ログイン「っ! 誰!?」
中から聞こえた声は、やっぱり篠崎さんだった。
慌てたような感じと、何処となく安心したかのような……ってのは俺がそう思いたいだけなのかもしれないが。「……ごめん。邪魔、しちゃったな」
「っ……須藤、くん」 「あー……」バツが悪そうに顔を背ける先輩と、目に見えてやっちゃったなんて表情をしている篠崎さんを前にしてどうすれば正解なのかがわからない。
見てみないフリ、知らなかったフリしながら去っておくべきだったのだろうとは思う。
そうすりゃこんな修羅場に介入せずに済んだのだろうに。「ひ、人が悪いな。そういう仲だったのなら、言ってくれたらよかったのに」
とりあえず、こんな感じが良いだろうか?
心は不思議と痛くなかった、もろに失恋したってシーンにも関わらず。あるいは後から痛くなるのだろうか?
そうだとするのなら、今この場くらいは気張っておくべきだろう。「いやほんと、邪魔して悪かったよ、先輩もすみません。けど、部室使うのは流石にどうかと思うっすよ?」
「あ、あぁ……そう、だな。悪い、なんかこう、つい、我慢できなくなってさ。わかる、だろう?」いやわかりたくねーっす。
つか何をわかればいいんすかね? 篠崎さん可愛いからつい我慢できなくなってとか? やー、俺にそこまでの度胸はないなぁ。けど、なんだろ。
「しょうがないっすねぇ。同じ男として、目ぇ瞑っとくすわ。だから明日の活動でぎくしゃくするとか勘弁っすよ?」
「……わかった。悪いな、気を使わせて」 「いえいえ、だいじょーぶっすよ!」これでわざわざ興味もないゲームをやらずに済む、なんて考えが思い浮かんだ。
言っておいてなんだが、失恋もしたことだしサークルから抜けて、バスケサークルに行こうかななんて。もしかしたら先輩が本気で悪いって顔してくれてるから救われたってのもあるかもしれない。
別に公言してたわけじゃないけど、俺が篠崎さんのことを好きだってのは知っていただろうし。「篠崎さんもごめん。けど、そういう人がいるなら教えてくれてもよかったと思うよ? いや、別に言う必要とかないかもだけど、勘違いしちゃうから、さ」
「須藤、くん……?」漫画かなんかじゃここで違うの! とか言われたりするんだろうか?
実は無理やり先輩に迫られてーとかなら……あぁ、そうだとしたのなら随分と救われるのかもしれないが。どうにも、そういう夢物語じゃないらしいから。
篠崎さんの顔は、バツが悪いとかそういう表情じゃあなくて、ただ。「……そっか」
「え?」何かを悟ったかのような、もので。
「ねぇ、須藤君?」
「え? あ、うん。何、かな?」どういうわけか、にっこりと笑顔を浮かべてきて。
「本当に邪魔してくれたよね。けど、ちょうどよかったっていうのもそうなんだ」
「ちょうど、よか、った?」何がちょうど良かったのか、なんで笑っているのか。
まったく、俺には理解できない。
「そう。このままここで先輩とセックスしようと思ってたんだけどね?」
「っ……」なんだ? 死体蹴りでもするってか?
そりゃ随分とえぐい絶縁状ってレベルじゃないぞ? 「ゴム、私も先輩も持ってなくて。コンビニで買って来てくれないかな? もちろん、おごりで」 「……は?」 「そうしたら、先輩とのセックス、そのまま見せてあげても良いよ? ご褒美って、あって然るべき、だもんね」……あぁ。
「それじゃ、よろしくね?」
なんでだろう、何を言われてるんだろう?
