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第136話
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クズ男が本命の誕生日を盛大に祝ったが、骨壷を抱えた私はすべてをぶち壊した 第148話
深雪は分かっていた。自分が成果を出せば出すほど、松原商事そのものが力をつけていく。そうなれば、彼女が欲しいものはもっと容易く手に入る。目標が明確になったからこそ、深雪の動きは一層洗練されていった。江口商事で「社長！ご存じですか、深雪さんがもう技術部に入っているんですよ！」星男は焦りに満ちた顔で延浩を見つめた。だが延浩は、その慌てぶりを見てかえっておかしそうに目を細め、茶化すように言った。「それで？お前、前は彼女のこと嫌ってただろ？どうして俺に黙って、こっそり気にしてるんだ？」この言葉に星男はますます慌てた。「別に、あの人本人がどうなろうと構いません。でも、もし技術部に入って静雄と内通でもされたら、僕たちはまったく太刀打ちできないんですよ！」深雪の人間性は嫌っていても、専門分野での実力だけは認めざるを得なかった。そんな彼の必死の訴えに、延浩はむしろ誇らしげな顔をした。「当たり前だろ。俺が好きになる女だぞ。それに、俺たちが目指しているのはあちこちで花を咲かせることであって、一本の木にすがることじゃない。そんな暇があるなら、自分の力を磨けよ。女に構ってる暇があるのか？」「ちょっと、困らせてるのは一体どっちだと思ってるんですか！それにしても、社長って恋愛脳ですね」延浩の軽口に、星男はとうとう我慢できなくなった。必死に危険を訴えているのに、まるで取り合わない。「もういい」延浩は表情を引き締め、冷たく話を切った。彼は深雪に対して仕掛ける気が一切なく、予防線を張るつもりもない。だが星男の考えは真逆だった。「社長......会社のためにも、僕は絶対に放っておきません！」「彼女に手を出したら、クビにするぞ」延浩は真剣な顔で睨み据えた。深雪のことに関してだけは、一切譲歩しない。やっぱりだ。星男は眉をひそめ、この様子に心底うんざりした。「分かりました……いつか後悔なさることになりますよ！」吐き捨てるように言い残し、星男は自分のオフィスへと戻っていった。ドアを閉めるまで、ずっと悪態をついていた。だが延浩は、その警告をまるで気にせず、スマホを取り出し深雪にメッセージを送った。昼食を一緒にどうかと。深雪はその通知を見て、びっくりした。大学時代、二人は本当にお似
クズ男が本命の誕生日を盛大に祝ったが、骨壷を抱えた私はすべてをぶち壊した 第147話
「ありがとう」深雪はふっと笑みを浮かべ、軽く手を叩いた。「せっかく集まったんだから、仕事を始めましょう。さあさあ、皆さん集まって。まずは会議をしましょう！」そう言って、彼女は迷いなくUSBを取り出し、隣の遥斗に手渡した。「これつないでちょうだい」「了解です！」遥斗は機敏に立ち上がり、USBを接続した。ほどなくして、大きなスクリーンに中身が映し出された。「私はまだ技術部に来たばかりだけど、今一番大事なのは上高月興業さんとの提携を成功させて、松原商事の転換を実現することよ。これは昨夜、私が作ったひな型よ。皆さん、よく見て意見を出して。ここからプログラムを完成させて」深雪は迷いなく仕事を切り出した。集まったのは皆技術系の社員で、人情や社交にはからきし弱いが、データや技術の話となると途端に饒舌になる。最初、彼らは深雪をコネで入ってきた飾りの女と思っていた。だが、いきなり叩きつけられた内容は彼らに大きな衝撃を与えた。この案件が回ってきてすでに一週間。彼らは誰一人として方向性を掴めずにいた。それなのに深雪は一晩で筋道を立て、初期モデルまで完成させていたのだ。信じがたい。若い女性がここまでの実力を持っているなんて。「スクリーンを見なさいよ。私じゃなくて」「遥斗、どう思う？」深雪は笑みを含みつつ、指名した。オフィスの外。顔を腫らした静雄が立ち尽くし、ガラス越しに熱弁をふるう深雪を見つめていた。その姿はどこか奇妙な光景だった。横にいた芽衣は彼の表情を見て顔色を何度も変えた末、恐る恐る口を開いた。「静雄......私の弟、本当に帰って来られるの？」「うん。弁護士がすでに手続きを進めている」静雄は彼女に目を向け、優しく頬を撫でた。「安心しろ。俺が約束したことは必ず果たすから」芽衣は彼の腕にしがみつき、涙をこぼす。「静雄、ごめんなさい。迷惑ばかりかけて......これからは大人しくするわ。深雪さんを怒らせないし、あなたに余計な心配もかけない」「いや、迷惑なんかじゃない」静雄の瞳には愛情が溢れていた。好きな人のために問題を解決してやれるのなら、それはむしろ誇らしいと彼はそう思っていた。だが芽衣は、その言葉の裏にある薄い響きを見抜いていた。長年そばにいるか
