ログイン三浦家としても、何よりも梨花の体を第一に考えていたため、そう言われてしまえばそれ以上固執することはできなかった。それに、竜也の言い分には付け入る隙が一つもない。真里奈は彼がこれほど梨花を大切にしている様子を見て、ますます安心感を深めた。「そうね、あなたの配慮には感謝するわ」智子は密かに胸を撫で下ろした。この三浦家の人々、お見舞いだけならまだしも、梨花と自分のひ孫をまとめて連れ去ろうとするなんて。時間もちょうど良いため、彼女は笑顔で提案した。「ちょうどお昼ですし、ご一緒に食事でもいかがですか?」「そうですね」梨花も穏やかな声で真里奈に言った。「真里奈さんと一緒にお食事するなんて、本当に久しぶりです」その言葉に、真里奈の目頭が熱くなった。彼女は顔を背けて涙をこらえ、何度か頷いた。「ええ、ええ」三浦家の人々も、もちろん異存などあるはずがない。みんなは智子に案内されて席に着いたが、海人と竜也は数歩遅れて歩いていた。海人は容赦なく彼の企みを暴いた。「さっきのあれ、優真先生の指示じゃないだろう?」こいつは本当に面の皮が厚い。妹を独占して、一秒たりとも手放そうとしない。子供の頃からずっとこうだった。そのせいで、梨花はずっと自分に嫌われていると思い込んでしまったのだ。しかし竜也は図星を突かれても動じることなく、むしろ薄く笑みを浮かべた。「先生に聞いてみればいい」「……」海人が聞けるわけがない。それに、優真は梨花のためなら、竜也の嘘に口裏を合わせるに決まっている。海人が言い返せないのを見て、竜也はさらに口角を上げた。「そもそも、俺に感謝すべきだぞ」海人は鼻を鳴らした。「妹を奪ったことに?」「俺のおかげで……」竜也は彼を見やり、これ以上ないほど自慢げに言った。「お前はおじさんになれるチャンスを得たんだからな」「自慢する相手がいないのか?」海人は冷ややかな笑みを浮かべ、憎まれ口を叩いた。「世界中で、俺の妹がお前の子を妊娠してるって、知らないのはお前だけだぞ」「?」竜也は眉を上げた。「お前も知ってたのか?」つまり、自分が最後に知ったということか。海人はさらに追い打ちをかけた。「俺だけじゃない、家族全員知ってる」実のところ
梨花だけでなく、智子までがどこかおかしいと感じ始めていた。最初は、三浦家の人間がこれほど多くの土産を持って訪れたのは、梨花が真里奈の足の治療をしたことへの感謝の印だと思っていた。しかし今、彼らの言動の端々から、智子は違和感を覚えた。この一家の態度は、とても普通のお見舞いには見えない。どちらかと言えば……まるで嫁の実家の人間が、娘の未来の嫁ぎ先に乗り込んで、マウントを取りに来ているかのようだ。三浦家の人がこれほど真摯に梨花に接してくれることに、智子はもちろん嬉しく思っている。だが、その喜びも束の間である。敬子がしばらく智子を見つめた後、ニコニコと口を開いた。「お体の具合はいかがですか? 海人から、少し前に足を捻挫されたと聞きましたが」単なる世間話だと思い、智子は穏やかに微笑んだ。「ええ、うっかり挫いてしまって……」もうほとんど治ったと言いかけようとしたその時、敬子が太腿をポンと叩き、心配そうに、しかしどこか嬉々として声を張り上げた。「あら、それはいけませんわ!捻挫とはいえ、完治には百日かかると言いますし、特に私たちのような年寄りは、養生が何より大切です」敬子が真剣な表情で語りかけるので、智子が相槌を打とうとすると、彼女は再び梨花に視線を移して言った。「梨花さんは身重でしょう?ここにいればどうしてもあなたの手を煩わせてしまいますし、かえってお体に障ります。そこで提案なのですが」敬子は一瞬言葉を切り、それから笑顔で言った。「しばらく梨花さんを、清水苑にお招きできないでしょうか?家には人が大勢おりますから、皆でお世話できます」まさかそんな展開になるとは思わず、智子は呆気にとられた。梨花はさらに驚き、無意識に三浦家の他の人たちを見渡した。真里奈がずっと自分に優しくしてくれるのは知っているが、敬子までこれほど熱心に誘ってくれるとは、恐縮するばかりだ。これが真里奈一人の意向なのか、それとも三浦家全員の総意なのかを知りたい。すると、彼女が視線を向けた瞬間、三浦家の人々の視線も一斉に彼女に注がれた。真里奈は娘の顔に浮かぶ戸惑いを見て、心が温かくなるのを感じ、優しく語りかけた。「もちろん、あなたの気持ちが一番大切よ。でも、みんなあなたが来るのを望んでいるのよ」「そうだよ」海人
