Share

続く体調不良

Author: はるさめ
last update Last Updated: 2025-12-07 12:38:26

翌朝

くしゅんっとジェイドが朝から何度もくしゃみをしている

「大丈夫?」

「はい、これぐらい大丈夫ですよ」ズビッ

「具合が悪いなら早めに言え」

「いいえ、具合悪いなんてことありませんよ」ズビッ

なんだか様子がおかしいが、朝ごはんはパンとべーコンエッグに豆スープをしっかり食べたのだが、昼頃…

「う、頭が…」

「ジェイド、顔赤いよ?熱測るから」

マリはおでこに手の甲をくっつける

「うん熱がある。ジェイド、寝てなきゃダメだよ」

「うう…」ぐすっ

ジェイドは熱を出すとなぜか涙が止まらなくなる

「大丈夫だよ、見た感じただの風邪だから。風邪薬作るからね」

マリは本を見ながら万能風邪薬を作り始めた

「えっと、ムーンウォーター、古代樹の葉、夜行茸、コガネハッカ、ハツカヨモギに巻きサソリっと」

鍋に次々と材料を入れていく。ボコボコと泡が立つ音がする

「ジェイドさんは大丈夫なのか」

「うん、大丈夫だよ。この薬を飲んで1日寝ていれば治るから」

「そうか」

マチもなんだかんだ言って心配しているようだ。マリはすりおろしたボガルンダをジェイドの元へ持っていき

「ジェイド、起きて食べれる?」

「うぅ…マリ様…」

完全に弱りきったジェイドがゆったりと体を起こした

「薬はもうすぐで出来るからね。ほら、あーん」

もぐっ…「あ…ありがとうございます」ズビッ

赤い顔が更に赤くなった

「ご主人…薬が出来たぞ…………食わせて貰いやがって…」ボソッ

「あ、マチありがと。ジェイド、全部食べれそうになかったら先に薬飲もう?」

「はい…」

マリは茶色の薬を飲ませる。とても苦そうだが良薬口に苦し、だ

「ゴホゴホッ」

「大丈夫?ゆっくりでいいから」

なんとか全部飲みきって、マリがまたジェイドを寝かせた

「明日には良くなってると思うよ」

「すみません…ううぅ…」

大粒の涙がジェイドの顔を濡らす。熱を出すとまるで子供のように必ず泣いてしまう。生理現象なのだろ「大丈夫、眠れるまでここにいてあげるよ」 

結果、3分くらいで眠りに落ちたジェイド。気づけば朝からどたばたしていた

「ご主人は大丈夫か、疲れてないか」

「うん、大丈夫。心配してくれてありがとう」

絶対に良くなるから頑張れ…ジェイド、あと少しの辛抱だ

「マリ様のおかげですごく元気になりました!昨日はご心配とご迷惑をおかけしました…」

「治ってよかったね」

「はぁ…よかったな」

すっかりと顔色と声色も良くなり元気を取り戻したジェイド。よしよし、一件落着だ

翌朝、3人共に日が昇る前に起き朝食を済ませた。その後は本を読んだり紅茶を飲んだりして過ごした。寒さが増して、雪もどんどん降り積る。こんな日は部屋の中でゆったり過ごし暖かいものを食べたくなる

「よし、グラタンでも作ろうかな」

玉ねぎとドクモタケを薄切りにし、ブルーディアーの肉に塩コショウを振り1口大に切る。マカロニは先に茹でておく。フライパンにオリーブオイルを入れて熱し、肉が黄金色になるまで熱する。玉ねぎとドクモタケも入れ油を全体にまわす。

 

「うんいい感じ!」

新しいフライパンにバター、小麦粉を入れクリーム状になるまで熱する。そこに牛乳を入れて馴染ませホワイトソースができる。さらに全て移しチーズをたくさんかけて、溶けるまでオーブンで焼く