クズ男が本命の誕生日を盛大に祝ったが、骨壷を抱えた私はすべてをぶち壊した 第146話
静雄を叩きのめしたあと、深雪は胸の奥まで清々しさが広がっていくのを感じた。ケーキを食べたあと、すぐにノートパソコンを取り出し、プロジェクトの資料を開いた。すでに静雄は条件を飲んだので、この案件を完璧にやり遂げるしかない。上高月興業の基本データは、以前に延浩が渡してくれていた。だから深雪は彼らが求めているものを把握していた。明確な目標さえあれば、すべては計画通り進められる。ほんの少し思案しただけで、深雪はすぐに指を動かし始めた。明日には技術部のメンバーと顔を合わせる。技術者たちは基本的に明快で、実力主義なのだ。誰の技術が上か、それだけが発言権の重みになる。初対面である以上、彼らに「この人についていこう」と思わせるには、実力を見せつけるしかなかった。夜が明けるころ、深雪のプログラムはすでにモデルとして形を成していた。彼女は満足げに頷き、身支度を整えて出勤の準備をした。かつて専業主婦だった頃は、食べては寝て、寝ては食べるだけの無気力な日々を送っていた。それが今では、仕事のために徹夜したにもかかわらず、以前よりずっと生き生きとしている。やはりあいつのせいで不幸になっていただけだ！深雪はコーヒーを一気に飲み干し、眠気がないことを確認すると、車を走らせ会社へ向かった。松原商事は転換期にありながらも、技術部の設備は一流だった。このことからも彼らの変革への本気度が分かるし、同時に、前回プロジェクトを横取りされた静雄の怒りがいかほどだったかも察せられる。その怒りの一端を自分が担っていると思うと、深雪はつい口元を緩めた。オフィスのドアを開け、堂々と中へ踏み込んだ。「おはよう。私は技術部の新任部長の南深雪。どうぞよろしく！」その名を聞いた瞬間、遥斗は椅子から跳ね起きた。「深雪さん？ G大学の先輩でいらっしゃるんですか！？」「私のことを知ってるの？」深雪は軽やかに微笑み、手を差し出した。「そうよ、私のこと。これからは一緒に頑張っていこう、よろしくね」遥斗は一瞬、躊躇うように手をこすり合わせてから、彼女の手を握った。「本日お会いでき、大変光栄です。金本遥斗と申します。これまで技術部を任されておりました。深雪さんがプロでいらっしゃることは、皆がよく存じています。これからはぜひご指導をお願
クズ男が本命の誕生日を盛大に祝ったが、骨壷を抱えた私はすべてをぶち壊した 第145話
深雪に何度突き飛ばされても、静雄の瞳には感情の色はなく、ただ冷ややかに彼女の怒りを見守っていた。玄関の外に押し出された彼は深雪を振り返り、冷笑を浮かべた。「やはり狂ってるな」かつて深雪はほぼ毎日静雄の冷笑と侮蔑に耐え、精神的な暴力を浴びせられてきた。そのたびに心をすり減らし、正気を失いかけていた。それでも、反抗することすら考えなかった。だが今の彼女はもう違う。床に落ちていたハイヒールを掴み、思い切り彼の顔面に叩きつけた。言葉では足りない。暴力でしか晴れない怒りと怨嗟がそこにあった。静雄は冷静さを失って踵を返した。それでも背中越しに吐き捨てることは忘れなかった。「お前は狂人だ！今の姿を見てみろ、ただの下品な女と変わらない！」「くたばれ！」深雪は渾身の力でハイヒールを彼の背中に叩きつけ、怒号と共に玄関の扉を乱暴に閉めた。そのまま扉に背を預け、力なく床に崩れ落ちた。頬を伝う涙を両手で覆い隠し、声にならない嗚咽で鬱屈した感情を吐き出した。中子は彼女の姿に胸を締め付けられ、大急ぎで彼女の好物のチョコレートケーキを持ってきた。深雪を支え起こし、優しく声をかけた。「深雪さん......泣かないでください」別居してからというもの、深雪は「奥様」と呼ばれることを拒み、「深雪さん」と呼ばせていた。涙を拭った深雪は、ふいに笑みをこぼした。「私は泣いてないわ。見た？さっきハイヒールで静雄の顔を腫らしてやったの。今はすごく痛快よ！」そう言ってソファに腰を下ろし、ケーキを頬張った。さらに真剣な顔つきで言葉を続けた。「でもね、今日の私、ちょっと物足りなかったかも。本当ならもっとたくさんハイヒールを買っておいて、すこしずつ投げつけるべきだったわよね？どう思う？」「はいはい。じゃあ今度は私が付き添って、靴を買いに行きましょう。深雪さんは綺麗なんですから、もっとお洒落すべきですよ。ケーキ、美味しいですか？」深雪は大きく頷いた。「美味しい！でも、食べ過ぎたら太っちゃうかも」「いえ、今の深雪さんは痩せすぎです。もう少しふっくらされていたほうが、きっと健康的に見えますよ」中子は彼女の頬を慈しむように見つめた。あの子が松原家に嫁いできたばかりの頃は、明るくて快活で、陽の光のような女の子だ