海人は梨花と接した時間が最も長いだけに、彼女の表情に浮かぶ戸惑いを見て、母に目配せをした。真里奈は梨花に会いたい一心で来ており、元気そうな姿を見て、ただただ喜びに浸っていたため、細かいことなど気にも留めていなかった。しかし海人の視線を受け、ようやく彼女が緊張していることに気づいた。真里奈は慌てて手を差し出した。「千鶴たちがあなたのお見舞いにくるって聞いたものだから、ちょうど暇だし、一緒に来たのよ」「お気遣いありがとうございます、真里奈さん」梨花はその温かさに心を和ませ、真里奈の隣に腰を下ろした。そして再び彰俊と敬子に視線を移し、一人ずつ丁寧に挨拶をした。「三浦様、奥様、初めまして」その他人行儀な呼び名に、二人の老人は胸を鋭くえぐるような痛みを覚えた。彰俊はまだ持ちこたえているが、敬子は目元を赤くし、思わず梨花に飛びつこうとして立ち上がった。それを千鶴がすかさず引き止め、低い声で釘を刺した。「来る前にちゃんと約束したでしょう。お忘れですか?」「うっ……」敬子は梨花の顔色が以前よりずっと優れないのを見て、諦めて座り直した。本来、千鶴は自分と真里奈だけで来るつもりだったが、淳平がその場に居合わせ、何が何でも行くと言い張った。さらに執事が手土産を準備している最中に話が漏れてしまったのだ。その結果が、この状況である。来る前に敬子と交わした約束はただ一つ。感情を殺し、決して取り乱さないことだ。一時の感情でごちゃんを刺激し、取り返しのつかない事態を招くわけにはいかない。だが、長年行方不明だった本当の孫娘が目の前にいるのに、心の動揺を完全に抑え込むことなど、到底無理な話だ。智子は敬子が突然興奮した理由を知らないが、彼女が落ち着いたのを見て助け舟を出した。「真里奈さんたちがただ気にかけてるだけじゃないよ。ご覧なさい、あれ全部お土産よ」梨花は智子の視線を追って玄関の方を見た。脇の棚の上には、高価そうな包みのギフトボックスが山のように積み上げられている。梨花は驚きを隠せず、真里奈を見た。「真里奈さん、来てくださっただけで十分嬉しいです。こんな高価な贈り物は受け取れません……」何の見返りもなしに受け取るわけにはいかない。しかし、彼女が言い終わらないうちに、反対側に座っている千鶴が彼女の手をポンと
梨花が振り返ると、そこにいるのは優真だった。彼はバツが悪そうに鼻をさすり、穴があったら入りたいという顔をした。一方、竜也は面の皮が千枚張りで、ただ軽く眉を上げ、「先生、その言い方だと、俺が悪徳教師みたいじゃないか」と呟いた。優真は彼の言葉に取り合わなかったが、その顔には明らかに「違うとでも?」と書いてある。梨花は照れ隠しに表情を引き締め、竜也の手を借りて立ち上がった。「先生、なぜ今日いらしたんですか?綾乃さんの具合は?」本来なら朝食後、綾乃の見舞いに行こうと考えていたのだ。しかし優真はどうしても許してくれず、ただ自分の体を大事にするよう諭すばかりだった。もし見舞いに来たら破門だ、と言わんばかりの剣幕なのだ。「綾乃の方はもう心配ない。ただお前のことが気掛かりでな。様子を見てこいと急かされたんだ」優真はそう言うと、数歩近づいて別の椅子に腰を下ろし、手を差し出した。「診せてみろ」梨花はもちろんその意味を理解し、一瞬躊躇したが、手首を差し出した。「大したことありませんよ。しばらく休めば……」優真は指が彼女の腕に触れた瞬間、表情が曇り、顔を上げた。梨花は気まずそうに目を逸らした。優真は言葉を失った。この子は、綾乃の毒殺未遂のことで心労が祟り、こんな状態になってしまったのだ。端から見れば、優真夫婦は梨花を実の娘のように甘やかしていると言われる。しかし、一人息子が海外にいる間、身の回りの世話を焼き、寄り添ってくれたのは他ならぬ梨花だ。優真は気持ちを落ち着け、丁寧に脈診を終えると、ゆっくりと手を離した。「薬は飲んでいるか? 処方は?」「トウジン、ソウキセイ、オウギ……」梨花は生薬の種類と分量を包み隠さず伝え、唇を引き結んで優真の顔色を窺った。彼女は篤子も怖いが、優真にはもっと頭が上がらない。ただ前者は恐怖、後者は敬意によるものだ。優真は少し考え込んで、「それぞれの分量を、あと四分の一ずつ増やしなさい」と言った。「はい」梨花は即答した。少しでも渋れば叱られると思ったからだ。以前なら、体を粗末にしたと指をさして説教されるところだが、意外なことに、今日の先生は小言一つ言わなかった。処方を書き直すと、彼は竜也とお茶を飲みながら仕事の話を始めた。和やかだが、どこか奇妙な空気が漂っている
