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第2話:初対面

مؤلف: ももちく
last update تاريخ النشر: 2026-06-09 19:02:55

 如月有人きさらぎ・あるとは今の状況にうろたえるしかなかった。下半身丸出しで居て良い場所ではないことは一目瞭然だ。

 貴族と思わしき人々の中でも、一番に目立ついかつい身体をしている壮年の男が真っ赤な顔で「おい、この不埒者が!」とこちらへと詰め寄ろうとしてきた。

 ひっ! と情けない声をあげてしまう。しかし、そんな自分といかつい貴族の男の間に割って入ってくれる人物がいた。

 その人物は女性だった。真っ白な身体をこれまた真っ白なローブで包んでいる。金髪碧眼縦ロール。彼女がニッコリとほほ笑む。

 その笑顔だけで怒り顔の貴族の顔が破顔してしまった。何をしたのかと疑ってしまうレベルだった。

「皆さんが困惑するのは致し方ありませんわ。でも、こんな形でも立派な勇者候補ですわよ!」

「にわかに信じられぬが……女神アテナ様がそうおっしゃるのならば」

 壮年の貴族が元の位置へと戻っていく。ホッと安堵するしかなかった。

(助かった……しかし、キレイな人だな)

"ふふ。キレイって思ってくれてありがとうね?"

(直接、脳内に語り掛けてきたーーー!?)

 ビクッ! と身体を跳ね上がらせてしまうしかなかった。女神と呼ばれた女性がこちらへとウインクしてきた。

 それだけで心臓がドキドキする。それに連動するように愚息がピクピクと反応したので、急いで両手で覆い隠す。

 女神がこちらの様子を見て、意味ありげに「うふふ♪」と嬉しそうにしてくれる。そんな風にされては、こちらはますます過剰に愚息が反応してしまいそうになった。

 女神がこちらから視線を外した。彼女はゆっくりと皆の顔を見る。見られている側はどうしたものかと思案に暮れる顔をしていた。

 こちらはごくり……と息を飲むしかない。今、置かれている状況をまったくもって判断できなかった。

 それを説明してくれるかのように女神が口を開く。

「この者はこの世に蔓延る悪の元凶、邪龍、邪神、魔王を討つ(予定)の勇者候補です。まあ……モノは粗末ですけど」

「粗末言うな!」

「じゃあ、稚魚?」

「もっとひどいわ!」

 こちらの様子を伺っている貴族っぽい男女たちがひそひそと耳打ちし合っていた。「本当に勇者なのか?」なら、まだマシなほうで、ひどい者になると「うちの今年で10歳になる息子の愚息のほうがよっぽど大きいですわ」だ。

 自分がいったい何をしたのかと言いたくなってしまう。こちらも好きで下半身丸出しになっているわけではないのだ。

 そうであるというのに女神がどんどん話を勝手に進めていく。女神の言うことが本当なのであれば、自分は何か禍々しい存在と戦うべく、こちらの世界に召喚されたらしい。

 さらに邪龍の贄となろうとしていた聖女を助ける存在だとも言っている。こちらは渋面になるしかなかった。

「アルト・キサラギ。今から聖女とその仲間をこの場に招くわね? 心の準備はいい? とびきりの美少女よ!」

「……え? 俺、今、下半身丸出しなんですけどぉ!?」

「聖女のおなーりー!」

「待ってー! こっちの話を聞いてーーー!」

 女神アテナはこちらの言うことにまったく関心がないかのように振舞っている。彼女は右手に持つ錫杖を振り上げる。

 それに合わせて、ホールの入り口と思わしき場所から3人の女性が歩いてやってくる。彼女たちは確かに美少女、美女、美魔女と文句のつけようのない女性たちであった。

 聖女:ヴィオレッタ・フリューリンク。18歳。ストレートロングの銀髪。翠玉エメラルドのような瞳。おしとやかな胸のサイズ。端正であろう顔をしかめっ面にしている。

 聖女らしい清らかな服装をしているというのに、その美少女が台無しだと思えるほどのしかめっ面だ。彼女の表情をそうさせているのは下半身丸出しの自分である。

「あの……女神様。この人が勇者様なのですか?」

 背筋が凍りそうなほどに冷たい声をしていた。しかし、それでも女神はニッコリと彼女に微笑んでいる。心臓に毛でもびっしり生えてんのか! とツッコミを入れたくて仕方がない。

「本当の本当よ! わたくしの用意したエントリーシートにばっちり記入してくれたもの!」

「……え。あれ、こっちの世界に来るための物だったんです?」

「うん! 他の人はうさんくさいって感じでこちらのSNSアカウントを即ブロックしてきたわっ!」

「なんで、俺、URLを踏んだだけじゃなくて、真面目にキャラクターシートに記入してたんだよぉ!?」

 あの時の自分をぶん殴ってやりたかった。こちらの世界にやってきたのは、自分があのキャラクターシートに記入してしまったのが原因だった。

 しかも、そうした後、呑気に日課のオナニーをたっぷり堪能して寝てしまった。つくづくあの時の自分が愚かで仕方がなかった。

 時間を巻き戻せるのならば、巻き戻してやりたくなってしまう。だが、今の自分は時間逆行のスキルを持っていないことは明白だ。

 あのシート通りであれば、自分が持っているスキルは透視、透明化、時間停止の3つのみである。

 今の窮地を脱するための方法を何一つ持っていない……。

 続いて、聖騎士:シャイン・ゾンマーが紹介された。24歳。茶髪のポニーテール。固い意志を感じさせる茶色の目。引き締まっているであろう体つき。そうでありながら胸のサイズが凶器。所謂、スレンダー巨乳といったやつだ。

