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18食目・世界のお勉強

Penulis: 柊雪鐘
last update Terakhir Diperbarui: 2025-12-05 08:00:54

 創造歴735年、この世界は数多の魔法に包まれていた。

 世界を形成する魔素と呼ばれるものが自然を形成し、生命を作りだす。

 産まれた生命はありとあらゆるものへと変化し、生態系が生まれた。

 それから最後に人間が作り出され、人間は生態系の中で唯一魔法を操る力を得た、言わば魔法生態の頂点だった。

 そんな世界で、人々は火、水、土、光、闇、治癒の6種の魔法を使って自身が満足するままの生活をしていた。

 しかし、法も裁きも無いこの世界が長く続くことはなく、この年を境に世界は崩壊の一途を辿っていく。

 創造歴771年、魔法という存在が強くなる一方で全ての生命がその歯止めを利かせられなくなっていた。

 魔性生物が多く蔓延り、制御の利かない荒天が続き、世界は焦土と化す。

 それから世界の再構築が提唱され、創造歴は800年を迎えることなく終わりとなった。

 新たな世紀、魔生歴1年。

 世界の再構築を終え、微かな魔素とほんの少しの魔法だけが生き残った時代で新たなルールが作られた。

 それは、要約すると『魔法の使用を生活レベルのみとすること』。

 強すぎる力は世界の崩壊を呼び起こし、再び創造歴の終焉を呼び起こす可能性がある。

 この時からフォス=カタリナと呼ばれた世界の人々は魔法の使用に制限をかけたのだ。

 なお、フォスとは創造歴から呼ばれていたこの世界の名前、カタリナはこのルールを制定した人の名前らしい。

「……ふぅ」

 分厚い本から目を離し、椅子にもたれかかる。

 手を組んで体を伸ばすと詰められたものがバラバラに散っていく感覚がした。

 私、ルシェット・サイファ=明音は今、このフォス=カタリナについて勉強をしている。

 場所はこのおうちの2階の個室、私の為に割り振られた部屋だ。

 大変美味しい料理に舌鼓を打った昨日、親子となって朝食を共にしたこの世界の母・エリザさんに『この世界に住む以上、何も知らないのは駄目だと思うから勉強したい』とお願いをして。

 もちろんエリザさんは喜んで学生時代に使っていたという教科書を貸してくれた。

 学ぶのはこの世界の歴史とルールやマナー、文学、それから魔法について。

 この世界で生活するのだから、ある程度身につけておかないと失礼な気がして。

 エリザさんは『気にしなくていいのよ』とは言うけど、何も知らずに生活をすると考えると、色々と怖くなった。

 何が怖いのかと言うと、この世界に住む人達と私が生きてきたこれまでとの違いだ。

 午前中はエリザさんの家事を手伝おうと名乗り出たはいいものの、生活魔法程度なら難なく使えると言うエリザさんはお皿洗いと洗濯は水魔法で、食器と洗濯物の乾燥は風魔法で済ませてしまった。

 ならば掃除!と思ったものの、掃除ですら風魔法でパパっと済ませてしまったエリザさんは椅子に座って趣味だと言う編み物を始めてしまったのだ。

 つまり、出番がない。

 洗濯機も食洗器も掃除機も無いこの世界には家電など何一つないのだ。

 お湯を沸かすのだって水道水に浄水魔法をかけたもの(魔法で生み出した水はそのまま口に入れちゃダメなんだって)を専用のポットに入れて、火魔法を使えばあら不思議。

 ものの30秒程度でできてしまう。

 同じ勢いで鍋に食材や材料を入れていくのは分かっても、コンロなど無く火魔法で火力調整してしまうエリザさん。

 魔法とは、大変便利で器用なものである。

 だったら、魔法も使えない私はどう過ごせばいいのだろう。

 そう考えた時、浮かんだのは身の回りの準備とこの世界について知ることしか選択肢が無かった。

 持ってる洋服は転生してきた時の洋服と昨夜寝る時お世話になったパジャマしかないので、お買い物は必要なのだが……夕方行こう、とエリザさんに言われたばかり。

 となると消去法しかない私の活動は、今に至る。

 この世の中は便利なものだ。

 ただし、この世界の住人にとっては。

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