クズ男が本命の誕生日を盛大に祝ったが、骨壷を抱えた私はすべてをぶち壊した 第144話
もし寧々の死が静雄に関わっていなかったのなら、深雪は松原商事の財産など要らなかった。だが今となっては、たとえ一円も譲るつもりはない。「バカを言うな！」静雄は冷笑し、深雪の肩を力強く突き飛ばした。彼女はソファに倒れ込み、その頭上に分厚い書類が叩きつけられた。「サインしろ。お前がプロジェクトマネージャーだ」鋭い紙端が深雪の頬をかすめ、浅い傷から赤い血がにじんだ。彼女は思わず息を呑んだが、すぐに書類を手に取り、細部まで確認すると、迷いなくペンを走らせた。そして机の引き出しから、既に用意していた嘆願書を取り出し、静雄に差し出した。「それで完了だわ」最も合理的なやり取りのはずだった。だが、そのあまりの用意周到さが、かえって静雄の神経を逆なでした。「俺が承諾すると、最初から確信していたのか？」「私のために承諾したふりなんてしなくていい。芝居なら、自分の観客を探しなさい。私は拍手なんてしてあげないわ」深雪は冷たく言い放ち、嘆願書を彼の顔に叩きつけた。呆然と立ち尽くす静雄の横をすり抜け、彼女は迷いなく階段を上っていく。「お前は必ず後悔するぞ！どこまで演じられるか見ものだな！」背後から怒号が響いた。「本当にただの役立たずね」深雪は振り返り、冷笑で刺し返した。彼には到底信じられなかった。牙を剥いて立ち向かうこの女が、かつて自分に従い、尽くしていた同じ女だ。女は子を失えば皆こうして狂ってしまうのか？「子どもが欲しいなら......新しく作ればいい。どうだ？」静雄は一歩踏み出し、声を和らげた。この女の荒れ狂う理由はすべて子どもにあると思った。だが、その言葉を耳にした瞬間、深雪は踵を返し階段の勢いを借りて静雄の体に体当たりした。ドンッ！静雄は床へ転倒し、後頭部をテーブルの角に打ちつけ、意識が飛びそうになった。視界が暗転し、呻きながら目を見開いた。「深雪......お前、狂ったか！」必死に起き上がろうとしながら、歯ぎしりし、血走った目で睨みつけた。「お前は恥を晒しているんだぞ！」「自分の娘を死なせた畜生よりは、まだマシよ」深雪の瞳は真っ赤に染まり、声が震えた。「静雄、今後また一度でも子どものことを口にしたら、あんたと心中するわ。本気よ。試してみる？」「出ていけ！」
クズ男が本命の誕生日を盛大に祝ったが、骨壷を抱えた私はすべてをぶち壊した 第143話
病院で、懸命な処置の末、芽衣はようやく命を取り留めた。医者は深刻な表情で静雄を見つめ、やむなく口を開いた。「彼女の状態は以前よりも悪化しています。このままでは、自殺願望が強くなる危険があります」「はい、何とかします」静雄は短く答え、胸が張り裂けそうな思いで芽衣の手を握った。このところ深雪が騒ぎを起こしてばかりで、確かに芽衣を顧みなかった。悪いのは自分だ。ほどなく芽衣がゆっくりと目を開き、言葉を発するより先に涙が溢れ落ちた。「静雄......ごめんなさい」その一言に、静雄の罪悪感はさらに深まった。彼は手を伸ばし、そっと彼女の頬を摘まむように触れて、柔らかく囁いた。「馬鹿だな。君は何も悪くない。謝る必要なんてない」「違う......悪いのは私。全部私のせい。深雪さんが私を嫌うのも当然。だって私は彼女のものを奪ったんだもん」芽衣の涙は止めどなくあふれ、嗚咽で言葉が途切れた。その姿に、静雄の胸は締め付けられるように痛み、優しさを注ぐしかなかった。「好きになったのは俺だ。だから君のせいじゃない。泣くな......俺が、深雪に君へ謝らせる」彼はティッシュを手に取り、彼女の頬を伝う涙を丁寧に拭い取った。その眼差しは、限りない優しさに満ちていた。それでも芽衣には分かる。彼の愛が少しずつ自分から離れていく。彼女は彼の手をぎゅっと握り、今にも消え入りそうな声で呟いた。「静雄......これからもずっと、私に優しくしてくれる？」「もちろんだ。俺はずっと君に優しくする」静雄はその手に口づけ、穏やかに約束した。その言葉に、芽衣はようやく心を安らげた。深く息を吸い、彼の手をさらに強く握った。「静雄......私には陽翔しかいないの。お願い、弟を助けて......救ってくれる？」「......ああ」静雄はすでに決めていた。深雪が取引を好むなら、こちらも取引で挑めばいい。好きな女を守るためなら、どんな条件でも呑むから。夜十時消毒液の匂いと疲労をまとった静雄は、深雪の住む別荘へ足を踏み入れた。深雪は思わず鼻を押さえ、あからさまに顔をしかめた。「なんの匂い？ひどいわね」「......何だと？」静雄は信じられないというように彼女を見つめた。会社で培った観察眼ですぐに
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