LOGIN赤、ピンク、紫といったいかがわしいネオンが眩しいデカすぎる建物の前に自分は立っていた。さらにこの建物がカジノであることがこれまたデカすぎる看板で示されていた。
正直、怖気付いてしまいそうになる。女神に自分はダメンズではないことを証明しようとして、ひとりでカジノの前までやってきた。
「当カジノ:当たるも八卦、当たらぬも八卦にようこそ。身分証の提示をお願いします」
「嫌なカジノ名だなおい!?」
「冗談です。本当の名前はここのオーナーの名前を文字ったものです」
入口のドアの横に燕尾服を着た青年が礼儀正しくこちらにコンタクトしてきた。冗談交じりのところが憎い。誘われるようにマイナンバーカードを提示する。
「おや? 当店に入場するには18歳以上でなければいけませんが……保護者の方などいらっしゃいますか?」
「ええ!? もしかして、俺ひとりだと、入店すらできない!?」
「はい。国法でそう定められていますので。って、ちょっと待ってください!?」
黒服の従業員が慌てている。何が起こったのか自分でもよくわからない。だが、黒服の従業員は咳払いをした後、「失礼しました」と頭を深々と下げてきた。
こちらはキョトンと首を傾げるしかない。
「こちらの見間違いでした。あなたの年齢は現在20歳。お酒もばっちりですね」
「どういうことだってばよ!?」
「マイナンバーカードに記載されていることは事実である。ただそれだけでございます。では、今夜はおおいにお楽しみください」
「お、おう?」
黒服の従業員が丁寧な身振りで、こちらにマイナンバーカードを返してくれた。何が起きたのか、さっぱりわからない。
だが、返されたマイナンバーカードの生年月日の方を見る。月日は変わらず、生年の方だけ変わっていやがった……。
焼きゴテのようなものが押し付けられた後がついていやがった。女神からこのカードをもらった時はもっとキレイなカードであったのに……。
(恐ろしや……これが女神の力ってやーつ?)
とりあえず、女神に感謝しつつ、カジノのドアを通って、カジノ内に入る。するとそこはまさに別世界が広がっていた。
いくつものテーブルがあり、そこには美男美女のディーラーたちがその場を支配していた。
冷めやらぬ熱気にフロア全体が包まれている。ある場所から悲鳴が上がったと思えば、別の場所からは大歓声が沸き起こる。
悲哀と歓喜が入り混じる空間だということを一瞬で理解できた。
(さて……まずは軍資金を増やそう)
女神から借りている2万ゴリアテ全てをメダルに変えた。現在のメダルの枚数は2000枚しかない。これを一晩で100万枚まで増やすつもりで、この場所にやってきた。
メダル狩りの最初の獲物は『スロット』であった。カジノビギナーの自分がビギナーズラックで大当たりをうっかり引いても問題ない獲物にふさわしい。
(透視でスロット台の設定をチェックチェック♪)
両目に力を込める。熱が眼球に宿るのがわかる。視線の先にスロット台があった。
(ふはは! 見える! 見えるぞ、スロット台の設定がーーー!)
思わず、口元が緩んでしまった。このカジノにはスロット台が20台も並んでいたが、その内19台が渋い、もしくはツラい設定であった。こんな台に座ったところで勝ち筋などない。
だが……20台中1台だけ、設定が『ここ掘れワンワン』というものが見えた。さすが透視能力。甘い設定の台を見逃さなくて済んだ。
さっそくとばかりにここ掘れワンワン設定台の前を陣取る。丸椅子に尻を乗せて、メダルを数枚、指で掬い取る。
投入口からメダルを滑り込ませる。レバーをガチャリと下へと動かす。すると画面の絵札がくるくると様変わりする。
ポンポンポンとリズム良く三つの赤いボタンを押す。それに合わせて絵札がビタッと止まる。
7が三つ横に並んだ。そして、けたたましいほどにファンファーレが鳴り響く。
「19番台のお客様、大当たりでございます! さあ、ボーナスゲームでどこまで伸ばせるか!?」
黒服の従業員がドル箱と呼ばれるオレンジ色の容器を手に持って近づいてくる。その従業員に向かって、満面の笑みを送っておく。あちらも満面の笑みで受けてくれた。
(まあ、その顔を真っ青にさせちゃうんですけどね!?)