「いい匂いだな」

「ブルーディアーのマカロニグラタン、完成!」

「ブルーディアーって、ツノが光る鹿ですよね。美味しそうです!」

ポチカ(パン)も一緒に

「いただきます!」

「はふっ…熱々だな、ソースとチーズが溶け合って美味い」

「ソースにコクがあって美味しいですね」

まろやかでクリーミー、コクがあるソースに食感がもちもちのマカロニ。表面のチーズは香ばしく塩気がありとても美味しい。肉も柔らかく、口の中でほどけていく

「うん、どれもマッチしてるね」

満足のいく食事だった。お腹いっぱい食べたので食後は眠気が襲う

「ムニャムニャ…すごく眠い」

ふあぁ…っと1人があくびをすると移るのだ

「ご主人、1度寝よう」

「みんなでお昼寝しましょう…」

3人川の字になってベッドに横になるとすぐに眠りへ落ちてしまった

「ふへへ…」

なにかの夢を見ているようだ。皆幸せそうな顔をして寝ているのだった。

マチがハッと気づいて起きると、まもなく日が暮れるところ。2人はまだ寝ている。晩御飯でも作るか。マチが作るご飯は豪快で、とにかく量が多い。

いい匂いがして目が覚めたマリとジェイド

「晩御飯、できてるぞ」

「うわ、こんな時間まで寝てたよ。ありがとう」

「ミートボールと紫かぼちゃのスープだ」

「すごく美味しそうですね」

とにかく大きいミートボール。ソースが絡まってテカテカと輝いている。紫かぼちゃのスープは湯気を立ててとても美味しそうだ

「いただきます!」

「ミートボール、甘じょっぱいソースがとても美味しいです!」

「紫かぼちゃのスープも濃厚で美味しいよ」

「それは良かった」

紫かぼちゃ、と言っても皮が紫なだけで中身は普通のかぼちゃと変わらない

「ありがとうね、マチ。すごく美味しいよ」

「そうか」

 

マチは嬉しそうな表情を見せた。いつもと変わらない幸せな日常、いつまでも続くように…と3びきのけだまスライムは見守っていた

朝ごはんを済ませ、のんびりフルーツティーを飲みながら読書をしていると、ドンドンとドアを叩く音がした

「入っていいよ」

 

ドアを開けるとそこに立っていたのは、紫で綺麗に切りそろえられた髪に大きな獣耳、尻尾。金色の目がマリを捉えていた

「ご主人様…ずっと会いたかったのです!!」

荷物をドサッと置くとマリに勢いよくその娘は抱きついた

「ダリア、お帰りなさい。待ってたよ」

「ご主人様、ダリアが居なくて寂しくなかったですか?」

「寂しかったよ」

「やっぱりそうですよね、もう帰ってきましたから安心してください」

マリに抱きついたまま離れないダリア。よっぽど心細かったのだろう

「マチ様とジェイド様に変なことされてないですか?大丈夫ですか?」

「おい、変なことってなんだ」

「何もしてないですよ」

2人は少し不機嫌になった

「なら良かったです、私のご主人様…」

「よしよし、よく頑張ったね」

自分より背の高いダリアの頭を撫でるマリ。ようやくダリアがマリを離すと荷物を二階の部屋に運んだ。2階から降りてくると

「これ、お土産です」

と、マジックバックと似た作りの麻袋を出した。中身を開けてみると

「これは米だね」

「ヒイズル国に行ってきたのか」

ヒイズル国は東にある島国だ

「はい、そうです。お世話になった方から沢山買ってきました。あと…これもあります」

「味噌と醤油、それに胡椒も!貴重品だね」

「どれも沢山買ったので大丈夫です。何年か持つでしょう」

「すごいねダリア、ありがとう」

マリからお礼されるとバサバサと嬉しそうにしっぽを振るダリア

「ダリアからお土産話しを聞くの、楽しみにしてたんだ」

「お土産話し、ですか。いい話ではないですが…悪魔族がヒイズル国の隣国アヌスビヌス王国の一部を占領しているとの事です」

「悪魔族か…だんだん増えてきたのかな」

「魔王との戦いも近いかもしれません」

「はぁ、厄介だなぁ。私はのんびり暮らしたいだけなのに」

「魔王を倒せるのはご主人様だけです」

「そうだね、世界の平和を守るためにも働くしかないなぁ」

面倒くさそうにするマリ。のんびりライフを壊されるのが1番嫌なのだ

「ご主人様、そう言えばそんな腕輪していましたっけ…」

「あ、マチとジェイドが買ってくれたの。綺麗でしょ」

 

