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第465話

Penulis: ルーシー
空気が静まったのを見て、沙羅も、皆が「続きを待っている」ことは当然分かっていた。

彼女は終始微笑みを崩さず、グラスを掲げて昂輝に言った。

「先輩、これまでお世話になりました。

博士課程の研究テーマまで考えてくださって。

この一杯、先輩に」

智也が学を脅したあと、昂輝が沙羅の研究テーマの件を片づけたのだ。

気が進まなくても、学から頼まれた以上、昂輝には断りきれなかった。

かつて昂輝は、沙羅の質問に答えたり、疑問を解いたりしたことは確かにある。

ただ、恋愛感情のようなものを抱いたことは一度もなかった。

当時、沙羅は毎日のように彼につきまとい、あれこれ質問を投げていた。

昂輝は人を断れないわけではない。

ただ自分の手に負える範囲なら、答えていただけだ。

とはいえ、当時の彼の周りに女性の影はほとんどなく、沙羅が現れたことで、周囲は勝手に噂し始めた。

だが実際、二人の間に何かがあったわけではない。

その後、玲奈を通して沙羅の人となりを知ってからは、昂輝はますます彼女に興味を失った。

だから今こうして酒を勧められても、昂輝は正直、応じたくなかった。

だが智也がいる。
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    試験会場の門前は、思ったより車が少なかった。それでも玲奈が外へ出ると、昂輝の黒いアウディと、智也の目立つマセラティがすぐに目に入った。ただ、智也本人はいない。運転席にいるのは菅原勝だった。昂輝も早くから来ていて、外でしばらく待っていたらしい。昂輝と勝の姿を見た瞬間、玲奈は思わず目を見張った。勝のほうが動きは早い。一歩前に出て、玲奈に言う。「奥様。新垣社長が、奥様のために打ち上げを用意しています。必ずお迎えするように、と」玲奈は勝をちらりと見ただけで、視線を昂輝へ移した。それから視線を戻し、勝に言う。「智也に伝えて。今夜は、帰りが少し遅くなるって」それを聞いて、勝は困ったように眉を寄せた。「奥様……どうか私を困らせないでください」玲奈は声を落とす。「じゃあ、私のことも困らせないで」勝は言葉に詰まった。「ですが奥様、これは社長のご意向で……」智也の名前を出せば、玲奈が折れると思ったのだろう。けれど玲奈は折れない。玲奈は昂輝に言った。「先輩、行きましょう」昂輝はドアを開け、玲奈が乗り込んでから運転席へ回った。今夜、昂輝はあらかじめ店を予約していた。もつ鍋の店だ。着くと、もう一人いた。一華だ。一華を見た玲奈は意外そうに、昂輝と一華を見比べた。昂輝が口を開くより早く、一華が言う。「なに、そのキョロキョロした目。医学界なんて狭いんだよ。会おうと思えば、わりと会える」玲奈は半信半疑のまま、昂輝が引いた椅子に座った。玲奈の表情を見て、一華が説明する。「私、久我山で出張手術があってさ。その日たまたま東先輩も手術してて。終わったらご飯行こうって話になって、また連絡ついたの。そしたら今日、あんた院試終わったから集まろうって、東先輩から連絡きたの」玲奈は昂輝を見てから、一華に言った。「そういうことだったんだ」そこで昂輝が、ちょうどよく口を挟んだ。「試験が終わって、気分もいいだろ。それに一華はルームメイトだったから、ちょうどいいと思って」玲奈は淡く笑い、昂輝に言った。「じゃあ座って」テーブルは窓際の長方形で、窓側には座れない。玲奈と一華は、長辺に向かい合って座っていた。昂輝は通路側に立っている。

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