剣聖レオンハルトは強敵を前にして剣を握る手に力が入る。
四天王は高位魔族すらをも凌駕する力を持つ。剣聖と謳われる彼も手を抜ける相手ではなかった。「まさかここまで追い込まれるとは……吾輩が出なければならんとは思わなかったぞ」
「そうか」「そちらは剣聖だな?吾輩はロック・ノック。卑しくも四天王の肩書きを持つ」「……剣聖レオンハルト・レインだ。相手にとって不足はない」レオンハルトが構えを取るとロックもまた両手を広げ足元に魔法陣を浮かべる。ロック・ノックは完全に魔法使いタイプの魔族だ。肉弾戦は得意としていない。対するレオンハルトは近距離での戦闘を得意とする。距離を詰められなければ勝ち目はない。レオンハルトは一気に駆け出すと聖剣を横薙ぎに振るう。
「シャイニングセイバー!」
「光属性の対抗策は用意しておるぞ!デビルミラー!」ロックが前方に悪魔を模した装飾が施された鏡を出現させるとレオンハルトの斬撃は反射する。「厄介な!ハァッ!」
返ってきた自分の技を斬り捨てるように弾くと次の攻撃モーションに移る。「クロスセイバー!」
十字に放たれる斬撃はロックの魔法を打ち砕き勢い衰えぬまま突き進む。ロックがニィと口角を上げるとその斬撃を全身で受け止めた。ローブが斬り刻まれ複数の裂傷から血が吹き出した。
「防ぐ事もせんとは……戦いを諦めたか?」
「カッカッカッ!ただ無防備に受けたわけではないぞ?我が身に受ける痛みは相手に返る。イビルリバース」ロックが魔法名を口にした途端レオンハルトの身体から血が吹き出した。
同時に痛みも襲ってくる。「ガハッ……何だ今のは!?」
「カッカッカッ!吾輩が受ける傷は全て己に返ってくるぞ?さて、どうする剣聖!」レオンハルトは下手に攻撃できないと分かると剣を構えて睨みつける。攻撃が全て跳ね返る魔法「さて、お話はここまでにしましょう。あまり長引かせてはリンドール様に叱られてしまいますので」「そうか。ならここで死ね!シャイニングセイバー!」レオンハルトは即座に行動を開始する。光を帯びた剣を横薙ぎに振るい、光の斬撃を飛ばすとゾラは背中の翼を広げて高く飛び上がりそれを回避した。「おっと危ない。堪え性のない方ですね」「黙れ。光の封剣!」レオンハルトは片手を空に掲げる。するとレオンハルトの頭上に三本の光剣が出現した。「ほう?ワタクシと似たような魔法を使うのですね」「……やれ!」手を前に突き出すと光剣はゾラを貫かんと勢いよく飛んでいく。「無駄ですよ、黒き鋼の刃」同じようにゾラの頭上にも黒色の剣が出現し、飛んでくる光剣を弾いた。「それが黒翼の剣と呼ばれる所以か」「ええ、まあそういうことです。ワタクシはあまり肉弾戦を得意としておりませんのでこの魔法で対抗させて頂きましょう」三本の光剣と対消滅した黒い剣を今度は何十という数生み出した。「なっ!!」「フフフ……避けられますか?」上から右から左からと縦横無尽に飛来する黒剣をレオンハルトは聖剣を巧みに操りながら全てを捌いていく。最後の一本を捌き切るとそのまま攻勢に出た。「舐めるな!ライトネスブラスト!」「無駄ですよ!ダークネスブラスト!」お互いの掌から放たれた光線は中央でぶつかり合うと衝撃波を撒き散らしながら対消滅した。「ほう?人間にしてはなかなか……ではワタクシも本気でやらせて頂きます。黒き鋼の刃」「さっきまでは手を抜いていたと?舐めた真似を&he
