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2-2 幸せな余韻

مؤلف: 青サバ
last update تاريخ النشر: 2026-06-21 19:35:30

 果奈に流されるまま、駿は映画館へと向かった。

    ◆◆◆

 映画館は休日ということもあり、様々な人たちで賑わっていた。

「私、観たい作品があるのだけどそれでもいい?」

「いいけど、どんな作品?」

「恋愛もの。ラスト泣けるって友達が言ってたから気になってたんだよね」

「そうなんだ」

 特に観たい作品も無かったし、一緒に見られればそれでいいと思い、この作品を観ることにする。

 作品のタイトルは『失いたくない』。

 主人公がヒロインへの告白から始まる恋。

 想いが通じ合い、幸せな結末へ向かう筈だったが、ヒロインが通り魔に刺されてそのまま死んでしまう。

 絶望していた主人公がヒロインの真実と自分と彼女の変化を知り、前を向いたところで終わりを迎える。

 そんな作品だった。

 上映が終わり、エンドロールの音楽が流れる中、しばらく動けなかった。

 胸の奥に、まだ物語が残っている。

 映画の中の悲しみが、そのまま身体のどこかに沈んでいた。

 

 少しは落ち着き、隣を見ると、果奈はスクリーンを見上げたまま、どこか納得のいかない顔をしていた。

「不満そうだけど、面白くなかった?」

 果奈は少し考えるように視線を泳がせた。

「面白くなかったわけじゃないんだけど……なんかイマイチだったんだよね」

 勝手に果奈が好きそうなストーリーだなと、勝手に思い込んでいたから、反応を見て少し驚く。

「そう?俺は凄く面白かったし、特にラストの流れは見ていて感動した」

「確かに最後の方は感動的だったけど、唐突過ぎる気がするのよね」

 言葉を選びながら更に続ける。

「彼女の人生が残り少ないとかだったら感動的な結末になっていたと思う」

 映画の構成。

 伏線。

 主人公の心情。

 納得のいってない割に、感想は思った以上に細かくて、真剣だった。

 見ているだけで、少し笑ってしまう。

「なに?」

「いや。ちゃんと観てたんだなって」

「失礼じゃない?」

「褒めてる」

 そのやりとりだけでも心地よかった。

 映画館から出たところで、果奈がふと立ち止まる。

 さっきまでの軽い空気とは違う声だった。

「……でも」

 視線は前を向いたまま。

「この映画みたいに、もし駿を突然失ったら、私も主人公みたいになっちゃうのかな」

 声が静かで、冗談ではないことがすぐに分かった。

 映画の余韻なのか。

 それとも、それだけじゃないのか。

 少し考えたが、自然と口は開いていた。

「俺は絶対に果奈の前から居なくならないから、心配しなくても大丈夫だよ」

 約束なんて簡単にできることじゃないし、未来なんて何が起こるか分からない。

 だけど。

 今は果奈を安心させたい。

 その気持ちだけは確かだった。

「……ありがとう」

  果奈は果奈はふっと力が抜けたように笑った。 

 その笑顔に胸も静かにほどけていく。

 ショッピングモールを出ると、五時を過ぎており、帰宅することにした。

「それじゃ、また学校で」

 そう言って歩き出そうとした時。

「待って駿!」

 果奈に呼び止められる。

「どうしたの?」

「私たち、まだLINE交換していなかったから、交換しよう」

 確かにそうだった。

 付き合っているのに、今さら気づく。

「いいよ」

 念願の果奈のLINEを手に入れる。

 スマホの画面越しの“早川果奈”という表示。

 その文字だけでさえも、妙に嬉しかった。

「改めてよろしく果奈」

「うん、よろしく」

 再び別れて家に向かって歩こうとすると、 服の袖が、くい、と引かれる。

「!?」

 驚いて振り返ると、果奈が指先でそっと袖を掴んでおり、少しだけ視線が泳いでいた。

「何度も引き留めてごめんね」

「い、いいよ……」

 鼓動がまた速くなる。

「最後に、一つだけいい?」

「い、いいよ」

 何かやらかしたのかな?と勝手に思いながら、果奈の言葉に耳を傾ける。

「また、デートしようね」

 とびっきりの笑顔と予想もしてなかった次のデートの話に、言葉の意味が遅れて胸に落ちた。

 次も。

 また。

 今日で終わりじゃない。

 嬉しさのあまり、いい意味でトドメを刺されたような感覚に襲われる。

「うん、次は俺が果奈をちゃんとエスコートするから、楽しみにしていて」

「分かった。楽しみにしてるね」

 果奈の「また、デートしようね」という言葉を聞いて今回のデートは成功したのだと確信した。

 その日の夜。

 今日のデートの余韻に浸りながら、ベッドに寝転がる。

 今日の会話。

 映画。

 カフェ。

 袖を引かれた感触。

 全ての出来事が頭の中を駆け巡っていた。

 そんな時だった。

 ――ドンドンドンッ。

 勢いよくドアが叩かれる。

 人が上機嫌なのになんだよと思いながらもドアを開けると、そこには結が居た。

「いきなり、ドアを叩いてどうしたんだよ」

「だって、兄さんが何回もドアをノックしているのに出てくれないのが悪いんでしょ」

「そんなにノックしていたの?」

「一分くらいはノックしてました!」

 結は相当怒ってるみたいで、所々発言が強い。

「ご、ごめんなさい」

 邪魔されたのはムカついたが、申し訳なさが勝ち、素直に謝るしかなかった。

「今度から気を付けてください」

「はい」

  結はため息をつく。

「そういえば、次いつ美生姉さんと買い物に行ってくるの?」

「水曜日かな。日用品でなくなりそうな物とかあるの?」

「シャンプーがきれそうだから買って来て」

「分かった」

 家庭事情もあり、週に一度、美生と夕飯の買い物だけではなく、日用品も買う買い物があった。

 日用品も一緒に買うとなると、凄い量になるので、同行していた。

 