 そんな身体を重装甲の鎧で覆いつくしている。こちらは彼女の体つきを透視能力でばっちり確認できている。

「……なにかいやらしい視線を感じるんだが?」

「いえ!? 立派な騎士様だなって!」

「……もし、いやらしい視線で拙者を見ているのであれば、その粗チン、この大剣で切り落としやるっ!」

「ひぃ! 女神様、助けて!」

「んもう! シャイン、そんな汚物を見るような目で睨んじゃダメ!」

 女神アテナが間に立ってくれた。ホッと安堵しつつ、女神の身体のラインを透視能力で確認しようとした。

 しかし、さすがは女神だ。白いローブの向こう側が透けることはない。女神がこちらに振り向いてきて、「めっ!」と叱ってきた。

 こちらはコリコリとこめかみを指で掻くしかない。

 最後に大魔導士:ミカ・ヘルブストが紹介された。21歳(自称)。赤髪のおかっぱ。ワインレッドの瞳。聖騎士がスレンダー巨乳なら、こちらはマドンナ体型だ。黒いローブに身体を包み隠していても、そのプロポーションの素晴らしさに目を奪われてしまう。

 その大魔導士にこちらは視線を合わせる。すると、頬をほんのりと紅潮させていた……。正直に言うと怖気が走った。

 あちらは捕食する側。こちらは捕食される側だと雰囲気だけで察することができた……。

「おぬし……童貞かえ?」

「いひぃ! 食べないでください!」

「ふひひっ! 初物かっ! ど~~~れ。お姉様にそなたのモノを見せておくれやす」

「いやーーー! お嫁にいけなくなっちゃう!」

「んもう……ミカ。童貞ボーイをからかうのはそこまで♪」

 女神に助けてもらった。ホッと安堵するしかない。優しくお姉様に筆おろしされたい願望は持っていても、蹂躙される癖までは持ち合わせていないのだ、こちらは。

 聖女パーティはヴィオレッタ・フリューリンク、シャイン・ゾンマー、ミカ・ヘルブストの3人だった。

 その女性だけのパーティに自分が加入することになっているそうだ。

 しかし、ヴィオレッタは顔をしかめっ面から元の端正な顔に戻そうとはしてくれない。

「あの……女神様。そろそろ履く物をもらえませんか?」

「ん? あっ! 忘れてた!」

「忘れてたじゃないでしょぉぉぉ!」

「粗末なそれ、隠すほどのものじゃないかなーって☆彡」

「粗末言うな! これから成長するんだよ!」

 女神がこちらをおちょくるのを止めようとはしなかった。ぐっ! と悔しそうに唸るしかない。

 女神が満足したのか、ようやくパンツとズボンを召喚してくれた。元の世界で履いていた制服のズボンだった。ご丁寧に制服のジャケットも手渡してくれる。

 その場で急いでパンツとズボンを履く。白いシャツの上から紺色のジャケットを羽織る。ようやく、これでいつも学校に通っている時の恰好となった。

 それに合わせて、聖騎士シャインが「ほう……」と意味ありげに声を漏らしている。

「小僧。お前はどこぞの良いところのボンボンなのか?」

「いや……学校に普通に着ていく制服だけど?」

「機能美を備えつつ、それでいて気品も漂わせる格好だ。あまり失礼な態度をとってはいけない身分に感じてしまうな」

 向こうが勝手に勘違いしてくれている。ならば、こちらはあちらの考えに合わせておけば良さそうだ。

 この制服姿の自分を見たウチの婆ちゃんからは馬子にも衣装と呼ばれた。失礼な婆ちゃんだが、聖騎士シャインから見ても、それなりの身分の者に見えるのだろう。

 肝心なのはそこだ。彼女たちからすれば、自分は異邦人である。初対面で怪しまれはしたが、学校の制服のおかげでなんとか面子を保てている。

 しかし……こちらがフルチンだったことをぶり返す人物がこの場にいやがった。聖女ヴィオレッタがひそひそと隣に立つ大魔導士ミカに耳打ちしている。

「えっと……殿方のおちん……ちんを初めて見たんですけど、あれくらいが普通サイズなんです?」

(聖女様。聞こえています。やめてください)

「カカカ! アレが普通とか言ったら、世の中の90%の男が怒りくるうわい!」

(大魔導士様。俺のってそんなに小さいんです!?)

「あっ……そうなんですね。ホッとしたような」

(聖女様。ホッとしないでください! これはまだ本気状態じゃありません!)

「衆目の前じゃて。縮こまっている可能性も否定できん」

(ナイスフォローです! 大魔導士様!)

「へっ!? じゃあ、もっと大きくもなるんです!?」

「試しにわっちが魔法で大きくしてやろうかえ?」

「大きくさせなくていいですぅ! おまわりさんを呼ばれちゃいます!」

 たまらず大魔導士を止める。聖女パーティとの初対面は最悪の一言だった……。

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