Masuk幻樹の森から西に30分歩くと、光の街と言われるシンシャ街がある。そこの冒険者ギルドへ何年かぶりに顔を出す
「久しぶり」
ギルドの受付嬢であるエルフが目を見開いた
「あらマリ様!お久しぶりでございます!ギルドマスター!マリ様がお越しですよ!」
ギルド内がドタバタし、あちらこちらからコソコソ話しが聞こえる
「あれって噂の…」
「永玖の守護者!?SSランクのパーティーじゃねえか!」
扉から出てきたのは茶色い髭を伸ばし、背は低いのに屈強なドワーフだ。
「お前たち久しぶりだな!」
「久しぶりだね、ゼヒネル」
ゼヒネルと言うこのドワーフこそギルドマスターである
「今日は何しに来たんだ?」
「魔法薬と材料を買い取ってもらいたくてさ」
「よしわかった!こっちへ来い」
連れてこられたのは買取専門コーナーだ
「今日はどんなものを売りに来たんだ?」
「回復薬に透明薬、記憶薬、無眠薬…それと」
「すごい量だな!」
「あと、エンシェントドラゴンの爪と牙ににヘルハウンドの爪、ダイヤウルフの皮…あとミミックから出てきた宝石」
「おお…これはすごいな」
量が多すぎたのか応接室に案内されたのだった。どれもこれも高額で買取できるほどの品質でこれ以上のものは無いだろう
「買取に少し時間がかかるが…それでも良いか?」
「うん、街を探索してるからいいよ」
ギルドを後にすると魔鉱石店に立ち寄った。マチは鉱石が好きだからだ
「どれも良い品だな…」
見極めている。特に星写しの魔鉱石に目をつけた
「これは高純度の魔鉱石だな…しかも取れる場所がとにかく少ないんだ」
(マチは石を見ているだけで楽しそうだなぁ…)
マチは星写しの魔鉱石を買った。夜になると石の中に星座が写し出されるものだ。続いて紅茶の茶葉が売ってる店に来た。ジェイドが何かを買うらしい。
「食べられるフルーツティー!?こんな物があるなんて…薔薇の紅茶もいい…買います!」
こうしてジェイドは紅茶の茶葉を手に入れた。続いて向かったのはダリアの大好きなぬいぐるみの店だ
「二ーブールのぬいぐるみ…可愛い…」
二ーブールは主に綺麗な川に生息する動物で、カワウソに少し似ているのだ 。ダリアは二ーブールのぬいぐるみを購入し、とても満足そうな顔をした
「よし、そろそろギルドに戻ろうかな」
「ご主人は何も見なくていいのか?」
「私はみんなの幸せそうな顔が見れて満足だよ」
そう、それがマリの幸せだ。ギルドに戻ると査定は完了していたようだ。
「よう!査定が終わったぞ」
応接室に行くと紅茶が出され、お金が渡された
「大金貨5枚に金貨8枚だ」
「こんなにいいの?」「そりゃあどれもこれも品質が良いからなぁ!さすがはハイエルフの作った魔法薬だ」
ゼヒネルは紅茶をひとくち飲むとこんな事を言った
「魔族もちらほら出てきているみたいだしなぁ…お前さんたち、もう冒険はしないのか?」
「冒険は好きだよ。また行きたいと思ってる」
「なら、魔王を倒しに冒険に出るのはどうだ?」
「そうだなぁ…でも今の生活も好きだしなぁ」
マリは頭を悩ませる。魔族が増え、魔王がでてきたらマリが倒さなければならない。魔王はマリにしか倒せないのだ
「まぁ、たまには森の外に出て見るのも悪くないぞ」
「そうだね、考えてみるよ」
そうしてギルドを後にした。帰ろうと思い、街を出たところで異様な魔力を感じた
「よぉ、久しぶりだなマリ。そしてストラス」
上から声がした。見上げるとそこに居たのは、黒い羽を広げた美貌を持つ男だった…悪魔だ。
「ベリアル…」
「お前…何しに来たんだ」
すぐさま戦闘態勢に入る。ベリアルは首を横に振った
地上に降りると「おいおいそんな目で見るなよ…悲しいだろ?」
と、うすら笑みを浮かべる
「そろそろ魔王サマが目覚めるんだよ…だからそれを伝えに来てやったんだ…ストラスさんよぉ、まだ使い魔ごっこやってんのか?」
