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3-12 気遣い

مؤلف: 青サバ
last update تاريخ النشر: 2026-08-23 07:52:57

 昼休み。

 駿は購買でパンを買ってから、果奈が待っている倉庫裏へと向かう。

◆◆◆

 倉庫裏には、既に果奈の姿があった。

 こちらに気づくと、ふわりと笑顔を浮かべる。

 その笑顔を見た瞬間、張りつめていた気持ちがふっとほどけた。

「ごめん、待った?」

「ううん、大丈夫」

 そして、いつもの場所へ移動し、お昼を食べながら話し始める。

 あの件が起こるまでは当たり前だった光景なのに、今日は何もかもが新鮮で、不思議と心地いい。

「クラスに関係がバレたとはいえ流石にクラスで二人で過ごすってのは無理だよな」

 果奈はすぐに首を縦へ振り、少し頬を膨らませる。

「当たり前でしょ!関係を周りに見せつけてるみたいで嫌」

「そうだよね」

 そう返した後、空を見上げる。

 夏が近づき、青空が広がっていて、吹き抜ける風が心地いい。

 隣には果奈が居る。

 それだけで十分だった。

「でも、場所関係無く、こうして果奈と居れることが一番の幸せ」

 飾るつもりはなかったし、格好つけたかったわけでもない。

 本当にそう思ったから、そのまま口から出ただけだった。

「えっ……」

 果奈は一瞬目を丸くする。

 頬がみるみ
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  • もう一度、やり直せるなら 〜告白成功から始まる、それぞれの選択〜   5-11 理想の未来

     二日後の放課後。 駿は部活を終え、果奈と並んで歩いていた。 ◆◆◆ 今日は果奈が『どうしても行きたい場所がある』と言うので、その場所へ向かっている最中だった。 夕暮れが近づき始めた街は、昼間の熱気が少しだけ和らぎ、吹く風にもどこか初夏らしい匂いが混じっている。「行きたい場所があるって言ってたけど、どこに行くの?」 そう尋ねると、果奈はいたずらを企んでいる子供のような笑みを浮かべた。「着いてからの秘密」「教えてくれてもいいじゃん」「駄目」 くすくすと笑う果奈の横顔を見ていると、自然と頬が緩む。 こうして隣を歩くだけでも楽しかった。  学校から十分ほど歩いた頃、公園の入口へと辿り着く。「ここ?」「うん」 果奈は嬉しそうに頷くと、そのまま公園の奥へと歩き出したので、その後を追う。 やがて木々の間を抜けた先で――思わず足が止まった。「うわ……」 思わず声が漏れる。 そこには一面の紫陽花が広がっていた。 青。 紫。 白。 淡い桃色。 無数の花々がライトアップされ、幻想的な光景を作り出している。 昼間に見る紫陽花も綺麗だが、夜の光に照らされた紫陽花はまるで別物だった。 静かで。 優しくて。 少しだけ夢の中みたいだった。「凄い数の紫陽花。学校の近くの公園にこんな所があるなんて知らなかった」「私も去年知ったの」 果奈が紫陽花を見つめながら言う。「友達に誘われて見に行って、あまりにも凄くて感動しちゃった」 その声はどこか懐かしそうだった。「だからね――」 果奈が少しだけ視線を落とす。

  • もう一度、やり直せるなら 〜告白成功から始まる、それぞれの選択〜   5-10 確実に進んでる

     次の日の放課後。 直己は美生と買い物する為、待ち合わせ場所に待っていた。  ◆◆◆ (今日は絶対に待たせない) 前回は島内さんよりも遅く到着してしまい、『気にしなくていいよ』と笑ってくれたけれど、その優しさに甘えたくはなく、今日は十二分に余裕を持って家を出た。 スマホで時計を見ると、待ち合わせ時間まではまだ十分ある。(これなら大丈夫だろ) そんなことを考えながら待っていた数分後。 「鈴木君」 聞き慣れた優しい声が耳に届き、振り向くと、島内さんが歩いてくる。「待たせてしまってごめんね」「俺もさっき着いたばっかだから大丈夫」 本当は少し前から待っていたけど、それを言えば島内さんはきっと気を遣ってしまう。 だから、それくらいの嘘がちょうど良かった。「それじゃあ、行きますか」 ただ島内さんよりも早く到着しただけなのに、これなら今日は上手くいきそうだと思った。 その勢いに乗れたお陰か、前回は買い物の時では会話が弾まなかったが、今回は駿の話題などで盛り上がり、会話が自然と弾み、いい雰囲気のまま、買い物を終えることが出来た。 買い物を終え、島内さんと共に駿の家へ向かう。 夕暮れの風が心地よく吹き抜ける。 前回は沈黙が気まずく感じた帰り道だったけれど、今日は違った。 歩幅も自然と揃い、会話も途切れない。 そんな穏やかな空気の中、島内さんがふと思い出したように口を開いた。「そういえば、もうすぐ期末テストだけど、鈴木君は勉強してる?」「まだやってない。テスト勉強は1週間前に少しずつ手をつけ始めて、テスト前日に徹夜するって感じ」 島内さんは思わず目を丸くした。「テスト当日大丈夫なの?テスト中に眠くなったりしない?」「テストの日って早く帰れる

