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第364話

Author: ルーシー
玲奈は、智也が黙ったままでいるのを見て、先に口を開いた。

「......愛莉は、どうなったの?」

智也は、どこか不機嫌そうな声で答えた。

「集中治療室に入ってる」

その言い方に、玲奈の胸の奥が一気にざらついた。

思わず声を荒げる。

「......どこにいるかじゃなくて、どんな状態かを聞いてるの!」

智也は彼女の怒気を受け止め、唇をきつく結んだ。

そして、とうとう抑えていた言葉を吐き出した。

「そんなことを聞く暇があるなら――

俺がメッセージを送ったとき、どうして来なかった?

どうして、娘を放っておけた?」

その言葉には責める響きがあり、玲奈はかすかに笑った。

その笑みは冷たく、諦めにも似ていた。

「......本気で言ってるの?

あの子が、私に世話されたいと思ってると思う?

愛莉が望んでいるのは、あなたと沙羅でしょ。

私が側にいたら、かえって嫌がるだけよ」

智也は何も言い返さなかった。

けれど、充血した目を玲奈に向けて、搾り出すように言った。

「......それでも、お前は母親なんだぞ」

母親――その一言が、玲奈の心を鋭く突き刺した。

長い間、誰からも呼ばれなかった。

胸の奥で封じていた痛みが、勢いよく溢れ出した。

体が震え、足元がふらつく。

綾乃が慌てて彼女の腕を支えた。

玲奈は智也を見つめ、息を詰めながら言った。

「......智也。

私は一人の人間よ。

あなたみたいに完璧な父親なんて、できないの。

私はコマじゃない、四六時中、愛莉の世話をし続けるなんて無理なの!」

声は掠れ、涙のように震えていた。

智也は顔を上げ、必死に怒りを抑えながら問い返す。

「じゃあ――娘の命だって、どうでもいいのか?

俺がどれだけ電話を――」

だが、言葉の途中で玲奈が叫んだ。

「じゃあ、私の命は?

誰が気にかけてくれたのよ!」

その瞬間、堰を切ったように声が溢れた。

首筋と頬に浮かんだ血管が浮き上がり、目の奥に赤い光が走る。

叫び終えた途端、喉の奥が焼けるように痛み、激しい咳が込み上げた。

手のひらに当てたとき――赤い血が滲んだ。

「玲奈ちゃん!」

綾乃が慌ててティッシュを取り、彼女の背をさすりながら必死に言った。

「もういいわ、玲奈ちゃん!

他人があなたの命を顧みなくても、あなたは自分を大事にし
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