…ストラスと呼ばれているのはマチだった。ストラスは悪魔の名前だ。ふくろうの格好をし、使える人の前では人の姿を取る
「…ご主人に召喚されて俺は契約を結んだんだ。お前とは違って、人をいたぶり命を奪うことはしない」
「ストラス、お前は天文学に薬草学、鉱物学が得意な博識な奴で人の命は奪わない…はぁ…ガッカリだよ。何の面白みもない」
「人の命を奪って何が面白いのか俺には理解しかねる」
ベリアルは深いため息を吐く
「ところで…マリ、俺のところには来ないのか?」
どういうことなのか。理由は不明だがマリは以前から悪魔であるベリアルに求婚されているのだ。
「渡すわけないだろ。俺のマリだ」
「ふーん、そうか。要するに…お前マリにゾッコンなんだな」
何を言われようが顔色一つ変えないマチ。ジェイドとダリアは話に入っていけないようだ
「まぁいい…すぐに魔王サマが目覚める。マリは俺達のものになる」
そう言うと羽を広げ羽ばたき、瞬く間に消え去ってしまった「私は魔王のものにはならないけどね」
とマリはウンザリした顔を見せた。ジェイドは震えながら涙を流し、ダリアは心配そうな顔をした
「大丈夫だよ。私、魔王なんかより強いから。でもびっくりさせたかな、マチが悪魔だって知って…」
「いいえ…その事は以前、悪魔学の本を読んでいた時にピンと来たんです。ただ、その本にはストラスは悪魔の中で最も博識で穏やかで…人の命を奪うような悪魔ではないと書かれていたので……マチさんを信じました」
ジェイドは涙を流しながら答える。ダリアも頷いた。
「正直驚きましたが、ご主人様とマチさんが何千年と共に生きてきた中で人を殺した、なんて話聞いたことがありません。私もマチさんを信じます」
マチは少々驚いたような顔をして「そうか、ありがとう。」と微笑んだ
家に帰ってくると、皆どっと疲れた顔をして椅子に腰掛けた
「はぁ…まさかベリアルに会うなんてツイないなぁ」
「そうだな…それに魔王が目覚めるのか」
「私達のスローライフを壊さないで欲しいわ…全く。魔王が直々にこっちへくるべきよ」
「確かにそうだな」
「あの悪魔ベリアルに会うなんて…恐ろしかったです…まぁ魔王の方がもっと恐ろしいですが」
「私、ご主人様のお役に立てるでしょうか…」
皆思い思いの事で頭を悩ませていると腹の虫が鳴いた
「腹が空いたな」
「よし、手軽に食べられるものを作ろう」
早速調理に取り掛かる。ふわふわのパンに卵やハム、チーズ、レタスを挟んで調味料を塗る…サンドウィッチの完成だ。もうひとつはシルバーガーリックのスープ
「よし、いただきます」
「うん、美味い!」
「ふかふかのパンに大きめの卵とマヨネーズのまろやかさが合いますね~!」
「ん!ハムの塩味とチーズの深い味わい…美味しいです」
シンプルな具材だからより美味しさを感じるのかもしれない
「ガーリックスープもコクがあるな」
食欲をそそるガーリックの強烈な香り、しかし優しい味わいで体の底から温まる。満足のいく食事だった。
その後、片付けを済ませると悪魔の書を皆で見ていた「このサターン・ルシファって奴が魔王だよ」
「ひぃ…名前からして恐ろしいです」
「でも私たちが倒さなければならない存在」
「俺は戦いの才能はあまり無いからな…」
「でもマチは地獄の大君主って呼ばれてるぐらいだから、本気を出すと相当強いんだよ」
そう、マチは自分では戦いの能は無いと言っているが
実力はマリの折り紙付きである。一度マリと戦ったことがあるからだ。その時はマリにかすり傷を負わせたが、マリに傷を負わせたと言うだけで相当強いのだ。「みんな強いよ。私が特訓や訓練をさせたのも実力を上げるためだから。その実力を遥かに上回る結果を出してくれたでしょ。それだけで充分、悪魔とやり合える。」
「俺はご主人のものだからな。…あいつら相手には全力を出すつもりだ。」
