LOGIN「そうだ、お昼ご飯食べていこうか」
この村には人気の店がある。その名はジョリアン。モンテナ牛のハンバーグがとにかく美味いのだ
「いらっしゃいませ、こちらへどうぞー」
若い女性のウェイターさん、珍しく人間だ。
席に座るや否や「すみません、モンテナハンバーグ3人分ください」
「かしこまりました」
「ここのハンバーグ、本当に美味しいからね、一度食べたらやみつきになる」
「確かに美味いよな」
「匂いだけでパンが食べられそうです」
ここのシェフはエルフで、500年間世界中の料理修行をして結果ハンバーグに辿り着いたらしい。ただのハンバーグ好きだ。
「お待たせいたしました」
鉄板に乗った大きなデミグラスソースのハンバーグとバケットが出された。湯気が上がり、ジューっと焼ける音がする
「いただきます!」
とても熱そうだが、熱いうちに食べなければ美味しさが逃げてしまう。切れ込みを入れただけでハンバーグから肉汁が出てくる出てくる。あむっと口の中に入れると肉汁が飲めるほどに出てきて、それでいてふわふわの食感、デミグラスソースのコクと味の深さ
「んんー!美味っしい、たまんない!」
「ぐ、肉汁がすごいな」
「うわぁ口の中でとろけていきますー!」
固いバケットが油の多いハンバーグとよく合う。3人はそのまま一言も喋らず黙々とハンバーグを食べたのだった。店を出たあともしばらく多幸感に包まれていた
「はぁ…美味しかったなぁ」
「まぁ、ご主人の作った料理には叶わんがな」
「ん、そうですね。マリ様の料理がいちばん美味しいですから!」
「んんー。そう言って貰えると嬉しい…な」
ちょっと照れるマリ。その顔をガン見する2人。そうこうしているうちに日が暮れ、転送魔法で家に帰ってきた
「今日はいろいろあって楽しかったなー」
「本も買えたし、ご主人には思いがけないプレゼントを貰ったしな」
「本当に嬉しいです、ありがとうございます」
「いいよ、いいよ。2人からお返しのプレゼント貰っちゃったし」
何だか、たまに村へ遊びに行くのも悪くないと思えるマリだった
~
翌日
そろそろ雪が降る頃だろうと、マリ達はある準備をしていた。
「ジングルベール、ジングルベール、鈴が鳴るー」
マリは思わず歌ってしまう。そう、クリスマスだ。クリスマスツリーやリースなどの飾り付けをしていたのだ。サンタさんは来ないから、3人でそれぞれ好きな物をプレゼントし合うのだ。しろも、くろも、もふこのけだまスライム達も出てきた。
「ねぇ、君たち。小さな帽子かぶってみて」
「モキュキュ」
「おや、可愛いですね!3びきともお似合いですよ」
「キュッキュ!」
「ん?ちょうどいいサイズだな」
「キュゥ!」
冬にピッタリなふわふわで愛らしい姿がとても可愛い
空中を舞いながら幸せも運んでくれる事だろうクリスマスツリーを光らせるには魔光石が必要だ。
魔力で光る石だが、マリは沢山持っているので心配いらない。家の中の光るものは全て魔光石だ「うん、飾り付け順調…あ、雪だ」
ふわふわの雪が降ってくる。これぞついに冬の始まりだ。
「雪だな」
「これからさらに冷え込みますね」
けだまスライムたちもふわふわ家の中を舞っている。
部屋中をオーナメントで飾り付ける「よし、出来た!」
魔光石で飾り付けたのでクリスマスツリーがピカピカ光っている。と言うよりかは部屋中が光っている
「わぁ…綺麗ですね」
「そうだな…うん、今日はココアを入れよう」
冬はホットココアがおいしい季節
「はぁ…一気に冬が来たって感じだね」
「そうだな、体を冷やさないようにしないとな」
「もう私、外には出れません…」
ココアを飲んで落ち着く。冬はやっぱりこの味だ
「クリスマスのお菓子作らなきゃ」
「菓子か!いいな」
マチがワクワクしているのが伝わる