ここ掘れワンワン設定台の状態は透視能力で丸裸だった。
設定値、配当率、内部状態、ボーナス残数全てが見えている。
この台は吐き出すメダルの量を間違っていると言っていいほどにメダルを吐き出してくれた。
黒服の従業員たちがせわしなく行ったり来たりしている。それも全部、この座っている台のボーナスゲームが終わることを知らないからだ。
「あ、あのお客様。そろそろその辺で……」
「えっ? まだボーナスゲームは終わってないんだけど?」
「いえ……それ以上出されますと、当店も困ってしまいますので」
「ふーん。天井付きってことかぁ。じゃあ、勘弁してやるよ」
自分の脇にはドル箱が合計100箱以上が詰み上がっていた。ここまでで1時間。最初は2000枚しかなかったメダルだった。しかし、今、自分が手にしているのは11万飛んで17枚。
十分なほど稼がせてもらった。だが、夜は始まったばかりだ。
「さてと……今夜は100万枚目標なんだよねっ」
「お客様。それは豪胆すぎますね?」
「おーん? って、めっちゃ美人さん!?」
「うふふ。スロット台で稼いだ分で私と遊んでくださらない?」
「はーーーい! 全部出しちゃうくらいに遊んでしまいまーす!」
あまりにもグラマラスで妖艶な女性に誘われたことで理性が一瞬でどこかに飛んでいってしまった。
自分は美女ディーラーに誘われるまま、ポーカー席に着く。ひそひそと周りが自分を嘲笑している。
"かわいそうに"
"彼女は通称:蟻地獄"
"掴んだ獲物は逃さない"
"せっかくスロットで大当たりを引いたってのに"
同情する声ばかりが聞こえてくる。しかし、負けるつもりは一切なかった。目標の100万枚まであと88万9983枚。
ポーカー席で第2ラウンドが始まろうとしていた。
「喝を入れてやる! アルト殿!」 「ぐぎゃあああ!」 シャインが大鎌を振り回して、光輪を生み出す。その光輪がこちらのお尻の谷間を痛撃した。気合が入った。身長10メートルのところで一旦、縮むのが止まった。 しかし、それでも胸のカラータイマーはピコーンピコーンと警告音を鳴らし続けた。この感じから言えば、あと30秒程度で巨大化が解ける気がした。 時間が無かった。右手に力を込める。ドリルがギュルルルルンと回転し始めた。「これはヴィオレッタの分! これはシャインの分! これはミカの分!」 「GUGYAAAAAAA!」 何度も邪龍の顔面にドリルで穴を空けてやった。鮮血が飛び散る。それと同時に腐臭も漂ってきた。 右手に身に着けているドリルにヒビが入る。それでもドリルを回転させた。最後の1撃とばかりに邪龍の眉間にドリルをブッ込んでやった。 邪龍が断末魔を上げる。空間にヒビが入る。邪龍と空間が鳴動して、強い光と大きな音を発生させた。 それと同時に自分の身体も元のサイズへと戻ることになった。邪龍がのたうち回る。それに巻き込まれてたまるかとシャインと一緒に逃げ回る。 邪龍の身体がどんどん崩れていく。それと同時に閉じていた空間も崩壊していく。「やったのか!? 俺は邪龍を倒せたのか!?」 「ああ! 喜べ! そして、拙者を抱きしめろ!」 「え!? なんで!?」 「喜びを分かち合おうじゃないか!」 「お、おう!」 シャインと抱きしめあった。邪龍との戦いでどちらも防具がボロボロになり、ほぼ全裸だった。それでもお構いなしにお互いを求めあった。「ユルサヌ。決して、お前たちをユルサヌ!」 鮮血に染まった顔で邪龍がこちらを睨んできた。こちらはシャインと一緒に「ひぃ!」と悲鳴を上げてしまう。 しかし、聖女ヴィオレッタと大魔導士ミカが間に割って入ってきた。ヴィオレッタとミカがこちらに軽くウインクしてきた。「大手柄よ、アルト」 「足止め程度と考えておったのじゃが、よくやってくれたわい」
