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第三話

Auteur: 夏目若葉
last update Date de publication: 2024-12-18 19:12:29

 姉だってせっかく入った大学を中退したくはなかっただろう。

 それまでは普通に楽しく大学生活を送っていたのだから、こうなったのはすべて父のせいだ。

 姉が働いてくれたおかげで私は大学へ行かせてもらえたし、今後は姉の負担を減らすためにも、なにがなんでも就職しないといけない。

 なのに、未だに内定ゼロとは、頭が痛いのを通り越して割れてしまいそうだ。

 夕方、バイトを終えてカフェの外に出ると空はすでに真っ暗だったけれど、クリスマス仕様の街並みは煌びやかな電飾でキラキラと輝いている。

 一旦家に帰って着替えを済ませてから、スーパーへ買いものに出かけるとしよう。姉は今日も仕事だから夜は家にいない。

 姉がケーキを用意するというのは咄嗟についたウソだから、スーパーの後に洋菓子店に立ち寄って小さいクリスマスケーキを買おうかなと電車に乗りながら考えていた。

 最寄りの駅に辿り着き、とぼとぼと自宅アパートまでの道のりを歩く。

 とにかく、このリクルートスーツを今すぐにでも脱ぎたくて仕方がない。戦闘服みたいなこのスーツは大嫌いだ。そんなことを考えていると、私のスマホが着信を告げた。

 画面に表示されているのは姉だけれど、そろそろ出勤する時間なのに、いったいどうしたのだろうと不思議に思いながら電話に出た。

「由依、今どこ?」

 その真剣な姉の声音で、瞬時に嫌な予感が走った。電話を持つ手が震えたのは、寒さだけのせいではないはずだ。

「バイト終わって帰るとこ。駅から歩いてる」

「お母さんがね……調子悪いの」

 なんとなく母のことかもしれないと予想していたけれど、それが当たってしまい、私は脱力するように歩みを止めた。

「今眠ったから、静かに帰って来て?」

「……わかった」

 電話を切った瞬間猛烈に泣きたくなり、昨日の悪夢が脳裏をよぎった。

 あれが本当に夢だったらよかったのに。

 姉の忠告通り、自宅に着くと静かに玄関扉を開け、音を立てないように部屋の中に入った。

 ダイニングに居た姉がそっと私を手招きしたが、その表情はひどく硬い。

「おかえり」

「ただいま」

「お母さん、今日また暴れたのよ」

 左手で額を覆い、頭を抱えるようにして姉がうつむく。

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