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使徒と世界樹⑧

last update Last Updated: 2025-05-05 17:00:12

ヨハネさんの治める都市はあまり他の使徒と差異はなかった。

ただ、若干の違和感を覚えた。

この違和感が何なのかはこの後分かることになる。

街を歩いていると遠くの方に視線が動く。

すると本来見えないはずのものが視界へと飛び込んできたのだ。

雲だ。

別に見上げている訳でもないのに、なぜか遠くの方に雲が見える。

「もしかして気付いたかな?カナタ君」

「えっと……ここって空の上、だったりしますか?」

僕がそう言うとアレンさんも驚いたような表情を浮かべた。

歩いている感じもフワフワしたような感じはない。

「そう、ここは天空に浮かぶ空島なのさ。ヨハネの治める街は全て空の上なんだよ」

塔に行く前に寄り道しようとペトロさんの計らいで僕らは島の端まで歩く事になった。

島の端は近い距離でもなかったが、本当に浮いているのかどうか知りたい。

その興味本位からか誰も反対する者はいなかった。

島の端に到着すると、各々足取りはゆっくりになった。

「これは……凄い光景だね」

アレンさんが立ち止まり驚きと感動が入り混じったような声で視界に広がる景色を眺める。

僕らも足を止め眼下を眺めた。

視界に入ってきたのは雲と遥か遠くに見える地面だった。

本当に天空に浮かぶ大地にいるのだとその時初めて実感できた。

「空に浮かぶ大地……これが、神域なのね」

ソフィアさんも初めて見た光景に言葉が途切れ途切れになっている。

こんな光景は一生見る機会のないものだろう。

ファンタジーという感じがして僕は心

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