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別れと始まりの…

Author: こいたろ
last update publish date: 2026-09-12 19:08:44

その夜。

吹雪だった。

窓を叩く風が、

まるで誰かの叫び声みたいに響いている。

ミツコは布団の中で、

静かに呼吸していた。

浅い。

弱い。

トシオは、

その手を握っている。

もう何も言わなかった。

言葉にした瞬間、

終わってしまいそうだったから。

囲炉裏の前では、

タマとユキが寄り添っている。

そしてミーコだけが、

外を見ていた。

蒼い瞳。

その奥に映るのは、

雪山ではない。

“門”。

異世界へ続く、

巨大な光の裂け目。

ついに境界が崩れ始めていた。

ミーコは理解していた。

この家が、

この世界との“楔”だった。

そして。

ミツコの命こそが、

門を安定させていたのだと。

「……嫌」

小さな声。

王女ではない。

ただの幼い少女の声だった。

「嫌です……」

その時。

ミツコの瞼が、

ゆっくり開く。

「ミーコ……?」

「……っ」

ミーコは慌てて駆け寄る。

ミツコは、

弱々しく笑った。

「泣かんでよぉ」

その手が、

ミーコの頭を撫でる。

優しい。

あまりにも優しい。

ミーコは、

初めて知ってしまった。

“母”の温もりを。

「……おばあちゃん」

ぽろりと涙が落ちる。

ミツコは、

少し驚いたように目を丸くした。

そして、

嬉しそうに笑った。

「うん」

その瞬間。

世界が揺れた。

ゴォォォォ──!!

家の外。

山の奥で、

巨大な蒼い光が空を裂く。

門が開く。

吹雪が逆巻く。

家が軋む。

タマが叫ぶ。

ユキが震える。

ミーコのオッドアイが、

強く輝き始める。

そして。

ミツコは最後に、

トシオを見る。

「……ありがとうねぇ」

トシオは、

何も言えなかった。

ただ、

強く手を握る。

そして。

ミツコの手から、

力が抜けた。

静寂。

その瞬間。

門が完全に開いた。

蒼い光が、

家ごと飲み込む。

タマの身体が光る。

ユキの毛並みが舞う。

ミーコの姿が、

人の形へ変わり始める。

そしてトシオは、

ミツコを抱き締めたまま、

光の中へ落ちていく。

──暖かい。

最後に、

そう思った。

気づけば。

そこには、

青空が広がっていた。

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