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第5話:カジノ①

Author: ももちく
last update publish date: 2026-06-18 17:05:49

 この世界で一番手っ取り早く稼げる方法。それはどこの世界でも変わらないようだった。女神が妖艶な笑みを浮かべる。

「カジノで荒稼ぎするのよ」

「犯罪じゃないですよね!?」

「バレなければね」

「女神ぃぃぃっ!?」

 バレなければ犯罪じゃない。なんとも甘美な言葉だった。またしても女神はこちらを堕落させようとしてくる。

(この女神様。ダメンズ製造機なのでは?)

 目の前で踏ん反り返っている女神に対して、こちらはおどおどと情けない姿を晒してしまっている。

 確かに金を稼ぐ方法を聞いたのは自分だ。今更、何ビビってやがると尻に蹴りを入れられても仕方ないくらいに及び腰となっていた。

 これではいかんと、ごほんっ! とひとつ咳払いをする。そして、女神に向かって背伸びをして出来るだけ悪い男を演じてみせる。

「俺のエスパーの力が火を噴くぜ? ってことですよね」

「そうそう。透視、透明化、時間停止とやりたい放題できるじゃない♪」

「具体的には?」

「そこはあなた自身が考えなさい。と言いたいところだけど、能力を上手く使うためのきっかけは教えてあげる♪」

 女神はそう言った後、どこからともなく手のひらに収まるサイズのカードを取り出してきた。それをこちらの手に乗せてきた。そのカードの左上にはこちらの顔イラストが描かれている。

 さらには生年月日と16桁の番号が書かれているカードであった。ゴクリ……と息を飲むしかない。

「えっと……身分証明書ってやーつ?」

「もっとはっきり言えば、マイナンバーカードよっ!」

「この世界、すごいなぁ!? 戸籍を管理してるだけでも驚きだっていうのにさぁ!? 本当にここって中世ナーロッパなんですかね!?」

 つい錯乱してしまった。技術の進歩と文明の進捗はイコールで結ばれないとはいえ、ここまで乖離してるものなのか? と訝しんでしまう。

 とりあえず、この世界のその辺は置いといて、マイナンバーカードで身分を証明できるのは便利である。

 今から自分が向かう場所はカジノである。身分を証明できなければ、そもそもそのカジノに入場できないであろう。

「えっと……身分証明書は手に入れた。あとは格好だけど」

「そのままでいいわよ。さすが日本の学生服! 異世界でも貴族並のドレスコードなのよね☆彡」

「あはは……ネタにされがちな日本の学生服。恐れ入ったぜ」

 服装もこのままで大丈夫。あとは女神様から貸してもらった2万ゴリアテを軍資金にして、カジノで戦うだけである。

 だが、突然、女神様が( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーンとこちらの頬を勢いよく叩いてきやがった。こちらは目を白黒させるしかない。

「あ、あの……? 俺、また何かしちゃいましたか?」

「んもう。心構えがなってない。あなたはこれからカジノでとびっきり悪いことをしてくるの。マイナンバーカードを提示してください。はい、しますYESYESYESで済むと思ってるの?」

「えっ。そこからもう間違ってるの、俺!?」

 頭の中で描いていたイメージを女神の平手打ちで根底からぶっ壊された。

 こちらとしてはカジノに向かい、その入り口でマイナンバーカードを提示し、カジノに乗り込むつもりであった。

 それで全然問題無いと思っていた。だが、女神はノンノンノーン! と否定してきている。

「まず、このマイナンバーカードを提示する時に、水晶玉の上にこのカードを乗せるの。すると、自分のステータスが相手に開示されることになる」

「あっ! 俺の職業がエスパーだってバレバレってことぉ!?」

「この世界でエスパーって職業はレアもレアでウルトラレアな職業だから、そこまでは問題にならないわ。でも、用心深い人物はスキル欄を開示しろと言ってくるかもしれないわね」

「なるほど……透視、透明化、時間停止の部分を見せろと言ってくるわけかっ!」

「なので……透明化を使って、スキル欄を透明化させちゃいなさい」

「へっ? ワンモアプリーズ」

「んもう。察しが悪いわね」

 女神は話を中断すると、どこからともなく水晶玉を取り出してきた。その上にこちらのマイナンバーカードをかざす。先ほど説明されたようにこちらのステータスが誰の目でも見れるように開示されてしまう。

--------------------

名前 :アルト・キサラギ

モデル:ヒューマン

Lv  :3

職業 :エスパー

スキル:エスパー能力Lv1

    透視Lv1

    透明化Lv1

    時間停止Lv1

--------------------

 これだけでも驚きだというのに、開示されているステータス画面に向かって、こちらの指先を女神の柔らかな手で誘導されてしまう。

 心臓の鼓動が跳ね上がる。女神の顔がこちらに近づいてくる。しかし、女神の顔がいきなり横に向いてしまう。がっかりしそうになったところで女神から指示をもらう。

「指先に念じなさい。不都合な場所が消えるようにと」

「お、おう。このスキル欄ってことだよね!?」

「そうよ。初めてにしては上手じゃない♪」

「うう……女神様はダメンズ製造機すぎだよぉ、ふえええん」

 女神の手ほどきで犯罪童貞の皮を一枚脱ぎ捨てることになる。改めて開示されているステータス画面に目を向けた。

--------------------

名前 :アルト・キサラギ

モデル:ヒューマン

Lv  :3

職業 :エスパー

スキル:

加護:勝利の女神アテナの加護

--------------------

 驚くことにスキル欄に何も書かれていない。ついでに言うと新しく加護というのが増えていた。

「マイナンバーカードに書かれていることを消したりすると犯罪なの」

「……俺、犯罪者じゃーん!」

「カジノで大儲けするんでしょ? これくらいの悪事で何ビビってるのかしら?」

「そりゃそうですけど」

「じゃあ、行ってらっしゃい。カモフラージュとしてわたくしの加護をサービスしといたわよ☆彡」

「詳しく!」

「実践あるのみ。お金を稼ぐついでにエスパー能力も鍛えてらっしゃい♪」

「そんなぁ!?」

 不安であったが、同時にわくわくが押し寄せていた。自分は女神に守られるだけの存在ではない。その証明をしてみせるために、この街にあるカジノへと足を進めた。

 この時の自分はまだ知らなかった。

 カジノ入場は18歳以上であること。自分は16歳……。すでに詰んでいた。

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