ムスッとするダリア

「私だってマリ様にプレゼントあげたかった…」

「お土産だけで充分だよ。凄く嬉しいもん」

「本当ですか!私のお土産が一番ですか?」

マリの事を熱い視線で見るダリア

「う、うん。そうだね」

「よかった…!」

満面の笑みを浮かべるダリア

マチとジェイドはライバルが増えた…と不服そうだった

お昼になってマリが料理を作ろうとしたが、ダリアが「私に任せてください」と、そそくさと料理の準備を始めた

「ダリアに任せるよ」

「ありがとうございます、ご主人様」

5年前はマリの身長と変わらなかったが、今ではマリの身長を超えてマリが見上げるようになった

「獣人族の成長はあっという間だなぁ」

「獣人族ですからね。人間とさほど寿命は変わりありません。私たち長命種は5年では何も変わりませんから羨ましくもありますね」

とジェイドは言う。人間や獣人族は短命種。エルフやドワーフは長命種だ。ハイエルフは…不老不死だ

「私5000年前から何か変わったかな…」

と頭を悩ませるマリ。そんな事で話していると台所からいい匂いが漂ってくる

「何作ってるんだろうね」

「ダリアはご主人と同じぐらいなんでも作るからな」

ダリアはマリの専属メイドだ。「出来た…!」とダリアの満足そうな声が聞こえた

「コカトリスのデミグラスオムライスです!」

卵の焼けた匂いとデミグラスの濃厚匂いが漂う。さらにオニオンスープ付きだ

「さぁ、食べてください」

「いただきます」

ふわとろ半熟卵と濃厚なデミグラス。それにケチャップチキンライス、どれもが絶妙なバランスを取っている

「うわ、美味しい!料理の腕あげたなぁ」

「うむ、美味いな」

「卵がトロトロだ…美味しいですね」

卵とデミグラスの量が多いので、もはや飲めるように食べられる

「ご主人様に喜んでいただけて良かったです!」

ダリアが嬉しそうに尻尾を振る 

「私のことばっかり見てないでダリアも早く食べなよ。冷めちゃうよ」

「嬉しくてつい…いただきます」

どうやらダリアはオムライスが好物のようだ。食べるスピードが早すぎる

「オニオンスープも美味しいね」

「んぐ、よかったれす」

「こら、食べながら喋らないのー」

 

とても賑やかな昼ごはんだった。午後からマリとジェイドは魔法薬の研究をする。マチは読書、ダリアは部屋の掃除だ。魔法薬は透明薬に記憶薬、どれも難しいものだ

「…これに賢者の実をひとつ入れて、マンドレイクの種5つ。ハネモチ草を入れたら完成ですね!」

「無眠薬だ」

無眠薬はその名の通り、眠らなくても良くなる薬で研究職や徹夜で働く者などに良い。ひと瓶飲めば眠気が来なくなり、脳の働きが活性化される。

「うん、いい薬ができた。今度ギルドで売ろうかな」

「これは絶対に売れますよ!」

二人で魔法薬の話で盛り上がっている。

晩御飯は何を作ろう、暖かいものにしようかな…とダリアは掃除をしながら考えていたのだった

ダリアは晩御飯のことを考えていた。

(そう言えば…ヒイズル国の海で狩ったキングクラブがあったな。それを使って暖かいものでも…)