「ジンジャークッキーにシュトレン、バニレキプフェルにスノーボール…考えるだけで楽しいな。ご主人の作るクリスマスケーキも美味いし最高だ」
「ふふ、早速作ろうかな」
マリがキッチンに行っている間、マチとジェイドが作戦を練っていた
「ご主人のクリスマスプレゼント…どうしたものか」
「そうですね…飽きられるのではないかと毎年不安ではありますが」
5000年生きてるハイエルフのマリにクリスマスプレゼントを渡すのは大変難しい。被ったり、前に渡したものをまた渡してしまったり。
「実用性のあるものがいちばん無難か…」
「そうですよね、キッチン用品とか」
「ご主人は花も好きだからな」マリは花瓶に季節の花を一輪の挿して楽しむ。とても風流だ
「とにかくご主人に勘づかれないようにしなければ」
「キュキュ?」
3匹も入ってくる
「あなた達は何か欲しいものはありますか?」
「キュー?キュッキュ…」
首を振るように身体を震わせる3匹
「欲しいものは無いみたいだな」
うーんと頭を悩ませる2人
~
一方その頃マリは…
「2人のプレゼントは…あれでいいかな」
どうやらプレゼントは決まっているようだ。クッキーもどんどん焼けていく
「うん、美味しそうに出来てる!」
マリに迷いは無い。これが5000年以上生きているハイエルフなのか「キュキュキュ~」
「ん?君たちどうしたの、今お菓子を作ってるんだよ。君たちも食べる?」
「キュゥ!」
首を縦に降るように身体を震わせる「うん、一緒に食べようね」
雪はしんしんと振り積もっていく。こうして3人と3匹の冬が始まった日が暮れるのが早くなった。雪もどんどん降ってくる。マリはロッキングチェアに座りながら編み物をしていた
「編み物も慣れたものだね…」
「何を編んでいるんだ?」
「ふふ、ひ・み・つ」
なにやら楽しそうだ
けだまスライム達はマリの膝で寝ている。大量に作ったジンジャークッキーをつまみながら、マリが何千年も前に書いた魔導書を読むマチ。ジェイドは髪をブラシでとかしている
「明日は何をしようね、…そういえば畑放ったらかしにしてたなぁ…」
「そうだな、毛玉スライム達が雑草を食べてくれたおかげで綺麗なままだぞ」
「そっか、感謝しなきゃ。…植えるならシックキャロットとシルバーラディッシュ…あとはゴールドオニオンかな」
「明日は畑作業ですか。暖かくしないと…」
「大丈夫だよ、対寒気結界を張れば全然寒くないよ」
「そんな魔法まであるんですね、すごい…」
「ご主人は「魔法の神祖」だからな」
「神祖…?」
元々この世界には魔法というものが存在しなかった。この世界に降り立った数多の神である者の1人だけが魔法を使うことが出来た。魔法を使い、世に広めたのは神祖であるマリだ。ありとあらゆる魔法を使えるのだ。え、こんな魔法まで使えるの?とツッコミを入れたくなるものもあるが
「マリ様は本当にこの世界の神様なのですか…」
「神様って言われるとなんか堅苦しいな。…抑止力なのかな」
「抑止力?」
「魔王と敵対して、この世界を守る抑止力」
「なるほど、そういう事ですか!………改めてすごいですね!」
「ご主人はすごいぞ、俺を使い魔として従えてるからな」
「それはどういう意味で…?」
「ひ・み・つ・だ」
「うう、すごく気になります~!」
ジェイドは気になりすぎてこの日は眠れ……た。それはもうぐっすりと
~
翌朝
朝食を食べ終わるとさっそく畑仕事に取り掛かった。マリが結界を貼ったおかげで寒さはほとんどない。畑を耕し、種を撒く。たまに生えてくる雑草は、けだまスライム達が食べてくれる
「はぁ…大変だけど楽しいね」
土まみれになっているマリ
「ふぅ…そうだな。だんだんスイッチが入ってくるというか」
「…はへ…腰が痛いです…」
ずっと屈んでいると足も痛いし腰も痛くなる。これは歳のせい?