邪龍は強大な敵すぎた。奴が歩くだけで大地震が起きる。口を開けば、その口からマグマが発射される。ちかづくことすら困難な中、それでも自分たちは抗った。 いい加減しつこいと邪龍が思ったのか、その場でジャンプした。ゾゾ……と怖気が走る。巨大すぎる奴がジャンプできたことに驚いた。そして、着地した途端に地面に亀裂が走り、暴風がまき散らされることになった。「「キャーーー!」」 「ヴィオさん、シャイン、ミカさーーーん!」 宙を飛んでいたヴィオレッタが暴風で吹き飛ばされた。地面を走るシャインが亀裂に飲み込まかけられた。 皆のサポートをしているミカが左胸に手を当てながら、その場でうずくまる。顔中、汗だらけだった。そんな彼女に肩を貸して、無理矢理立ち上がらせた。「ミカさん。しっかりしてください!」 「ふふっ。年寄りを働かせすぎじゃて」 「見た目、17歳の女子が言っていいことじゃないですよ!?」 「嬉しいことを言ってくれるのう。では、もうちょっと頑張らせてもらおうかっ」 ミカは自分の力だけで立つ。そして、杖を振りかざし、詠唱を開始した。次の瞬間、倒れていたヴィオレッタと亀裂に飲み込まれそうになっていたシャインが光の球に包まれる。 二人は浮かび上がり、ミカの近くへと転送されることになった。「ありがとう。ミカ」 「ほーほほっ。礼ならアルトに言ってくりゃれ。生意気にもあちきに喝を入れてくれたのじゃ」 「ほほう。アルトはやはり男なのだな。じゃあ、拙者も元気づけてくれ!」 「シャインさん? 何を言っているのですかね?」 「そうだな。ギュッとハグしてくれ!」 「いや、人前でそんなことできないよ!?」 これだから変に真面目なシャインには困ってしまう。両腕を広げて、こちらのハグを待っている状態だった。彼女を無視することもできずに軽く彼女を抱きしめる。「ふははっ! アルトから元気をもらえたぞっ。拙者、まだまだ戦える!」 シャインはそう言うと大鎌を拾い直して、一目散に邪龍に向かって突っ込んでいきやがった。勇者の称号を与えてやりたいくらいの勇
邪龍の姿はおぞましい。見るだけで足がすくむ。自分がちっぽけな存在だと印象づけてきやがった。頭を振る。気持ちで負けてたまるかと勇気を振り絞る。 邪龍に向かって正面から走っていった。邪龍が足を動かすと、大きな振動が起きた。一瞬、転びそうになるがなんとか体勢を立て直す。 邪龍が大きく口を開けた。口の奥に真っ赤な塊が見えた。目を白黒させてしまった。あれは浴びてはヤバイしろものだということがイメージとして脳に焼き付くことになる。「ぐぎゃああ! 時間巻き戻し!」 奴の口から飛び出した赤い液体が身体に触れた。熱すぎた。ドロドロのマグマだった。全身にそれを浴びて、大やけどを負ったが、時間巻き戻しによって、難を逃れた。 時間停止を行い、いったん、邪龍から距離を取る。ちらりと仲間の方へと視線を向けた。聖女ヴィオは宙を舞いながら、レイピアの先端から光線を出している。 聖騎士シャインは死神の大鎌を振るって、光輪を飛ばしていた。そして、大魔導士ミカは二人をサポートする位置に立って、そこから魔法で遠距離攻撃していた。 気付いてしまった。とんでもないことに。よくよく考えれば、聖女たちの攻撃方法は正しい。ドリルといった近接攻撃しかもっていない自分がめっちゃおかしかった。「嘘だと言ってよヴィラさーーーん!?」 「へっ!? アルト、どうしたの? やられたの?」 「俺、近接攻撃しかできないよぉ!」 「そこは気合と根性で頑張って!」 ヴィラはそう言うと、宙を舞いながら、光線で邪龍にちくちく健気にダメージを与えていた。 邪龍はむふぅ~と誇らしげに鼻を鳴らしつつ、聖女ヴィオたちの攻撃を躱しもせずに受け続けていた。きっと聖女たちの攻撃によるダメージは微々たるものなのだろう。 このままではいけない気がした。ここはドリラーの自分が邪龍に大ダメージを与えるべきなのだろうと思えてくる。 透視能力を発動する。邪龍の弱点を探ろうとした。しかし、やつの身体を調べようとした瞬間、ズシリと肩に重みを感じた。「なん……だと!?」 立っていられなくなって、その場で片膝を
