LOGIN「さてと……そろそろ真面目な話をするわよ?」
女神がピシャリと場を整えてくれた。その身から威厳と神々しい光を溢れさせる。いよいよかと思われる瞬間がやってきた。
周りにいる貴族たちが姿勢を正す。聖女パーティの3人も女神に向かってひざまずく。自分はどうしたものかと考えていると、女神がこちらの両肩に両手を乗せてきた。
「勇者アルト・キサラギが聖女の旅を助けてくれます。彼はハズレ職業のエスパーですが、それでもきっとたぶん聖女のためにその命を捧げてくれるでしょう!」
「……えっと、女神様」 「はい? なんでしょうか、勇者アルト・キサラギ」 「キャラクターシートでエスパーをお勧めしてくれてましたよね?」 「……はて?」 「ちがうのかよ!」女神が困った顔になっている。しかし、こちらは本日のお勧めとなっていた『エスパー』『調教師』『墓守』の中にあったエスパーを選んだ。
そうだというのに、その女神自身が困惑していやがった。話が違うと問いただしたい気持ちになる。
"何かの手違いがあったみたいね?"
女神から念話が届いた。こちらはキャラクターシートに記載されていた『本日のお勧め』のことを念話で返しておく。
"うん。webサイトの更新が上手く行ってなかったのね……"
"ちなみに本当のお勧めは何だったんです?" "賢者、魔物使い、自衛隊" "自衛隊? ……え? マジものの自衛隊!? 銃火器が使えちゃうってことぉ!?" "うん。それくらいじゃないと邪龍とか倒せないと思ったから" "今の俺、エスパー……" "が、がんばれがんばれ!"女神との脳内打ち合わせは終わった。自分はハズレ職業のエスパーから他の職業に変えることはできないと言われた。
Lv20まで育てば、神殿で転職できるそうだ。しかし、覚えてる限り、今の自分はLv3。ここからLv20まで上げるのがとてつもなく長いと感じてしまう。
続いて女神が職業エスパーがどんなにすごいのかを皆の前で解説し始めた。それはアルトにとって致命傷になる……。
「アルトくんはなんとエスパーのスキルを3つも使えるの! 透視、時間停止、透明化よ!」
「女神様。ちょっと解説止めてもらえますか?」 「え? アルトくん、なんで!?」 「すごく悪い予感がするからです……」 「なんでよ! 透視ってのはわかりやすく言うと盗撮に使えるわ! 時間停止はよくある企画ものAV。あと透明化で女子風呂に入るとかもあるわね。どれも素晴らしいじゃない!」 「ちっとも素晴らしくねーんだよ! 俺だってわかってんだ!」またもや聖女パーティの面々がしかめっ面になった。特に聖騎士シャインが汚物を見るような目でこちらを睨んできた。
聖騎士シャインが聖女ヴィオレッタの前に立つ。その姿は聖女の盾だった。ぐぬぬ……と唸るしかない。
いくら透視能力を手に入れたからといって、年がら年中、それを使うわけではない。なるべく……なるべくなら聖女パーティの役に立つように、これらのスキルを使いたいと思っている。
しかし、ますますシャインの眼力が強まった。彼女の後ろにいるヴィオレッタもジト目だ。
(くぅ! こっちをめっちゃ疑ってやがる! なんでだよ! 俺は……俺はぁ!)
一触即発の雰囲気がお互いの間に流れる。向こうの気持ちは痛いほどわかる。そりゃ、今のこの瞬間も透視能力が使われていると思えば気味悪いだろう。
だが、女神に誓って、自分は透視能力をほんのちょっとしか使っていない。聖女の盾となっている聖騎士様の鎧だけを透かして見ているだけだ。
これにも立派な理由がある。シャインが武器を隠し持っていないかの確認だ。決してでっかいおっぱいを鎧下の服の上からたっぷりねっとり確認しているわけではない!
