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第9話

Auteur: Hayama
last update Dernière mise à jour: 2026-01-04 12:30:00

壱馬様の家に向かう道中、私は心の中で様々な思いが交錯していた。

車の窓から見える景色は、どこか遠い世界のように感じられた。

見慣れた街並みが、まるで別の国の風景のように流れていく。

同棲に対する不安。

あの家から逃げ出せた喜び。

そして、壱馬様に捨てられるんじゃないかという恐怖。

私は、ただ黙って座っていた。

けれど、沈黙もまた、私を締めつけた。

車内は、エンジンの低い唸り声だけが響いていた。

その音が、私たちの間に流れる気まずい沈黙を埋めている。

窓の外を流れる景色を見つめながら、私は何度も言葉を探した。

でも、何も見つからなかった。

何を言えばいいのか分からない。

感謝か、それとも、ただの雑談か。

どれも、今の私には似合わない気がした。

壱馬様もまた、ハンドルを握りしめたまま、視線を前方に固定している。

その横顔は、相変わらず冷静で、感情を読み取ることができなかった。

私は、彼の中にある本当の気持ちを知りたかった。

けれど、それを尋ねる勇気もなかった。

「…あの、壱馬様」

ようやく口を開いた私の声は、思ったよりも小さく震えていた。

言葉を発するだけで、胸の奥がぎゅっと締めつけられる。

それでも、この沈黙を破りたかった。

けれど、口を開いた瞬間、頭の中が真っ白になった。

「はい」

壱馬様は一瞬だけこちらを見て、すぐに前方に視線を戻した。

「い、いえ、何でもありません…」

再び沈黙が訪れた。

私は、自分の無力さに苛立ちを覚えた。

私は、何も変わっていない。

あの家を出ても、私はまだ、誰かの顔色をうかがってばかりだ。

もっと気の利いたことを言えればいいのに。

そんなふうに思いながら
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