「うう、私も頑張ります…」「ご主人様の役に立てるように全力で!」
みんなの士気が上がっている。マリは勝機があると確信した。今まで一人で魔王と悪魔に立ち向かい勝ってきたからこその自信だ。
「みんな安心してね、私一人でも魔王に勝てるんだから」
5000年以上生きたハイエルフの実力は半端じゃないことを我々は知る事になる。
「今日の夜ご飯は決めた!ヒイズル牛のオニオン増し増し牛丼ね!」
「牛丼か!またあの美味いやつが食える!」
…だが、のんびりライフは今まで通り続くのであった
翌朝、窓の外を覗くと真っ白な光景が目に映った
(夜のうちにこんなに雪降ったんだ…)
ボーっとしていると
「ご主人様、明日はクリスマスですよ!」と、ダリアが楽しそうにしっぽを振っていた。明日は待ちに待ったクリスマスだ
「そっか、もうクリスマスか…早いね」
ハイエルフにとって1年は1日にすら満たないかもしれない。ただ「この時」を、一日一日を楽しむのみ
「明日は七面鳥にクリスマスケーキ、やることいっぱいだね」
「すごく楽しみです!」
まだ16歳のダリアはクリスマスが楽しみで仕方がないだろう。5000年以上生きたマリですら楽しみなのだから
「ホワイトクリスマスだな」
「この冷え込みだと明日も雪が降りそうですね…」
今日は多分氷点下10℃まで行ってるんじゃないだろうか。暖炉の火を絶やさないように薪を入れる。そしてみんな厚着をする。今朝の朝ごはんはパンとコーンスープ。何らいつもと変わらない。
だが、クリスマスの前の日だからか皆ソワソワしている。まるでクリスマスを心待ちにしている子供のようだ。
(今日はクリスマスイブだから、祝ってプレゼント交換しよう)と、マリは密かに思っている
魔光石に魔力を流すとクリスマスの装飾がキラキラと光り始めた。暖炉の横にある大きなクリスマスツリーが1番存在感がある。
「綺麗だな」
「いつ見ても素敵ですね!」
「わぁぁ……!」
まだ子供のダリアが1番目を輝かせている。雪が降っていて朝でも暗いので、電飾があると一気に心まで明るくなる。
「今年もサンタさん来てくれるかな…」とダリアが言ったので、「うん、お利口にしてたから絶対来るよ」とマリが頭を撫でた。ダリアはまだ「サンタさん」が誰なのかを知らないみたいだ。
(純粋でいい子だなぁ)と、マリは思うのだった。昼ご飯はマルゲリータピザを焼いた。トマトソースの赤、モッツァレラチーズの白、バジルの緑はまさにクリスマスカラーだ。
「いただきまーす」
「チーズがトロトロでよく伸びる」
「トマトソースの酸味とバジルの爽やかさが合いますね!」
「生地がパリパリな所とモチモチの所があります!」
「うん、シンプルで美味しいね」
朝、昼は軽いものでご飯を済ませた。それは夜に取っておきの物を出すためだ
「夜は楽しみにしててね」
「お、一体なんだろうな」
「楽しみですね」
「わぁ!早く夜にならないかなぁ~!」
ダリアが大きく尻尾を振って、耳を横に倒している。
嬉しい証拠だ夜になるまでクリスマスの本を読んだり、歌ったりして楽しんだ。さて、肝心の夜までもう少しだ
ついに夜が来た。雪も降ってきてまさにホワイトクリスマスだ
「さぁ、どんどん召し上がれ!」
七面鳥(ターキー)にローストビーフ、ブッシュ・ド・ノエルにシュトーレン。どれもクリスマスを代表する食べ物ばかりが並んでいる
「いただきまーす!」
「うん!このターキー、油っぽさが全くなくて味がしっかりしていて美味しいな」
「こっちのローストビーフはお肉が柔らかくてソースとの相性が抜群で美味しいです!」
「ターキーしっとりしていて、美味しいでふね。さすがご主人様でふ」もぐもぐ
みんな幸せそうな顔をして料理を食べている
「うん、美味しいね!」
そして本日のメインデッシュ、ブッシュ・ド・ノエル!