徐々に日は落ちていく。日が落ちると共に粉雪が降ってきた。こんな日は暖かい食べ物がちょうどいい

「ご主人様、台所お借りしますね」

ダリアは調理を始めた。白菜に豆腐、キノコに長ネギ

を大きな鍋に入れて、味は醤油ベースにする。鍋がグツグツと音を立てる。そこにキングクラブの身を投入するとあっという間に完成した

「皆さん、キングクラブの醤油鍋です。召し上がってください」

ぷりっぷりのキングクラブの身が食欲をそそる

「いただきます!」

「…カニを食うのは初めてだ」

「私もです」

「え、すごく美味しいよ?」

と、マリが食べて見せた。

「ん!旨みが凝縮されててすごく美味しい!これぞカニだね。ほら、2人も食べてみなよ。騙されたと思ってさ」

「分かった。もぐもぐ…うん、美味い…!これは美味いな。身がほどける」

「もぐ…カニってこんなに美味しいのですね!身が詰まってて美味しいです」

カニの味は1度食べると病みつきになってしまう。何かの魔法にかかったみたいに。

「鍋食べるの、ほんとに何百年ぶりだろう。こんなに美味しかったっけ」

「うん、スープにカニの旨みが溶け出てる」

「ご主人様、私もいただきますね」

「いいよ」

「いただきます。んん!カニはやっぱり美味しいですね!皆さん、沢山取ってきたのでまだまだありますから…どんどん食べてください!」

ある程度具材を食べたらそこにカニ味噌とご飯を投入した。

「うわ、絶対美味しいじゃん!」

「ん!これも美味いな、旨みがさらに強くなってる」

「鍋がクリーミーで米と合いますね!」

「美味しいよダリア!」

「もぐもぐ、それは何よりです」

みんなが楽しそうに鍋を囲んでいる光景にダリアは微笑んだ。食べ終わった後はみんなで今日はこうだったね、とか話しながら片付けた

(いつまでもこんな日々が続きますように…)

みんながそう願った

夜の闇が深まってくる。そろそろ明日に備えて寝る時間だ。

「明日はギルドへ行って魔法薬の買取をしてもらう予定だし、もう寝ようか」

4人仲良く歯を磨いて、おやすみなさい。良い夢を。

次の日の朝、ご飯に漬物、焼き魚に味噌汁。和食がダリアの手によって振る舞われた。いつもパンで済ませていたから、たまには和食もいい…と思うマリなのだった

Continue to read this book for free
Scan code to download App
Comments (1)
goodnovel comment avatar
大橋正紀
鹿のグラタン... 蟹鍋... 食欲が止まりません٩( ᐛ )و 先生の作品読んでいると晩御飯後なのにお腹減ってくる╰(*´︶`*)╯♡
VIEW ALL COMMENTS