レオンハルトは後方に跳び剣を上段に構えた。「なんだ?まさか自分が傷を負うのも躊躇わんつもりか?」ロックは距離を取ったレオンハルトを訝しみ、言葉を投げ掛けた。「いや?この技ならば私にダメージは返ってこない」「カッカッカッ!それは無理というものよ!吾輩の魔法を破ることなどできんぞ!」ロックは再度イビルリバースを発動するとニヤニヤとした笑みを浮かべる。それを見てレオンハルトも鼻で笑った。「フッ……確かにその魔法は脅威だ。しかし我が剣は聖剣だということを忘れたか?」「……それくらい知っている。貴様は剣聖なのだから」「ならばその身で受けるといい。私の!全力の一撃を!」レオンハルトが剣を上段に掲げると強烈な光が辺りを照らす。目を覆いたくなるほどの光にロックも顔を背けた。「グゥゥゥッ!なんだこの光は!」「我が剣よ、応えよ!エクスカリバー!」レオンハルトは強い光を放っている剣を勢いよく振り下ろした。それと同時に地面が砕け衝撃波がロックへと襲い掛かる。光の斬撃はロックの魔法を容易に斬り裂いた。「なっ!?イビルリバースが!」「無駄だ。反射させぬ程の火力を出せばいいだけだろう?お前程度でこの技は防げん!」「オオオオォォォッッ!?」光の斬撃はロックの身体を引き裂きその背後にある古城の門すらも斬り裂いてみせた。「グッ……ガハッ……」「終わりだロック・ノック」もはや息も絶え絶えにロックは地面に膝を突き身体は粒子となって消えていく。魔に連なる者にとって光属性は致命的なほどにダメージを受ける。レオ
剣聖レオンハルトは強敵を前にして剣を握る手に力が入る。四天王は高位魔族すらをも凌駕する力を持つ。剣聖と謳われる彼も手を抜ける相手ではなかった。「まさかここまで追い込まれるとは……吾輩が出なければならんとは思わなかったぞ」「そうか」「そちらは剣聖だな?吾輩はロック・ノック。卑しくも四天王の肩書きを持つ」「……剣聖レオンハルト・レインだ。相手にとって不足はない」レオンハルトが構えを取るとロックもまた両手を広げ足元に魔法陣を浮かべる。ロック・ノックは完全に魔法使いタイプの魔族だ。肉弾戦は得意としていない。対するレオンハルトは近距離での戦闘を得意とする。距離を詰められなければ勝ち目はない。レオンハルトは一気に駆け出すと聖剣を横薙ぎに振るう。「シャイニングセイバー!」「光属性の対抗策は用意しておるぞ!デビルミラー!」ロックが前方に悪魔を模した装飾が施された鏡を出現させるとレオンハルトの斬撃は反射する。「厄介な!ハァッ!」返ってきた自分の技を斬り捨てるように弾くと次の攻撃モーションに移る。「クロスセイバー!」十字に放たれる斬撃はロックの魔法を打ち砕き勢い衰えぬまま突き進む。ロックがニィと口角を上げるとその斬撃を全身で受け止めた。ローブが斬り刻まれ複数の裂傷から血が吹き出した。「防ぐ事もせんとは……戦いを諦めたか?」「カッカッカッ!ただ無防備に受けたわけではないぞ?我が身に受ける痛みは相手に返る。イビルリバース」ロックが魔法名を口にした途端レオンハルトの身体から血が吹き出した。同時に痛みも襲ってくる。「ガハッ……何だ今のは!?」「カッカッカッ!吾輩が受ける傷は全て己に返ってくるぞ?さて、どうする剣聖!」レオンハルトは下手に攻撃できないと分かると剣を構えて睨みつける。攻撃が全て跳ね返る魔法
アレン達主力の三人は姿を消して少し戦場から離れた場所で戦いの行方を見守っていた。「ほう、あの冒険者も割と頑張っておるのぉ」「ん?ああ、セルのことかい?彼は冒険者の中でも上位だからね」クロウリーは基本山に籠もっているため冒険者界隈の事など殆ど知らない。当然"破滅の灯火"の団長であるセル・ブリジットの事も知らなかった。「まあそこそこだな。それよりこの作戦上手くいくのか?」テスタロッサが言うこの作戦というのは、三人が姿を消して様子見する事であった。現在矢面に立つ最高戦力は剣聖レオンハルトであり、魔神が最も警戒する相手である。アレンの考えついた作戦というのは最大戦力である三人が姿を消して魔神が警戒する対象を剣聖一人に絞るつもりであった。隙を見せた瞬間一気に攻勢に出て魔神に大ダメージを与える。それが作戦の内容だった。単純明快だがそれが一番効果的であると判断したアレンだが、本当にそんな上手くいくのかとテスタロッサは半信半疑だった。