登入とりあえず合わせて2万ゴリアテを手に入れた。女神が言うには日本円に換算して20万円だそうだ。身分がしがない高校生である自分にとっては大金に感じてしまう。
「俺……20万円もリボ払いで返すって、人生詰んだんじゃないですかぁ!?」
「安心して? たったの20万円だからっ。月々5000円+手数料で約40回払い。スマホ本体を48回払いするよりも簡単に返せちゃう!」 「ははっ……俺、腹が減って思考能力が落ちてるせいか、20万円を天文学的数字に思っちまった。てか、スマホの48回払いって今更にとんでもないな!?」スマホの話はさておき、女神から手に入れたお金で何か食べたい。こちらの気持ちを汲んでくれたのか、女神がそっとコッペパンと瓶入り牛乳を差し出してきた。
こちらは失礼なことにジト目で女神を見てしまうことになる。
「……いくらですか?」
「失礼ねっ! 今回は無料なんだからっ」 「今回は……ってところがひっかかるぅ!」女神の気が変わらぬうちにコッペパンを削るようにかみ砕き、さらに瓶入り牛乳で口の中を洗い流す。ふぅ~~~と息をついて、もう一度、コッペパンをしゃぶろうとする。
しかし、つい、その手を止めてしまった。女神がにっこにこの満面の笑顔をこちらに向けてきたからだ。
気恥ずかしさで顔から火が出そうになってしまう。つい、食べる手を止めて、顔を俯かせてしまった。そこに追い打ちをかけるように女神が声をかけてきやがった。
「かわいい~♪ 照れてる照れてる」
「んもう! からかわないでくれよ! 俺は純情Maxの童貞高校生なんだぜ!?」 「その童貞、ぱっくんちょしていい?」 「いひぃ! 耳に吐息を吹きかけないでぇ!?」空腹が少し満たされたところに性欲が刺激されたために、感情がぐちゃぐちゃになってしまう。いっそ殺してくれと願いたくなってしまう。しかし、女神のからかいはそこでストップしてしまった。
こちらは手持ちぶたさになりながら、コッペパンと牛乳を平らげる。腹を満たした自分に対して、女神がよしよしと頭を撫でてくれた。
「女神様。なんでそんなに俺に優しいんですか?」
当然の疑問だった。自分は女神が望んでいた立派な勇者様ではない。それどころか、ハズレスキルだらけのエスパーを選んだ身である。優しくされる謂れがないと思えてしまう。
気おくれしている自分に対して、女神がこちらの顔をまじまじと見つめてきていた。
「なんでって……私にとってか弱い人間は保護対象なの」
「……え? それって俺は救ってあげなきゃいけない存在ってことですか?」 「そうよ。アルトは女神であるわたくしの保護欲をとっても刺激するの。もうぞくぞくするくらいっ!」 「うぎぎ……嬉しいけど嬉しくないっ」 「どうして? こんなにきれいなお姉さんが構ってあげたくて仕方ないのよ?」 「うぎぎ……俺、これでも男なんでっ!」 「うふふ……かわいいっ!」女神がこちらを包み込むように抱きしめてきた。いい香りがするし、温かくて心地よい。このまま堕落していいんだよ? と伝わってくる。
だが、自分はすでにリボ払いという悪魔相手に堕落してしまった。これ以上、女神に甘えることなど男の矜持が廃る。
惜しむ気持ちを抑えて、両手で女神を押しのけて、物理的に距離を取る。そして胸を張って女神に自分の意志をしっかりと伝える。
「みっともないところを見せちまったけどっ。俺は男なんだっ。女性に守ってもらう側じゃないっ」
「前時代的ねぇ~? ポリコレ診査で落選しちゃうわよ?」 「ポリコレは違うような気がするけど……まあ、いいんです。俺はただ守られるばかりの存在じゃないって証明してやります」 「どうやって? 何も知らない、ここがどこかもわかないあなたが?」 「確かに、俺ひとりじゃリボ払いも返せずに野垂れ死にするでしょう。でも、そこには女神様がいる。だから俺は大丈夫っ!」 「あははっ! 守られる対象になりたくないって言った矢先なのにぃ? それって、どうなの?」女神が腹を抱えて大笑いしている。そこまでしなくてもいいんじゃないかというくらいの大袈裟な所作付きだ。