「ちょっと! なんで今にも喧嘩を始めそうになってるの!? アルトくんはエスパーなの! 薄気味悪いのはわかるけど、彼のスキルをもっと丁寧に解説するね?」 「女神様!? ちょっと待って!? これ以上、状況を悪くする気ですか!?」女神に待ったをかけたが女神はすらすらとアルトのスキルを解説し始めた。透視Lv1は服1枚を透視する程度であり、モロに見えているわけではない。
しかも透視Lv1の場合は一度に透視できる対象はヒト一人に限るとまで言ってくれた。
女神のスキル講座はありがたい……。だが、その解説がますますシャインを激昂させた。
「ヴィレ! 拙者の後ろに隠れるんだ! 今まさに透視能力を使っているはずだ! 拙者は重装甲ゆえに、この痴れ者の透視をある程度抑えられる!」
「わかった。シャイン。私を守ってね!」 「ああ、ヴィレ。貴女の透き通るような肌をこいつに絶対に見せはしない!」 「チョマテヨ! 俺はそんなことのためにスキルを使わねえよ!?」 「なんだと!? ヴィレの裸に興味がないというのか!? こんなに可憐な美少女なのにか!?」 「お、おう!? それ、ヴィオレッタさんを透視しろっていう振りなんですか!?」 「こいつーーー!」シャインは激昂していたが、その場からは動けないようだった。それもそうだろう。こちらは透視能力を保持している。
彼女が下手に動いて、こちらの視線がヴィオレッタに向けば、何のために彼女がヴィオレッタの盾になったのかわからなくなる。
睨み合いの時間が過ぎていく……。永遠にこれが続くかと思われた。だが、この場を収めようと女神が動いた。
「はい。アルト・キサラギくん。貴方は聖女に危害を加える可能性があるわ。とりあえず……追放よ!」
「チョマテヨ! とりあえずで追放するのやめてくれませんか!?」 「そうでもしないと、この場が収まらないじゃな~~~い♪」女神が錫杖を振るう。それと同時にこちらの身体が光に包まれた。次の瞬間、視界がぐるりと反転する。
ぐにゃりと景色が歪む。目を丸くしている間に、自分は違う場所に飛ばされてしまう……。
◆ ◆ ◆
「ちくしょう……ちくしょう」
アルト・キサラギは無一文で街の一角へ飛ばされた。肩をがっくしと落としながら、トボトボと中世ヨーロッパ風の街並みを歩く。
行く当てもない。お腹が空いてきたというのに、食べ物を買う金もない。足取りが重い。どこへ向かうべきかもわからないというのに、それでも歩き続けた。
やがて、心が折れて、その場でしゃがみ込む。体育座りになって、膝の間に頭を突っ込んで、そのまま動くことをやめた。
自分がそんな状態だというのに街を行く人々は足を止めようともしなかった。
(俺が何をしたってんだよぉ! もう、お家帰りたいよぉ!)
どん底の状況だった。自分が使えるスキルは透視、透明化、時間停止の3つだ。この状況をどうにかできるスキルではない。
涙が溢れてきそうになった。自分は男だろ! と制服の裾で涙を無理矢理拭き取る。このまま、しょげていても何も起きない。
飢え死にする前に、この3つのスキルで今の状況から突破する方法を模索しなければならない。
頭を上げる。全てを喰らいつくしてやらんという憎悪の籠った目で、こちらを無視して歩く人々を睨みつけてやった。
それでも、誰もこちらに無関心を装っていやがった。
「んもう。そんな目をしちゃダメ♪」
「って、女神様!?」 「探したわよ」 「うう……女神様ぁ!」女神がこれでもかと優しいオーラをその身からあふれ出していた。荒んだ心が癒される。女神に抱き着き、彼女のローブの胸元へ顔面を思い切りこれでもかとうずめた。
それでも一切、女神は拒否感を出してこない。ならばとグリグリと頭をもっと胸の谷間にうずめてやった。
「ぱふぱふ……ぱふぱふ」