Latest chapter

  • ハイエルフと魔法界でのんびりライフ   久々のギルドへ

    幻樹の森から西に30分歩くと、光の街と言われるシンシャ街がある。そこの冒険者ギルドへ何年かぶりに顔を出す「久しぶり」ギルドの受付嬢であるエルフが目を見開いた「あらマリ様!お久しぶりでございます!ギルドマスター!マリ様がお越しですよ!」ギルド内がドタバタし、あちらこちらからコソコソ話しが聞こえる「あれって噂の…」「永玖の守護者!?SSランクのパーティーじゃねえか!」扉から出てきたのは茶色い髭を伸ばし、背は低いのに屈強なドワーフだ。「お前たち久しぶりだな!」「久しぶりだね、ゼヒネル」ゼヒネルと言うこのドワーフこそギルドマスターである「今日は何しに来たんだ?」「魔法薬と材料を買い取ってもらいたくてさ」「よしわかった!こっちへ来い」連れてこられたのは買取専門コーナーだ「今日はどんなものを売りに来たんだ?」「回復薬に透明薬、記憶薬、無眠薬…それと」「すごい量だな!」「あと、エンシェントドラゴンの爪と牙ににヘルハウンドの爪、ダイヤウルフの皮…あとミミックから出てきた宝石」「おお…これはすごいな」量が多すぎたのか応接室に案内されたのだった。どれもこれも高額で買取できるほどの品質でこれ以上のものは無いだろう「買取に少し時間がかかるが…それでも良いか?」「うん、街を探索してるからいいよ」ギルドを後にすると魔鉱石店に立ち寄った。マチは鉱石が好きだからだ「どれも良い品だな…」見極めている。特に星写しの魔鉱石に目をつけた「これは高純度の魔鉱石だな…しかも取れる場所がとにかく少ないんだ」(マチは石を見ているだけで楽しそうだなぁ…)マチは星写しの魔鉱石を買った。夜になると石の中に星座が写し出されるものだ。続いて紅茶の茶葉が売ってる店に来た。ジェイドが何かを買うらしい。「食べられるフルーツティー!?こんな物があるなんて…薔薇の紅茶もいい…買います!」こうしてジェイドは紅茶の茶葉を手に入れた。続いて向かったのはダリアの大好きなぬいぐるみの店だ「二ーブールのぬいぐるみ…可愛い…」二ーブールは主に綺麗な川に生息する動物で、カワウソに少し似ているのだ 。ダリアは二ーブールのぬいぐるみを購入し、とても満足そうな顔をした「よし、そろそろギルドに戻ろうかな」「ご主人は何も見なくていいのか?」「私はみんなの幸せそうな顔が見れて満足だよ」そ

  • ハイエルフと魔法界でのんびりライフ   続く体調不良

    翌朝くしゅんっとジェイドが朝から何度もくしゃみをしている「大丈夫?」「はい、これぐらい大丈夫ですよ」ズビッ「具合が悪いなら早めに言え」「いいえ、具合悪いなんてことありませんよ」ズビッなんだか様子がおかしいが、朝ごはんはパンとべーコンエッグに豆スープをしっかり食べたのだが、昼頃…「う、頭が…」「ジェイド、顔赤いよ?熱測るから」マリはおでこに手の甲をくっつける「うん熱がある。ジェイド、寝てなきゃダメだよ」「うう…」ぐすっジェイドは熱を出すとなぜか涙が止まらなくなる「大丈夫だよ、見た感じただの風邪だから。風邪薬作るからね」マリは本を見ながら万能風邪薬を作り始めた「えっと、ムーンウォーター、古代樹の葉、夜行茸、コガネハッカ、ハツカヨモギに巻きサソリっと」鍋に次々と材料を入れていく。ボコボコと泡が立つ音がする「ジェイドさんは大丈夫なのか」「うん、大丈夫だよ。この薬を飲んで1日寝ていれば治るから」「そうか」マチもなんだかんだ言って心配しているようだ。マリはすりおろしたボガルンダをジェイドの元へ持っていき「ジェイド、起きて食べれる?」「うぅ…マリ様…」完全に弱りきったジェイドがゆったりと体を起こした「薬はもうすぐで出来るからね。ほら、あーん」もぐっ…「あ…ありがとうございます」ズビッ赤い顔が更に赤くなった「ご主人…薬が出来たぞ…………食わせて貰いやがって…」ボソッ「あ、マチありがと。ジェイド、全部食べれそうになかったら先に薬飲もう?」「はい…」マリは茶色の薬を飲ませる。とても苦そうだが良薬口に苦し、だ「ゴホゴホッ」「大丈夫?ゆっくりでいいから」なんとか全部飲みきって、マリがまたジェイドを寝かせた「明日には良くなってると思うよ」「すみません…ううぅ…」大粒の涙がジェイドの顔を濡らす。熱を出すとまるで子供のように必ず泣いてしまう。生理現象なのだろ「大丈夫、眠れるまでここにいてあげるよ」 結果、3分くらいで眠りに落ちたジェイド。気づけば朝からどたばたしていた「ご主人は大丈夫か、疲れてないか」「うん、大丈夫。心配してくれてありがとう」絶対に良くなるから頑張れ…ジェイド、あと少しの辛抱だ~「マリ様のおかげですごく元気になりました!昨日はご心配とご迷惑をおかけしました…」「治ってよかったね」「はぁ…よか