「うん、少し休もうか」
~
マチがペパーミントハーブティーをいれ、マリはジャムクッキーを出した
「はい、ジェイドの大好きなジャムクッキーだよ」
「わぁ!いただきます、モグッ」
生地はサクサクでバターの風味が広がり、ジャムの部分は甘さが控えめでちょうど良く、甘酸っぱさもある
「はぁ…なんて美味しいんでしょう!爽やかなペパーミントハーブティーとも相性抜群ですね」
「うむ、甘さが染みる。美味いぞご主人」
「ん、美味しいね!結構上手くできたなぁ」
畑の肉体労働に染みる程よい甘さと美味しさ。小さな幸せを感じるひとときだった
休んだ後、畑仕事も終わり一段落ついた。さて、マリはお昼ご飯作りに取り掛かるが、マチとジェイドは転送魔法でモンテナ村へ行った。マリへのクリスマスプレゼントを買うためだ
「うん、たまにはこんな食べ物も良いよね…皮を剥いで、内蔵を取り出して…にしし」
不気味な笑い方をするマリ。一体何を作ろうというのか…
~
一方その頃、マチとジェイドは村で一番の調理器具を扱う店に行った。
「邪魔するぞ」
「はい、いらっしゃいませ」
「~はありますか?」
「はい、もちろん!高品質で高純度な~です!この店で一番のおすすめの品ですよ」
マチとジェイドは顔を見合わせ、うん。と首を縦に降った
「それをくれ」
「これもください」
「はい!毎度あり」
満足そうな表情をする2人。これでよし!準備は出来た。さて家に帰ろう
~
帰宅すると待っていたのは…
「ツチノコの丸焼き!召し上がれ」
え?ツチノコって言った、このハイエルフ…
「え、ツチノコって東の国の伝説の生き物ですよね?その…食べても大丈夫なんでしょうか…」
「大丈夫、多分」
「ふ、ご主人は面白いな。ふふ、はははっ」
笑うところどこにあったんだ?
「まぁ、食べてみなければわからん。ご主人の作る飯は全部美味いからな。いただきます」
見るとツチノコはテカテカに光ってる。
「このツチノコはね、シルバーガーリックハーブに東の国の調味料と一緒に付け込んでおいたんだよ」
なるほど。ツチノコに切れ目を入れていくとホカホカと湯気を立てる。ジェイドの手が震えている
「っ…い…いただきます。もぐっ」
勢いをつけて口にいれた。噛むとホロホロっと肉が崩れて、とても柔らかい。東の国の和テイストな調味料がよく合っている。
「美味い、ツチノコってこんな食感なんだな。意外と鶏肉に近いのか」
「美味し…い…美味しいです!ビックリしました!臭みがあるかと思ったら全くない!」
「もぐもぐ…ツチノコは珍味って言われてるけど普通に美味しいんだよねー。それに体をたくさん使ったから滋養強壮って事でね」
これ、普通に鶏肉だ。皮を剥いでいるから見た目もさほど悪くない
「確か、ツチノコの血や皮って魔法薬を作るのに使えましたよね?」
「そうだよ、一石二鳥だね」
「ツチノコは不死の薬を作る材料になる」
「そうだよ、世の中にはとてもじゃないけど出せない」
「そもそもよくツチノコなんて見つけたな」
「何千年も前に東の国へ行って取ってきたんだ。あと9匹地下室に眠ってるよ」
「9匹も捕まえたんですか!?」
なんかこのハイエルフすごい。幻樹の森に引きこもっていた割には意外とアクティブだった
郵便受けにカコンッと何かが入る音がした。開けてみると、そこには一通の手紙が入っていた。
「ご主人、手紙が届いてるぞ」
「ありがとう。手紙なんて久しぶりだな…」
開けてみると
~ご主人様へ
お久しぶりでございます。ダリアです。此度の成果をお伝えします。現在、一点攻撃魔法の習得が終わりました。準備が出来次第そちらにお戻りする予定です。ダリアが居ない間、寂しくなかったですか?寂しいですよね?ご主人様の元へいち早く戻れるように頑張ります! ダリアより~「ダリアか、そろそろ帰ってくるみたい。5年振りに会えるね」
なぜか険しい顔をするマチとジェイド
「ライバルが」「増えますね」