  • もう一度、やり直せるなら 〜告白成功から始まる、それぞれの選択〜   5-9 力になる

     大会会場へ到着すると、果奈は荷物を自分の席へ置き、先輩と一緒にウォーミングアップを始めた。◆◆◆ 県大会へ駒を進めたのは、私と先輩の二人だけで、他の部員たちは学校でいつもどおり練習に励んでいる。 ウォーミングアップを終え、開会式が始まる。 県内各校の選手たちが一堂に集まり、会場は独特の緊張感に包まれていた。 開会式が終わると、間を置かずにトーナメント戦が開始する。 試合順が遅く、ただ座って待っているだけだと緊張ばかりが膨らんでしまう。(身体を動かそう) そう決めて、体育館の周りをゆっくりと走り始める。 一定のリズムで足を運ぶ。 呼吸を整えながら走っていると、少しだけ気持ちも落ち着いてきた。 その途中、ふと観客席へ視線が向く。「……」 無意識に視線が人混みを追ってしまう。 もしも、なんてことはない。 そう分かっているのに、小さな期待だけがどこかに残っていた。 その時、名前を呼ぶアナウンスが体育館へ響く。「――早川果奈選手」 小さく息を吸い、表情を引き締めた。(よし) 迷いを振り払うようにコートへ向かう。 初戦。 立ち上がりは思うように身体が動かず、苦しい展開が続いたけど、中盤から少しずつリズムを取り戻し、得意のラリーへ持ち込み、相手を左右へ揺さぶる。 一点。 また一点。 積み重ねるごとに身体も心も軽くなっていき、そのまま流れを渡すことなく初戦を勝ち切った。 勝利報告した後、観客席に戻る時も誰かを探すように辺りを見渡しながら戻った。 その後。 接戦の末に二回戦を突破し、地方大会出場まで後一歩へと迫り、三回戦に向けて準備をしていた。 そんな最中、

  • もう一度、やり直せるなら 〜告白成功から始まる、それぞれの選択〜   5-8 支えられて

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  • もう一度、やり直せるなら 〜告白成功から始まる、それぞれの選択〜   5-7 約束と決意

     その日の夜。 自室で駿は、ベッドに腰掛けながら果奈と電話をしていた。◆◆◆「明日、果奈の県大会だったね。俺も部活をサボってでも見に行きたかったけど、大会を近くに控えてるから、さすがに行けないな」 すると電話の向こうから、少し強めの声が返ってくる。「もし、部活サボって大会見に行きたら、駿と別れるよ」「えぇっ!?」 思わず大きな声が出た。「そこまで言う?」 果奈は小さく笑う。「言うよ。駿が今までどれだけ頑張ってきたか知ってるし、そんな努力を自分から無駄にするようなことだけはしてほしくない」 その声は優しく、怒っているわけでも、意地悪を言っているわけでもない。 俺の夢を大切に思っているからこその言葉だった。 その気持ちが伝わってきて、自然と笑みが溢れる。「……分かった。ちゃんと部活に行くよ。」「うん、その代わりじゃないけど、ちゃんと守ったら、駿の大会、応援しに行くから」「本当に!?」 嬉しさのあまり、小さくガッツポーズを作ってしまう。 本当は来週、自分から誘おうと思っていたからこそ、果奈の方からそう言ってくれたことが何より嬉しかった。「駿がちゃんと守ったらの話だからね。あと、行けるとしたら、土曜日かな」「分かった。果奈が来るなら、もっと練習頑張るよ」 電話の向こうで、くすっと笑う声が聞こえる。「私関係なしに頑張りなさい」「はい……」「ちょっと早いけど、明日大会あるし、もう寝るね」「分かった。大会頑張って」「うん、おやすみ」「おやすみ」 通話が切れ、静かになった部屋で、スマホの画面だけが淡く光っていた。 そして、ベッドへ倒れ込むように横になる。(果奈が応援に来てくれる。)