「オープンステータス!」-------------------- 名前 :アルト・キサラギ モデル:ヒューマン Lv :10 腕力 :12(+10) 耐久力:8(+6) 器用さ:7 知力 :9 魅力 :4スキル:エスパー能力Lv3 透視Lv3 透明化Lv2 時間停止Lv3 時間巻き戻しLv1 サイコバインドLv1装備:ドリル耐性系:斬X、突△、打△、熱〇、冷〇、雷◎ -------------------- 久しぶりに自分のステ―タスを見た。こっちの世界にやってきてから3カ月。その間にLvが7も上がった。自分は十分頑張っている気がする。 それでも女神は眉間に皺を寄せている。邪龍討伐に向かわせていいのだろうかと悩んでいるのだろう。「わかってると思うけど……邪龍に立ち向かうレベルには達してないわよ。アルトくん、死んじゃうかもよ?」 「やけに俺のことを心配してくれてますね? どういった心境なんですか?」 「そりゃ、わたくしがあなたをこちらの世界に招いたのよ。それで野垂れ死にしてほしいなんて願うわけないじゃない」 「あはは……ありがとうございます。でも、俺、行かなきゃ。皆のことが大事なので」 「もう彼女たちのことは許してあげたのね?」 「はい。色々ありましたけど、悲しいすれ違いが起きただけなので」 女神がこちらの頭に手を乗せてきた。そして、丁寧に頭を撫でまわしてくれる。こちらはくすぐったくなってしまう。 次に女神はこちらの右手を両手で持ち上げる。こちらの右手にはドリルが装備されていた。そのドリルに軽く接吻するのであった。「えっと。キスしてくれるなら、俺のほっぺたのほうが嬉しいんですけど」 「これはアルトを守ってちょうだいっていうお願いのキス」 「なるほど?」 「戻ってきたら、好きな場所にキスしてあげる」 「うひょーーー! 嬉しい悲
女神に無理矢理送り込まれたピンクルームは地獄の一丁目だった。裸の女性100人による筆おろし祭り。 女神に童貞を守れと言われたが、入室してから5分後には童貞を奪われた。本来なら、そこで修行は失敗となり、この部屋から強制退出を喰らうはずだったのだろう。 だが、そんなことは起きない。女性たちが次々と自分の腰へと馬乗りになってきやがった。金玉からっぽにされてもそれは続いた。 まさにイキ地獄だった。女性たちから解放されたのは三日後の夕方になった頃だった。足腰が立たない。芋虫のようにうごめきながら、ピンクルームに現れた金色の扉を潜り抜けた。「5分ももたないってどういうこと?」 「そんなこと言われても、100人組手とかやらすんじゃねえよ!?」 「その割には嬉しそうにあひんあひん言ってたわよね?」 「記憶にございません」 どちらにしろ、修行は失敗した。童貞を守れなかった以上、女神から新たなエスパー能力を与えられることはない。悔しくて涙が出そうになった。「はい、ここで質問です。もし、やり直したいと思えるのなら修行をやり直す?」 「やり直していいのか!? でも、俺はもう童貞じゃない!」 「時間を巻き戻せばいいの。簡単でしょ?」 「え? 言っている意味がわからないんだけど」 「時間を停止できるということは、アルト、あなたは時間操作のエスパー能力に優れているってこと」 「まさか、そんな……俺はできるのか!?」 半信半疑であった。やり直せるのならば、いちからやり直したいと思えてくる。聖女たちと出会うあの場面までと。 念じる。あの場面を思い出しながら。そして、胃の辺りに気持ち悪さを感じた。時間が巻き戻る。「はあはあ。どうだ!? どれくらい巻き戻った!?」 「6秒ってところかしら」 「……6秒!?」 「やるじゃない」 「褒められた!? いや、そうじゃなくて、この3カ月間まるまるを巻き戻したかったんだけど!?」 「そんなの神様でも無理だわ。でも、6秒だけでも巻き戻せるってすごいことよ? ついにチート能力を手にいれたわねっ
