Masuk翌朝
くしゅんっとジェイドが朝から何度もくしゃみをしている
「大丈夫?」
「はい、これぐらい大丈夫ですよ」ズビッ
「具合が悪いなら早めに言え」
「いいえ、具合悪いなんてことありませんよ」ズビッ
なんだか様子がおかしいが、朝ごはんはパンとべーコンエッグに豆スープをしっかり食べたのだが、昼頃…
「う、頭が…」
「ジェイド、顔赤いよ?熱測るから」
マリはおでこに手の甲をくっつける
「うん熱がある。ジェイド、寝てなきゃダメだよ」
「うう…」ぐすっ
ジェイドは熱を出すとなぜか涙が止まらなくなる
「大丈夫だよ、見た感じただの風邪だから。風邪薬作るからね」
マリは本を見ながら万能風邪薬を作り始めた
「えっと、ムーンウォーター、古代樹の葉、夜行茸、コガネハッカ、ハツカヨモギに巻きサソリっと」
鍋に次々と材料を入れていく。ボコボコと泡が立つ音がする
「ジェイドさんは大丈夫なのか」
「うん、大丈夫だよ。この薬を飲んで1日寝ていれば治るから」
「そうか」
マチもなんだかんだ言って心配しているようだ。マリはすりおろしたボガルンダをジェイドの元へ持っていき
「ジェイド、起きて食べれる?」
「うぅ…マリ様…」
完全に弱りきったジェイドがゆったりと体を起こした
「薬はもうすぐで出来るからね。ほら、あーん」
もぐっ…「あ…ありがとうございます」ズビッ
赤い顔が更に赤くなった
「ご主人…薬が出来たぞ…………食わせて貰いやがって…」ボソッ
「あ、マチありがと。ジェイド、全部食べれそうになかったら先に薬飲もう?」
「はい…」
マリは茶色の薬を飲ませる。とても苦そうだが良薬口に苦し、だ
「ゴホゴホッ」
「大丈夫?ゆっくりでいいから」
なんとか全部飲みきって、マリがまたジェイドを寝かせた
「明日には良くなってると思うよ」
「すみません…ううぅ…」
大粒の涙がジェイドの顔を濡らす。熱を出すとまるで子供のように必ず泣いてしまう。生理現象なのだろ「大丈夫、眠れるまでここにいてあげるよ」
結果、3分くらいで眠りに落ちたジェイド。気づけば朝からどたばたしていた
「ご主人は大丈夫か、疲れてないか」
「うん、大丈夫。心配してくれてありがとう」
絶対に良くなるから頑張れ…ジェイド、あと少しの辛抱だ
~
「マリ様のおかげですごく元気になりました!昨日はご心配とご迷惑をおかけしました…」
「治ってよかったね」
「はぁ…よかったな」
すっかりと顔色と声色も良くなり元気を取り戻したジェイド。よしよし、一件落着だ
翌朝、3人共に日が昇る前に起き朝食を済ませた。その後は本を読んだり紅茶を飲んだりして過ごした。寒さが増して、雪もどんどん降り積る。こんな日は部屋の中でゆったり過ごし暖かいものを食べたくなる
「よし、グラタンでも作ろうかな」
玉ねぎとドクモタケを薄切りにし、ブルーディアーの肉に塩コショウを振り1口大に切る。マカロニは先に茹でておく。フライパンにオリーブオイルを入れて熱し、肉が黄金色になるまで熱する。玉ねぎとドクモタケも入れ油を全体にまわす。
「うんいい感じ!」新しいフライパンにバター、小麦粉を入れクリーム状になるまで熱する。そこに牛乳を入れて馴染ませホワイトソースができる。さらに全て移しチーズをたくさんかけて、溶けるまでオーブンで焼く
「いい匂いだな」
「ブルーディアーのマカロニグラタン、完成!」
「ブルーディアーって、ツノが光る鹿ですよね。美味しそうです!」
ポチカ(パン)も一緒に
「いただきます!」
「はふっ…熱々だな、ソースとチーズが溶け合って美味い」
「ソースにコクがあって美味しいですね」
まろやかでクリーミー、コクがあるソースに食感がもちもちのマカロニ。表面のチーズは香ばしく塩気がありとても美味しい。肉も柔らかく、口の中でほどけていく
