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人気俳優の裏側/炎上

Author: Kaya
last update Last Updated: 2025-07-04 19:20:00

 それなのに私は黙っていた。

 昴生と過ごす居心地の良さと、謎の優しさに、いつの間にか我を忘れ浸ってしまったのだ。

 以前は私のマネージャーだった事もある佐久間さんが、どれだけ昴生を大切にしているかは知っている。

 人気俳優の彼を盛り上げ、あらゆる波風から防波堤のように守ってきたのだ。

 彼は自分が担当したタレントに対していつも誠実だった。

 静かに私は立ち上がり、佐久間さんと鳥飼さんに頭を下げた。

 「すみませんでした。今回の事は私が——」

 「侑さんが頭を下げる必要なんかどこにもない。

 悪いのは俺だから。」

 立ち上がった私の左手を握り、昴生はその謝罪を止める。

 「綿貫…くん?」

 「侑さんがストーカーだって?

 そんなの大きな間違いだ。

 佐久間さん。侑さんをストーカーしたのはこの俺ですよ。」

 「なっ……!?」「!!」

 「……?」

 一同が絶句した。

 何の躊躇いもなく昴生がそう宣言したからだ。

 今人気絶頂の俳優が人気低迷女優をストーカーしたと。

 「綿貫くん、変な事言わないで……

 あなたは単に人助けのような優しさで……」

 「何?侑さん。俺何も間違ってませんよね。

 初めから侑さんに付き纏っていたのは俺だし、そんな侑さんに同居を持ち掛けたのも俺。

 だから侑さんは何も悪くない。

 でしょ?」

 今言ったのが全て真実だ、とでも言いたげに。

 そんな風に真顔で、真剣な目で見つめないで。

 力を込められ、握り締められた手が熱い。

 勘違いしてしまいそうになる。

 彼が本当は体目的じゃなく、実は私の事を想ってくれてるんじゃないかって。

 こんな私の事を本当は好きなんじゃないかって……何の根拠もないのに。

 「はあ……侑がストーカーじゃないのは俺だって分かってる。

 それに…昴生がストーカーとか…

 万が一それが事実だとしても、そんな事は今重要じゃない。いや、まあ…それはそれで問題だとしても、だ。」

 佐久間さんは困ったように溜息を吐いた。

 もちろん私も、昴生がストーカーだとは思っていない。

 しかし現状は深刻だそうだ。

 なんせマンション周辺にはマスコミが殺到しているという。

 「とにかく、侑はマスコミの目を盗みながら、一度自分のマンションに戻ってくれ。
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