この所作を見せつけられているだけで、こちらの心がグニャリとねじ曲がりそうになる。先ほど、決心したばかりだというのに、その決心が揺らいで仕方ない。
だが、これこそが女神の力なのだろう。女神は先ほど言った。か弱いニンゲンを守る立場にあるのが女神アテナという存在なのだと。
だから弱い立場にある自分は本能的に女神に屈服してしまうのだろう。だが、同じ本能の別の場所から『女神に抗え』という言葉が出現してきている。
直感といっても良かった。女神は魅力的であるが、自分は身を任せてはいけないという危機感を持っていた。
リボ払いだって、いつかは完済しなければならない。それは早ければ早いほど、支払う利息も少なくて済むはずだ。その原理と同じく、女神からの借りも早めに返しておくべきなのだろう。
「勘違いしないでほしい。守られたいんじゃなくて、女神様に頼りたいんです」
「なるほどね? 知恵をお貸しください。あとはどうにかするってことね?」 「はい、さすが女神様。一を聞いて十を知るとは女神様のことを言うんですね」 「そんな誉め言葉じゃ満足しないわ。行動で示してちょうだい? さあ、私からどんな知恵を授けてもらうのかしら?」目の前の女神は挑発するかのような表情を浮かべている。そして、その挑発に乗って、少し怒気を孕んだ声で聞き返してやった。
「じゃあ教えてください」
「何を?」 「この世界で一番簡単に100万ゴリアテを稼ぐ方法を」女神は満面の笑みを浮かべた。
「カジノよ」
第3王子は繩でぐるぐる巻きにされて、まるでミノムシのようになっていた。だが、その状態でもやかましい。いっそ、腹に蹴りでも入れて、無理矢理黙らせてやろうかとさえ思えてくる。 だが、それを静止してきたのは大魔導士ミカであった。「人質に手をあげるのはご法度でございまする」 「そんなルールでもあるわけか? この世界には」 「はい、ありまする。人質や捕虜の扱い、あとはその交換に関する国際ルールが制定されておりますのじゃ」 「中世ナーロッパのくせに……」 どうにももやもやとしてしまう。ミノムシ状態にしなければよかったとすら思えてくる。完全に拘束してしまったことが裏目に出てしまった。「吾輩をどうする気でしゅか! このまま親父との交渉に使うでしゅか!」 「ああ、全くその通りだよ!」 「くーくくっ。浅知恵にもほどがあるのでしゅ」 「どういう意味だ?」 「まずひとつ。吾輩を背負ったまま、無事に国王である親父のとこにまで到達できないのでしゅ」 「やってみなきゃわからんだろ」 「さらにもうひとつ。この城にお前たちが探している聖騎士はいないのでしゅ」 「なん……だと!?」 聖騎士シャインはこの城に囚われているままだと思い込んでいた。しかし、実際は違った。急いで、聖騎士シャインをどこに移送したのかを第3王子に詰問した。「クククッ。邪龍が住まう神殿でしゅ。聖女が生贄になるのを拒んだから、今年は代わりに聖騎士シャインを生贄にすることにしたのでしゅ」 「どういうことだってばよ!?」 「おや? そこの聖女様から聞いてないのでしゅか?」 恐る恐る聖女ヴィオレッタの方へと視線を向けた。聖女は「あはは……」と苦笑していた。怒りが湧いてきた。「おい、ヴィオさん。あんたは俺に本当のことを隠していやがったのか!」 「隠してたわけじゃないわよ。話す機会がなかっただけ」 「くっ! 俺がそんなに信用できないってのか!」 「そうじゃないわ。これ以上、私のことで巻き込みたくなかっただけよ」 「どういう
