Home / 文芸 / ソラと庭ごはん / 第三話 和食 de 庭キャンプ(その三)

Share

第三話 和食 de 庭キャンプ(その三)

last update Huling Na-update: 2025-05-22 10:31:49

 ――シュッ、シュッ!

その側で、ケトルの口から吹き始めた。

(あっ! そろそろ、お湯が沸く頃になるなぁ)

ご飯の蒸らしもそろそろ良い感じだろう。

メスティンを耐熱の手袋で網から引き上げた。

(開けるのは、味噌汁用のお湯を入れてからにしよう)

ケトルの口から湯気がどんどん吹き出ている。

お湯が沸いた合図だ。

その取っ手を手袋したまま掴む。

味噌玉を入れたシェラカップへ、濃すぎない程度にお湯を六分目ぐらいまで注ぎ入れた。

お箸で混ぜ、固まっている味噌を溶かしていく。

メスティンの蓋を開けると、湯気の中から覗き込むお米の艶が綺麗に光っていた。

(今回もいい感じに炊けた証拠だ)

炊けたお米の半分くらいをプラスチック製のお椀へ移し入れる。

(よし、これで和食キャンプ飯の完成!)

ここでおさらいとして、今日のお品書きを紹介しよう。

ご飯、味噌汁、白菜ときゅうりの漬物、メインは鯵の干物焼き。

一汁一菜の雰囲気はあるけど、一人で食べる分には充分な量だろう。

(では、頂きます)

ごはんを食べる合図を呟きながら、手を合わせて食事を始めることにした。

(まずは、味噌汁から啜るとしよう)

私は猫舌で、熱いものは簡単に飲めない。

フーフー息を吹きつつ、汁物からゆっくり味わう。

やはり、外で飲む味噌汁も温かい。

風が時折吹いていて少し冷え込むから、より感じやすいのだろう。

(うん、味噌と一緒に鰹の粉を入れて溶かしているけど、意外とほんのりと出汁が効いている!)

ご飯を一口食べたあと、白菜の漬物を取って一口運ぶ。

白菜の白い芯の部分をメインに漬け込んだもの。

その甘みと白だしが口の中から身体へ流れるように伝わってくる。

(あぁ、だしの優しさが染み込むぅ……)

もう一つの漬物、今度はきゅうりを取って一口。

(きゅうりは、白菜と同じく浅漬けの定番の一つだし、合わないわけが無い)

さてお待ちかねである主役の出番、鯵の干物。

最初に右側の真ん中の骨をめくるよう取り除き、身をほぐしていく。

その時点で、身のふんわり感が箸伝手で感じている。

(あ、この感じだと、焼き加減はバッチリだ)

ほぐした鯵の干物の身をひと口分箸で取って、食べてみる。

(うわぁ……これは美味い! 家のグリルやフライパンで焼くのと違って、炭で焼く特別感がある!)

余りにも感動してしまった。

身のふんわり感と味の美味しさにほっぺが落ちそうにもなる。

(これは、ご飯が進んじゃうよ……)

干物の塩気が、食欲を沸かしてくれる力を生み出している。

そして無心になって頬張りたくなるくらいだ。

いつの間にか、どんどん口の中へ運んでいく。

もちろん、味噌汁も忘れずに飲んでいる。

味噌汁の中にあるワカメも、ちゃんと元の姿であろうの形に戻されていて、噛みごたえもある。

そういえば、キャンプで和食を作っている人ってどれぐらい、いるのだろうか。

そんな感じに、ふと疑問が浮かぶこともある。

(よく考えてみたらキャンプとはまた違ってくる話だけど……。コンロも無かった時代に生きていた昔の人は、七輪だったり串に挿して焚き火に直接焼いていたりしていたんだよなぁ……)

今の時代は電気や機械の発達でかなり便利になっている。

けれど少しの手間でも美味しく作って、それで幸せを得られるなら本望だと思う。

(恭弥さんは料理もよく作る人だから、栄養面は大丈夫かと思う。でもたまには、彼の食事にこんな和食を出してあげたいなぁ)

ここで読者のみんなは察したのかもしれない。

いつもなら、恭弥さんとのやり取りを交わしているはずだということを。

なぜ今回はLIMEの内容を話さないのに、彼の話題を出しているのか?

