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19食目・エルドアマリナ王国の生活環境

Author: 柊雪鐘
last update Huling Na-update: 2025-12-06 08:00:09

「あの、お母さん……」

「あらルシーちゃん、お勉強はどう?」

「んー、ちょっとその休憩にと思って、お水をもらいに来ました」

 一呼吸入れようと1階に降りると、エリザさんは洗濯を畳んでのほほんとしている。

 降りてきた私に気付いて微笑む優美さは変わらず、私は昨日の今日でエリザさんのことを「お母さん」と呼ぶには恥ずかしさを感じていた。

 「そんなに慌てて覚えることはないわよ。ルシーちゃんがこれから生活する世界なのだから、ゆっくりと過ごしていれば自ずと理解できると思うの」

「それはそうなんですけど……でも、少しでもお母さんと自然に過ごしたり、お仕事のこともあるので」

「――もうっ、ルシーちゃんったら本当にいい子なんだからっ!」

 感極まったようにエリザさんに抱き締められ、恥ずかしさは更に昇る。

 こう、娘とし気に入ってくれてるのは嬉しいのだけど、生前の私はそこまで母からの愛情表現は受けていたただろうか……。

 「そういえばお水だったわね」と私から離れたエリザさんは水道の蛇口をひねり、出た水に手を翳してコップに注ぐ。

 手をかざしている間の水はやけにキラキラと輝いているようで、どうやらこれが浄水魔法というものらしい。

「はい、どうぞ」

「ありがとうございます……――ふぅ、とても美味しいですね」

「うふふ、なんだか恥ずかしくなっちゃうわね」

 手渡されたコップの中身は何の変哲もなく、そのまま口に運べばただただ美味しいお水。

 ちなみに基本は地下で流れている水を井戸から汲み上げ、各家庭にある置いているタンクからお水を出しているらしい。

「ところでエリザさん」

「ん?何かしら?」

「朝、このお水は外に置いてるタンクから出してるって言ってましたけど……そのお水は誰が用意してるんですか?まさか、エリザさんが……!?」

「あはは、そんな訳がないじゃない!1日500リットルのお水を契約しているけれど、流石の私もそこまで魔法は得意じゃないの」

「お水の契約制……?お水を運ぶのにも、魔法が使われているんですか?」

「そうよ。お水は日の使用量で契約を決めて、毎月お支払いするの。タンクには毎晩減った分だけの水が継ぎ足されて、使用した分だけ支払いという扱いね。例えば私とルシーちゃんで月に450リットル使ったら、月末にその分だけお支払いになるの」

「つ、使わなかった分はどうなるんですか?」

「どうせ浄水魔法をかけるから、毎日同じ水質よぉ」

 にこりと見せるエリザさんの笑顔は大変眩しかった。

 浄水魔法、便利だな……。

「あ、そうだ。ルシーちゃん、毎晩24時以降は極力お水を使わないでね?」

「なんでですか?」

「24時から明け方5時までは、各家庭にお水を配る運び屋さんがいるからよ」

「運び屋さん?」

「そ、冒険者ギルドでお仕事をされてる、物を運ぶ専門のお仕事の人。お荷物とか郵便とか、こういう生活に必要な物を運んでくれるのよ」

「それぞれのお家に水を運ぶのも、運び屋さんの仕事なんですか……」

「プロはすごいわよぉ。水流を作ってタンクに入れていったり、転移魔法を使う人だっているわ。氷にして固めて身体強化魔法で運んだりするパワータイプ、運び屋さんによって様々ね」

 にこにこと教えてくれるエリザさんだけど、頭の中で想像するとアニメや漫画みたいな世界だ。

 水流は管の無いウォータースライダーみたいなものかな。

 それがタンクに突っ込まれていく光景はどんなものだろう。

 転移魔法ということは、昨日のクリステフさんみたいな?一瞬にして水の塊を運ぶのだろうか。

 大きな氷塊を運ぶ人は完全に地球を運ぶアトラス像が浮かんだ。

 冒険者ギルドの人だということだし、きっと屈強な戦士に違いない。

「ま、魔法ってすごい……」

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