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第370話

Penulis: 雪八千
そのとき、不意に温かい大きな手が、玲の手をそっと包んだ。

玲はびくりと肩を揺らし、反射的に立ち上がった。振り向くと――いつの間にか、秀一が彼女のそばに立っていた。

「体が冷えてるな。何かあったのか?」

秀一は玲の様子を落ち着かせるように、柔らかく声をかける。

少し前、ボディーガードから「玲の様子が少しおかしい」と連絡が入り、秀一は会議を中断して、ここへ駆けつけたのだ。

そして到着後、すぐ店の中に入らず、ドア越しにしばらく玲の様子を見ていた。

案の定、玲は隅のソファに座り込んだまま、表情を失っていた。美しい顔から血の気は抜け、まるで魂が別の場所に置き忘れられたように。

ボディーガードからの報告を思い返しつつ、秀一は玲をそっと抱き寄せ、自分の膝の上へ座らせた。「玲、急に落ち込んだのは……さっきデパートの前で会った年寄りのせいか?」

「うん……ずっと、その人のことを考えてたんです。確か名前は、山田武で……」

玲は、秀一が自分の動きを把握していることをまったく不思議に思わない。むしろ、安心して寄りかかれる場所を見つけたかのように、素直に秀一の膝に座り込んだ。「秀一さん、変に聞こえるかもしれないんですけど……あの人、父さんが事故に遭った現場にいたはずです」

当時、玲は七歳だった。大人からすれば、何も覚えていない年齢だと思われる。

だが玲は、すべてを覚えている。

父が転落したあの日は、まるで悪夢のように何度も何度も頭の中で繰り返された。そして武も――あの日、確かに現場にいた。

人混みの中で一番騒いで、「賠償はどうするんだ」と大声でまくし立てていた男だ。

「……でもどうして?なんで今になって、私の前に?」

玲は秀一を見つめ、声を震わせた。「もちろん、ここはデパートだから、誰が来てもおかしくはない。だからあの人がいても、ただの偶然かもしれない……そう思おうとしてるのに、どうしても、胸の奥がざわざわして……

秀一さん、わかります?この……すごく嫌な感じ」

眉をぎゅっと寄せ、怯え、不安をこらえている玲。

秀一はそっと玲の眉間を指先でほぐしたが、その黒い瞳の奥に静かな影が差した。

――彼もまた、昨日、似た感覚を味わっていたのだから。

だが、その事実を今は言えない。余計な不安を背負わせたくなかったのだ。

秀一は彼女の頬にそっとキスを落とす。「玲、あ
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