まったく意味がわからないまま、それでも。「わか、った」
俺は頷いてしまっていて、そのまま部室を後にした。
心と体が全く別にあるかのような感覚だった。
頭の中ではもう一歩も動きたくないと思っているのに、身体だけが勝手にやらなければならないという義務感のようなものに突き動かされている。「……なん、で」
あんまりにも、だろう。
もしかしたら、大学生の恋愛事情ってのはこんなものなのかもしれないし、女慣れしていない俺が悪くて、大げさにショックを受けすぎなのかもしれないが、それでも。「これは、ねぇよ……」
何が悲しくて好きな女が自分以外の誰かとセックスするためにコンドームを買いにでなきゃならないんだ。
控えめに言って狂っている。
何が狂っているって篠崎さんがじゃない、断れないでただ頷いた俺が一番狂っている。自分で自分が何を考えているのかわからない。
ほんとに俺はどうしたってんだ、好きだったバスケを止めてまで女のケツ追っかけた結果がこれだ。「なさけ、ねぇ……!」
ずっと握っていた拳はじんわりと痺れていた。
涙が出なかったのは幸いだろう、こんなコンビニの中でいきなり泣き出す男なんざヤバイも良いところ。「1024円ですー」
「……はい」痺れて上手く動かせない指で財布から金を出す。
レジカウンターに置かれたコンドームの箱を手に取りたくないと思ってついついじっと睨みつけてしまう。「すんませーん、おつりとレシートっすー」
「あ、はい、すみません」 「あ、アプリ出てますね」 「え? あ、はい」いや別にポイ活とかしないんだけど。
くしゃりとおつりと一緒にポケットへと突っ込もうとしようとした時。「ご確認、お願いします」
「っ……」店員さんから、妙に圧を感じる声色で言われてしまった。
……ったく、なんなんだよ、イラつくな。
こちとら頭ン中ぐちゃぐちゃにもほどがあるんだよ、これ以上頭痛くさせないでくれよ。「確認。お願いします」
「っ! あぁもうわかった! わかったようるせぇな!」つい、声を荒げてしまって、店の中にいた他の人の注目を集めてしまった。
「ちゃんと、ダウンロードしてくださいね?」
「っ!!」視線と店員から向けられる圧から逃げるようにコンビニの外へ出る。
「なんだ、ってんだよっ!!」
何がアプリだ、んなもん別に利用なんかする気は――。
「あぷ、り?」
……普通、レシートについてるのってクーポンとかだよな?
確かにクーポン使用の条件としてアプリとかのQRコードは載ってたりするだろうけど。「……えぇ?」
確かめてみればそこには何のクーポンかもわからない、適当な感じでQPコードが載っていて。
「意味、わかん、ねぇ……」
声に出してしまったように意味がわからない。
新手の詐欺か? いや、コンビニチェーン店だぞ? んなもんするわけがないだろ。いや、一番わけがわらないのは。
「カースト、アプリ……?」
スマホでQRコードを読み取れば、勝手にインストールされたアプリが、一番わけがわからなかった。
「達也、くぅん……♡」「い、いやあの、葵さん?」 どこにそんな力があるのか、葵にベッドへ押し倒されて、圧し掛かられる。「ふふっ♡ うふふふふ♡」「おーまいが……」 いわくところの萌え萌えはどうにも限界突破してしまっていたらしく、葵の目にはハートが浮かんでいて。「ね、ね♡ ほら、見てぇ♡」「え? って、う、うわぁ」 いつの間にかズボンを脱いでいた葵が、俺の顔にまたがった。 跨られた瞬間むわりと濃い、発情臭が漂ってきたし、何より。「び、びっしゃびしゃ、じゃん」「言ったでしょ♡ もうね? ほんとに……たまらなかったんだからね♡」 触るまでもなく、下着の吸収能力が限界を迎えていることが分かった。「達也君が、悪いんだよ♡ どれだけ……どれだけあたしをムラムラさせたら気がするんだ♡ せ、責任とってもらうから♡」「せ、責任って……むぐっ!?」 ぐしゅり、と。 そのまま腰を落とされて、顔に葵のあそこが降ってきた。「あっ♡ あぁ……♡ ご、ごめんねごめんね♡ でもでもたまらないの♡ たまらないんだよぅ♡ 達也君にシて欲しくて♡ こ、こし♡ とまんないぃ♡」 ぐりぐりと腰を動かされる。 