「うふふ。さっきはごめんね? でも、ああしないと、アルトくんがシャインちゃんに斬られる可能性があったから」 「ぱふぱふ……ぱふぱふ」 「んもう。赤ちゃんみたい。お腹空いたでしょ?」女神の胸の谷間に頭をうずめたまま、こくこくと頷いた。よしよしと女神がこちらの頭を撫でてくれる。
女神がこちらから少しだけ距離を取る。寂しい顔をしていると、女神がニッコリとほほ笑んでくれた。
女神がこちらの手を取り、手のひらの上に革袋を置いてくれる。
「わたくしが聖女たちを説得しておくわ。はい、これ生活費。アルトくん、これで数日しのいでね?」
アルトは生活費として女神から1万ゴリアテをもらえた。
「ついでにいうとトイチだからね?」
――トイチ。十日で一割の略で、非常に高金利であることを指す言葉だ。10日で1割の利息を取ると、年間で約365%の金利となる。よい子の皆は引っかからないように注意だぞ☆彡
「今時のサラ金でもそこまでじゃないでしょ!?」
「学割利かせとく? リボ払いもお勧めよ!」 「じゃあ、リボ払いでお願いしまーす!」アルトは追加でもう1万ゴリアテ、女神から借りることになった。
これで飢えを凌げる。アルトは心底ホッとした。
今の彼は女神のパフパフと空腹によって思考能力がかなり落ちていた……。
ゲイルが剣を構える。すぐさま自分はゲイルの後ろに回り込んだ。剣風がゲイルの身から発せられる。 目にも止まらぬ斬撃だ。ゲイルは近づいてくるスケルトンを次々と打ち砕いてくれた。だが、それでも敵の勢いは衰えない。 次に襲ってきたのは骨で出来た獣たちだった。彼らは骨だけの身体でありながらも俊敏に動く。ゲイルが驚きの表情になっていた。「これはちと難儀しそうですわい」 「俺も何か手伝ったほうがいいか!?」 「いえ。シャイン殿を落とさないようにご注意を。駆け抜けますぞっ!」 埒が明かないと判断したのだろう、ゲイルは。大広間を走って突っ切る判断に出た。ゲイルがまたしても剣風を発生させる。目の前に展開していた骨の獣が吹き飛んだ。 空いた道をゲイルと共に走る。そして、自分を先に行かせてくれたゲイルが殿を務めてくれた。 自分はシャインを背負ったまま、走りに走った。階段が見えた。その階段を転げそうな勢いで下っていく。1階部分にやってきた。そこで足を無理矢理止められることになった。 道を塞いでいたのは骨で出来た恐竜だった。強靭な顎を持ち、さらに手には鋭すぎる爪が生えている。 ゲイルは自分の尻を守ってくれていた。そのため、骨の恐竜の相手をするのは自分となる。覚悟を決めた。その場でシャインを床に下ろす。 短剣を身体の前で構える。まずは透視能力を発動させた。敵の弱点を探すためである。骨だけの存在であろうが、その身体を動かしているエネルギーの核があるはずだと睨んだ。 そして、こちらの目論見通り、エネルギーの核が見えた。骨だけの存在だというのに心臓部分にエネルギーの核があった。 そこを的確に短剣で貫けばよいと思えた。しかし、そう簡単にはいかないようである。骨の恐竜が大きく口を開いて、こちらに突進してきやがった。 時間停止を発動させた。短剣を仕舞う。床に置いたばかりのシャインを担ぐ。その後、恐竜の突進を躱せる位置へと移動する。 時間停止が解けた。骨の恐竜がドッスンドッスンと足音を立てて、あらぬ方向へと突っ込んでいく。壁に激突しやがった。顔が半分砕け散っている
ぐったりとして動けなくなっている聖騎士シャインを背負う。鎧が無い分、彼女本来の重さにびっくりしてしまう。(これが女子の体重ってやつ? 見た目と裏腹に軽すぎる!) 聖騎士シャインは自分と同じ身長だ。そして、胸にはFカップのおっぱいを実らせている。それならば、自分と大して体重はかわらないはずだと思えた。 実際には違った。背負ったことで、男と女がここまで違うものかとびっくりしてしまった。背中に当たるおっぱいの感触を楽しんでいる暇などいっさいなかった。「女子を助けるのは男子冥利だとは思いませんか?」 「それが憎々しいシャインじゃなかったら、もっと良かったって思ってる」 「がははっ。