! 彼は竜騎士として率先して瓦礫の撤去や人々の救助を行ってくれました。彼の大胆な行動と仲間たちの支援が、この都市の復興に大きく貢献しました!」 フリーダムは得意げに胸を張り、仲間たちと肩を組んで笑っている。 そこからは、各競技の優秀者が表彰されていく。 バクザンやロガン王子、アクアリス王女などが表彰され、式は終わりを迎えた。 フェスティバ

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     《side アイス・ディフェ・ミンティ》 学園都市の空は、ようやく静けさを取り戻していた。 あれほど激しく暴れ回っていた魔物たちは、フライ・エルトールが見せた圧倒的な力によって鎮圧された。 そして、暴走していた住民たちも、何かが解けるように正気を取り戻し、周囲を見渡して困惑の表情を浮かべている。 だが、そこに広がっているのは平和ではなく、破壊の爪痕だった。「……ここまで壊れるものか」 私は瓦礫に覆われた街並みを見つめながら呟いた。整然と並んでいた商店街は跡形もなく崩れ落ち、広場の噴水も粉々になり、街の至る所からすすり泣きや呻き声が響いていた。 人々が正気に戻ったとしても、かつての賑やかさを取り戻すには時間がかかるだろう。「アイス王子、ありがとうございます」 誰かが私に声をかけてきた。振り返ると、フライが疲れ切った表情で立っていた。 彼は英雄と呼ぶにふさわしい働きを見せた。それを私は見ていた。だが、心の中に湧き上がるのは嫉妬や不満だった。 彼がもっと早く力を示していれば、こんなことにはならなかったのではないか? それに、彼一人で何でもできたのではないだろうか? そんな疑問が浮かんでくる。「礼には及ばない。だが、ここからが本当の戦いだ。破壊されたものを再建するには、長い時間と労力が必要だね」「分かっています。けど、人は強いので大丈夫でしょう」 フライはいつもの飄々とした態度で、破壊された街を見ても後悔などしていないような顔をしていた。 どうして笑っていられる? 私はブライド皇子に向けるものとは違う感情で、彼への不満を募らせていた。「フライ・エルトール。君の行動がなければ、被害はさらに広がっていたはずだ。君が踏みとどまったおかげで、救われた命も多い」「……まだですよ。負傷者を助けなくちゃ」「そうだね」 背後から、鬼人族の豪快な声が響いた。「フライの兄貴! さす

  • お気楽公爵家の次男に転生したので、適当なことを言っていたら英雄扱いされてしまった。   暴走

     《side フライ・エルトール》 地下剣闘場には、静寂と緊張が入り混じっていた。 フェスティバルの喧騒が遠ざかる中、地下剣闘場の薄暗い廊下を進むと、遠くから怒号と咆哮が聞こえてきた。それはまるで、猛獣が檻の中で暴れているかのようだった。「こりゃまた騒がしいね。バーサーカー状態ってのが、どれほど厄介なものか見せてもらおうか」 私は軽い調子で呟きながらも、心の中では少しだけ警戒していた。一方、隣を歩くエリック兄上とバクザンは、それぞれ戦闘の準備を整えている。「フライの兄貴、俺が先に突っ込むぜ! この拳で止めてやらぁ!」 バクザンが拳を鳴らしながら、闘技場の扉を一気に開け放った。その先に広がっていたのは、荒れ狂う剣闘士たちの姿だった。 バーサーカー状態とやらになった剣闘士たちは、まさに暴れ牛のようだった。目は血走り、全身が異様な赤い光を帯びている。 全身の筋肉が盛り上がり、力が異常に増幅されているのが一目で分かる。「おいおい、普通じゃねぇな!」 バクザンが目の前の剣闘士の拳を受け止めると、鈍い衝撃音が地下全体に響き渡る。その衝撃だけで、床がひび割れるほどだった。「くそっ、こいつら、見かけによらず重てぇ拳だ!」 バクザンは叫びながら反撃に転じる。鍛え上げられた鬼人族の拳が、剣闘士の腹に叩き込まれた。だが、その一撃を受けても剣闘士はびくともしない。「……これは予想以上だな。エリック兄上、何か手はある?」 私が振り返ると、エリック兄上は冷静に魔法の詠唱を始めていた。「風の刃よ、敵を切り裂け。『エア・ブレード』!」 エリック兄上の放った風の刃が、剣闘士たちの体を切り裂く。だが、それでも彼らの勢いは止まらなかった。むしろ傷ついたことでさらに興奮し、暴れ方が激しくなっている。「エリック兄上、もう少し強力な魔法はないのかい?」「無茶を言うな、フライ! 相手は異常な力を得ている。こちらの魔力消費も計算しないと、次が続かなくなる」 エリック兄上

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