「うん、どれもマッチしてるね」
満足のいく食事だった。お腹いっぱい食べたので食後は眠気が襲う
「ムニャムニャ…すごく眠い」
ふあぁ…っと1人があくびをすると移るのだ
「ご主人、1度寝よう」
「みんなでお昼寝しましょう…」
3人川の字になってベッドに横になるとすぐに眠りへ落ちてしまった
「ふへへ…」
なにかの夢を見ているようだ。皆幸せそうな顔をして寝ているのだった。
マチがハッと気づいて起きると、まもなく日が暮れるところ。2人はまだ寝ている。晩御飯でも作るか。マチが作るご飯は豪快で、とにかく量が多い。いい匂いがして目が覚めたマリとジェイド
「晩御飯、できてるぞ」
「うわ、こんな時間まで寝てたよ。ありがとう」
「ミートボールと紫かぼちゃのスープだ」
「すごく美味しそうですね」
とにかく大きいミートボール。ソースが絡まってテカテカと輝いている。紫かぼちゃのスープは湯気を立ててとても美味しそうだ
「いただきます!」
「ミートボール、甘じょっぱいソースがとても美味しいです!」
「紫かぼちゃのスープも濃厚で美味しいよ」
「それは良かった」
紫かぼちゃ、と言っても皮が紫なだけで中身は普通のかぼちゃと変わらない
「ありがとうね、マチ。すごく美味しいよ」
「そうか」
マチは嬉しそうな表情を見せた。いつもと変わらない幸せな日常、いつまでも続くように…と3びきのけだまスライムは見守っていた朝ごはんを済ませ、のんびりフルーツティーを飲みながら読書をしていると、ドンドンとドアを叩く音がした
「入っていいよ」
ドアを開けるとそこに立っていたのは、紫で綺麗に切りそろえられた髪に大きな獣耳、尻尾。金色の目がマリを捉えていた「ご主人様…ずっと会いたかったのです!!」
荷物をドサッと置くとマリに勢いよくその娘は抱きついた
「ダリア、お帰りなさい。待ってたよ」
「ご主人様、ダリアが居なくて寂しくなかったですか?」
「寂しかったよ」
「やっぱりそうですよね、もう帰ってきましたから安心してください」
マリに抱きついたまま離れないダリア。よっぽど心細かったのだろう
「マチ様とジェイド様に変なことされてないですか?大丈夫ですか?」
「おい、変なことってなんだ」
「何もしてないですよ」
2人は少し不機嫌になった
「なら良かったです、私のご主人様…」
「よしよし、よく頑張ったね」
自分より背の高いダリアの頭を撫でるマリ。ようやくダリアがマリを離すと荷物を二階の部屋に運んだ。2階から降りてくると
「これ、お土産です」
と、マジックバックと似た作りの麻袋を出した。中身を開けてみると
「これは米だね」
「ヒイズル国に行ってきたのか」
ヒイズル国は東にある島国だ
「はい、そうです。お世話になった方から沢山買ってきました。あと…これもあります」
「味噌と醤油、それに胡椒も!貴重品だね」
「どれも沢山買ったので大丈夫です。何年か持つでしょう」
「すごいねダリア、ありがとう」
マリからお礼されるとバサバサと嬉しそうにしっぽを振るダリア
「ダリアからお土産話しを聞くの、楽しみにしてたんだ」
「お土産話し、ですか。いい話ではないですが…悪魔族がヒイズル国の隣国アヌスビヌス王国の一部を占領しているとの事です」
「悪魔族か…だんだん増えてきたのかな」
「魔王との戦いも近いかもしれません」
「はぁ、厄介だなぁ。私はのんびり暮らしたいだけなのに」
「魔王を倒せるのはご主人様だけです」
「そうだね、世界の平和を守るためにも働くしかないなぁ」
面倒くさそうにするマリ。のんびりライフを壊されるのが1番嫌なのだ
「ご主人様、そう言えばそんな腕輪していましたっけ…」
「あ、マチとジェイドが買ってくれたの。綺麗でしょ」
ムスッとするダリア「私だってマリ様にプレゼントあげたかった…」
「お土産だけで充分だよ。凄く嬉しいもん」