早くも葵のメスな匂いで頭は一杯だ、ちょっと苦しいのに、この苦しさが良いかもなんて思ってしまうあたり、もしかしたら俺はマゾ的な趣味があったりするのかもしれない。「ひぁんっ♡ き、きもちいいよぅ♡ ねぇ♡ ねぇ♡ 達也君♡ たつやくぅん♡ 舐めて、舐めてぇ♡」 されるがまま、求められるがまま。 葵の匂いに浮かされた俺は、目の前の肉ひだへとむしゃぶりつく。「あうぅんっ♡ そう♡ そうだよぉ♡ そこっ♡ おまめちゃんイイよぅ♡ んにぁっ♡ 舌でホジホジされるのもすてきぃっ♡ もっとしてぇ♡」 くいくいと葵の腰が躍る。 クリトリスを甘噛みすればぷしゃりと膣から小さく潮が出てきて。 吸い上げよう、舐めとろうと膣へ舌を伸ばせば更に腰を押し付けられて。「しゅごっ♡ しゅごいよぅ♡ すてきっ♡ たつやくん上手だよぅ♡ あ、あたし♡ あたしぃ♡」 相変わらずの早漏っぷりというか。 小さく何度もイってるんだろう、踊る腰が不意にぷるりと震えて止まって、また動いての繰り返し。「ぷ、はぁっ! 葵?」「はー……♡ は、あぁっ♡」 ようやく見上げられた葵は既に全裸になっ
順を追って、考える。 そもそもTPBRというゲームは個人競技ではない。 個人の結果が勝敗の全てを決めると言うのなら、とっくに友崎葵というプレイヤーはプロになっているのだ。 もちろん、本人がならないと言っている以上訪れることはない域ではあるのだろうが、それは別にして。「要するに、チームで勝てば良いってこと」 思えば篠崎を育てたら試合に勝てるとか、葵がいれば試合に勝てるとかじゃあなかったということだ。 バスケだってそう。 スーパープレイ連発の点取り屋が居たところで、そのプレイヤーを活かせる存在が居なければ意味がない。 何なら、スーパープレイヤーを活かして勝つってんなら、そのためにチームが一丸とならねばならないってことすら当たり前だ。「なら、俺がソロでやるにしての最低限って言うのは……負けないこと」 敵チームにいる俺と同じポジションの相手に勝てなくてもいい、ただ負けなければそれでいいんだ。 その意識が、あるいは気づきが今までの俺には存在しなかった。 故にと思いたい、葵が俺にソロを任せるのは怖いと言ったのは。「その上で、俺というプレイヤーが持つ色を、チームに与える」 いわば、パス回し。 ずっとやって来たバスケで言う、アシストでありパス回しだ。 俺は勝負を決することができるプレイヤーにはなれない。 なれないけれど、勝負を決するプレイヤーを活かすことなら、できる。「――それが……うぅん、これが、達也君の、答え?」「ああ。まだちゃんとした形になってないことは自覚している。だけど、これが俺のソロって形だ」 モニタに映っているのはヴィクトリーの文字、即ちソロでやってた試合に勝利したと言う証が躍っていた。 スコアを見れば、今までサポートロールをずっとやって来たものと大差ないどころか更に悪い。 だけど、それでも。 ――gg wp。 チャットに並ぶ味方の言葉は、そんなもので、誰一人口汚く罵ってくるやつはいなかった。「ん……ひとまずは、正解、かな」「そっか」 困ったように、というよりは別の意味が含まれているように思える葵の苦笑いだった。 そんな葵の顔を見て、ようやく。「よ、っし……!」 小さくガッツポーズを自然に取ってしまった。「掃除屋。それが、今達也君がやってたロールの
あの後結局何回戦まで行ったか、少なくとも黄色い太陽を二人で見たあたりまでは覚えているんだけど。 気づいた時には夕方で、もっと言えば普段やってる練習が終わっている時間だった。「――や、まぁなんだ。仲良きことは美しきかなって話にしておこうか」 そうすると当たり前にこうなる。 具体的にはいつもの集合時間に来てくれたは良いけど、反応がないうえに連絡も繋がらない。 すわ何か異常発生かと心配してくれた先輩は、もしかしたら篠崎が何かをしたんじゃないかと、大学にまで行って走り回ってくれたらしい。「ほんっとうに申し訳ないです……」「ご、ごめんなさい……」 謝る他にないよねって話である。 恥ずかしいとかそう言うのもあるけどさ、何ならばっちり寝起きだったし。