「うん、濃厚な甘さで口溶けがいいな…美味い!」
「しっとりしていて美味しいですね~!」
「甘い…美味しい…!」
「あぁ、今年も上手くできてよかった!」
~
ホッとしたのもつかの間、プレゼント交換だ
「まずは私からみんなにプレゼントね!」
マリは袋を渡した。中には3人分のマフラーが入っていた。それぞれ色違いだ
「暖かくていいな、ありがとう」
「みんなそれぞれ目の色のマフラーですね!」
「ふかふかしてます」
毛糸で編んだマフラーだ。とても暖かい。
「次は俺だな」
マチは袋を渡す。ジェイドのプレゼントは耳に被せるタイプの耳あて。ダリアのプレゼントは東の国の食材や料理が全て載っている本。マリのプレゼントは高純度ミスリル鉱石で出来た包丁だ
「いつも耳が冷たくなるので嬉しいです」
「わぁ、まだ知らない料理がある…」
「すごいね、この包丁!ありがとね」
マチはお礼を言われて少し頬が赤くなった。高純度ミスリル鉱石で出来た包丁はキラキラと青く光っている
「続いて私ですね」
ジェイドは袋を渡した。マチには紺色のロングコート。ダリアにはエプロン。マリには高純度鉄製フライパンを。
「コートとか普段着ないからな、嬉しいぞ」
「新しいエプロンだ!ありがとうございます」
「わぁ!調理器具いっぱいだね、うれしいよ!」
皆それぞれいろんなプレゼントを貰って喜んでいるが
最後はダリアだ。何やら細長い紙袋に入ったものを取り出すと、中から出て来たのは和酒だ「和酒か、嗜むのにちょうどいい」
「私すぐ酔っ払ってしまうので少しだけ…」
「和酒か!飲んだことないなぁ、どんな味なんだろう。早速飲んでみてもいいかな?」
ダリアはシャンパングラスに和酒を注いだ
「どうぞ」
まずは香りを嗅ぐ。微かに米の匂いがする。そして呑んでみると…
「ん!コメの味が口の中に広がって美味しいね!」
「うん、美味いぞ。飲みやすいな」
「あぁ、キレがあっていいですね~へへへっ」
ジェイドの顔が赤くなっている。これ以上飲ませるのは危険だ
「みんな、ありがとう!すごく嬉しいよ」
「俺もだありがとう」
「それは私のセリフですよ~ははっ」
「ありがとうございます…嬉しかったです」
みんな思い思いのプレゼントを渡し、喜んでもらえてさぞかし嬉しいだろう。皆の心が暖かくなった
「ふふふ、皆さんももっと飲んでくださいよぉ~ほらほら~」
「ちょっと、これ以上飲んじゃダメだって!」
「おいお前、飲み過ぎだ」
こうなると止めるのが大変だ。だがまだ聖夜は始まったばかり
クリスマスパーティーから一夜明けて、片付けをしている。ジェイドは二日酔いで唸りながらベッドで横になっている。さすがに心配なので、マリが何度も様子を見に来る「大丈夫、具合悪い?」「気持ち悪くて頭が痛いです…昨日の記憶がありません…」「二日酔いを治す魔法薬を作らないといけないかな」「ううーん……」ジェイドが酒臭い。1度飲むと止まらなくなってしまうタイプだ。マリが水に砂糖と塩を加えた経口補水液を作って持ってきた。「飲めそうだったら飲んでね、脱水しちゃうから」 「はぁ…い……」和酒だと、あんなに酔ってしまうのか。それにしても昨日は凄まじかった。歌を歌い突然脱ぎ出し、真冬の外に出ていこうとした(昨日の記憶ないのか…面白かったのになぁ)「昨日の夜中は散々だったな、ご主人とダリアの前で脱ぎ出すなんて」しかも下着まで「私は面白かったよ」「私は見ていられなかったです…」「ご主人の前で、だぞ!?自分だけ脱ごうだなんて許せない」 「え…え…?」話が脱線しすぎてダリアが混乱している 「うん、マチもまだお酒残ってるのかな…」「俺は至っていつも通りだぞご主人?」「そっか…そっか………」 頭を悩ませるマリ。大丈夫なんだろうか~クリスマスツリーも装飾も全て片付け終わった「次にくるのは大晦日だね」「今年もあっという間だな」「大晦日は花火があがるんですよね!」そう、ダリアの言う通り新年を祝う為に各地で花火があがる。