「本当ですか!私のお土産が一番ですか?」
マリの事を熱い視線で見るダリア
「う、うん。そうだね」
「よかった…!」
満面の笑みを浮かべるダリア
マチとジェイドはライバルが増えた…と不服そうだった
お昼になってマリが料理を作ろうとしたが、ダリアが「私に任せてください」と、そそくさと料理の準備を始めた
「ダリアに任せるよ」
「ありがとうございます、ご主人様」
5年前はマリの身長と変わらなかったが、今ではマリの身長を超えてマリが見上げるようになった
「獣人族の成長はあっという間だなぁ」
「獣人族ですからね。人間とさほど寿命は変わりありません。私たち長命種は5年では何も変わりませんから羨ましくもありますね」
とジェイドは言う。人間や獣人族は短命種。エルフやドワーフは長命種だ。ハイエルフは…不老不死だ
「私5000年前から何か変わったかな…」
と頭を悩ませるマリ。そんな事で話していると台所からいい匂いが漂ってくる
「何作ってるんだろうね」
「ダリアはご主人と同じぐらいなんでも作るからな」
ダリアはマリの専属メイドだ。「出来た…!」とダリアの満足そうな声が聞こえた
「コカトリスのデミグラスオムライスです!」
卵の焼けた匂いとデミグラスの濃厚匂いが漂う。さらにオニオンスープ付きだ
「さぁ、食べてください」
「いただきます」
ふわとろ半熟卵と濃厚なデミグラス。それにケチャップチキンライス、どれもが絶妙なバランスを取っている
「うわ、美味しい!料理の腕あげたなぁ」
「うむ、美味いな」
「卵がトロトロだ…美味しいですね」
卵とデミグラスの量が多いので、もはや飲めるように食べられる
「ご主人様に喜んでいただけて良かったです!」
ダリアが嬉しそうに尻尾を振る
「私のことばっかり見てないでダリアも早く食べなよ。冷めちゃうよ」
「嬉しくてつい…いただきます」
どうやらダリアはオムライスが好物のようだ。食べるスピードが早すぎる
「オニオンスープも美味しいね」
「んぐ、よかったれす」
「こら、食べながら喋らないのー」
とても賑やかな昼ごはんだった。午後からマリとジェイドは魔法薬の研究をする。マチは読書、ダリアは部屋の掃除だ。魔法薬は透明薬に記憶薬、どれも難しいものだ「…これに賢者の実をひとつ入れて、マンドレイクの種5つ。ハネモチ草を入れたら完成ですね!」
「無眠薬だ」
無眠薬はその名の通り、眠らなくても良くなる薬で研究職や徹夜で働く者などに良い。ひと瓶飲めば眠気が来なくなり、脳の働きが活性化される。
「うん、いい薬ができた。今度ギルドで売ろうかな」
「これは絶対に売れますよ!」
二人で魔法薬の話で盛り上がっている。
晩御飯は何を作ろう、暖かいものにしようかな…とダリアは掃除をしながら考えていたのだった
ダリアは晩御飯のことを考えていた。
(そう言えば…ヒイズル国の海で狩ったキングクラブがあったな。それを使って暖かいものでも…)
徐々に日は落ちていく。日が落ちると共に粉雪が降ってきた。こんな日は暖かい食べ物がちょうどいい
「ご主人様、台所お借りしますね」
ダリアは調理を始めた。白菜に豆腐、キノコに長ネギ
を大きな鍋に入れて、味は醤油ベースにする。鍋がグツグツと音を立てる。そこにキングクラブの身を投入するとあっという間に完成した「皆さん、キングクラブの醤油鍋です。召し上がってください」
ぷりっぷりのキングクラブの身が食欲をそそる
「いただきます!」
「…カニを食うのは初めてだ」
「私もです」
「え、すごく美味しいよ?」
と、マリが食べて見せた。
「ん!旨みが凝縮されててすごく美味しい!これぞカニだね。ほら、2人も食べてみなよ。騙されたと思ってさ」
「分かった。もぐもぐ…うん、美味い…!これは美味いな。身がほどける」
