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第4話

ギャクゲツ
二人の間に漂う低気圧のせいで、社内の雰囲気も異様なものになっていた。

半月の間、凛は会社に泊まり込み、チームを率いて数え切れないほどの徹夜を重ねた。

「高嶺本部長、完成しました」

最後のエンターキーが押されると、全員が安堵の息を漏らした。

凛は立ち上がった。「デリバリーを頼んでおいたわ。皆は仕上げのチェックをお願い。私が下まで取りに行ってくる。今夜はみんなで打ち上げよ」

歓声が上がる中、凛は席を外した。しかし戻ってくると、チーム全員が椅子の上で呆然としており、パソコン画面は死を告げるような青一色――ブルースクリーンになっていた。

そして、レイが彼女のデスクの横に立っていた。

「どういうこと?」凛の心臓が早鐘を打った。

レイは潤んだ瞳で凛を見上げた。

「奥様!すべて私の責任です!余計なことをしてしまいました!ただセキュリティを強化しようと思って、システムの不要ファイルを削除しようとしたら、まさかこんなことになるなんて……」

不要ファイルの削除……

凛の頭の中で何かが切れる音がした。レイを相手にする暇などない。奏多に緊急メッセージを送り、会議の延期を含めた対処を求めた後、すぐさまパソコンに向かい復旧作業を開始した。

それらは極めて重要なファイルであり、たとえ一部でも取り戻せなければ致命的だ。

凛はチーム総出で緊急リカバリーに当たった。

奏多がいつ来たのかさえ気づかなかった。

ただ、最も重要な瞬間に、レイが「わあっ」と声を上げて泣き出した。

画面が突然ブラックアウトした。

終わった……全てが。

凛は絶望のあまり表情を失い、振り返った。そこには、電源ボタンの上に膝をつき、自らの頬を激しくビンタし続けるレイの姿があった。

「奥様、私を殺してください!社長がいつも会社のネットワークは脆弱だと言っていたので、お役に立ちたくて……」

彼女の背後に立っていた奏多は、レイの泣き腫らした目と頬に浮かぶ手形を見て、怒りを急速に萎ませていった。

彼はため息をつき、終始無言の凛に目を向けた。「凛、彼女も悪気があったわけじゃない。君ほど優秀なら、一晩徹夜すればまた作り直せるだろう?」

凛は彼を見て、ふっと笑った。

こんな夜遅くに駆けつけたのは、レイを慰めるためだったのか?

緊急対応というのは、自分の専門能力と労力を、別の女の失敗を帳消しにするためのコストとして使うことだったのか?

だが、もう奏多と争う気力さえ失せていた。

口から出た「わかった」という言葉には、底知れぬ哀しみと嘲笑だけが含まれていた。

その夜、凛は奏多抜きの会議を招集した。

去るための準備には時間がかかる。だがその前に、社員全員の逃げ道を確保しなければならない。

一睡もせず、凛はプランを一から作り直した。

翌日の会議、驚くべきことにレイが奏多の隣、秘書席に座っていた。

彼女にこの会議に出席する資格などないはずだ。

奏多は立ち上がり、全員に紹介した。「影山レイは我々の新しいパートナーだ。勉強のために、今回の会議に参加させることにした」

ボディーガードに、経営判断を学ばせるだと?

全員が困惑の表情を浮かべ、凛も思わず指先を強く握りしめたが、すぐに感情を押し殺した。

すべての手配を終え、神崎グループごと持ち去った後なら、奏多がレイに何を学ばせようと好きにすればいい。

会議の中盤、古参の島崎(しまざき)取締役が突然口を開いた。「高嶺さんのプランは相変わらず堅実だが、保守的すぎるな」

島崎取締役は以前から凛と折り合いが悪く、凛の発言には必ず難癖をつけてくる。誰も気に留めておらず、凛自身も答えるつもりはなかった。

しかしその時、突拍子もない声が響いた。「私は島崎さんの意見に賛成です」

レイが立ち上がった。「高嶺さんのプランは慎重すぎます。私なら、もっと攻めます!市場なんて奪い取るものじゃないんですか?何を怖がってるんですか!」

会場は静まり返り、全員がまるで狂人を見るような目で彼女を見た。

凛は目配せで奏多にこの茶番を止めるよう促したが、目が合うと奏多は逆にふっと笑った。「凛、君も時には彼女のような勢いが必要かもしれないよ」

会議はこの馬鹿げた「喜劇」で幕を閉じた。

全員が退出した後も、凛は自分の席に座り続けていた。

五年前の記憶がぼんやりと蘇る。同じこの会議室で、創業したばかりで行き詰まり、古参たちの批判に晒されていた時だ。

奏多は自分のために机を叩いて立ち上がり、力強く宣言した。「もう一度言う。高嶺凛は僕の共同経営者だ。異論がある奴は今すぐ出て行け!」

かつて全世界の悪意から自分を守ってくれたその背中が、今日、自らの手で自分を批判の矢面に立たせた男の姿と重なる。

その事実は、凛の魂を引き裂くほどに残酷だった。
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Aktuellstes Kapitel

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    奏多は幽霊のように立ち上がり、我に返った時には「オーロラグループ」の屋上に立っていた。冷たい風が乱れた髪を揺らす。足元には深淵が広がっている。かつて彼と凛は何度もここでデートをした。その度に凛は「危ないから縁に近づかないで」と注意してくれた。だが今、彼が縁に立っていても、注意してくれる人はもういない。奏多は星空を見上げ、機械的に腕を上げ、凛に最後の電話をかけた。声は恐ろしいほど静かだった。「凛、最後に一目会いたい。最後だ。もう二度と付きまとわない。ビルの屋上にいる。場所はわかるだろ」電話を切って間もなく、階段から凛の足音が聞こえてきた。奏多が喜び勇んで振り返り、笑顔を作ろうとした瞬間、彼女の傍らに立つ陸の姿が目に入った。笑みは瞬時に凍りつき、無惨なものになった。そうか、復縁の脚本に浸っていたのは、自分一人だけだったんだ。凛は戻ってきてから、一度も自分に笑顔を見せてくれなかった。「凛、一つだけ聞かせてくれ。一瞬でもいい、僕を愛してくれたことはあったかい?」奏多は凛が何か言う前に問いかけた。凛は彼を一瞥し、背を向けて陸の腕に手を回した。「今夜は風が少し強いわね。広報部に伝えて。『神崎グループ前会長、破産によるストレスで自殺』という声明を出す準備を」「わかった。ホットミルクを用意してある。夜も遅い、残りの仕事は俺がやるよ」陸が優しく応えた。去っていく二人の背中を見つめながら、奏多はただ呆然と夜風を飲み込み、朝までそこに立ち尽くした。一年後。凛は蘇芳凛という名で、陸と結婚式を挙げた。花、陽光、虹のアーチ……すべてのものが、ついに凛が夢見ていた通りの幻想的な光景となった。数え切れないほどのメディアがこの盛大な結婚式を記録した。陸は慎重に、凛の指に指輪を嵌め、真摯で深い愛を込めて見つめた。「凛、一生愛してもいいかい?」凛はかつてないほど晴れやかに笑った。彼女はそっと背伸びをして、陸の唇にキスをした。歓声が上がる中、彼女は小さく囁いた。「陸、もうあなたに慣れちゃったわ」陸は珍しく興奮を露わにし、世界そのものを抱きしめるように彼女を抱きしめた。二年後、凛の元に田舎から一通の手紙が届いた。差出人の名はない。ただ淡々とした筆致で、そこで教師として過ごす生活が綴られていた。手紙の最後に

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