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第635話

Author: 木憐青
夜になり、二人は部屋へ戻った。

深雪がシャワーを終えて出てくると、延浩は床まで届く大きな窓の前に立ち、電話をしていた。

彼女は声をかけず、そっと近づいた。

延浩は彼女の気配に気づいていないようで、そのまま低い声で話し続けている。

数歩の距離まで近づいたところで、深雪は足を止めた。

断片的に聞こえてくる会話はどうやら下瀬産業に関する内容のようだった。

深雪の胸が、ずしりと沈んだ。

延浩は通話を切り、振り返った。

背後に立つ深雪を見た瞬間、彼の顔に驚きが走った。

「......いつから、そこに?」

その声はわずかなぎこちなさを帯びていた。

深雪は答えず、ただ黙って彼を見つめた。

その複雑な視線に、延浩は落ち着きを失い、彼女のそばへ歩み寄った。

「僕は......」

「説明はいらないわ」

深雪は静かに、しかしきっぱりと遮った。

「さっき、あなたのスマホのメッセージを見たの」

延浩の顔色が、一瞬で青ざめた。

あのメッセージを見られていた。

深雪は噛みしめるように問いかけた。

「下瀬社長は、どうしてあなたを『若旦那』と呼ぶの?」

空気が凍りついたように、
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