「もぐ…カニってこんなに美味しいのですね!身が詰まってて美味しいです」
カニの味は1度食べると病みつきになってしまう。何かの魔法にかかったみたいに。
「鍋食べるの、ほんとに何百年ぶりだろう。こんなに美味しかったっけ」
「うん、スープにカニの旨みが溶け出てる」
「ご主人様、私もいただきますね」
「いいよ」
「いただきます。んん!カニはやっぱり美味しいですね!皆さん、沢山取ってきたのでまだまだありますから…どんどん食べてください!」
ある程度具材を食べたらそこにカニ味噌とご飯を投入した。
「うわ、絶対美味しいじゃん!」
「ん!これも美味いな、旨みがさらに強くなってる」
「鍋がクリーミーで米と合いますね!」
「美味しいよダリア!」
「もぐもぐ、それは何よりです」
みんなが楽しそうに鍋を囲んでいる光景にダリアは微笑んだ。食べ終わった後はみんなで今日はこうだったね、とか話しながら片付けた
(いつまでもこんな日々が続きますように…)
みんながそう願った夜の闇が深まってくる。そろそろ明日に備えて寝る時間だ。
「明日はギルドへ行って魔法薬の買取をしてもらう予定だし、もう寝ようか」
4人仲良く歯を磨いて、おやすみなさい。良い夢を。
~
次の日の朝、ご飯に漬物、焼き魚に味噌汁。和食がダリアの手によって振る舞われた。いつもパンで済ませていたから、たまには和食もいい…と思うマリなのだった
午後はみんなと雑談していた。あっという間に日が暮れて夜になった。「今日はキングクラブ入り塩鍋だよ~。締めはうどんね」「それではいただきます」「塩鍋美味いな、クラブの出汁が出ている」「温まりますねぇ」「野菜、美味しいです」野菜たっぷり、肉団子も入った塩鍋「野菜…俺様は好かないと言ったはずだが…」「もう!いい歳こいて好き嫌いしちゃダメだよ!」「マリが作ってくれたものだ、きちんと食べろ」「ぐぬぬ…」野菜もスープの旨味を吸って柔らかく煮えている「…うん、意外といけるな。食ってみると美味い」野菜は好き嫌いせずに食べよう。意外と美味いかもしれない。具材が減ってきたところで、うどんを投入する「うどんも美味いな。もちもちしている」「食べ応えがありますね!」結果、みんな全部食べてくれた。満足してくれたようだ「うん、美味しかったね。お腹いっぱいだ」食べ終わって片付けをして、お風呂に入る。お風呂から上がった後は、みんなでトランプをして遊んだ。そうしているうちに寝る時間だ「みんな、おやすみ」ベッドに入ると夢の話をした「最近変な夢は見なくなったか?」「うん、キューイのおかげだね」「それは良かったです」それから今日の話になった「あの…不意打ちで頭撫でるのやめて…結構恥ずかしいから」「ん?誰も見ていなかったぞ」「それでも!料理中だったし!」「私は食べ終わったあとでしたよ?」布団に顔を埋めて恥ずかしそうにするマリ「それでも…恥ずかしいもん。こういうのは部屋でしてよ…」「なるほど、部屋だったら何をしてもいいんだな?」「な、何をしてもいいって…」「何をしてもいいんですよね?マリ様」「からかわないで…」余計に恥ずかしくなって布団から出てこなくなった「ご主人、冗談だよ。息が苦しくなるから出ておいで」「マリ様が可愛いからつい、からかいたくなるんですよ」「私、年齢的に可愛いとか合わないと思う…」「いや、可愛いぞ」「えぇ、可愛いですよ」「むうう…」ふくれっ面したマリも2人にとっては可愛いのだ。ついからかってしまうのも分かる。マリは5000年という長い時を生きているが不老不死だからか、まったく成長していないのだ。幼児体型…と言うのだろうか「ふふ、おやすみご主人」「おやすみなさい、マリ様」2人から頬にキスされて、きっといい夢