「まぁ、気長に待つとしよう」
そもそもダリアとは、狼の獣人族で今年16歳の娘。幻樹の森で魔物に襲われ、衰弱し切っていたところをマリが助けた。そしたら物凄い懐いてそのままマリ専属のメイドになった。なぜマリがダリアに魔法を教えないのかと言うと、自分一人よりいろんな人の魔法の使い方を見て回った方が勉強になるから。だそうだ
~
もうすっかり日は暮れているが
「なんかお腹空かないね」
「そうだな、昼飯たらふく食ったから」
「こういう時って果物とかあっさりしたものだったら入るんですよね」
「そうだ、ザラキアでも食べよっか」
3人で果物をかじる。ザラキアは黄色い果物で水分たっぷり、甘くてそのまま丸かじりできるのだ
「もぐもぐ……熟してて美味しいね」
「甘い!」
「トロトロですね」
マチの大好物だ。ザラキアを食べすぎて腹痛を起こすのがセットだ。
「ご、ご主人…手を握ってくれ…」
ベッドに丸まって横になり、真っ青な顔をしてダラダラと冷や汗をかいているマチ
「もう、いつもこうなるんだから…食べすぎだよ。ほら痛み止め」
真っ黒な魔法薬。強力な痛み止めで瞬時に効く
「大丈夫そう?飲める?」
「う、ん」
マチがゆっくりと起き上がり、とても1人では飲めなさそうなのでマリが飲ませる
「ほら、大丈夫だからね」
「す、まないご主人…はぁ…」
飲んだ。あっという間に腹痛が治まっていく
「は、治ってきた」
「よかったよかった」
言われても繰り返すのだから、まるで小さな子供のようだ。薬が完全に効いて、全力で謝ってくるマチ
「本当にすまなかった、申し訳ない、ごめんなさい」
「うん、わかったよ。大丈夫」
本当にそういう所は子供っぽいとマリも半笑いだ。ジェイドは「自業自得です!マリ様にとんだご苦労を!」と、なぜか不機嫌だった
午後はみんなと雑談していた。あっという間に日が暮れて夜になった。「今日はキングクラブ入り塩鍋だよ~。締めはうどんね」「それではいただきます」「塩鍋美味いな、クラブの出汁が出ている」「温まりますねぇ」「野菜、美味しいです」野菜たっぷり、肉団子も入った塩鍋「野菜…俺様は好かないと言ったはずだが…」「もう!いい歳こいて好き嫌いしちゃダメだよ!」「マリが作ってくれたものだ、きちんと食べろ」「ぐぬぬ…」野菜もスープの旨味を吸って柔らかく煮えている「…うん、意外といけるな。食ってみると美味い」野菜は好き嫌いせずに食べよう。意外と美味いかもしれない。具材が減ってきたところで、うどんを投入する「うどんも美味いな。もちもちしている」「食べ応えがありますね!」結果、みんな全部食べてくれた。満足してくれたようだ「うん、美味しかったね。お腹いっぱいだ」食べ終わって片付けをして、お風呂に入る。お風呂から上がった後は、みんなでトランプをして遊んだ。そうしているうちに寝る時間だ「みんな、おやすみ」ベッドに入ると夢の話をした「最近変な夢は見なくなったか?」「うん、キューイのおかげだね」「それは良かったです」それから今日の話になった「あの…不意打ちで頭撫でるのやめて…結構恥ずかしいから」「ん?誰も見ていなかったぞ」「それでも!料理中だったし!」「私は食べ終わったあとでしたよ?」布団に顔を埋めて恥ずかしそうにするマリ「それでも…恥ずかしいもん。こういうのは部屋でしてよ…」「なるほど、部屋だったら何をしてもいいんだな?」「な、何をしてもいいって…」「何をしてもいいんですよね?マリ様」「からかわないで…」余計に恥ずかしくなって布団から出てこなくなった「ご主人、冗談だよ。息が苦しくなるから出ておいで」「マリ様が可愛いからつい、からかいたくなるんですよ」「私、年齢的に可愛いとか合わないと思う…」「いや、可愛いぞ」「えぇ、可愛いですよ」「むうう…」ふくれっ面したマリも2人にとっては可愛いのだ。ついからかってしまうのも分かる。マリは5000年という長い時を生きているが不老不死だからか、まったく成長していないのだ。幼児体型…と言うのだろうか「ふふ、おやすみご主人」「おやすみなさい、マリ様」2人から頬にキスされて、きっといい夢