  • もう一度、やり直せるなら 〜告白成功から始まる、それぞれの選択〜   5-6 背中を追って

     駿が部活をしている間、美生は結と共に買い物に出掛けていた。 ◆◆◆ 休日の館内は多くの家族連れや学生で賑わい、楽しそうな笑い声があちこちから聞こえてくる。 そんな穏やかな空気の中、肩を並べながら洋服店へ足を運んでいた。「美生姉さん、この服似合ってます?」 結ちゃんは一着のブラウスを胸元に合わせながら、小さく首を傾げる。「うん、似合っているよ。でも、私はこっちの方が結ちゃんに似合っていると思う」 ラックから淡い色合いのブラウスを取り出して差し出す。 結ちゃんは受け取ると鏡の前へ立ち、二着を見比べ始める。「確かに、美生姉さんが選んでくれた方が柄も可愛いし、私にも似合ってる気がします」「じゃあ、それにする?」「はい!」 迷いなく頷く結ちゃんを見て、こっちまで自然と笑顔になる。 こうして一緒に買い物へ来ることも、今では当たり前になっていた。 昔は一方的に結ちゃんの面倒を見ることが多かったけど、今は違う。 洋服を選び合ったり。 他愛ない話で笑い合ったり。 本当の姉妹のような時間が、少しずつ増えていた。  服を買った後、近くにあるカフェに寄る。 窓際の席へ腰掛けると、店内にはコーヒーの香ばしい香りが広がっていた。 運ばれてきたアイスカフェオレを一口飲んだ結ちゃんは、目を丸くする。「このカフェオレ、凄く美味しいです」「気に入ってくれて良かった。私もたまにこのカフェオレが飲みたくて、このカフェに行くんだよね」「今度、友達にこのカフェ紹介しますね」 二人でそんな何気ない話をしながら、ゆっくりと時間を過ごしていく。 学校のこと。 最近流行っているお店のこと。 結ちゃんの友達の話。 どれも特別な話ではない。 そ

  • もう一度、やり直せるなら 〜告白成功から始まる、それぞれの選択〜   2-2 幸せな余韻

     果奈に流されるまま、駿は映画館へと向かった。 ◆◆◆ 映画館は休日ということもあり、様々な人たちで賑わっていた。 「私、観たい作品があるのだけどそれでもいい?」「いいけど、どんな作品?」「恋愛もの。ラスト泣けるって友達が言ってたから気になってたんだよね」「そうなんだ」 特に観たい作品も無かったし、一緒に見られればそれでいいと思い、この作品を観ることにする。  作品のタイトルは『失いたくない』。  主人公がヒロインへの告白から始まる恋。 想いが通じ合い、幸せな結末へ向かう筈だったが、ヒロインが通り魔に刺されてそのまま死んでしまう。 絶望していた主人公がヒロインの真実

  • もう一度、やり直せるなら 〜告白成功から始まる、それぞれの選択〜   2章 様々な初めて 2-1 初めてのお出かけ

     週末。 午前中の部活を終え、駿は家に戻るとすぐシャワーを浴びた。 ◆◆◆ 髪を洗って、流して。  念のためもう一度首元にシャワーを当てる。 絶対に汗の匂いが残らないよう、念入りに身体を綺麗にする。 (気にしすぎだろ) そう思ったが、手は止められない。   今日は、果奈と二人きりで出かける。 考えるだけで、落ち着きを保てなくなっていた。   シャワーを終え、家にある姿鏡の前で服を広げる。 候補が何着も並んでおり、着てみては脱ぎ、鏡を見る。 しっくりくるやつもあったが、すぐに違う気がして、また着替え直す。「……何やってんだ、俺」 服選びがただの繰り返し作業へ

  • もう一度、やり直せるなら 〜告白成功から始まる、それぞれの選択〜   1-2 夢みたいな現実

     帰り道。 駿は告白が成功したことを実感できないまま、家に向かって歩いていた。 ◆◆◆ 果奈と途中まで一緒に帰っていたのだが、正直何を話したのか覚えてない。 それどころか、ついさっき告白が成功したという事実を、まだうまく受け止めきれずにいた。 夕暮れの街を歩きながらも、足元がどこか浮ついている。 通り過ぎる自転車の音も、信号機の電子音も、妙に遠かった。  頭の奥では、さっきの声が何度も繰り返されている。  ――「……いいよ」 あの小さな返事。  照れたような表情。  夕陽に染まった頬。 思い返すたび、胸の奥が熱くなるが、同時に、現実感が薄かった。 (……本当に、付き

  • もう一度、やり直せるなら 〜告白成功から始まる、それぞれの選択〜   1章 変わる日常 1-1 全ての始まり

    「早川さん……俺と、付き合ってください」 放課後の教室には、もう二人しか残っていなかった。 今日は全ての部活がなく、窓の外では、下校する生徒たちの声が遠くに混ざり合っている。 けれど、その喧騒はガラス一枚隔てただけで別世界みたいに遠かった。 上野高校二年四組。 夕陽が斜めに差し込み、机の影を長く床へ伸ばしている。 オレンジ色に染まった教室の中で、浅村駿(あさむら・しゅん)の声だけが、不自然なくらいはっきり響いた。 ◆◆◆ 喉が熱い。 心臓がうるさい。 指先にはじっとり汗が滲んでいた。「……」 彼女、早川果奈(はやかわ・かな)は、一瞬だけ目を見開き、何かを隠すみた

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