だが、本当の地獄はここからだった。牢屋を抜けだしたはいいが、城のそこら中に警備兵が巡回していた。 彼らに見つかれば、また牢屋に戻される。ここで光ったのが自分の透視能力だった。城のどこに警備兵がいるのか壁越しでわかる。 皆の先頭を自分が率先して歩く。網目のように張りめぐらされた警戒網をゆっくりと進んでいく。 皆が緊張感に包まれていた。そして、緊張感がMaxに届いた時、事件が起きた。誰かがプゥ~~~とオナラをしたのである。「なんだ今の音!?」 警備兵たちが一斉にこちらへと振り向いてきた。急いでリリーを抱き寄せる。次の瞬間には透明化を行い、自分とリリーの姿を相手から見えなくさせた。「おっとぉ? お客さんたち。どこへ行く気かな?」 警備兵たちから見えるのはゲイルとヴィオレッタ、そしてミカの3人だ。自分とリリーは透明化で姿を消している。 こちらの3人に向かって、警備兵がゆっくりと近づいてくる。自分はリリーの口に手を当てて、声を出させないようにした。 そのままの体勢でゆっくりと、警備兵の後ろへ回る。素早く彼の右腕を絞り上げ、その手から武器を取り上げた。「なんだ!?」 警備兵が素っ頓狂な声をあげた。手に持っていた武器をリリーに投げ渡す。その後、警備兵の足をひっかけて、彼を転ばせた。 それを合図にゲイルが警備兵の頭頂部にチョップを喰らわせた。警備兵は「ぐぇええ」とカエルのような声をあげて、失神してしまう。 警備兵の残りは二人だ。こちらの動きが流れるように鮮やかだったためか、呆けた顔をしていやがった。 その隙を見逃さない。急いで時間停止を行い、警備兵から武器を取り上げる。それをまたしてもリリーに投げ渡しておく。「これはみね打ちよ」「ひでぶっ!」「あべしっ!」 聖女ヴィオレッタと大魔導士ミカが素早く動き、警備兵たちの股間を目掛けて膝を入れている。倒れた警備兵たちが口から泡を吹いていた。ゾゾ……と背筋に冷たい汗が流れ落ちてくる。「お前ら、どこがみね打ちなんだよっ
自分たちは襲撃に会いながらも、どうにか城門にまでやってくる。城門を守る衛兵がこちらに槍の穂先を向けてきた。「何の用でこの城にやってきた」 どこまでも冷たい声だった。こちらを邪魔者としか感じていない。そんな雰囲気を発していやがった。 ムカッとしたのでその怒りをそのまま声に乗せそうになった。だが、口から言葉が飛び出す前にリリーがこちらの手を引っ張ってきた。「ダメですぅ。喧嘩を売りにきましたけど、買いにきたわけじゃないのですぅ」 「ハハッ。リリーは上手いことを言いやがる。そうだった。俺たちはカチコミにやってきたんだったな」 さすがはリリーである。こちらの手綱をしっかりと握ってくれている。心が軽くなった。衛兵とのやり取りをトラブルメーカーの聖女ヴィオレッタに任せることにした。「この城のどこかに私の従者が囚われているってのは知っているの。白状しなさいっ」 「おいっ。何をおかしなことを言ってやがる。そもそも、お前は誰なんだ」 「私? 私は聖女ヴィオレッタ様よっ!」 「そんな……バカな!?」 衛兵がおおいに戸惑っている。彼はただの衛兵だ。情報を処理しきれなくなっていた。こちらはニヤニヤと悪い顔になっていた。 衛兵の事情など、お構いなしにずけずけと用件を伝えてこいと命じる聖女であった。衛兵は「グヌヌ……」と唸っている。 衛兵は門を守る仕事を忠実にこなすか、それとも伝令役になるかの二択を迫られていた。しばらく聖女とやりとりをしていたかと思えば、急にあちらが折れることになった。「わかったわかった。上に伝えてくる。だが……その結果がどうなろうが俺の知ったことじゃない」 「気にしなくてもいいわ。モブはさっさと引っ込んでね。話が進まないもの」 「ぐぬー――! 言わせておけばっ!」 さすがはトラブルメーカーの聖女である。ついに堪忍袋の緒が切れたのか、衛兵は聖女に向かって槍の穂先を突き付けてきた。 だが、その槍の中ほどを手で掴んで止めた男が出てきた。その男はもちろん、頼もしい我らがゲイルである。「淑女に失礼だぞ。