冬の夜空に散る花火は、星と相まって美しいのだ「今年は頑張って起きていられるように頑張りたいです」 「無理はしないでね」「そうだぞ、育ち盛りなんだからな」クリスマスから大晦日はあっという間に過ぎていく「大掃除しないとね」「そうだな。俺は背が高いからホコリ落としだ」「私、掃除得意なので!任せてください!」一方その頃ジェイドは…トイレから出られなくなっていた「うう……」ドンドン、とマリがドアを叩く「ジェイド!大丈夫?」「気持ち悪くて…トイレから出られないんです」「そうだな…薬作った方が良さそう…」急遽マリは二日酔いに効く魔法薬を作ることにした。ムーンウォーターに賢者の実、時の欠片、月光樹の葉、ブライトニングハーブにハツカヨモギ「それと、マンドレイクの葉に黄金クローバーをいれて…」グツグツと大釜の煮える音がす
幻樹の森から西に30分歩くと、光の街と言われるシンシャ街がある。そこの冒険者ギルドへ何年かぶりに顔を出す「久しぶり」ギルドの受付嬢であるエルフが目を見開いた「あらマリ様!お久しぶりでございます!ギルドマスター!マリ様がお越しですよ!」ギルド内がドタバタし、あちらこちらからコソコソ話しが聞こえる「あれって噂の…」「永玖の守護者!?SSランクのパーティーじゃねえか!」扉から出てきたのは茶色い髭を伸ばし、背は低いのに屈強なドワーフだ。「お前たち久しぶりだな!」「久しぶりだね、ゼヒネル」ゼヒネルと言うこのドワーフこそギルドマスターである「今日は何しに来たんだ?」「魔法薬と材料を買い取ってもらいたくてさ」「よしわかった!こっちへ来い」連れてこられたのは買取専門コーナーだ「今日はどんなものを売りに来たんだ?」「回復薬に透明薬、記憶薬、無眠薬…それと」「すごい量だな!」「あと、エンシェントドラゴンの爪と牙ににヘルハウンドの爪、ダイヤウルフの皮…あとミミックから出てきた宝石」「おお…これはすごいな」量が多すぎたのか応接室に案内されたのだった。どれもこれも高額で買取できるほどの品質でこれ以上のものは無いだろう「買取に少し時間がかかるが…それでも良いか?」「うん、街を探索してるからいいよ」ギルドを後にすると魔鉱石店に立ち寄った。マチは鉱石が好きだからだ「どれも良い品だな…」見極めている。特に星写しの魔鉱石に目をつけた「これは高純度の魔鉱石だな…しかも取れる場所がとにかく少ないんだ」(マチは石を見ているだけで楽しそうだなぁ…)マチは星写しの魔鉱石を買った。夜になると石の中に星座が写し出されるものだ。続いて紅茶の茶葉が売ってる店に来た。ジェイドが何かを買うらしい。「食べられるフルーツティー!?こんな物があるなんて…薔薇の紅茶もいい…買います!」こうしてジェイドは紅茶の茶葉を手に入れた。続いて向かったのはダリアの大好きなぬいぐるみの店だ「二ーブールのぬいぐるみ…可愛い…」二ーブールは主に綺麗な川に生息する動物で、カワウソに少し似ているのだ 。ダリアは二ーブールのぬいぐるみを購入し、とても満足そうな顔をした「よし、そろそろギルドに戻ろうかな」「ご主人は何も見なくていいのか?」「私はみんなの幸せそうな顔が見れて満足だよ」そ
翌朝くしゅんっとジェイドが朝から何度もくしゃみをしている「大丈夫?」「はい、これぐらい大丈夫ですよ」ズビッ「具合が悪いなら早めに言え」「いいえ、具合悪いなんてことありませんよ」ズビッなんだか様子がおかしいが、朝ごはんはパンとべーコンエッグに豆スープをしっかり食べたのだが、昼頃…「う、頭が…」「ジェイド、顔赤いよ?熱測るから」マリはおでこに手の甲をくっつける「うん熱がある。ジェイド、寝てなきゃダメだよ」「うう…」ぐすっジェイドは熱を出すとなぜか涙が止まらなくなる「大丈夫だよ、見た感じただの風邪だから。風邪薬作るからね」マリは本を見ながら万能風邪薬を作り始めた「えっと、ムーンウォーター、古代樹の葉、夜行茸、コガネハッカ、ハツカヨモギに巻きサソリっと」鍋に次々と材料を入れていく。ボコボコと泡が立つ音がする「ジェイドさんは大丈夫なのか」「うん、大丈夫だよ。この薬を飲んで1日寝ていれば治るから」「そうか」マチもなんだかんだ言って心配しているようだ。