  • ハイエルフと魔法界でのんびりライフ   お昼ご飯

    「そうだ、お昼ご飯食べていこうか」この村には人気の店がある。その名はジョリアン。モンテナ牛のハンバーグがとにかく美味いのだ「いらっしゃいませ、こちらへどうぞー」若い女性のウェイターさん、珍しく人間だ。 席に座るや否や「すみません、モンテナハンバーグ3人分ください」「かしこまりました」「ここのハンバーグ、本当に美味しいからね、一度食べたらやみつきになる」「確かに美味いよな」「匂いだけでパンが食べられそうです」ここのシェフはエルフで、500年間世界中の料理修行をして結果ハンバーグに辿り着いたらしい。ただのハンバーグ好きだ。「お待たせいたしました」鉄板に乗った大きなデミグラスソースのハンバーグとバケットが出された。湯気が上がり、ジューっと焼ける音がする「いただきます!」とても熱そうだが、熱いうちに食べなければ美味しさが逃げてしまう。切れ込みを入れただけでハンバーグから肉汁が出てくる出てくる。あむっと口の中に入れると肉汁が飲めるほどに出てきて、それでいてふわふわの食感、デミグラスソースのコクと味の深さ「んんー!美味っしい、たまんない!」「ぐ、肉汁がすごいな」「うわぁ口の中でとろけていきますー!」固いバケットが油の多いハンバーグとよく合う。3人はそのまま一言も喋らず黙々とハンバーグを食べたのだった。店を出たあともしばらく多幸感に包まれていた「はぁ…美味しかったなぁ」「まぁ、ご主人の作った料理には叶わんがな」「ん、そうですね。マリ様の料理がいちばん美味しいですから!」「んんー。そう言って貰えると嬉しい…な」ちょっと照れるマリ。その顔をガン見する2人。そうこうしているうちに日が暮れ、転送魔法で家に帰ってきた「今日はいろいろあって楽しかったなー」「本も買えたし、ご主人には思いがけないプレゼントを貰ったしな」「本当に嬉しいです、ありがとうございます」「いいよ、いいよ。2人からお返しのプレゼント貰っちゃったし」何だか、たまに村へ遊びに行くのも悪くないと思えるマリだった~翌日そろそろ雪が降る頃だろうと、マリ達はある準備をしていた。「ジングルベール、ジングルベール、鈴が鳴るー」マリは思わず歌ってしまう。そう、クリスマスだ。クリスマスツリーやリースなどの飾り付けをしていたのだ。サンタさんは来ないから、3人でそれぞれ好きな物を