「謝んなって、安心したって気持ちのが大きいし……正直、心配してた部分も解消できたってのもある」「心配、ですか?」「オレが邪魔になっていちゃつく時間が無くなってんじゃないかってな」「そんなことはないっすよ! なぁ、葵?」 何を言ってんだこの先輩人が良いにも程があると、隣の葵に水を向けてみれば。「あ、あはー……」 目を逸らされた。葵さん?「なっはっは。正直者でなによりだ」「重ね重ね、本当に申し訳ないです……」「じゃ、これから挽回してもらうってのを期待しておく。つか、友崎もなんも考えないで仲良しに行ったわけじゃねぇと思うしな」「へ?」 えぇっと? どういう意味だろうかともう一度葵へ目を向ければ。「あ、あんまり、そう言う事言われると……ずるい奴だって、打算的な女だと達也君に思われちゃうのやだな、って言いますか。買い被りが過ぎると言いますか……結局、凄いのは達也君、ですから」「あーそうだな、言い方が悪かった。達也と仲良ししたかっただけだな」「それはそうなので。というか、いつだって達也君とは引っ付いていたいの、デフォですし、おすし……」「はいはい惚気は結構ですよっと。ま、今から練習ってのはオレがバイトだから悪い。久しぶりに改めて二人の時間を満喫しておいてくれ」 二人が何を話しているのかはいまいち掴めないけれど。「打算?」「あん? ほんとにオレの言い方が悪かっただけだよ。凄いのは達也君、ね。お前はその言葉に足るお前を目指せばそれでいいさ」「……凄い俺、ですか」 俺自身からすれば、凄いっ
実のところ、だけど。「葵がして欲しいだけだろ」「それも、あるよっ♡」 立ち上がった俺に対して葵はぺたんと床に女の子座りをしたままで、えへへと笑いながら言い切った。 それも、っていうあたりに自分以外の何かが入っていることは間違いないだろうけど、俺の為でもあるという部分に違いはない。 何より最近TPBRに囚われていたとも言える。 視野狭窄というか……なんにしてもいっそしっかり切り替えるためにこういうことをした方が良いなんて葵の言う事もある意味正しい、かな。「……いや」「達也君?」 なぁにごちゃごちゃ言い訳並べてるんだって話だ。「俺も、葵とシたいよ」「っ……♡」 気持ちの上で事実上恋人だなんだとかはどうでもいい。 単純に、好きな人とエッチしたいと思うのは当たり前だ。「う、わぁ……♡ ヤリ見せ、だぁ♡」 顔の前に現れたモノをうっとりとしながら葵がつぶやく。 ヤリ見せって単語は知らないが、どうやらエロ用語でこの状況はそういうらしい。「くんっ、くんくん♡」「いやちょ」「んふー♡ くっさぁ♡ すん、すんっ♡ あたま、とろけるぅ♡」「う……」 下半身のモノはとっくに答えを出していたらしく、ズボンを降ろしてみればガチガチに勃起してた。 鼻先を寄せて何をと思えば臭いの台詞に焦ったけど、どうにもそれがイイらしい。「ね、ね♡ い、一回でいいから、おちんぽでビンタして♡」「えぇ……?」「お願いっ♡ 一回だけ♡ 先っぽだけっ♡」「何だよ先っぽだけって。一回だけだぞ?」 十分に匂いを堪能したかと思えば、次のリクエストはまるきり予想外だった。 なんだよチンポビンタって……ほんと葵はマゾ、って言うか性的好奇心旺盛が過ぎる。「へぷっ♡♡♡」 とかいう俺も、やってみて結構いいかもなんて思うあたり相当かもしれない。 なんというか征服感というか、今から葵を物扱いして使うんだって感じが、結構クるなこれ。「ほら」「んぷっ♡」 いっそのことという事で、金玉ごと葵の顔に乗せてみた。「く、っさぁ♡♡♡ た、たまん、にゃいぃっ♡」 どうやらお気に召して頂けたらしい。 玉裏に興奮しているらしい葵の吐息や鼻息が当たってくすぐったいような、気持ちいいようなって感じだ。「しっかり、堪能してくれよ? これが、普段葵の中に入ったりしてるもんだ」「ひゃ
