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第7話

Penulis: ルーシー
この日の午後1時半、智也は会社の管理職たちと会議をしていた。

自分の携帯が鳴りだした時、彼は無意識にその相手は玲奈だと思い、携帯に手を伸ばして出らずに切ってしまおうと思ったが、それは東通りにある幼稚園の番号だと気付いた。

愛莉に何かあったのではないかと心配になり、智也は緊急で会議を一旦停止し、外に出てその電話に出た。

「もしもし、新垣愛莉ちゃんの保護者の方でしょうか?」

「はい、そうです」

「本日、幼稚園では保護者とお子様たちのちょっとしたイベントがございます。愛莉ちゃんのご家族の方はまだいらっしゃっていないようですが」

幼稚園の先生がそう智也に言ったので、彼は少し驚き、意外だった。「愛莉の母親が来ていませんか?」

「もしお越しでしたら、このようにお電話はおかけしておりません。幼稚園での親子の活動と聞いて大人の方はそこまで重要なイベントだとは捉えられないかと思います。ですが、小さなお子様たちにとってはとても重要なイベントなのです。もう少しで始まりますが、ほかのお子様たちの保護者はすでに来ていて、愛莉ちゃんだけ一人ぼっちだと、どのような気持ちになると思いますか?」

幼稚園のその先生の言葉には少し苛立ちのようなものが聞こえた。智也も別に子供に対して無責任な親であるわけではない。

ただ、彼は玲奈が昨日のメッセージを読んで、愛莉のこのイベントに参加してくれるものだと思い込んでいただけなのだ。

しかし、それが彼女は幼稚園には来ていないというのだ。

この状況で玲奈に連絡していたのでは間に合わないので、智也は仕方なく「すぐに行きます」と自分が行くことにするしかなかった。

そう言い終わると、彼は電話を切って、秘書に管理職会議は延期すると通知を出させた。

午後4時半、親子のイベントは終了した。

愛莉はこの日の午後ずっと顔をぶすっとさせていて、明らかに不機嫌だった。

幼稚園が終わって、智也は愛莉と一緒に車に乗った。

二人は後部座席に一緒に座り、智也は娘のことを気にかけて尋ねた。「今日は、ご機嫌斜めだったな」

愛莉は悲しそうに目を赤くさせた。「ママ、どうして来なかったの。早めに来てって言ったのに。ほかのお友だちはみんなママが来てくれて、私だけパパだったよ。今日ララちゃんが演奏会じゃなかったら、別にママに来てもらおうとも思わなかったのよ」

智也は娘の手を握り、粘り強く彼女をなだめた。「今日はパパがうっかりしていただけだよ。今後は二度とこんなことにはならないからね」

そのように父親が言っても、愛莉はやはり機嫌を損ねたままだった。

ほかの園児たちは母親が一緒に参加し、彼女は来てくれたのは父親だった。活動内容によっては男である父親のほうが有利になることが多かった。

彼女は一位になるのがとても好きだが、不公平な条件で一番になるのは好きではない。

智也は娘がそれでも機嫌が悪いことが分かり、慰めようとしたが、この時、美由紀から電話がかかってきた。

電話に出ると、電話越しに美由紀の声が聞こえてきた。「明日はお父様の誕生日よ。今夜はお客様たちが来られて食事をするから、愛莉ちゃんと一緒にレイシーモールまで迎えに来てちょうだい」

智也はそれを聞いた瞬間ぼけっとしてしまった。しかし、よく考えてみれば、確かに明日は父親の誕生日だ。

そしてハッとした後、智也は「分かった」と一言返事をした。

電話を切った後、智也はまだ不機嫌そうに顔をしかめている愛莉のほうを向いて、娘の顔に手を伸ばして触った。そしてとても愛おしそうな声でこう言った。「明日はおじいちゃんの誕生日だ。ママが今日来なかったのは、きっと実家で夕飯の支度をしているからだろう。忘れたか?毎年この日は、ママは実家でたくさんご馳走を用意するだろう」

愛莉は真剣そうに考えてから、確かにそうだったと思い出した。

それを考えるとようやく愛莉は機嫌を少し直し、顔を上げて偉そうにこう言った。「それもそうね。そういう事情がなかったら、お友だちから笑われるところだわ。私はママに可愛がられてない子なんだとか言われちゃうのよ」

