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第4話:債務

Penulis: ももちく
last update Tanggal publikasi: 2026-06-16 18:06:39

 とりあえず合わせて2万ゴリアテを手に入れた。女神が言うには日本円に換算して20万円だそうだ。身分がしがない高校生である自分にとっては大金に感じてしまう。

「俺……20万円もリボ払いで返すって、人生詰んだんじゃないですかぁ!?」

「安心して? たったの20万円だからっ。月々5000円+手数料で約40回払い。スマホ本体を48回払いするよりも簡単に返せちゃう!」

「ははっ……俺、腹が減って思考能力が落ちてるせいか、20万円を天文学的数字に思っちまった。てか、スマホの48回払いって今更にとんでもないな!?」

 スマホの話はさておき、女神から手に入れたお金で何か食べたい。こちらの気持ちを汲んでくれたのか、女神がそっとコッペパンと瓶入り牛乳を差し出してきた。

 こちらは失礼なことにジト目で女神を見てしまうことになる。

「……いくらですか?」

「失礼ねっ! 今回は無料なんだからっ」

「今回は……ってところがひっかかるぅ!」

 女神の気が変わらぬうちにコッペパンを削るようにかみ砕き、さらに瓶入り牛乳で口の中を洗い流す。ふぅ~~~と息をついて、もう一度、コッペパンをしゃぶろうとする。

 しかし、つい、その手を止めてしまった。女神がにっこにこの満面の笑顔をこちらに向けてきたからだ。

 気恥ずかしさで顔から火が出そうになってしまう。つい、食べる手を止めて、顔を俯かせてしまった。そこに追い打ちをかけるように女神が声をかけてきやがった。

「かわいい~♪ 照れてる照れてる」

「んもう! からかわないでくれよ! 俺は純情Maxの童貞高校生なんだぜ!?」

「その童貞、ぱっくんちょしていい?」

「いひぃ! 耳に吐息を吹きかけないでぇ!?」

 空腹が少し満たされたところに性欲が刺激されたために、感情がぐちゃぐちゃになってしまう。いっそ殺してくれと願いたくなってしまう。しかし、女神のからかいはそこでストップしてしまった。

 こちらは手持ちぶたさになりながら、コッペパンと牛乳を平らげる。腹を満たした自分に対して、女神がよしよしと頭を撫でてくれた。

「女神様。なんでそんなに俺に優しいんですか?」

 当然の疑問だった。自分は女神が望んでいた立派な勇者様ではない。それどころか、ハズレスキルだらけのエスパーを選んだ身である。優しくされる謂れがないと思えてしまう。

 気おくれしている自分に対して、女神がこちらの顔をまじまじと見つめてきていた。

「なんでって……私にとってか弱い人間は保護対象なの」

「……え? それって俺は救ってあげなきゃいけない存在ってことですか?」

「そうよ。アルトは女神であるわたくしの保護欲をとっても刺激するの。もうぞくぞくするくらいっ!」

「うぎぎ……嬉しいけど嬉しくないっ」

「どうして? こんなにきれいなお姉さんが構ってあげたくて仕方ないのよ?」

「うぎぎ……俺、これでも男なんでっ!」

「うふふ……かわいいっ!」

 女神がこちらを包み込むように抱きしめてきた。いい香りがするし、温かくて心地よい。このまま堕落していいんだよ? と伝わってくる。

 だが、自分はすでにリボ払いという悪魔相手に堕落してしまった。これ以上、女神に甘えることなど男の矜持が廃る。

 惜しむ気持ちを抑えて、両手で女神を押しのけて、物理的に距離を取る。そして胸を張って女神に自分の意志をしっかりと伝える。

「みっともないところを見せちまったけどっ。俺は男なんだっ。女性に守ってもらう側じゃないっ」

「前時代的ねぇ~? ポリコレ診査で落選しちゃうわよ?」

「ポリコレは違うような気がするけど……まあ、いいんです。俺はただ守られるばかりの存在じゃないって証明してやります」

「どうやって? 何も知らない、ここがどこかもわかないあなたが?」

「確かに、俺ひとりじゃリボ払いも返せずに野垂れ死にするでしょう。でも、そこには女神様がいる。だから俺は大丈夫っ!」

「あははっ! 守られる対象になりたくないって言った矢先なのにぃ? それって、どうなの?」

 女神が腹を抱えて大笑いしている。そこまでしなくてもいいんじゃないかというくらいの大袈裟な所作付きだ。

 この所作を見せつけられているだけで、こちらの心がグニャリとねじ曲がりそうになる。先ほど、決心したばかりだというのに、その決心が揺らいで仕方ない。

 だが、これこそが女神の力なのだろう。女神は先ほど言った。か弱いニンゲンを守る立場にあるのが女神アテナという存在なのだと。

 だから弱い立場にある自分は本能的に女神に屈服してしまうのだろう。だが、同じ本能の別の場所から『女神に抗え』という言葉が出現してきている。

 直感といっても良かった。女神は魅力的であるが、自分は身を任せてはいけないという危機感を持っていた。

 リボ払いだって、いつかは完済しなければならない。それは早ければ早いほど、支払う利息も少なくて済むはずだ。その原理と同じく、女神からの借りも早めに返しておくべきなのだろう。

「勘違いしないでほしい。守られたいんじゃなくて、女神様に頼りたいんです」

「なるほどね? 知恵をお貸しください。あとはどうにかするってことね?」

「はい、さすが女神様。一を聞いて十を知るとは女神様のことを言うんですね」

「そんな誉め言葉じゃ満足しないわ。行動で示してちょうだい? さあ、私からどんな知恵を授けてもらうのかしら?」

 目の前の女神は挑発するかのような表情を浮かべている。そして、その挑発に乗って、少し怒気を孕んだ声で聞き返してやった。

「じゃあ教えてください」

「何を?」

「この世界で一番簡単に100万ゴリアテを稼ぐ方法を」

 女神は満面の笑みを浮かべた。

「カジノよ」

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