そう、ようやく我が家に帰ってくる時がやってこようとしている。

(運転中はお邪魔になっちゃう。けれど帰ってくると思うと嬉しい)

今日は家に帰るための移動日。

その上、車で高速道路を走っている最中だからだ。

(今頃、彼の好きな音楽をかけながら、頑張って運転しているかなぁ?)

サービスエリア休憩を挟みながら、きっと休日を楽しみに向かっているのだろう。

ちなみに最後に帰ってきたのは、年末年始の一週間のお休みのときだった。

つまり、約三ヶ月振りだ。

ワクワクと同時に、久しぶりに会うのだから緊張してしまうかもしれない。

(さて、恭弥さんと会ったら、何をしようかなぁ?)

彼との再会まで、やりたいことをリストにしなくっちゃ。

沢山あって迷いそうだけど、ここは話し合いながら決めたい。

でもその前に、雪絵さんの依頼を済ましてからじっくり考えることにする。

依頼も一応、納期があるし締切までに間に合わせておかないといけない。

(あ、そうだ!)

この和食キャンプをネタに使って、依頼されたコラムを書き上げてみよう。

せっかくこうやって経験をしたからには、体験レポートいう形で綴ってみようと思う。

特に、鯵の干物と味噌玉をメインの題材に書きたいことも決まった。

作り方と共に、炭火で焼いたときに先人の暮らしを浮かんで思ったことなどを……。

――和食から得た発想と新たな発見を見つけ……今日もごちそうさまでした。

Patuloy na basahin ang aklat na ito nang libre
I-scan ang code upang i-download ang App

Pinakabagong kabanata

  • ソラと庭ごはん   第十二話 ラムチョップと生春巻き(その四)

     ある程度ごはんの蒸らし時間も過ぎた。そろそろ開けてもいい頃合いだろうと、メスティンの蓋を開ける。あとは、保冷剤の入った小さめのクーラーボックスから、ラップでアルミ皿ごと包まれている生春巻きを取り出したら、全て出揃った。(よし、これで全部完成して揃った! 冷めない内に頂くとしよう)「いただきます」まずは前菜の生春巻きから頂こう。本来なら、お店や惣菜についているのはスイートチリソースをつけて食べることが多い。けれど、私の場合は違う。少し醤油の味が欲しい理由からポン酢を選んでいる。ポン酢でも種類があって迷うけど、ここは好みだと思う。ちなみに、私は柚子ポン酢をオススメしている。(一本目の真ん中の部分を取ろうかな)割箸で三等分に切った春巻きを掴み、ちょこっとだけきゅうりなどの野菜の方につけて口へ運ぶ。(ん! 野菜のシャキシャキとサッパリとしたポン酢の味に、少し塩気のあるスモークサーモンが良い塩梅だ!)もちろん、ライスペーパーのモチモチ感がある。もう一つと先程取った一本目の右端っこを取り、同じようにして食べる。端っこは、どうしても具材が少ない。その分、ライスペーパーのモチモチ感が一番分かりやすいだろう。さて、いよいよお待ちかねの、メインディッシュであるラムチョップ。ローズマリーの香りとラムのほんのりとした獣の匂いが漂っている。骨を右手に取り、左端も左手で添えて、フライドチキンを食べるような食べ方で一口かぶりついてみる。(おっ! これは、柔らかい……!)オリジナルスパイスがかかっただけでも、すごく美味しい!お好みでソースをつけてもアリだ

  • ソラと庭ごはん   第十二話 ラムチョップと生春巻き(その三)