盗賊に襲撃されてから三時間後、王都の入り口の門が夕日に照らされて見えてきた。自分たちはようやく王都の門の前に立つことになる。 一気に王城まで行きたいところだったが、夕暮れに差し掛かっている。「どうする?」 大魔導士ミカの方に顔を向けて、そう聞いてみた。大魔導士はコクリと頷き、こちらに返答してくる。「今から王都で宿屋を探すくらいなら、王城で寝泊まりさせてもらいましょうぞ」 「あくまでもイケイケでいいわけだな? 後悔はないんだな?」 「時間をかければかけるほど、聖騎士シャインの立場が危うくなりますゆえ」 「わかった。皆、このまま王城へかちこみだ!」 大魔導士の指示に従い、王都内を馬車で突っ切る。さすがは王都だ。どこに行っても、人だらけである。人の波が途切れることが無い。 リリーがこちらの腕に手を回してきた。彼女は心細さを感じているのかもしれない。回された手にこちらも手を添える。「リリーは必ず俺が守るから」 「はいっ。期待しているのですぅ」 「あらあら、お熱いこと! アルト、私たちも守ってね!」 「ヴィオさん? からかうところじゃないと思いますよ」 「超真面目に言ってるんだけどにゃぁ?」 ぷいっと聖女ヴィオレッタから視線を外す。そうした瞬間、嫌な予感がした。自分が動く前にギルド長のゲイルが動いた。彼は腰に佩いた剣を素早く抜刀する。 カキーンカキーンという甲高い音が聞こえた。さすがのゲイルである。四方八方から飛んできた矢を剣で叩き落してくれた。馬車の幌がゲイルの剣裁きによって四散する。「サンキュ。ゲイル」 「アルト殿も気づいておられたご様子。お節介でしたかな?」 「いいや。何かが来るとは感じたけど、迎撃体勢にまでは移れなかった。さすがはゲイルだよ」 「ふっ。これはご謙遜を」 ゲイルはこちらの実力を過大評価しすぎている。今の襲撃に対応できたのはゲイルがいてくれたおかげである。これは嘘偽りのない自分の評価だった。 だが、ゲイルはこちらと視線を合わす前に次の行動へと出た。馬車の荷台の後
国王側にこちらの動きは筒抜けのようであった。やれやれ……と肩をすくめるしかない。冒険者ギルドの内部をキレイに掃除したつもりであった、しかし急激な改革は反対者を生む。これは身から出た錆でもあった。裏切者を炙り出すのは後にして、まずはじっくりと捕らえた盗賊から情報を引き出した。盗賊たちは協力的で、聞いてないこともべらべらと喋ってくれる。なんとも可愛げのある連中だ。「じゃあ、縛ってその辺に転がしておけ」 「こんなところに放置されたら熊に襲われちまうよー!」 「じゃあ、やっぱり撫で斬りにしてやろうか?」 「ひぃーーー! 繩だけでお願いしまーす!」繩でがんじがらめにした盗賊たちをその場に残して、自分たちは馬車に乗り込む。リリーが何か言わんとしていたが、こちらは先んじて、リリーのご機嫌を取る行動に出た。「別に殺すつもりでやってるわけじゃないから」 「むぅ……襲ってきたあちらが悪いのわかるんですけどぉ」 「リリーは優しいなあ。でも、その優しさを俺以外に向けると、俺が焼きもちを焼いちゃいそうになる」 「んもう。アルトさんったら」リリーが頬を赤らめて、俯いてしまう。周りはニヤニヤとしぱなしであった。リリーのご機嫌も取れたということで、馬車が出発する。向かうは王都だ。あと3時間程度で着く予定である。その3時間を使って、こちらも王都に乗り込んだ際にどう動くかを話し合う。先に口を開いたのは大魔導士ミカだった。彼女は軍師らしく、自分たちがどう動くべきなのかを示してくれた。「王都内ではなるべく固まって動きますように。こちらが人質作戦を取ることもバレていると考えた方がいいかと」 「俺たち5人でしか、話してない内容だぜ!? それはおかしくない?」 「壁に耳あり、ジョージにメアリーという言葉があります。ギルド長室といえども安全とは限らないかと」 「なるほどなぁ~。俺、もしかして冒険者ギルドの職員に甘く見られてるぅ?」 「甘くは見られていないじゃろうて。むしろ毛嫌いされているかもしれぬのう」 「そっちのほうが悲しくなっちゃう。俺、キレイな冒険者ギ