歓迎会から一夜明けて、みんな起きていた「ねぇ、3人の好き嫌いってある?食べ物に限らず」「俺様は肉が好きだ!野菜はいらん。静かなやつは好きだ。うるさいやつは好かん」「僕はね食べ物の好き嫌いはないよ!でも虫が苦手なの」「オレは好き嫌いなど特にないな」「なるほどね」マリはノートにメモをとる「だが、強いていえばマリが好きだ」「僕も好きー!」「オレも同感」「なんで?」「料理が上手くて、優しい上に可愛いからだな」「何だと…?」マチがふつふつと湧き上がる怒りをあらわにした「ご主人の事が本当に好きなのは俺だ。異論など認めん!」「もしかして…それって恋ってことじゃない!?」パイモンが浮かれている「ストラス、お前マリに恋してるのか」「恋愛とは…素晴らしいものだ」「…ご主人の事を愛しているんだ」「え、そうなの?」マリはびっくりしている。マチの気持ちに気づいていなかったのか…「そうだご主人。愛しているよ」「そ、それは…あぁ…そうなの…?」瞬く間に顔が真っ赤になった。体温が上がっていくのがわかる。まさか愛してる、だなんて「やだ~!恋する乙女じゃない!」「わ、わたしも好きだよ…あ、暑い」「俺様達も」「応援するぞ」「両思いじゃない!ほらほら、付き合わないの!?付き合っちゃいなよ~!」お互いに体がかぁーっと暑くなる「ご主人…俺と付き合ってはくれないか」「うん…いいよ」「きゃぁぁぁー!恋するふたり最っ高!!」「こらパイモン、あまり騒ぐな」何千年もかけて、やっと、ようやく恋愛が始まった。ただジェイドが打ちひしがれていた。ダリアはそんなジェイドを慰めている。「マリ様のこと好きだったのに…まさかこうなるなんて……ううう、悪魔許さない…」「ジェイド様…」静かにすすり泣いていた。失恋した傷が重く伸し掛る「あ、あの!ジェイド様もマリ様のこと好きだったのですよ!?」「そうだ」マリはジェイドの傍に来てしゃがむ「気づかなくてごめんね、私も好きだよ」「わかっています、それは恋愛としての好きじゃないって。でも踏ん切りが付けて良かったです。マリ様のこと、好きでした……今度は2人のことを応援させてください」「うん?好きだよ、恋愛対象として」「ええええええ!?」どよめく家の中。一体どういうことなのか…「えっと、マチさんのこと好きでジ
ハーブティーを飲みながら午後を過ごしていると、ミルティがこんな事を口にした「実は私以外にもこの家に住み着いている妖精がいるんです。みんな恥ずかしがり屋だから出てこないけど…」「あらそうなの。出てくればいいのに」「キュッ」「ほら、けだまスライム達も出てきてるよ?」姿も声も出さない。余程の恥ずかしがり屋なのだろう「まぁ、いずれ姿を見せてくれたらいいな」午後の過ごし方は皆それぞれ。マチは鉱物の本、ジェイドは薬草の本、ダリアは料理の本を読んでいる。マリは大半の本は読んで記憶しているので最近はあまり読書しなくなった。思いついたことをノートに書いたり、日記を書いたりしている。ちなみに日記に何が書かれているかと言うと、今日の料理や起きたこと、天気や感じた気持ちなどを書いている「ご主人様、今日の夜ご飯は私がつくりますね」「うん、任せるよ」今日の料理はなんだろう…考えるだけでワクワクする。自分で作るのもいいけど、作ってもらうのも楽しみがあっていい。徐々に日が傾き始めると一気に辺りが暗くなる。暖炉に薪をくべて、魔光石に魔力を流すと部屋が明るくなった。「ご飯作ってきますね」ダリアが作るからきっと和食に違いない。楽しみに待って居ると、意外にも早く出来たようだ「キムチ鍋、ならぬキムチうどんです!」「キムチうどんか、温まるね」「いただきます」取り皿に具材をとって、熱々のまま食べる。