真里奈は彼に素っ気ない態度を崩さず、千鶴にだけ問いかけた。「じゃあ、どうするのがいいと思う?」「まずは……様子を見に行くのが先だと思います」母親が梨花のことをどれほど気にかけているか、千鶴はよく分かっている。「体調が落ち着いて、お腹の赤ちゃんも安定してから、タイミングを見て話すつもりですが、どう思います?」昨夜、顔色の悪い梨花の様子が頭から離れず、千鶴はほとんど眠れなかった。万が一のことがあったらと思うと気が気ではなかったのだ。今朝、竜也に確認して、状態は悪くないと聞いてようやく少し安心した。だからといって、いきなり訪ねていって爆弾のような事実を投げるわけにもいかない。自分たちが血のつながった姉妹だといきなり告げるには重すぎる。三浦家の人たちにとって、行方の分からなかった末娘が見つかったのは、この上ないめでたい事である。知らせを聞いて紅葉坂から急いで駆けつけた祖父母たちは、その場ででも黒川家へ出向いて名乗り出たい勢いだったほどだ。しかし、梨花にとってはどうか。彼女は一人で苦しい時期をすべて乗り越えてきた。今では私生活も満ち足り、仕事でも名が知られる存在になっている。もう三浦家の助けがなくても生きていけるのだ。助けにもならないのに、かえって負担をかけるような真似はできない。自分のために真里奈が長年不自由な体になったと知れば、彼女の性格からして強く自責するはずだ。短期間にまた感情が激しく揺れれば、子供への影響も心配になる。真里奈も当然、何より梨花の体調を優先している。「分かった。じゃあ、ごちゃんの好きなものを多めに用意して。智子さんへの贈り物も忘れずにね」まだ正式に名乗る段階でなくても、事情を知ったうえで初めて訪ねるのだ。ごちゃんのために、できる限りの体裁は整えたかった。「大丈夫です、もう手配してあります」千鶴はすでに準備を終えた。―――クリニックでは、和也が梨花の状況を知ると、迷わず長期休養を言い渡した。しばらくは仕事を離れ、安心して養生するようにと。朝食を済ませた梨花は、裏庭で日向ぼっこをしながらのんびり過ごしていた。足元ではユウユウが伏せて、時おり尻尾をゆっくり揺らしている。竜也が果物の皿を手に外へ出てくると、その光景が目に入った。彼は思わず足を止め、わずかに見入っ
黒川総合病院、特別室。昨夜、梨花が無事に帰宅したという知らせを聞いて、真里奈は張り詰めていた糸が切れたように、泥のように深く眠っていた。目を覚ますと、淳平と千鶴がベッドの脇に付きっきりで寄り添っていた。真里奈は淳平には目もくれず、長女の千鶴に痛ましげな視線を向けた。「ずっとここにいてくれたの?」「母さんのそばにいないと安心できませんわ」千鶴の目元には隠しきれない疲労の色が滲んでいるが、長年こうして過ごしてきた彼女にとっては慣れたことだ。真里奈の身支度を手伝い終えると、彼女にせがまれるまま昨夜の出来事を一部始終報告し始めた。全員無事に帰還したとはいえ、真里奈はやはり肝を冷やした。「あの子がたった一人で、あんな大男をねじ伏せたっていうの?」「ええ」千鶴は頷いた。彼女自身、この妹に対して密かに感心したのだ。三浦家の三姉弟は幼い頃から彰俊の厳命で護身術を叩き込まれてきた。だが、あの眼鏡の男も明らかに手練れだ。もし自分があの場にいたとしても、そう簡単に制圧することはできないだろう。あの銀の針を袖口に忍ばせた時、千鶴はそれに一縷の望みを託したに過ぎなかった。まさか梨花が本当にその針一本で自分の身を守り抜き、あまつさえ交渉の主導権まで握ってみせるとは、夢にも思わなかった。話している最中に、秘書の陽子がノックをして入室し、千鶴の耳元で何かを囁いた。千鶴はわずかに眉を動かすと、立ち上がって真里奈に言った。「お母さん、ちょっと仕事のトラブルみたいで、少し席を外します」「分かったわ」真里奈は疑いもしなかった。千鶴の仕事は特別で、機密事項も多い。三浦家の人間は皆、それに慣れている。病室を出て、陽子が扉を閉めた瞬間、千鶴の瞳からは先ほどまでの温かみが消え失せ、氷のように冷徹な光を宿していた。「桃子は流産した?」陽子は首を横に振った。「懸命に処置しているようですが、正直なところ厳しいかと。原口家はこちらの黒川総合病院にも連絡を寄越し、産婦人科の権威である金子教授に、転院を受け入れてほしいと懇願してきましたが、即座にお断りしました……」「もういいわ」千鶴は淡々と話を遮り、指示を下した。「配置している部下を帰らせて。しばらくあそこの監視はいらない。それと、この件はお母さんには内密にね」三姉弟