弟子であるレオンハルトを疑うわけではないが、この場にいる三人に比べて些か実力で劣る。魔神が出てくる前に高位魔族相手に負けるのではないかと若干の不安があったのだ。「多分上手くいくさ。正面からぶつかるのは得策じゃない。何しろ今の魔神は前回の討伐作戦から十分な休息を経ている。だから最盛期といっても過言じゃないのさ」「ふむ……まあいいだろう。サッサと出ていてもらいたいものだな……」テスタロッサは魔神と正面切って戦ってみたい衝動に駆られていた。とはいえここで足並みを崩すのも如何なものかと我慢する事に決めていた。「おお、いよいよ四天王が出てきたようだぞ?」クロウリーが指差す方向には四天
リヴァルさんが範囲魔法を放ってから数分が経ったが今のところは他の魔族が押し寄せる気配はない。「前衛も持ち堪えてくれているようですし、一旦私はここで待機するわ。リヴァル殿、貴方もまだ魔力に余裕があるようだし、カナタ君と紫音さんを守ってもらえますか?」「……問題ない。ただ高位魔族と戦うことになれば守り切れんぞ」「その場合はアカリ、お願いするわね」アカリはレイさんの言葉に親指を立てて頷く。女の子に守ってもらう男という構図もなんというか情けないが、こればかりは仕方がない。高位魔族を相手に僕程度では傷一つ付けられないだろうから。邪法を使えばいけるかもしれないが、まだ使う場面ではないだろう。できれば魔神相手に使いたい。「ムッ!来るぞ!」僕が考え事をしているとリヴァルさんが両手を上に掲げ結界を展開した。それと同時に四方から魔法が飛んでくる。「な、なに!?」「やはり来たか……レイとやら、あれらは子爵、男爵級だ。お前達でもやれるはずだが隙を見せるな。中に一人伯爵級が混じっているぞ」「忠告感謝します。全員迎撃体勢!数は七!全て爵位級、各個撃破を狙いなさい!」その場にいた冒険者が空から飛来する魔族に向かって矢や魔法を放つ。当然魔族も同じように魔法を放つが、リヴァルさんの張った結界を貫ける威力はなく青白い壁の向こうで霧散する。「伯爵級は……私がやる!」確かレイさんも二つ名持ちだったな。レイさんはじっくり空を飛び回る魔族を見つめ片手を空に向けて狙いをつける。「リヴァル殿、伯爵級はどれですか?」「右から二番目、白い角の生えた男だ」「ありがと
魔物の群れが後ろから迫っている。それはレイさんにとっても想定外だったようで、慌ただしく他の団員に声を掛け始めた。「背後から敵の急襲!範囲攻撃が可能な者は後ろへ!」「俺が行く!」「私も行くわ!」「盾持ちが必要ってんならオレもいるぞ!」"黄金の旅団"のメンバーは即座に行動を開始する。僕らの後ろへ回った人員は十人ほど。それ以上は前衛が崩れてしまうため回せないらしい。「魔物の数はわかりますか?」「……恐らく五百はいるだろう。俺一人で全ては防ぎ切れん」「五百……十人程度を後ろに回したとて焼け石に水ですか。とはいえ前衛をこれ以上減らすのも……」前門の虎、後門の狼といったところか。僕もそろそろ加勢した方がいいかもしれない。「アカリ、僕も手伝ったらだめかな」「んー、だめ」駄目か。やっぱりアカリは僕が力を使う事を拒んでいるようだ。「団長は?」「アレン団長は今どこにいるか分かりません。少なくともこの戦場にはいるかと思いますが」レイさんもアレンさんの所在を把握できていないらしい。居てくれれば五百の魔物もなんとかなったかもしれないのに。「俺が広範囲魔法を使ってもいいが、他の魔族に俺の所在を知られる。そうなれば恐らく裏切り者だと躍起になってここへ魔族が押し寄せるぞ」「それは……リスクのある行為ですね。ですが他に手はありません。リヴァル殿、やって頂けますか?」レイさんのお願いをリヴァルさんは黙って頷く。後方から迫る魔物の大群に手を翳すとリヴァルさんの頭上に巨大な魔法陣が展開された。