     ようやく夕方の四時を回った。(あっ、そうだ! ラム肉は焼く前に、常温に戻して置かないと!)忘れないうちに、お肉だけ先に冷蔵庫から取り出しキッチン台に置いた。理由は中に火を通す際、生焼けを防ぐためである。料理の準備を完成した私は、外へ出てメッシュタープを立てに外へ出る。しかし……夕方とはいえど暑さはまだ残っている。(うぅ……蒸し暑いなぁ)そこで私は、対策を立てることにした。首に冷やしタオルと紐で掛けられるファンを装備して暑さを和らげる作戦だ。少しでも涼しく感じながら作業が出来たら割と動きやすくなる。その二つを首にぶら下げて外へ出る。(最近買った虫除けスプレーには、レモンとかが漂っている……いい香り)足元や腕周辺に服の上から掛けてもいい虫除けスプレーも撒いた。メッシュタープや焚き火台、チェアやテーブルといつものように外の収納庫から道具を取り出す。メッシュタープをいつもの所定地に立て、テーブルとチェアを設置する。焚き火シートを敷いて焚き火台を乗せ、乾燥して開いた松ぼっくり二個と小さめの炭や細く切った薪を並べる。火を付ける前に家の中から食材や食器一式、他にナイフなどの道具。それから、外で電子本を読めるようにタブレットも持って準備を進めた。(んー……こんなところかな?)これだけあれば充分だし足りない分は、側にある収納庫から取り出そう。まずは、焚き火の火を付ける作業からだ。時間が少しでも惜しいしすぐに火を作りたい。その手段としてガスバーナーで炙ることにした。火が少しづつ大きくなり始め、追加として少し大きめのサイズの薪を足していく。(あとは、火が整

  • ソラと庭ごはん   第十二話 ラムチョップと生春巻き(その二)

     さて、話は調理の方に戻そう……。今回はスキレットで焼くため、塩胡椒と乾燥ハーブを塗して置いておく方法で行う。お肉を焼く工程には、しっかり下味をつけることが大事だ。私一人で食べる分量として、二本分だけ用意をする。(まずは白い脂の部分を……)火が回りやすくするために骨のついていない脂部分を、包丁で均等に軽く切り込みを入れる。その後、下味をつけるのだが……羊肉の食歴が初心者レベルの私。そんな人でも使える味付けスパイスを選んだのが、洋食をメインとしたお肉専用のオリジナルスパイス。サラサラと軽く、表裏のお肉に振りかける。(おぉ……相変わらず、カレーのスパイスにも似た香りが)中のスパイスは瓶に貼り付けてあるラベルの説明によると、塩と胡椒、ガーリック、ローレルなどの色んな種類の粉末が入っている。まるで料理を美味しく手助けしてくれる、魔法の粉のようだ。それにプラス、私はある乾燥ハーブの入れものを取り出した。そのハーブは前回、恭弥さんが使ったお肉料理でお馴染みの細長い葉が沢山入っている。スッキリとした爽やかな香りを持つ、ローズマリーだ。特に、淡白な鶏肉やラム肉に風味付けとしてもってこいの香草である。(おっ、良い感じのスキっとする匂い)それを振りかけ、お肉に馴染ませておき、アルミのお皿に移して一旦冷蔵庫へ入れた。次は副菜として作る「生春巻き」だ。幼少期、大型スーパーにあるサラダや惣菜コーナーで初めてそれを買って食べた思い出がある。子供ながらもすごく美味しかったのを覚えている。以来、ここに移り住むまではスーパーで見かけ食べたくなったら買うことにしていた。(え? コレって自分でも……?)

  • ソラと庭ごはん   第十二話 ラムチョップと生春巻き(その一)

     「うぅ~……暑い……」そろそろ九月を迎え入れようする、ある残暑の日。午前十一時を回り、もう少しでお昼を迎える。私はいつものように、自宅内の仕事場で校正の作業をしていた。エアコンは効いているものの昼間に近づくにつれ、外からの暑さが更に増していく。(今年の夏も、やっぱり暑すぎる……)真夏も苦手だけど、残暑も同様……いやより苦手である。特に湿度の高い暑さやられが、私にとってジワリと身体から体力のダメージを受ける。山奥でも家の中には、エアコンがあるから涼しい。それでも一歩、家から外に出たらやはり暑い。(こういう時こそ、何かスタミナがつくようなものを食べなきゃ……)私は何か相応しい食材があるかを考えてみる。スタミナの言葉でイメージできる食材を浮かぶうちに大体答えが決まっていた。当たり前のような答えで結論からいうと「肉料理」。あとは味付け次第だろうけど、単純過ぎるかなと思ってしまう。(スタミナがつきやすい食べ物といったら何だろうか? 一度冷蔵庫を見てから判断を……)「あっ!」ひとつ、思い出したことがある。私の記憶が正しければ『アレ』を買っていたことだ。キッチンへ行き、冷蔵庫の中を確かめることにした。すると思った通り、例の『アレ』を発見!(ふふふ……コレがあれば大きめのスキレットで……)トレーの中に入っていたこの食材をみて、心の中で少しニヤけている。時計を見るとそろそろお昼ご飯である。しかし炎天下の中、庭で料理をするのに私の体力ではかなり厳しい。無理矢理に行うと、熱中症にもなりかねない。連