歓迎会から一夜明けて、みんな起きていた「ねぇ、3人の好き嫌いってある?食べ物に限らず」「俺様は肉が好きだ!野菜はいらん。静かなやつは好きだ。うるさいやつは好かん」「僕はね食べ物の好き嫌いはないよ!でも虫が苦手なの」「オレは好き嫌いなど特にないな」「なるほどね」マリはノートにメモをとる「だが、強いていえばマリが好きだ」「僕も好きー!」「オレも同感」「なんで?」「料理が上手くて、優しい上に可愛いからだな」「何だと…?」マチがふつふつと湧き上がる怒りをあらわにした「ご主人の事が本当に好きなのは俺だ。異論など認めん!」「もしかして…それって恋ってことじゃない!?」パイモンが浮かれている「ストラス、お前マリに恋してるのか」「恋愛とは…素晴らしいものだ」「…ご主人の事を愛しているんだ」「え、そうなの?」マリはびっくりしている。マチの気持ちに気づいていなかったのか…「そうだご主人。愛しているよ」「そ、それは…あぁ…そうなの…?」瞬く間に顔が真っ赤になった。体温が上がっていくのがわかる。まさか愛してる、だなんて「やだ~!恋する乙女じゃない!」「わ、わたしも好きだよ…あ、暑い」「俺様達も」「応援するぞ」「両思いじゃない!ほらほら、付き合わないの!?付き合っちゃいなよ~!」お互いに体がかぁーっと暑くなる「ご主人…俺と付き合ってはくれないか」「うん…いいよ」「きゃぁぁぁー!恋するふたり最っ高!!」「こらパイモン、あまり騒ぐな」何千年もかけて、やっと、ようやく恋愛が始まった。ただジェイドが打ちひしがれていた。ダリアはそんなジェイドを慰めている。「マリ様のこと好きだったのに…まさかこうなるなんて……ううう、悪魔許さない…」「ジェイド様…」静かにすすり泣いていた。失恋した傷が重く伸し掛る「あ、あの!ジェイド様もマリ様のこと好きだったのですよ!?」「そうだ」マリはジェイドの傍に来てしゃがむ「気づかなくてごめんね、私も好きだよ」「わかっています、それは恋愛としての好きじゃないって。でも踏ん切りが付けて良かったです。マリ様のこと、好きでした……今度は2人のことを応援させてください」「うん?好きだよ、恋愛対象として」「ええええええ!?」どよめく家の中。一体どういうことなのか…「えっと、マチさんのこと好きでジ
ハーブティーを飲みながら午後を過ごしていると、ミルティがこんな事を口にした「実は私以外にもこの家に住み着いている妖精がいるんです。みんな恥ずかしがり屋だから出てこないけど…」「あらそうなの。出てくればいいのに」「キュッ」「ほら、けだまスライム達も出てきてるよ?」姿も声も出さない。余程の恥ずかしがり屋なのだろう「まぁ、いずれ姿を見せてくれたらいいな」午後の過ごし方は皆それぞれ。マチは鉱物の本、ジェイドは薬草の本、ダリアは料理の本を読んでいる。マリは大半の本は読んで記憶しているので最近はあまり読書しなくなった。思いついたことをノートに書いたり、日記を書いたりしている。ちなみに日記に何が書かれているかと言うと、今日の料理や起きたこと、天気や感じた気持ちなどを書いている「ご主人様、今日の夜ご飯は私がつくりますね」「うん、任せるよ」今日の料理はなんだろう…考えるだけでワクワクする。自分で作るのもいいけど、作ってもらうのも楽しみがあっていい。徐々に日が傾き始めると一気に辺りが暗くなる。暖炉に薪をくべて、魔光石に魔力を流すと部屋が明るくなった。「ご飯作ってきますね」ダリアが作るからきっと和食に違いない。楽しみに待って居ると、意外にも早く出来たようだ「キムチ鍋、ならぬキムチうどんです!」「キムチうどんか、温まるね」「いただきます」取り皿に具材をとって、熱々のまま食べる。ちょうどいい辛さでうどんが進む「うん、辛くて美味いな 」「体が熱くなりますね!」「これぞキムチうどん」「キムチ久しぶりに食べたけど美味しいね」カプサイシンが体を熱くし、自然と発汗する「はぁ、熱いね」「汗が出るな」「このままお風呂に入ったら丁度いいのでは?」