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第366話

Author: ルーシー
彼女の息づかいも、香りも、すべてを――

拓海は、狂おしいほどに唇で奪い取っていた。

耳もとに低くかすれた声が落ちる。

それは哀願と溜息のあいだをさまようような声だった。

「......玲奈。

お願いだ、俺を都合のいい男にしてくれないか?

名分なんていらない。

ただ、そばにいさせてくれ」

唇を離さぬまま、彼はそう懇願した。

その必死さと、どこか慣れたような甘さが、玲奈の心を乱した。

頭の芯がじんじんして、思考がまとまらない。

どう息をすればいいのか、どこに手を置けばいいのかさえ分からなかった。

口の中には、拓海の味が残っている。

――まるで、彼が自分の存在を印として刻みつけていくように。

だが、拓海はそれ以上のことはしなかった。

彼はただ、彼女を抱き締め、その唇で頬や額、瞼にまで、ひとつひとつの傷痕をなぞるように触れた。

汗も、血の滲んだ跡も、すべてを拭い取るように。

玲奈は彼の胸に倒れ込み、燃えるように頬が熱くなった。

――私は、まだ人妻だ。

離婚もしていない。

それなのに......どうして、心のどこかがこんなにも疼くの?

拓海のような男――
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Comments (2)
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美桜
いろんなのを読んでるけど、このクズカップルが一番嫌い。
goodnovel comment avatar
pockykon
本当に薄っぺらい嫌な女だねー
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