アルト殿は狭量ですな」 「うるせえ。散々ひどい目、見せられてんだこっちは。てか、やっぱり仕返しにおっぱい揉んでおけばよかった?」 「ゆっさゆっさと身体を揺らしてあげなされ。それで背中におっぱいがこすりつけられるでしょう」 「そこまで俺の足腰が強くないから却下かな」 バカ話をしながら神殿から脱出しようとしていた。足元に転がる大量の骨がとにかく邪魔だ。こちらはシャインを背負っている。危なくて仕方がなかった。 変な風に骨を踏んだら、転んでしまう自信があった。来た時以上に慎重に帰りの道を行く。 すると、来た時には気付かなかったものが目に映ることになった。古びた絵画が壁に飾られていた。「こんな絵画、来る時にあったっけ?」 思わず先を歩くゲイルに訪ねてしまった。ゲイルはふむ……と息をつき、足を止めてしまった。「行きはアルト殿のお尻を守ることに集中していたため、気づきませんでしたな」 「俺の尻に集中しすぎじゃね?」 「イイ男ですからなっ」 「うほっ!」 ゲイルがおどけてみせた。ゲイルがホモじゃないことは知っている。彼の性的指向は至ってノーマルだ。もしアブノーマルだったら、二人っきりで神殿内部に入ってこようとはしない。 それはともかくとして、絵画に注目した。一人の男がドラゴンと戦っている姿が描かれていた。
禍々しいオーラを放つ邪龍の神殿の前に立つ。ボリボリと頭を掻いた。そうしていると、ポンとお尻をゲイルに叩かれた。「どうぞお先に。見えるのでしょう? 聖騎士シャインまでのルートが」 「頼りにされて涙が零れそうだぜ。ああ、しっかりと見てやるさ!」 透視能力を発動する。禍々しいオーラの中から清浄なオーラを見つけた。か細い糸のようなオーラであったが、この糸の先に聖騎士シャインがいるのだろうと予想できた。 ゲイルに向かってこくりと頷く。ゲイルがうんうんと頷き返してきた。二人揃って慎重に神殿内に足を踏み入れた。 その瞬間であった。とんでもなく臭い匂いが鼻をおおいに刺激してきた。吐き気を催した。酸っぱい胃液が食道をせせり上がってくる。「おえええ……なんちゅう匂いだ」 「死臭ですな。それもとんでもない量の」 「この中を歩けってかー?」 「行くしかないですなぁ」 「行くしかないのかぁ……」 ちらりと後ろを振り向く。リリーと聖女が「がんばれがんばれ」と応援してくれていた。そのこと自体は嬉しいのだが、それでも足がすくんでしまう。それほどの悪臭が鼻を襲ってきていた。 鼻に手を当てながら、恐る恐る神殿内に入る。さしものゲイルも自分と同じポーズだった。歴戦の戦士であるゲイルでも堪える匂いなのだろう。 神殿内に入り込んで10メートルもしないところで足が止まってしまった。激臭で目までもが痛くなってきたからだ。視界が歪む。そんな時、ゲイルがこちらの身体を支えてくれた。「トゥンク……じゃねえよ!」 「がーははっ。ワシに惚れるなよ?」 「男前すぎて、胸が高鳴っちまったよ」 「それだけ元気があれば、まだまだ大丈夫ですなっ」 ヤレヤレ……と肩をすくめるしかない。激臭すぎて、嗅覚が麻痺してきた。おかげで手で鼻を抑えなくてよくなった。 目がシパシパするが、直に慣れるだろうということで、ゲイルと一緒に先に進む。突き当りを右に曲がる。先ほどから見えている清浄なる糸のようなオーラがこの先に続いていたからだ。 右に曲がった後に階段があった。そこを