マリはすりおろしたボガルンダをジェイドの元へ持っていき「ジェイド、起きて食べれる?」「うぅ…マリ様…」完全に弱りきったジェイドがゆったりと体を起こした「薬はもうすぐで出来るからね。ほら、あーん」もぐっ…「あ…ありがとうございます」ズビッ赤い顔が更に赤くなった「ご主人…薬が出来たぞ…………食わせて貰いやがって…」ボソッ「あ、マチありがと。ジェイド、全部食べれそうになかったら先に薬飲もう?」「はい…」マリは茶色の薬を飲ませる。とても苦そうだが良薬口に苦し、だ「ゴホゴホッ」「大丈夫?ゆっくりでいいから」なんとか全部飲みきって、マリがまたジェイドを寝かせた「明日には良くなってると思うよ」「すみません…ううぅ…」大粒の涙がジェイドの顔を濡らす。熱を出すとまるで子供のように必ず泣いてしまう。生理現象なのだろ「大丈夫、眠れるまでここにいてあげるよ」 結果、3分くらいで眠りに落ちたジェイド。気づけば朝からどたばたしていた「ご主人は大丈夫か、疲れてないか」「うん、大丈夫。心配してくれてありがとう」絶対に良くなるから頑張れ…ジェイド、あと少しの辛抱だ~「マリ様のおかげですごく元気になりました!昨日はご心配とご迷惑をおかけしました…」「治ってよかったね」「はぁ…よか
「そうだ、お昼ご飯食べていこうか」この村には人気の店がある。その名はジョリアン。モンテナ牛のハンバーグがとにかく美味いのだ「いらっしゃいませ、こちらへどうぞー」若い女性のウェイターさん、珍しく人間だ。 席に座るや否や「すみません、モンテナハンバーグ3人分ください」「かしこまりました」「ここのハンバーグ、本当に美味しいからね、一度食べたらやみつきになる」「確かに美味いよな」「匂いだけでパンが食べられそうです」ここのシェフはエルフで、500年間世界中の料理修行をして結果ハンバーグに辿り着いたらしい。ただのハンバーグ好きだ。「お待たせいたしました」鉄板に乗った大きなデミグラスソースのハンバーグとバケットが出された。湯気が上がり、ジューっと焼ける音がする「いただきます!」とても熱そうだが、熱いうちに食べなければ美味しさが逃げてしまう。切れ込みを入れただけでハンバーグから肉汁が出てくる出てくる。あむっと口の中に入れると肉汁が飲めるほどに出てきて、それでいてふわふわの食感、デミグラスソースのコクと味の深さ「んんー!美味っしい、たまんない!」「ぐ、肉汁がすごいな」「うわぁ口の中でとろけていきますー!」固いバケットが油の多いハンバーグとよく合う。3人はそのまま一言も喋らず黙々とハンバーグを食べたのだった。店を出たあともしばらく多幸感に包まれていた「はぁ…美味しかったなぁ」「まぁ、ご主人の作った料理には叶わんがな」「ん、そうですね。マリ様の料理がいちばん美味しいですから!」「んんー。そう言って貰えると嬉しい…な」ちょっと照れるマリ。その顔をガン見する2人。そうこうしているうちに日が暮れ、転送魔法で家に帰ってきた「今日はいろいろあって楽しかったなー」「本も買えたし、ご主人には思いがけないプレゼントを貰ったしな」「本当に嬉しいです、ありがとうございます」「いいよ、いいよ。2人からお返しのプレゼント貰っちゃったし」何だか、たまに村へ遊びに行くのも悪くないと思えるマリだった~翌日そろそろ雪が降る頃だろうと、マリ達はある準備をしていた。「ジングルベール、ジングルベール、鈴が鳴るー」マリは思わず歌ってしまう。そう、クリスマスだ。クリスマスツリーやリースなどの飾り付けをしていたのだ。サンタさんは来ないから、3人でそれぞれ好きな物を