 これで、もしシャンプーを買い忘れたら、結がガチギレすると思い、シャンプーを一番上に大きくメモを取る。

 その後、他の必要な日用品をメモして眠りにつくことにした。

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  • もう一度、やり直せるなら 〜告白成功から始まる、それぞれの選択〜   3-8 報告

      家に帰った後、駿は自室のベッドに腰を下ろした。◆◆◆ 大きく息を吐く。 窓の外では夕暮れが少しずつ夜へと変わり始めていた。 果奈と話し、ちゃんと向き合えた。 それだけのことなのに、張り付いていた重たい何かが嘘みたいに軽くなっている。 学校へ行けば色々あるかもしれない。 それでも。 果奈の笑顔を思い出すだけで、不思議と大丈夫な気がした。 そんなことを考えながらスマホを取り出し、美生と直己へLINEを送る。『果奈とちゃんと話せた。上手くいった』 送信してから数十秒も経たないうちに、美生から返信が来た。『良かった』 短い一言だけど、その言葉だけで本当に心配してくれていたことが伝わってくる。『果奈ちゃん、次の月曜日から学校に来れそう?』 今日の果奈の表情を思い出した。 肩を震わせながら泣いていた姿。 そして、最後に見せてくれた笑顔。 あの笑顔なら大丈夫だと思えた。『果奈は必ず来るよ』 そう返信すると、すぐに安心したような表情のスタンプが送られてきた。 それから改めてメッセージを打つ。『ありがとう』『美生の言葉がなかったら、果奈とちゃんと話せなかったと思う』  少しして返信が来る。『私の言葉もあったかもしれない』『でも一番は駿君の果奈ちゃんへの想いだよ』『多分、私が何もしなくても、そのうち駿君は果奈ちゃんのところへ行ってたと思う』 その言葉が少し不思議だった。『何でそう思ったの?』 そう送ると、とてもシンプルな返事が来た。『駿君が悩んでる様子を見れば分かるよ』『それだけで?』 思わず聞き返す。『それだけで分かるよ』

  • もう一度、やり直せるなら 〜告白成功から始まる、それぞれの選択〜   2章 様々な初めて 2-1 初めてのお出かけ

     週末。 午前中の部活を終え、駿は家に戻るとすぐシャワーを浴びた。 ◆◆◆ 髪を洗って、流して。  念のためもう一度首元にシャワーを当てる。 絶対に汗の匂いが残らないよう、念入りに身体を綺麗にする。 (気にしすぎだろ) そう思ったが、手は止められない。   今日は、果奈と二人きりで出かける。 考えるだけで、落ち着きを保てなくなっていた。   シャワーを終え、家にある姿鏡の前で服を広げる。 候補が何着も並んでおり、着てみては脱ぎ、鏡を見る。 しっくりくるやつもあったが、すぐに違う気がして、また着替え直す。「……何やってんだ、俺」 服選びがただの繰り返し作業へ

  • もう一度、やり直せるなら 〜告白成功から始まる、それぞれの選択〜   1-4 大切な時間と変化

     駿が倉庫裏に着いた時、早川さんの姿はまだなかった。 ◆◆◆ 夕焼けに染まった校舎の影が、静かに地面へ伸びており、風が吹くたび、木々がかすかに揺れていた。 スマホの時間を確認するが、まだ数分しか経っていない。  本来なら、早川さんが所属するバドミントン部はテニス部よりも早く終わって、待っているはずだった。(……練習、長引いてるだけだよな) そう思おうとするのに、別の考えが勝手に浮かんでくる。  疑いたくないのに、疑ってしまう。(何考えてんだよ、俺) 頭では分かっている。けれど、不安は理屈じゃ止まらない。 胸の奥に、小さな黒いものが広がっていく。   その時だった。 「

  • もう一度、やり直せるなら 〜告白成功から始まる、それぞれの選択〜   1-3 膨らむ期待

     翌朝。 駿は目覚ましが鳴る少し前に、自然と目が覚めた。 ◆◆◆ カーテンの隙間から差し込む朝の光が、やけに眩しい。    ぼんやり天井を見上げながら、小さく息を吐く。    胸の奥が落ち着かない。だけど、嫌な感覚ではなかった。 むしろ逆だ。 何かが始まってしまった後特有の、ふわつくような高揚感。  昨日の放課後。  夕陽。  震える声。  思い返した瞬間、身体が熱くなる。 枕に顔を埋めたくなるくらい恥ずかしいのに、何度も思い返してしまう。 (……付き合ってるんだよな、俺たち) まだ実感は薄いけど、昨日の出来事を頭の中で繰り返すたび、少しずつ現実が輪郭を持

  • もう一度、やり直せるなら 〜告白成功から始まる、それぞれの選択〜   1-2 夢みたいな現実

     帰り道。 駿は告白が成功したことを実感できないまま、家に向かって歩いていた。 ◆◆◆ 果奈と途中まで一緒に帰っていたのだが、正直何を話したのか覚えてない。 それどころか、ついさっき告白が成功したという事実を、まだうまく受け止めきれずにいた。 夕暮れの街を歩きながらも、足元がどこか浮ついている。 通り過ぎる自転車の音も、信号機の電子音も、妙に遠かった。  頭の奥では、さっきの声が何度も繰り返されている。  ――「……いいよ」 あの小さな返事。  照れたような表情。  夕陽に染まった頬。 思い返すたび、胸の奥が熱くなるが、同時に、現実感が薄かった。 (……本当に、付き

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