ちょうどいい辛さでうどんが進む「うん、辛くて美味いな 」「体が熱くなりますね!」「これぞキムチうどん」「キムチ久しぶりに食べたけど美味しいね」カプサイシンが体を熱くし、自然と発汗する「はぁ、熱いね」「汗が出るな」「このままお風呂に入ったら丁度いいのでは?」それもそうだ。汁も一気に飲み干して完食した「美味しかった!最高の気分だよ」「ピリッとした辛さが口に残るな」素晴らしい夜ご飯だった。ご飯を食べて1時間たったらお風呂に入る。頭と体の汗を流してゆっくり湯船に浸かる「はぁ、今日もいい一日だったなぁ…」 色々振り返ってみる。新しい妖精との出会いに、ツボマッサージ、そしてキムチ鍋…。お風呂から上がったらデザートにみかんを食べる「うん、完熟してて美味しい!」「甘いな」「柔らかくて丁度いいですね」「美味しいです」今日1日いろいろあったけど楽しかった、と寝る
翌日、畑に植えていた野菜の様子を見に来た。だいぶ成長し、そろそろ収穫時期を迎える頃だ「あともう少しかな」「収穫が楽しみだな」これらを収穫したら、マリは野菜スープを作る予定だ。もう少しの辛抱だ「ご主人、言いたいことがあるんだ」と、マチが急に話し始めた「俺は悪魔ではあるが、今はご主人の使い魔だ。だから魔王と戦う時は俺も共に戦う」「それでいいの?」「あぁ、これは俺が決めた事だ。それに…俺はご主人の事を好いている。心から」突然自身の胸の内を明かしたマチ。「そっか、ありがとう。私も好きだよ」マリも好きだ、と言い返した。マリの「好き」はどういう意味の「好き」かは分からないが、同じだといいな、と思うマチなのだった。そう思った途端に体がぐわっと暑くなった。「わぁ、マチ。顔真っ赤だよ」「そ、そうか」マチはそっぽを向いてマリの方を見れなくなってしまった。そのまま家に帰ってくるとマチは部屋に籠ってしまった「マチ、どうしたんだろう」「何かあったのですか?」「いや、マチが私の事好きだって言ってから変になった」「え?は?告白ですか…?それって告白ですよね」「そうなのかな?わからないけど」ジェイドは苦しそうな顔をした「私を差し置いて…」ジェイドは真剣な顔をしてマリの手を取った「私、マリ様の事好きなんです。大好きです…だから…」「そっか、ありがとう。私も好きだよ」「マチさん何かより、私の方が好きです…」「そうなの!嬉しい。私も大好きだからね」喜びの表情を見せるマリと恥ずかしさで蒸発してしまいそうなジェイド。部屋の隅で縮こまってしまった。「今日、なんか2人とも変だな…」よくよく思い返してみるとマリとダリアは別のティーを飲んでいたが、マチとジェイドは同じティーを飲んでいた。そういえば、告白薬を作ったポッドで2人はティーを入れていたんだ!と、今になって真実に辿り着いたマリ。「なるほど…そういう事か」すぐに解毒剤を2人に飲ませたが、飲ませた後も様子は変わらなかった「恥ずかしいな…」「はぁ、なんて事を…」(ご主人様、こう言うの結構鈍いんですね…2人は本気で言ってたと思うんですが…)ダリアだけは真実を知っていた。2人は本当のことを、心から思ったことを言っただけだ。それに気づかないマリは鈍感なのだ。そもそも告白薬は思った事を言ってしまう薬だ
さぁ、今日はついに大晦日だ。料理を大量に作って祝わなければならない「ついに大晦日だね」「今日は天気がいいな」雪は降らないようで、年越し花火も見に行けそうだ「豪華なご飯…楽しみですね!」「花火が楽しみです!起きていなくちゃ」ジェイドとダリアは2人揃って今日を楽しみにしていた。マリは友達などに手紙を送った。これが明日届くのだ「明日は元旦か…早いなぁ。年越したの最近のことだと思ってたのに」そう、1年はあっという間なのだ。特にマリにとっては昨日年越たばかり、みたいな感じだろう「あ、正月飾りを出さなきゃ」正月飾りは古代樹の葉と月光樹の葉、それに赤と白が基調のリースだ。これを玄関に飾ると1年間の福を呼び込むと言う。