それもそうだ。汁も一気に飲み干して完食した「美味しかった!最高の気分だよ」「ピリッとした辛さが口に残るな」素晴らしい夜ご飯だった。ご飯を食べて1時間たったらお風呂に入る。頭と体の汗を流してゆっくり湯船に浸かる「はぁ、今日もいい一日だったなぁ…」 色々振り返ってみる。新しい妖精との出会いに、ツボマッサージ、そしてキムチ鍋…。お風呂から上がったらデザートにみかんを食べる「うん、完熟してて美味しい!」「甘いな」「柔らかくて丁度いいですね」「美味しいです」今日1日いろいろあったけど楽しかった、と寝る
翌日、畑に植えていた野菜の様子を見に来た。だいぶ成長し、そろそろ収穫時期を迎える頃だ「あともう少しかな」「収穫が楽しみだな」これらを収穫したら、マリは野菜スープを作る予定だ。もう少しの辛抱だ「ご主人、言いたいことがあるんだ」と、マチが急に話し始めた「俺は悪魔ではあるが、今はご主人の使い魔だ。だから魔王と戦う時は俺も共に戦う」「それでいいの?」「あぁ、これは俺が決めた事だ。それに…俺はご主人の事を好いている。心から」突然自身の胸の内を明かしたマチ。「そっか、ありがとう。私も好きだよ」マリも好きだ、と言い返した。マリの「好き」はどういう意味の「好き」かは分からないが、同じだといいな、と思うマチなのだった。そう思った途端に体がぐわっと暑くなった。「わぁ、マチ。顔真っ赤だよ」「そ、そうか」マチはそっぽを向いてマリの方を見れなくなってしまった。そのまま家に帰ってくるとマチは部屋に籠ってしまった「マチ、どうしたんだろう」「何かあったのですか?」「いや、マチが私の事好きだって言ってから変になった」「え?は?告白ですか…?それって告白ですよね」「そうなのかな?わからないけど」ジェイドは苦しそうな顔をした「私を差し置いて…」ジェイドは真剣な顔をしてマリの手を取った「私、マリ様の事好きなんです。大好きです…だから…」「そっか、ありがとう。私も好きだよ」「マチさん何かより、私の方が好きです…」「そうなの!嬉しい。私も大好きだからね」喜びの表情を見せるマリと恥ずかしさで蒸発してしまいそうなジェイド。部屋の隅で縮こまってしまった。「今日、なんか2人とも変だな…」よくよく思い返してみるとマリとダリアは別のティーを飲んでいたが、マチとジェイドは同じティーを飲んでいた。そういえば、告白薬を作ったポッドで2人はティーを入れていたんだ!と、今になって真実に辿り着いたマリ。「なるほど…そういう事か」すぐに解毒剤を2人に飲ませたが、飲ませた後も様子は変わらなかった「恥ずかしいな…」「はぁ、なんて事を…」(ご主人様、こう言うの結構鈍いんですね…2人は本気で言ってたと思うんですが…)ダリアだけは真実を知っていた。2人は本当のことを、心から思ったことを言っただけだ。それに気づかないマリは鈍感なのだ。そもそも告白薬は思った事を言ってしまう薬だ
さぁ、今日はついに大晦日だ。料理を大量に作って祝わなければならない「ついに大晦日だね」「今日は天気がいいな」雪は降らないようで、年越し花火も見に行けそうだ「豪華なご飯…楽しみですね!」「花火が楽しみです!起きていなくちゃ」ジェイドとダリアは2人揃って今日を楽しみにしていた。マリは友達などに手紙を送った。これが明日届くのだ「明日は元旦か…早いなぁ。年越したの最近のことだと思ってたのに」そう、1年はあっという間なのだ。特にマリにとっては昨日年越たばかり、みたいな感じだろう「あ、正月飾りを出さなきゃ」正月飾りは古代樹の葉と月光樹の葉、それに赤と白が基調のリースだ。これを玄関に飾ると1年間の福を呼び込むと言う。そして朝ごはんと昼ごはんはパンで、あっさりしたものを食べた。