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第144話

Auteur: Hayama
last update Date de publication: 2026-05-07 17:00:00

「俺は花澄を愛してる自信があった。でもそれは、理想の俺だけを見ていてほしかったっていう、ただの独りよがりだったのかとしれない」

樹が自嘲気味に笑い、視線をグラスの縁に落とした。

樹は気づいていないんだろうな。私が愛していたのは、完璧で強い樹じゃなくて、迷って悩んで、それでも必死に立ち向かおうとする弱さを含めた彼の全部だったのに。

「でもね、私は樹に救われてたよ。あの時の私は、確かにその優しさに救われてた。それは、それだけは絶対に嘘じゃない」

反射的に言葉が飛び出した。彼に自分を全否定してほしくなかった。

彼が自分を否定すればするほど、一緒に過ごしたあの温かな時間までもが消えてしまうような気がして怖かった。

たとえそれが不器用で、一方的な形だったとしても、救われたという事実だけは守りたかった。彼が私を想ってくれた時間は、私にとっては人生を繋ぎ止めるための命綱だったから。

「……本当のことを言えば、あの時の俺は花澄を失う怖さよりも、自分が背負っているものを失う
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