そして朝ごはんと昼ごはんはパンで、あっさりしたものを食べた。夜にたらふく美味いものを食べるためだ「そろそろ夜ご飯の準備するね」「ご主人様、私も手伝います」「俺たちにも手伝わせてくれ」みんな一緒に料理を作る。リクエストがあったシチューにマルゲリータ、カニはもちろん、お刺身やアップルパイ、フルーツの用意もする。料理をしている間にあっという間に日が落ちる。「みんな先にお風呂入っちゃおうか」順番にお風呂に浸かり、温まる。上がったら豪華な料理が待っていた「ほら、みんなが頑張って作った料理だよ!たんとお食べ!」「こうやって見るとすごい量だな!よし、頂こう」「う~ん!このシンプルなピザがたまらないんですよ」「カニ美味しい~!身が詰まってプリプリ!」「ご主人の作ったシチューは世界一美味い!」「うん!アップルパイ美味しくできた。甘さと酸味がちょうどいい」みんなでワイワイ、テーブルを囲んで食べる食事は別格に美味しい「ん!このカニ美味いな」「本当ですね!カニ味噌も美味しいです」「よし、シャンパン開けようか!」大人はシャンパン、ダリアはもちろんジュースで「待ちきれずに食べちゃったけど…乾杯!」「乾杯!!」暖かい部屋で飲む冷たいシャンパンとジュースは即座に体へ染み渡る「くぅ…美味いな」「はぁ、美味しいですね~」「ぶどうジュース美味しいです」ごくごく「1年ももうすぐ終わるね、あっという間だ」年が明けたと思ったら、もう年越しだ。ダリアにとっての1年は長いかもしれないが、マリ達にとっての1年は本当に短い。これが圧倒的な年の差なの
クリスマスパーティーから一夜明けて、片付けをしている。ジェイドは二日酔いで唸りながらベッドで横になっている。さすがに心配なので、マリが何度も様子を見に来る「大丈夫、具合悪い?」「気持ち悪くて頭が痛いです…昨日の記憶がありません…」「二日酔いを治す魔法薬を作らないといけないかな」「ううーん……」ジェイドが酒臭い。1度飲むと止まらなくなってしまうタイプだ。マリが水に砂糖と塩を加えた経口補水液を作って持ってきた。「飲めそうだったら飲んでね、脱水しちゃうから」 「はぁ…い……」和酒だと、あんなに酔ってしまうのか。それにしても昨日は凄まじかった。歌を歌い突然脱ぎ出し、真冬の外に出ていこうとした(昨日の記憶ないのか…面白かったのになぁ)「昨日の夜中は散々だったな、ご主人とダリアの前で脱ぎ出すなんて」しかも下着まで「私は面白かったよ」「私は見ていられなかったです…」「ご主人の前で、だぞ!?自分だけ脱ごうだなんて許せない」 「え…え…?」話が脱線しすぎてダリアが混乱している 「うん、マチもまだお酒残ってるのかな…」「俺は至っていつも通りだぞご主人?」「そっか…そっか………」 頭を悩ませるマリ。大丈夫なんだろうか~クリスマスツリーも装飾も全て片付け終わった「次にくるのは大晦日だね」「今年もあっという間だな」「大晦日は花火があがるんですよね!」そう、ダリアの言う通り新年を祝う為に各地で花火があがる。冬の夜空に散る花火は、星と相まって美しいのだ「今年は頑張って起きていられるように頑張りたいです」 「無理はしないでね」「そうだぞ、育ち盛りなんだからな」クリスマスから大晦日はあっという間に過ぎていく「大掃除しないとね」「そうだな。俺は背が高いからホコリ落としだ」「私、掃除得意なので!任せてください!」一方その頃ジェイドは…トイレから出られなくなっていた「うう……」ドンドン、とマリがドアを叩く「ジェイド!大丈夫?」「気持ち悪くて…トイレから出られないんです」「そうだな…薬作った方が良さそう…」急遽マリは二日酔いに効く魔法薬を作ることにした。ムーンウォーターに賢者の実、時の欠片、月光樹の葉、ブライトニングハーブにハツカヨモギ「それと、マンドレイクの葉に黄金クローバーをいれて…」グツグツと大釜の煮える音がす