聖騎士シャインを取り戻すための策は決まった。ならば、次にするべきことは王都に行くことである。 王都は今滞在している街から西に馬車で三日ほど行ったところにある。善は急げとばかりに皆が動き出す。 駅馬車に向かい、そこで王都行きの乗合馬車に乗り込んだ。荷台に8人が乗り込めるほどのビッグサイズである。「8人乗りの乗合馬車を貸し切りって、ほんとアルトはお金持ちね」 聖女から軽く嫌味を言われた。しかしながら、気にもしない体で言い返す。「そりゃ腐っても冒険者ギルドのオーナーだからね」 「そんなにお金が余ってるなら、私に無条件でお金を貸してくれればよかったのに」 「そりゃ御免被る。俺は聖女様に追放されたことを未だに恨んでいるからね」 「器の小さい男で困るわ」 嫌味には嫌味で返す。醜い争いが馬車の上で展開されていた。隣に座るギルド長のゲイルがヤレヤレ……と肩をすくめていた。 ゲイルの気持ちはわからないでもない。聖騎士シャインを助けにいく仲間だというのに仲違いしてどうすると言いたげな仕草を取っている。 ゲイルはさすが大人であった。水筒を取り出し、キャップを外す。そのキャップを湯呑みにして、中身を注ぐ。それを聖女の方へと手渡すのであった。「あーーー。うちのオーナーがお子ちゃまで済まない。仲直りの印として、この杯を受け取ってくれないかな」 「くんくん。なんかアルコールっぽい匂い」 「身体を温める用に常備している酒だ」 「もらってもいいの?」 「もちろん」 今の季節は陽気な春だ。だとしても、吹く風はどこか肌寒さを感じる。そこで酒を取り出したゲイルであった。聖女は聖女らしい微笑みを顔に浮かべつつ、コクコクと湯呑み代わりのキャップに注がれた液体を飲み干すのであった。 ほんのりと聖女の頬が赤くなっている。どきりと鼓動が跳ね上がる。いかんいかんと思いながら、頭を軽く振る。(ったく、さすが聖女様だ。いちいち画になりやがる。うっかりしてると、惚れそうになっちまう。リリーに申し訳が立たなくなるわ) お酒が入って上機嫌になった
「さてと……そろそろ真面目な話をするわよ?」 女神がピシャリと場を整えてくれた。その身から威厳と神々しい光を溢れさせる。いよいよかと思われる瞬間がやってきた。 周りにいる貴族たちが姿勢を正す。聖女パーティの3人も女神に向かってひざまずく。自分はどうしたものかと考えていると、女神がこちらの両肩に両手を乗せてきた。「勇者アルト・キサラギが聖女の旅を助けてくれます。彼はハズレ職業のエスパーですが、それでもきっとたぶん聖女のためにその命を捧げてくれるでしょう!」 「……えっと、女神様」 「はい? なんでしょうか、勇者アルト・キサラギ」 「キャラクターシートでエスパーをお勧めしてくれてまし
如月有人は今の状況にうろたえるしかなかった。下半身丸出しで居て良い場所ではないことは一目瞭然だ。 貴族と思わしき人々の中でも、一番に目立ついかつい身体をしている壮年の男が真っ赤な顔で「おい、この不埒者が!」とこちらへと詰め寄ろうとしてきた。 ひっ! と情けない声をあげてしまう。しかし、そんな自分といかつい貴族の男の間に割って入ってくれる人物がいた。 その人物は女性だった。真っ白な身体をこれまた真っ白なローブで包んでいる。金髪碧眼縦ロール。彼女がニッコリとほほ笑む。 その笑顔だけで怒り顔の貴族の顔が破顔してしまった。何をしたのかと疑ってしまうレベルだった。「皆
「ボストンバッグ発見! 第1調査隊の如月有人、突貫します!」 高校1年生の如月有人は学校の帰り道、河川敷にポツンと置かれていた黒革のボストンバッグを発見した! 彼はお宝の匂いに敏感だ。きょろきょろと辺りを見回す。犬と一緒に散歩しているお爺ちゃん。運動不足を解消するために走っているジャージ姿の青年。 彼らはまったくこちらに気付く様子もない。しめしめと思いながら、ボストンバックのチャックを開く。「うひょぉ~♪ 俺が睨んだ通り、お宝の山だ! この湿り気具合。捨てたのは昨夜……っぽいな?」 有人はボストンバックの中身を吟味する。ざっと見た感じでは30冊はある。どれもこ
赤、ピンク、紫といったいかがわしいネオンが眩しいデカすぎる建物の前に自分は立っていた。さらにこの建物がカジノであることがこれまたデカすぎる看板で示されていた。 正直、怖気付いてしまいそうになる。女神に自分はダメンズではないことを証明しようとして、ひとりでカジノの前までやってきた。「当







