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第625話

Author: ルーシー
呼び出し音が何度か鳴ったあと、沙羅は電話に出た。

受話器越しに、智也の耳へ激しいざわめきが流れ込んでくる。

耳障りではあるが、向こうがかなり賑わっていることはすぐにわかった。

そんな喧騒の中でも、沙羅の声だけは不思議なほど澄んでいて、聞き心地がよかった。

彼女は声をひそめるようにして尋ねた。

「智也、どうしたの?」

一方の智也は、自分でもうまく説明できない感情を抱えたまま口を開いた。

だがその声は、思いのほか冷たく、鋭かった。

「何をしている?」

沙羅の声は明るい。

笑みまで浮かんでいるのが伝わってくる。

「今日、演奏会なの。

今ちょうど会場にいるのよ。

さっき演奏が終わったばかりで、ちょっと騒がしいの」

向こうでは司会者が終演の案内をしていた。

その合間に、薫の声も聞こえてくる。

「沙羅さん、終わったし、一緒に食事でも行こう」

その声が、いかにも楽しげなのは隠しようがなかった。

沙羅もすぐに応じる。

「ええ。着替えて身支度を済ませたら行くわ」

薫はさらに言った。

「じゃあ外で待ってる。

ゆっくりでいいよ」

沙羅は軽く笑った。

「わかった
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