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第352話

Author: ルーシー
昼間の出来事が、まだ胸の奥に重く残っていた。

綾乃は、沈んだ表情の玲奈を見つめ、胸が締めつけられるような気持ちで頬をそっと撫でた。

「大丈夫。

あと二、三日したら......私が連れて帰ってあげるからね」

医師の話では、玲奈の発熱は強く、数日間の入院が必要だという。

炎症を落ち着かせ、熱が完全に引いてからでなければ退院できない。

玲奈は綾乃の言葉に逆らわず、素直に頷いた。

「......はい。

綾乃さんの言うとおりにします」

唇は乾いてひび割れ、顔色もまだ赤く火照っている。

綾乃は彼女の髪を指先で整えながら、やさしく言った。

「ちょっと横になってて。

お湯を汲んでくるわね」

この数日、久我山の気温はぐっと下がり、季節の変わり目でインフルエンザが大流行していた。

玲奈は、そんな綾乃を気遣うように声をかける。

「......綾乃さん、マスクしてくださいね。

私のがうつっちゃうと困りますから」

綾乃は笑って頷いた。

「分かってるわ。

すぐ戻るから、少し休んでてね」

玲奈は小さく返事をして、そっと目を閉じた。

身体は鉛のように重く、節々が痛み、意識もぼんやりしていた。

どれほど眠ったのか分からない。

うつらうつらと夢の中で、兄の秋良が――拓海を殴っている光景を見た。

その夢に息を呑み、目を開ける。

額にはまたびっしょりと汗がにじんでいた。

ちょうどその時、病室の外から足音が近づいてきた。

玲奈は、てっきり綾乃が戻ってきたのだと思い、背を向けたまま弱い声で呼びかけた。

「綾乃さん......

兄さん、本当に須賀君に手を出したりしてないですよね?」

言い終えるか終えないかのうちに、低く笑う声がした。

その直後、懐かしい声が優しく答える。

「どうした?

そんなに俺のこと心配してたのか?」

その声を聞いた瞬間、玲奈ははっとして振り返った。

「......須賀君?

どうしてあなたがここに?」

汗で濡れた髪が頬に張りつき、顔は真っ赤に上気している。

拓海はベッドのそばに立っていた。

黒いスウェット姿、無造作に乱れた髪。

だが、どこか凛とした清潔さをまとっている。

粗野さと上品さが同居した、人目を惹く顔立ちだった。

その拓海が、玲奈のベッド脇の椅子に腰を下ろした。

長い脚を軽く折り、穏やかな笑みを浮かべ
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Comments (2)
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ひろぴろ
このまま拓海とラブラブ...だと、最高なのに
goodnovel comment avatar
maasa16jp
早くクズゲスカス3人と縁切って拓海と幸せになってほしい
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