魔族は主にエルフ、ドワーフ、獣人族など人間の亜種のことを指している。それとは違い、悪魔族また、悪魔は人に罠を仕掛け、悪の道に誘う。時には人を殺すこともある。その中でもいちばん強いのは魔王だ。魔王は「500年に一度の大厄災」と言われている。災害、疫病、餓死を世界中にもたらし、人間を極限までいたぶり殺すのだ「悪魔…もうそんな時期か」「どういう時期なんだ?」思わずツッコミを入れてしまうマチ「悪魔が出てきたって事は魔王もそろそろ出てくる頃だな、と思ってね」「魔王ですか…また大厄災がやってくるんですね」怖がりなジェイドは魔王と言う名が出ただけで今にも泣きそうになっている「大丈夫だよ、私強いから」「あぁ、ご主人の強さは確かだ。それに魔王を倒すのはご主人にしか出来ない技だからな」そうだ。この世界の神話では、赤い瞳を持つハイエルフは不老不死、脅威の再生能力を持ち、唯一この世界の大厄災である魔王を倒す魔法が使えると言うが…それは本当である。実際に500年前、さらに500年前の魔王出現の時もマリが倒している。と、そんな話をしていると「あぁ、お昼過ぎてる。長話しすぎちゃった…ご飯ってうかおやつの時間だね」あっという間に時間が過ぎた。「質のいい野いちごと野ベリー買ったから…パイでも作ろうかな」「いいな、そうしよう」早速マチはオーブンを温める「…甘いの大好きだから動くの早いね」「そ…そうか?」マリはあらかじめ買っておいたパイ生地にカスタードクリームと野イチゴ、野ベリーを並べ、生地を中心に寄せながら内側に被せる。「うん、そろそろいい頃だ」マチが溶かしておいたバターを塗り、焼き始めた「あぁ…いい匂いがしますね」甘い匂いがふわっと部屋中を立ち込める。ぐぅぅ…と3人の腹の音が鳴る「今のうちに紅茶の用意しよう」パイに会う紅茶の茶葉を用意する。焼けるのが待ち遠しい「キュッ…キュキュ!」しろも、くろも、もふこ達がいつの間にか姿を現した「みんなも食べたい?」「モキュ!」「そっか、じゃあみんなで食べようね」そんな話をしていると「パイが出来たぞ!」マチの喜びの声が上がる。パイの上から粉砂糖をまぶして「出来た、野いちごと野ベリーのパイだ!」かなり大きいが、きつね色に焼きあがったパイ生地。キラキラと光り輝く野いちごと野ベリー。6等分にに切り分けて
ここは幻樹の森非常に幻想的な森で、ありとあらゆる魔法動物や植物が生きているここで生活するハイエルフのマリ・レヴァンスもうかれこれ5000年以上生きているのだマリは朝起きると最初に窓を開ける「ふぁぁ…風が冷たいなぁ」ひんやりとする風を受けるこの時、ちょうど秋から冬になる所だマリの真っ白で長い髪が光を受けながらサラサラ動く白くきめ細やかな肌に赤い瞳。真っ白な体に赤が映える。その瞳がハイエルフの特徴でもある体は華奢で、本当に5000年以上生きているのかと疑問に思う者も居るだろう「ご主人、紅茶が入ったぞ」マリに声をかけたのは使い魔フクロウのマチとても大柄な男で、黒く所々青く長い髪をなびかせている。瞳も青く、湖のように澄んでいるマリは椅子に座った「ありがとう、頂くね」そこに寝起きであろう、もう1人の姿がある金髪を三つ編みで束ねた男のエルフだ 名はジェイド・グレイマン瞳の色は緑で、まるでこの森のような幻想的で潤んだ目をしている「マリ様、おはようございます…」「ジェイド、おはよう。よく眠れた?」 「…はい、よく眠れましたよ。ですが今朝は冷え込みが強いですね」3人でテーブルを囲んで紅茶を飲む。3人の沈黙を破るようにパチパチと暖炉の薪が音を鳴らす「ご主人、俺は今日も薪割りをするつもりだ。ご主人達はどうする?」「私はジェイドと一緒に薬草を摘みに行こうかなと思って」「そうかわかった、気をつけてな」そんな些細な会話をして、今日も1日が始まった!~「あ、ここにもハテナ草が生えてる。お?こっちにはフシギ草が」薬草取り。マリは魔法薬を作るのが得意だ趣味でもあるのだ「マリ様ー!あちらにダイヤウルフの群れが!」ジェイドが息を切らして走ってきた「よし、お肉も爪も牙も血も、全部頂こう!」ドドドドーーン!!マリが派手に魔法を使った。だが木々には傷1つ付いていない。そしてダイヤウルフが10頭手に入った「ダイヤウルフは名前と違ってお肉が柔らかくて美味しい…それに爪と牙と血は…薬に使える」マリは目を光らせている「ふふ、研究も捗りますね」ジェイドはその顔を見て嬉しそうだったそうこうしているうちに昼になっていたようだ。マチが帰ってきた「マチ、ただいま」「ご主人、おかえり」薪割りを終えたマチが外の椅子に座っていた 「今日はマリ