転送した先で目に飛び込んできたのはおどろおどろしい神殿であった。紫色のオーラを放っていやがった。その紫色のオーラがこちらに近づいてきた。思わず後ずさる。「これ、触れていいやつなのか?」 こんな異様な雰囲気を放つ神殿の前に立つ笑顔の女神に問いかけた。女神はさらに笑みを強くして、こちらに手を差し伸べてきやがった。「ようこそ、アルト。邪龍の神殿へ」 「俺、何の準備もしてないよ!?」 「大丈夫。今回は囚われの聖騎士シャインの救出にやってきただけだから。今のアルトに戦えなんて、そんな自殺行為、お勧めできないわ」 「その言葉、信じていいのか判断しかねるなぁ」 差し伸べられた手に手を合わせた。すると、イメージが脳内に再生された。聖騎士シャインが囚われている姿が見えた。 聖騎士シャインが着ている鎧のあちこちが破損している。さらに逃げられないようにと植物の蔓のようなもので拘束されている。「この映像は!?」 「聖騎士シャインはまだ生きているっていう証拠をあなたに見せてあげたのよ」 「場所はわからないんですか!?」 「神殿の生贄の間だと思うわ。そこにシャインがいるはずよ」 「そこまでわかっているのならば、なんで女神様が助けにいかないんだ!?」 「……そこは男の子が頑張るところじゃないの?」 「……そうなりますよね」 場所までわかっているなら、女神パワーでどうにかしてほしかった。だが、現実は甘くなかった。女神はそうしない。女性を助けるのは男性の役目だとして、こちらに仕事を押し付けてきやがった。「ちなみにやろうと思えば、やれるんですよね?」 「できるわよ。でも、私の力に呼応して、邪龍が目を覚ますわよ」 「ああ、なーるほど? 脆弱な力しかもってない俺なら、刺激しなくて済むってわけですね?」 「そういうこと。理解が早くて助かるわ~~~♪」 「とほほ……」 女神が「行ってらっしゃい」と手をひらひらさせている。うなだれるしかなかった。リリーがこちらに声をかけてくれた。「がんばってください、アルトさ
自分たちの目の前に黄金色の扉が出現した。その扉は自然と開く。だが、その向こう側からは誰も現れない。 肩透かしを食らってしまった。ゲイルが恐れ知らずなのか、扉の向こう側を確認しに行く。その時だった。ゲイルの姿が忽然と消えたのだ。「!? 今、何が起きたんだ」 「はわわ。ゲイルさんが消えちゃったのですぅ!」 「リリー、ここは下がっていろ! なんか嫌な予感がする」 リリーをすぐさま下がらせる。そして、代わりに自分が前に出る。何故、ゲイルが消えてしまったのかの原因を探ろうとした。だが、その前に口うるさい第3王子がしゃしゃり出てきやがった。「お前の仲間はこの場から逃げたのでしゅ!」 「うるせー! 俺たちのゲイルがそんなことするわけねえだろっ!」 本当に口が減らない第3王子であった。しかしながら、ピーンと来るものがあった。この黄金の扉の前に立っていたゲイルが消えた。 これは転送装置の可能性がある。繩で簀巻き状態にしている第3王子を黄金の扉の前に転がしてやった。「な、何をするでしゅ!? 吾輩は消えたくないでしゅよ!」 「ははーん。お前も気づいているんだな?」 「いやーーー! どこかに飛ばされるでしゅーーー!」 第3王子は叫び声をあげた。だが、その声は途中でいきなりぶった切られることになった。予想通り、第3王子もどこかへと消えてしまった。「というわけだ。これは女神様からの助け舟みたいだ。俺たちも転送しよう」 「……どこに飛ばされるかもわからないってのに?」 「ヴィオさん。ここには聖騎士シャインがいないんだ。長居は無用だろ?」 「それはそうだけど」 「ほら、行こうぜ」 聖女ヴィオレッタに手を差し伸べる。そうだというのにまだ逡巡している聖女だった。そんな彼女の肩に手をポンと置いた大魔導士ミカが「お先に」と言って、黄金の扉の前に立つ。 すると、今度は大魔導士の姿が消えた。次に動いたのはリリーだった。「アルトさん。ヴィオさんをお願いします。でも、浮気は許しませんからね?」 「そ、そんなつもりでヴィ