  • ハイエルフと魔法界でのんびりライフ   魔族と悪魔

    魔族は主にエルフ、ドワーフ、獣人族など人間の亜種のことを指している。それとは違い、悪魔族また、悪魔は人に罠を仕掛け、悪の道に誘う。時には人を殺すこともある。その中でもいちばん強いのは魔王だ。魔王は「500年に一度の大厄災」と言われている。災害、疫病、餓死を世界中にもたらし、人間を極限までいたぶり殺すのだ「悪魔…もうそんな時期か」「どういう時期なんだ?」思わずツッコミを入れてしまうマチ「悪魔が出てきたって事は魔王もそろそろ出てくる頃だな、と思ってね」「魔王ですか…また大厄災がやってくるんですね」怖がりなジェイドは魔王と言う名が出ただけで今にも泣きそうになっている「大丈夫だよ、私強いから」「あぁ、ご主人の強さは確かだ。それに魔王を倒すのはご主人にしか出来ない技だからな」そうだ。この世界の神話では、赤い瞳を持つハイエルフは不老不死、脅威の再生能力を持ち、唯一この世界の大厄災である魔王を倒す魔法が使えると言うが…それは本当である。実際に500年前、さらに500年前の魔王出現の時もマリが倒している。と、そんな話をしていると「あぁ、お昼過ぎてる。長話しすぎちゃった…ご飯ってうかおやつの時間だね」あっという間に時間が過ぎた。「質のいい野いちごと野ベリー買ったから…パイでも作ろうかな」「いいな、そうしよう」早速マチはオーブンを温める「…甘いの大好きだから動くの早いね」「そ…そうか?」マリはあらかじめ買っておいたパイ生地にカスタードクリームと野イチゴ、野ベリーを並べ、生地を中心に寄せながら内側に被せる。「うん、そろそろいい頃だ」マチが溶かしておいたバターを塗り、焼き始めた「あぁ…いい匂いがしますね」甘い匂いがふわっと部屋中を立ち込める。ぐぅぅ…と3人の腹の音が鳴る「今のうちに紅茶の用意しよう」パイに会う紅茶の茶葉を用意する。焼けるのが待ち遠しい「キュッ…キュキュ!」しろも、くろも、もふこ達がいつの間にか姿を現した「みんなも食べたい?」「モキュ!」「そっか、じゃあみんなで食べようね」そんな話をしていると「パイが出来たぞ!」マチの喜びの声が上がる。パイの上から粉砂糖をまぶして「出来た、野いちごと野ベリーのパイだ!」かなり大きいが、きつね色に焼きあがったパイ生地。キラキラと光り輝く野いちごと野ベリー。6等分にに切り分けて

  • ハイエルフと魔法界でのんびりライフ   幻樹の森

    ここは幻樹の森非常に幻想的な森で、ありとあらゆる魔法動物や植物が生きているここで生活するハイエルフのマリ・レヴァンスもうかれこれ5000年以上生きているのだマリは朝起きると最初に窓を開ける「ふぁぁ…風が冷たいなぁ」ひんやりとする風を受けるこの時、ちょうど秋から冬になる所だマリの真っ白で長い髪が光を受けながらサラサラ動く白くきめ細やかな肌に赤い瞳。真っ白な体に赤が映える。その瞳がハイエルフの特徴でもある体は華奢で、本当に5000年以上生きているのかと疑問に思う者も居るだろう「ご主人、紅茶が入ったぞ」マリに声をかけたのは使い魔フクロウのマチとても大柄な男で、黒く所々青く長い髪をなびかせている。瞳も青く、湖のように澄んでいるマリは椅子に座った「ありがとう、頂くね」そこに寝起きであろう、もう1人の姿がある金髪を三つ編みで束ねた男のエルフだ 名はジェイド・グレイマン瞳の色は緑で、まるでこの森のような幻想的で潤んだ目をしている「マリ様、おはようございます…」「ジェイド、おはよう。よく眠れた?」 「…はい、よく眠れましたよ。ですが今朝は冷え込みが強いですね」3人でテーブルを囲んで紅茶を飲む。3人の沈黙を破るようにパチパチと暖炉の薪が音を鳴らす「ご主人、俺は今日も薪割りをするつもりだ。ご主人達はどうする?」「私はジェイドと一緒に薬草を摘みに行こうかなと思って」「そうかわかった、気をつけてな」そんな些細な会話をして、今日も1日が始まった!~「あ、ここにもハテナ草が生えてる。お?こっちにはフシギ草が」薬草取り。マリは魔法薬を作るのが得意だ趣味でもあるのだ「マリ様ー!あちらにダイヤウルフの群れが!」ジェイドが息を切らして走ってきた「よし、お肉も爪も牙も血も、全部頂こう!」ドドドドーーン!!マリが派手に魔法を使った。だが木々には傷1つ付いていない。そしてダイヤウルフが10頭手に入った「ダイヤウルフは名前と違ってお肉が柔らかくて美味しい…それに爪と牙と血は…薬に使える」マリは目を光らせている「ふふ、研究も捗りますね」ジェイドはその顔を見て嬉しそうだったそうこうしているうちに昼になっていたようだ。マチが帰ってきた「マチ、ただいま」「ご主人、おかえり」薪割りを終えたマチが外の椅子に座っていた 「今日はマリ

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status