智也はそれを聞いてクスッと笑い、すぐにこう言った。「次、またこういうイベントがあったら、ララお姉ちゃんに来てもらおうな」

そして一瞬で、その場の鬱々とした空気はあっという間に晴れてしまった。愛莉はとても興奮した様子で言った。「うんうん、それがいいわ。パパ最高」

智也は愛莉の髪の毛をわさわさと撫で、優しい声で言った。「じゃ、おじいちゃん家に行こうか?」

愛莉はまた眉間にしわを寄せた。「だったら、ママに会わなきゃならないの?」

玲奈が今日幼稚園の親子イベントに来てくれなかったから不機嫌になったし、それに母親はこの間ララお姉さんのことを叩いたのだ。

だから愛莉はこの時、玲奈に対して恨みを持っていて、今は母親の顔も見たくないのだ。

それに会ったら会ったで、母親は彼女を抱きしめキスをしてくるものだから、それが不快だった。

母親からはキッチンの匂いがする。でも、ララちゃんはそんな母親とは違って、とても良い香りがするし、手も柔らかく瑞々しい。

智也は愛莉が嫌そうにその可愛い顔を歪めているのに気が付いてはいたが、正直に「そうだよ」と返事した。

愛莉は今夜必ず祖父の家に行かないといけないことが分かり、瞳をうるうるさせて智也のほうへ向き言った。「じゃ、後でママに会っても、無視していい?私まだママのこと許してあげてないの。あんな人とお話なんかしたくない。ララちゃんにちゃんとごめんなさいするまでは……」

智也は娘のシートベルトを締めてあげた後に「いいよ」と言葉を返した。

愛莉をなだめてから、智也は車をレイシーモールへと走らせた。

5時半に美由紀を車に乗せた。

そして6時に車は実家へと戻っていった。

車の中で、美由紀は友人をパーティーに誘うため、ずっと電話をかけていた。

智也が愛莉を連れて家に入った時、リビングには明りも灯っていなかった。

お客用のテーブルや食器のセットもされておらず、キッチンにはもちろん豪華な料理など準備されていなかった。料理用の鍋もコンロも冷たくそこにあって、何か料理をしたような痕跡すらなかった。

すると美由紀はそれに驚き、何度も自分の目を擦ってようやく今目の前に広がる光景が現実のものだと確信できた。

玲奈と智也が結婚してから、毎年この日は美由紀が玲奈にわざわざ注意するまでもなく、玲奈が自主的に全ての準備を行っていたからだ。しかもその準備は完璧で、食卓に並べられる料理は海や山の幸をふんだんに使った、どれも豪華なご馳走ばかりで招待された友人たちは口を揃えて絶賛していた。

それで美由紀もこれを常々自慢のネタにし、友人たちの前で自慢していたのだ。

しかし、この時、空っぽのキッチンとリビングが美由紀の怒りを爆発させた。「あの最低な嫁は一体なんなんだい。今日がどんな日なのか、わざわざ私から教えてやらなきゃ分からんのか?」

そう怒鳴り散らしながら、すぐに玲奈に電話をかけた。

しかし、電話をしても、全く出ない。

美由紀はまた何度も電話をかけてみたが、やはり電話が繋がる気配はなかった。

彼女は怒りが頂点に達し、携帯を床に叩きつけて画面が粉々に割れてしまった。

それとは逆に智也のほうはいたって落ち着いていて、娘の愛莉を怪我をしないよう庇うのを忘れなかった。

娘を胸に抱きしめて、智也は美由紀を慰めた。「外で食べようよ。久我山にある最高級のレストランを予約するからさ」

美由紀はじろりと智也を睨み、ハアハアと荒い呼吸をしていた。「例年家でお客様を招待して食事をしていたのに。さっきもいつもと同じようにそう言っちゃったわ。今年はなんてことなの、私にこんな恥をかかせやがって。あのふざけた嫁は頭でもおかしくなったんじゃないでしょうね。こんなに物分かりの悪い態度を取って、どうやら、新垣家の夫人としてやっていく気はないようね」

そもそも美由紀は玲奈と智也の結婚に最初から反対だった。新垣家のおばあ様がこの結婚を後押ししていなければ、誰がこんな嫁などもらう気になるというのだ?

怒り狂う祖母を見て愛莉は驚き、智也の懐で縮こまり、一言も発しなかった。

智也は美由紀の恨みつらみには構わず、ただ玲奈は一体どうしてしまったのだろうとだけ考えていた。

彼が昨日彼女に電話をした時も出なかったし、娘の幼稚園の活動にも参加しなかった。今夜の食事会の準備もしていないし……

この点、いつもの玲奈とは違って様子がおかしい。

しかし、彼女も一人の立派な大人なんだから、特別何かあったわけでもないだろうと考えを戻した。

智也の胸の中で、愛莉も我慢できなくなったらしく、ぶつぶつと文句を漏らしはじめた。「ママったら、ご飯の準備もしないし、わざと幼稚園のイベントにも参加してくれなかったわ。きっと私に幼稚園で恥をかかせるためだったのよ。ホント、この人って母親失格ね。ララちゃんとは大違い、ララちゃんだったら、私にこんな悲しい思いなんてさせないわ。私、もうママなんか要らない……」

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煌原結唯
まったくもってひどい扱い。
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