  • ソラと庭ごはん   第十一話 縁側に囁く夜風のような素麺

     (今日も真夏日かぁ……)私は、リビングにあるテレビで、夕方のワイドショーを見ていた。最初の特集が、現在の天気にまつわるもので各地の猛暑日などを取材している。(都会の猛暑は、いつ見てもバテそうだ……)という私も、結婚する前は都会に住んでいた。コンクリートから出る熱気に、体力が消耗して負けてしまう。そう思うと、この暑さでよく通勤や通学していたものだと感心してしまった。今日はオフの日……というよりも、お盆期間に入った。私の夏休みは、今年の場合だと五連休。旅行に行く分には良いのだが、何かをしたい訳でもない。ちなみに恭弥さんは、明日から家に帰ってくる予定だけど三連休しかないらしい。(早ければ今日の夜に着くと、彼は言っていたけど、どうかしら?)理想としては安全運転でありつつ……だけど、なるべく早く帰ってきて欲しい。ソファーにあった丸いクッションを抱え、彼の帰りをドキドキしながら待っている。(あ、そうだ! 今日の晩御飯……まだ何も用意してない)ボーッとテレビを見ている内に、気がつけば夕方の六時をとうに回っている。まだ、メニューを決めていなかったことに気づいた。ソファーから立ち上がり、キッチンの冷蔵庫やパントリーの棚を開ける。今、何があるのかと食材を確認する。(今日のお昼間もかなり暑かったし、何かさっぱりしたものが食べたくなるなぁ……)パントリーの棚を見ていたときに、ある食材を発見した。未開封で、中に白いものが束として入っていた透明

  • ソラと庭ごはん   第十話 ボロネーゼと夏の大三角(その三)

     食事後、焚き火の中にやや太さがある薪を二本追加する。ご飯だけではなく、星空を見るための庭キャンプ。特に夏の大三角といわれるものや季節の風物詩である、七夕といえばお馴染みの天の川が見えやすい時期だ。夕方六時半とはいえ、そろそろ夕日が落ちてしまう時間になる。(よし、そろそろ明かりをつけよう)私は、小さめのLEDランタンを先につける。先日恭弥さんから誕生日プレゼントでもらった、テーブルランタンをつけることにした。テーブルランタンは、OD缶という上側に丸みがあるガス缶を取り付けて使用する。ちなみにODの意味はOUT DOORの略のこと。ホームセンターやアウトドアショップ専門店で売られている。(ランプ取り付けたら、まずはガス栓ダイヤルの確認から……)ガス栓がマイナスになっているか、チェックしておく。そして、ダイヤルの反対側にある火力調整レバーを左に寄せていよいよ着火だ。ランタンの着火する場所の隙間でも、着火しやすい先端が伸縮出来るライターでカチカチと火をつける。ライターに火がついた瞬間、着火場所の隙間を狙う。ガス栓のダイヤルを回しながら、ランプの火をポッと灯していく。あとは、私好みの灯火の形や大きさを調整して完成!(あぁ、良い眺め……)ランタンを見つめてはウットリしている。他にこれも初登場であろう、オイルランタンも導入することに。オイルランタンは別の日にでも使うから、機会があれば説明できたらと思う。火をつけ終わると、メッシュタープの柱にランタン用太めのハンガーを引っ掛け吊るした。夜の七時を過ぎると、夕焼けの出番も終わって暗くなり始めている。これからが夜の始まり

Higit pang Kabanata
Galugarin at basahin ang magagandang nobela
Libreng basahin ang magagandang nobela sa GoodNovel app. I-download ang mga librong gusto mo at basahin kahit saan at anumang oras.
Libreng basahin ang mga aklat sa app
I-scan ang code para mabasa sa App
DMCA.com Protection Status