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《08番外編》もし、穴織と恋愛していたら⑦

last update Last Updated: 2025-04-22 11:00:23

穴織は、穂香の腕をつかむと、人がめったに来ない非常階段の踊り場まで連れて行った。

「何が目的や?」

冷たい声だった。

「お前……白川さんに成り代わってんのか? それとも、『白川穂香』なんていう生徒は、初めからおらんかったんか?」

「え?」

穂香が、戸惑いながら穴織を見つめると、サッと視線をそらされた。

「ほんま、最悪や。警戒していたはずやのに、いつの間にか心を許して、友達やと思ってた……」

胸ポケットからは『むしろ、それ以上の好意が芽生えそうじゃったからな。いや、もう手遅れか? 最悪の初恋じゃのう』とのんきな声がする。

無言で胸ポケットを叩いた穴織は、ハッとなった。

「もしかして、ジジィの声も、ずっと聞こえてんのか?」

穴織は、胸ポケットから光る武器を取り出した。小さくなっていた武器は、取り出したと同時に元の大きさへと戻る。

「どこからが計画や」

穂香が一歩、後ずさると、穴織は一歩近づく。

「どうして、俺に近づいた? 早く言わんと……」

壁際まで追い詰められた穂香は、穴織から放たれる殺気のようなものに圧倒されて声すら出せない。

(い、言わないと、殺される!)

なんとか声を絞り出す。

「……ぁ、わ、私……」

穂香は、自分が恋愛ゲームの世界に閉じ込められていることを話した。

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