夜にたらふく美味いものを食べるためだ「そろそろ夜ご飯の準備するね」「ご主人様、私も手伝います」「俺たちにも手伝わせてくれ」みんな一緒に料理を作る。リクエストがあったシチューにマルゲリータ、カニはもちろん、お刺身やアップルパイ、フルーツの用意もする。料理をしている間にあっという間に日が落ちる。「みんな先にお風呂入っちゃおうか」順番にお風呂に浸かり、温まる。上がったら豪華な料理が待っていた「ほら、みんなが頑張って作った料理だよ!たんとお食べ!」「こうやって見るとすごい量だな!よし、頂こう」「う~ん!このシンプルなピザがたまらないんですよ」「カニ美味しい~!身が詰まってプリプリ!」「ご主人の作ったシチューは世界一美味い!」「うん!アップルパイ美味しくできた。甘さと酸味がちょうどいい」みんなでワイワイ、テーブルを囲んで食べる食事は別格に美味しい「ん!このカニ美味いな」「本当ですね!カニ味噌も美味しいです」「よし、シャンパン開けようか!」大人はシャンパン、ダリアはもちろんジュースで「待ちきれずに食べちゃったけど…乾杯!」「乾杯!!」暖かい部屋で飲む冷たいシャンパンとジュースは即座に体へ染み渡る「くぅ…美味いな」「はぁ、美味しいですね~」「ぶどうジュース美味しいです」ごくごく「1年ももうすぐ終わるね、あっという間だ」年が明けたと思ったら、もう年越しだ。ダリアにとっての1年は長いかもしれないが、マリ達にとっての1年は本当に短い。これが圧倒的な年の差なの
クリスマスパーティーから一夜明けて、片付けをしている。ジェイドは二日酔いで唸りながらベッドで横になっている。さすがに心配なので、マリが何度も様子を見に来る「大丈夫、具合悪い?」「気持ち悪くて頭が痛いです…昨日の記憶がありません…」「二日酔いを治す魔法薬を作らないといけないかな」「ううーん……」ジェイドが酒臭い。1度飲むと止まらなくなってしまうタイプだ。マリが水に砂糖と塩を加えた経口補水液を作って持ってきた。「飲めそうだったら飲んでね、脱水しちゃうから」 「はぁ…い……」和酒だと、あんなに酔ってしまうのか。それにしても昨日は凄まじかった。歌を歌い突然脱ぎ出し、真冬の外に出ていこうとした(昨日の記憶ないのか…面白かったのになぁ)「昨日の夜中は散々だったな、ご主人とダリアの前で脱ぎ出すなんて」しかも下着まで「私は面白かったよ」「私は見ていられなかったです…」「ご主人の前で、だぞ!?自分だけ脱ごうだなんて許せない」 「え…え…?」話が脱線しすぎてダリアが混乱している 「うん、マチもまだお酒残ってるのかな…」「俺は至っていつも通りだぞご主人?」「そっか…そっか………」 頭を悩ませるマリ。大丈夫なんだろうか~クリスマスツリーも装飾も全て片付け終わった「次にくるのは大晦日だね」「今年もあっという間だな」「大晦日は花火があがるんですよね!」そう、ダリアの言う通り新年を祝う為に各地で花火があがる。冬の夜空に散る花火は、星と相まって美しいのだ「今年は頑張って起きていられるように頑張りたいです」 「無理はしないでね」「そうだぞ、育ち盛りなんだからな」クリスマスから大晦日はあっという間に過ぎていく「大掃除しないとね」「そうだな。俺は背が高いからホコリ落としだ」「私、掃除得意なので!任せてください!」一方その頃ジェイドは…トイレから出られなくなっていた「うう……」ドンドン、とマリがドアを叩く「ジェイド!大丈夫?」「気持ち悪くて…トイレから出られないんです」「そうだな…薬作った方が良さそう…」急遽マリは二日酔いに効く魔法薬を作ることにした。ムーンウォーターに賢者の実、時の欠片、月光樹の葉、ブライトニングハーブにハツカヨモギ「それと、マンドレイクの葉に黄金クローバーをいれて…」グツグツと大釜の煮える音がす