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第五話 キャンプ用品巡りデート(その三)

last update Huling Na-update: 2025-06-02 10:33:55

 ——レストラン街で夕食を食べた後。

何となく心のモヤモヤが残るも、車に乗って帰路を走る。

そして約一時間半経った頃、家に着いた。

時間は忙しかろうが何も関係なく、あっという間に流れてしまう。

(恭弥さんとはまたしばらくのお別れ……)

やっぱり恭弥さんがいないと寂しくて、ふと泣きそうになる。

だけど、なるべく見せないように我慢しなきゃだ。

「ゴメンな、空。一週間ぐらい休みにしたのに……」

「……うん」

「最初は丁重に断ったんだけど……クライアントの仕事で、どうしても抜けられないから……」

前回も説明したが詳しく言うと、実は恭弥さんが家に帰る日の前日のこと。

連休の予定を立てようしている最中に起こった出来事だった。

「いや、先日休みを貰うからってお断りしたはずなんですが……」

「そうなんだけど、お相手の方が急用だからって……」

顧客の知り合いから、諸事情で打ち合わせの都合がどうしてもと彼に電話がかかってきた。

私は気にしないでと合図をする。

すると彼は申し訳なさそうに平謝りのポーズを向けた後、渋々合わせることになった。

本来一週間の予定だったのが、短縮されて三日間という結果に……。

「ねぇ、次、いつ帰って来るの……?」

「次は結婚記念日だから……まぁ、一ヶ月後ぐらいかな?」

「……うん」

彼が仕事で忙しいのは仕方ない。

けれどすごく寂しいのに、素直に言えなくて悶々としている自分もいる。

「またすぐ会えるさ。いつも通り毎日LIMEでメッセージ送るし通話もするから。ほら、泣かないで?」

「うん……」

恭弥さんは、私が泣きそうになってるのを察知していた。

そんな私の表情を見て、少し困り顔になっている。

「それに、次の休みは代休としてきっちり確約させてるから……ね?」

「うん……」

彼の右手で、私の頭をポンポンしながら宥めている。

その優しい手が、私を更に涙が溢れそうになるのを加速してしまう。

「あ、そうだ! 忘れないうちに……」

何かを思い出したのか、彼は車の後頭席からゴソゴソと紙袋ごと取り出す。

少し照れながらその紙袋を私に差し出した。

「空に渡すものがあった。はい、コレ……」

「……?」

私は紙袋を見て何だろうと疑問に思う。

お土産というわけでもないし、渡される理由が見つからないからだ。

「まぁ……中身は今開けても良いよ。というか、今開けてほしい」

恭弥さんがそう言うので、とりあえず紙袋から出すことにした。

プレゼント用に包まれたラッピング袋のリボンを外して中を覗く。

「え……? コレって……」

「この前LIMEで通話してた時に『欲しい』って言ってただろ? 人気の商品だから予約して買ったんだよ」

私が欲しかったもの……それは「テーブルランプ」だった。

しかも私の好きなキャンプメーカーが、有名デザイン会社とのコラボ商品として販売されていたもの。

「でも、どうして?」

(今日って何の日だっけ? そもそも何か特別なことあったかな?)

本当に心当たりがない……。

私の頭の上にクエスチョンマークがいっぱい浮かぶ。

「空……忘れてるかもしれないが」

「え?」

「お誕生日、おめでとう」

「へ?」

私は慌ててスマートフォンのロック画面を見る。

日付けを確認すると、本当にこの日だった。

(あっ! そういや、今日だった!)

もう、彼のデートばかりのことですっかり忘れてた。

今日は、私自身の誕生日だったことを……。

「さっき行った店でコレを取りに行ったんだよ。ただ、使い方とかラッピングの相談してる内に話が盛り上がっちゃって。このランプ、どうかな?」

(だから、あの店員さんと話し込んでたのはコレの為だったんだ)

「うん、嬉しい……。ありがとう」

嬉しくてまたさっきよりも溢れ泣きそうになるどころか、もう涙が限界を超えて自然と流れてしまった。

「もう、すぐ泣くなぁ……。この子は」

恭弥さんはフッと少し苦笑いしながらそっと私の身体を寄せ、軽く抱き締めた。

「……!」

彼の身体に包まれると、やっぱり温かい。

(こんなの、反則だけど……このままずっと包まれたい……)

「空、愛してるよ」

「うん、私も……」

(好き……)

私は聞きたかった言葉に恥ずかしながら返事をする。

はにかむようなぎこちないセリフだけど、なんとか伝えられたと思いたい。

「空……」

「……っ!」

恭弥さんは、目を閉じている私のおでこに軽くキスをする。

(……~~!)

「顔、赤くなってる」

彼からの愛情の印を受けたとはいえ、やっぱり恥ずかしいものだった。

 ――そろそろ出発時、彼は車へ乗り込んだ。

「じゃあ、そろそろ行くわ」

「うん……。気をつけて行ってね」

「俺の家に着いたら、またLIME送る。空も体調崩さないようにな」

「うん、恭弥さんも……。行ってらっしゃい」

「行ってくる」

そう言って恭弥さんは少し手を振り、彼の車のエンジンをかけて出発した。

私は、彼の車の姿が見えなくまで手を振って見送った。

今までの魔法が解けるかように、また一人で過ごす時間に戻る。

 ◇ ◆ ◇

家に入って、リビングのソファーに腰掛けた。

私は恭弥さんからのプレゼントを見つめながら、抱き寄せてくれた時の余韻に浸っていた。

このテーブルランプは、いつか持ちたいと憧れていたキャンプ用品の一つ。

同じランプでもいつも使用しているものは『リトルランプ』。

別のキャンプメーカーの製品で、スタイリッシュでシンプルな筒になっていて灯りも小さいランプ。

(これはこれで、お手頃な軽さだから持ち運びには良き)

だけど今回のテーブルランプは、曲線美が特徴の綺麗なランプだ。

いわゆる、中世から近代ヨーロッパにありそうなレトロ調のランプ。

それを使える日が、待ち遠しい。

(そうだ、次回のキャンプの時に使ってみよう!)

テーブルランプを使ったら、きっと長く眺められるだろうなぁ。

でも私の願いは、恭弥さんからもらったテーブルランプで一緒に過ごす日々を灯したい。

——そんな日を待ちながら火がついていない新品のテーブルランプをまた眺めている。

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