第3王子は繩でぐるぐる巻きにされて、まるでミノムシのようになっていた。だが、その状態でもやかましい。いっそ、腹に蹴りでも入れて、無理矢理黙らせてやろうかとさえ思えてくる。 だが、それを静止してきたのは大魔導士ミカであった。「人質に手をあげるのはご法度でございまする」 「そんなルールでもあるわけか? この世界には」 「はい、ありまする。人質や捕虜の扱い、あとはその交換に関する国際ルールが制定されておりますのじゃ」 「中世ナーロッパのくせに……」 どうにももやもやとしてしまう。ミノムシ状態にしなければよかったとすら思えてくる。完全に拘束してしまったことが裏目に出てしまった。「吾輩をどうする気でしゅか! このまま親父との交渉に使うでしゅか!」 「ああ、全くその通りだよ!」 「くーくくっ。浅知恵にもほどがあるのでしゅ」 「どういう意味だ?」 「まずひとつ。吾輩を背負ったまま、無事に国王である親父のとこにまで到達できないのでしゅ」 「やってみなきゃわからんだろ」 「さらにもうひとつ。この城にお前たちが探している聖騎士はいないのでしゅ」 「なん……だと!?」 聖騎士シャインはこの城に囚われているままだと思い込んでいた。しかし、実際は違った。急いで、聖騎士シャインをどこに移送したのかを第3王子に詰問した。「クククッ。邪龍が住まう神殿でしゅ。聖女が生贄になるのを拒んだから、今年は代わりに聖騎士シャインを生贄にすることにしたのでしゅ」 「どういうことだってばよ!?」 「おや? そこの聖女様から聞いてないのでしゅか?」 恐る恐る聖女ヴィオレッタの方へと視線を向けた。聖女は「あはは……」と苦笑していた。怒りが湧いてきた。「おい、ヴィオさん。あんたは俺に本当のことを隠していやがったのか!」 「隠してたわけじゃないわよ。話す機会がなかっただけ」 「くっ! 俺がそんなに信用できないってのか!」 「そうじゃないわ。これ以上、私のことで巻き込みたくなかっただけよ」 「どういう
赤、ピンク、紫といったいかがわしいネオンが眩しいデカすぎる建物の前に自分は立っていた。さらにこの建物がカジノであることがこれまたデカすぎる看板で示されていた。 正直、怖気付いてしまいそうになる。女神に自分はダメンズではないことを証明しようとして、ひとりでカジノの前までやってきた。「当
この世界で一番手っ取り早く稼げる方法。それはどこの世界でも変わらないようだった。女神が妖艶な笑みを浮かべる。「カジノで荒稼ぎするのよ」 「犯罪じゃないですよね!?」 「バレなければね」 「女神ぃぃぃっ!?」 バレなければ犯罪じゃない。なんとも甘美な言葉だった。またしても女神はこちらを堕落させようとしてくる。(この女神様。ダメンズ製造機なのでは?) 目の前で踏ん反り返っている女神に対して、こちらはおどおどと情けない姿を晒してしまっている。 確かに金を稼ぐ方法を聞いたのは自分だ。今
とりあえず合わせて2万ゴリアテを手に入れた。女神が言うには日本円に換算して20万円だそうだ。身分がしがない高校生である自分にとっては大金に感じてしまう。「俺……20万円もリボ払いで返すって、人生詰んだんじゃないですかぁ!?」「安心して? たったの20万円だからっ。月々5000円+手数料で約40回払い。スマホ本体を48回払いするよりも簡単に返せちゃう!」「ははっ……俺、腹が減って思考能力が落ちてるせいか、20万円を天文学的数字に思っちまった。てか、スマホの48回払いって今更にとんでもないな!?」 スマホの話はさておき、女神から手に入れたお金で何か食べたい。こちらの気持ちを汲んでくれた
如月有人は今の状況にうろたえるしかなかった。下半身丸出しで居て良い場所ではないことは一目瞭然だ。 貴族と思わしき人々の中でも、一番に目立ついかつい身体をしている壮年の男が真っ赤な顔で「おい、この不埒者が!」とこちらへと詰め寄ろうとしてきた。 ひっ! と情けない声をあげてしまう。しかし、そんな自分といかつい貴族の男の間に割って入ってくれる人物がいた。 その人物は女性だった。真っ白な身体をこれまた真っ白なローブで包んでいる。金髪碧眼縦ロール。彼女がニッコリとほほ笑む。 その笑顔だけで怒り顔の貴族の顔が破顔してしまった。何をしたのかと疑ってしまうレベルだった。「皆







