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犬?

Author: KaiKitto
last update publish date: 2026-11-02 18:52:38

ヴィノルカ・ジョナ視点

(大学に遅刻するわよ。)

良心の声に思考を遮られ、私はベッドから飛び起きた。

浴室に駆け込んで手早くシャワーを浴び、古くてみすぼらしい服を引っかけると、リュックをつかんで部屋を飛び出した。遅刻は許されない。ただでさえ奨学生なのだ。一度のしくじりが命取りになりかねない。

急いで家を出る。誰にも会いたくない。特にダンテと、あの人の嘲りだけは避けたかった。あの人がそこにいるだけで、私は平衡を失ってしまう。災いの前触れのような人だ。

人目につかないよう早足で歩いていると、見覚えのある車が脇に停まった。最悪だ。いちばん避けたかったことが起きた。逃げ出す前に、ダンテに捕まってしまったのだ。

「乗れ」窓を下ろして、彼が命じた。

その声を聞くと背筋が震え、恐怖と不安で頭の中が曇る。どうして私を車に乗せたがるの? 今度は何をさせるつもり?

言われたことを呑み込もうとする。本当に、乗れと言ったの? 以前は、パン一切れ取ることさえ禁じられていたのに。

「聞こえなかったのか? それとも無視してるのか?」その言葉で我に返った。苛立ちがはっきりと伝わってくる。

従ってはいけないとわかっている。あの車に乗って、いいことなど起きるはずがない。でも、逃げられる? 力を握っているのは彼で、隠れる場所なんてどこにもないのに。

「車を汚したくないので」心の中は荒れていたけれど、声だけは落ち着いていた。

「俺に逆らうのか?」眉を吊り上げて、彼は私の答えをはねつけた。それでも、私は折れなかった。

(ええ、そうよ。)

それを面と向かって言いたい衝動を抑え、私は黙っていた。

「たった三年で、ずいぶん変わったな。俺に逆らうことまで覚えたか」その言葉が深く突き刺さった。自分が閉じ込められている人生を、突きつけられた気がした。

でも、永遠に閉じ込められるわけじゃない。もうすぐ十八歳になる。そうすれば、あの人の手から抜け出せる。

「遅刻しそうなので」彼が何か言い返す前に、私は駆け出した。状況の重みが肩にのしかかっていた。

三十分後、ようやく大学に着いた。急ぎ足で来たせいで息が切れていた。

「ヴィノルカ」

アマンダの声が、物思いから私を引き戻す。心配しているのが声に出ていた。それでも、彼女がいるだけで自然と笑顔になる。

彼女のところへ歩いていくと、肩に置かれた優しい手が気を紛らわせてくれてありがたかった。「ちょっと、どうしてそんなに顔色が悪いのか、ちゃんと話しなさいよ」心配してくれているのが胸に染みた。

「なんでもないの。ここに来る途中で、犬に追いかけられそうになっただけ」嘘が、すらすらと口をついて出た。

ダンテを犬と呼ぶのは、とても気分がいい。あの人は犬以下だとさえ思えてくる。

「犬? あんた正気? 犬に追われたからって、どうして走ったの? じっとしてて、刺激しなければよかったのに」

本当は笑ってしまいたかった。私たち二人が群れのアルファを「犬」呼ばわりしているなんて彼女が知ったら、どんな反応をするか、神のみぞ知るだ。

きっととんでもない反応だろう。どうして私の頭は、こんなふうに暴走ばかりするのかわからない。

「ああ、そこまで考えてなかった。身を守ろうとして、反射的に走っちゃったの」私は笑って答えた。

二人で教室に着き、それぞれの席に腰を下ろした。

間に合った。それが何より嬉しい。ダンテのせいで、そして早朝から続く頭痛のせいで、時間をかなり無駄にして遅刻するんじゃないかと思っていたから。

「それにさ、なんでいつもそんな薄い服を着てるのか、わからないんだけど。寒くないの?」アマンダが眉を上げ、私のトップスに触れた。

心配して聞いてくれているのはわかる。でも本当は、胸が痛い。これは数年前から着ている、施しでもらった服なのだと、彼女には説明できない。食事のやりくりをするだけで精一杯で、必死に働いているのに、服なんてどうやって買えというの。

自分がどれだけ貧しいかを見せたくないし、ダンテと身内だという事実を誰にも知られるわけにはいかない。それだけは、絶対にしたくなかったことだ。

「ただ、あったかすぎる服が好きじゃないだけ。それに、これは薄くないよ」悲しみを隠そうと、できるだけ笑顔を作った。

「体に悪いよ、それ。今日、一緒に買い物行かない? 冬じゅうずっとその服で過ごすなんて無理でしょ。寒すぎるもん」

「うーん、仕事があって、今日もまた早く帰らなきゃいけないの」私は彼女の視線を避けた。

図書館でアルバイトをしているけれど、昨日はもう休んでしまった。シフトを休み続けるわけにはいかない。それに、服に使えるお金もない。

一日三食すらまともに取れないのに、服を買うなんて私には贅沢だ。

この大学には奨学金で入学できた。そうでなければ、こんな場所に足を踏み入れることなど夢にも思えなかっただろう。

でも、何があっても、ダンテの望むとおりにするよりは、こうして生きるほうがましだ。

私には、自尊心か娼婦になるかの選択肢があった。

(そして私は、後者ではなく前者を選んだ。)

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