重ねて、合鍵を渡しているのに何でわざわざ? と疑問に頭を捻りながらだった。「忘れ物ってどうし――んむっ!?」「はむっ! ん、んぅ♡ んんー♡」 ドアを開けて出迎えた瞬間、葵は抱き着いてきて、そのまま唇が重なった。「んっ♡ ちゅ♡ んぁっ♡ んちゅぅ♡ はぁ、ぷ♡ んぅ♡」 驚き過ぎて身体が固まった、ついた尻もちの痛みが頭に入って来ない。 それどころか離すもんかと言わんばかりに抱きしめられてるもんだから、葵のご立派おっぱいの感触が気持ち良すぎて。「ん――ぷ、ぁ……♡」 唇が離れて、透明な唾液の橋が途切れてようやく。「あお、い……?」 呆けながら、葵の名前を口にできた。「ねぇ、達也君」「な、なんだ?」 そんな俺の様子が面白いのか、それとも別の何かか。 友崎は、花が咲いたように笑って。「大好きだよ」「え?」「忘れ物。TPBRに夢中で、言うの忘れちゃってた。ごめんね」「は、はぁ?」 ちょっと、なんだ。「えへへ。わかってるよ、どうした急に? とか、意味わかんない、だよね?」「え、っと……あぁ、いや?」「そんなあなたが、わからないくらいに普通だと思ってるあなたが。大好きなんだ」「は、はい?」 もうほんと、仰る通り意味わかんないといいますか、申し訳ありません。「あたしね? あなたと恋人になりたいの」「んえっ!?」「あ、もちろん事実上というか、もうそれに近いじゃんみたいなのは、あたしもわかる。わかるようになった。でもね? 違うの、共犯者とか相棒とか、そういう建前抜きで純粋に。あなたの恋人になりたい」「……あ、あぁ」 少しだけ回り始めた頭で考える。「そういえば、好きって言ってなかった」「んふふー♡ お互い様、だけどね♡」 葵の勢いに何処か流されてしまっていることは自覚している。 けれども、想いを口にしたことがないのはまったくもって事実だ。「葵、俺も――んむっ!?」 そうだと気づいて俺も好きだと言おうとしたら、またキスで口を塞がれて。「ぷぁっ♡ もー♡ そんなにキスでだまれ♡ って言われたかったの? 困っちゃうな―♡」「い、いやそうじゃなくって俺も――むーっ!?」 え、ナニコレ言わせてくれないんだけど?「んむんっ♡ えっへっへー♡ 達也君は欲しがり屋さんだなぁ♡」「……なんかもうどうにでもしてくれって感
「あ、あー……達也? まぁなんだ、初心者だったら大体通る道だしだな?」「う、うんうん! せ、洗礼っていうか! 最初の壁って、言うか!」「わかっては、いるんだけど、ね」 どうにも気落ちが止められない。 理由は簡単で、ソロでTPBRをプレイするようになってから、野良で一緒になるチームメイトからの温かいご指摘というヤツに思い悩んでいる。「はぁ。いや、ネットだからってのはほんとわかってる。わかってるんだけど」 当たり前だが一緒するヤツ皆が皆、葵や先輩のような人ではない。 もっと言えば年下、極論小学生なんかもいるわけだ、そんな相手に画面の向こうにいる人も人間ですよと説いたところであまり意味はないだろう。 そういう意味でも、わかっている……はずではあったんだけどなぁ。「……ん。達也君」「うん?」 いつまでも落ち込んでいたら情けない。 そう思って切り替えるべく頭を振った時だった。「仕方ないよ。だって、達也君下手くそだもん」「ちょっ!? 友崎ちゃんってば大胆ね!?」「っ……」 さっきまでの気遣うような声色じゃなく、葵がまっすぐただ事実をそうだというように。「城山先輩もそう思いますよね? 今まで達也君は知ってる相手とだけプレイするって言うぬるま湯に浸かっていただけで、多くの人が通る道をスキップしてるって」「うぐ……」 いまいち何を言われているのかがわからないまま、葵は先輩に話を振った。 水を向けられた先輩は、言葉に詰まった後大きく深呼吸をして。「……その通りだわな。正直、んなもん傷つくつかないのレベルじゃあない。いや、その場で感情的になってしまうことはあっても、直ぐに忘れるようなモンだし――」「城山先輩」「っ……あぁもうっ! ほんっと友崎はTPBRになるとガチだな……! 達也、友崎だけじゃない、オレもそう思ってるって前置きしたうえで言うぞ? お前、まだ傷ついていい段階じゃねぇよ」 それは、ゲーム中に知らない相手からぶつけられる言葉よりも、遥かに痛くて。「達也君みたいな人がまったくいないわけじゃ、ないよ。けどね? プロになっていたかもしれない可能性や実力を持ってるお姫様に勝つなんて、大それた目標を持ったプレイヤーがいちいち雑音に気を揉むなんて……笑っちゃうかな」「……葵」 葵の評価、ことTPBRに関しては飾らない。 だから、そう