聖女ヴィオレッタがこの空間に現れるなり、空間が鳴動した。何事だと皆で慌てふためくことになる。 地響きが起きて、次に立っていられないほどの振動が地面の底からやってくる。皆で無様に尻餅をつくことになった。 動けないなりにも聖女を守ろうと動く。四つん這いになりながら、聖女に対して、自分の身体で覆いつくす。次の瞬間だった。岩が天井から落ちてきた。 その岩がこちらの腰を痛打する。「ぐへぇ!」と間抜けな声を上げながら、ぐったりと聖女に身体を預ける格好となってしまった。 2分ほど続いた地震がようやく収まった。とんでもない横揺れで酔いそうになってしまった。腰をさすりながら、その場から立ち上がろうとした。 しかし、グキリッと嫌な音が鳴り、痛みがマッハでやってくる。悶絶して、地面をゴロゴロと転げ回った。「んもう。私が可愛いからって、無茶しすぎ」 「岩の直撃を甘くみてた。てか、何でヴィオさんが可愛いことと関係するんだ?」 「へっ? 何か間違えた?」 どうやら天然で言っているようだった。他の女子が聞いていたら、ムカッとイラついてもさもありなんと言える。だが、聖騎士シャインと大魔導士ミカは平然と聞き流していた。(女子って恐ろしいな) そんなことを思いながら、聖女ヴィオレッタに回復魔法をかけてもらっている自分だった。聖女ヴィオレッタは「いたいのいたいのとんでけー♪」とちょっと楽しげにしている。 それに反応するかのようにビシッとこの空間の空気が凍りついたような気がした。恐る恐る聖騎士シャインの方を見る。彼女はまるで下衆を見るかのような視線をこちらに向けてきていた。(女子って恐ろしいな) 二度目となる感想だった。聖騎士シャインから視線を逸らしながら、空間に目を向ける。地震が起きたことで、囚われている空間に変化が起きていた。 天井の一部が崩落し、空いた穴から光が差し込んできていた。その光がとあるものを浮かび上がらせていた。「あれって、祭壇なのか?」 「どうしてそう思うの?」 「暗黒騎士がここは祭壇だと言っていたからだよ」
「ボストンバッグ発見! 第1調査隊の如月有人、突貫します!」 高校1年生の如月有人は学校の帰り道、河川敷にポツンと置かれていた黒革のボストンバッグを発見した! 彼はお宝の匂いに敏感だ。きょろきょろと辺りを見回す。犬と一緒に散歩しているお爺ちゃん。運動不足を解消するために走っているジャージ姿の青年。 彼らはまったくこちらに気付く様子もない。しめしめと思いながら、ボストンバックのチャックを開く。「うひょぉ~♪ 俺が睨んだ通り、お宝の山だ! この湿り気具合。捨てたのは昨夜……っぽいな?」 有人はボストンバックの中身を吟味する。ざっと見た感じでは30冊はある。どれもこ
この世界で一番手っ取り早く稼げる方法。それはどこの世界でも変わらないようだった。女神が妖艶な笑みを浮かべる。「カジノで荒稼ぎするのよ」 「犯罪じゃないですよね!?」 「バレなければね」 「女神ぃぃぃっ!?」 バレなければ犯罪じゃない。なんとも甘美な言葉だった。またしても女神はこちらを堕落させようとしてくる。(この女神様。ダメンズ製造機なのでは?) 目の前で踏ん反り返っている女神に対して、こちらはおどおどと情けない姿を晒してしまっている。 確かに金を稼ぐ方法を聞いたのは自分だ。今
とりあえず合わせて2万ゴリアテを手に入れた。女神が言うには日本円に換算して20万円だそうだ。身分がしがない高校生である自分にとっては大金に感じてしまう。「俺……20万円もリボ払いで返すって、人生詰んだんじゃないですかぁ!?」「安心して? たったの20万円だからっ。月々5000円+手数料で約40回払い。スマホ本体を48回払いするよりも簡単に返せちゃう!」「ははっ……俺、腹が減って思考能力が落ちてるせいか、20万円を天文学的数字に思っちまった。てか、スマホの48回払いって今更にとんでもないな!?」 スマホの話はさておき、女神から手に入れたお金で何か食べたい。こちらの気持ちを汲んでくれた
「さてと……そろそろ真面目な話をするわよ?」 女神がピシャリと場を整えてくれた。その身から威厳と神々しい光を溢れさせる。いよいよかと思われる瞬間がやってきた。 周りにいる貴族たちが姿勢を正す。聖女パーティの3人も女神に向かってひざまずく。自分はどうしたものかと考えていると、女神がこちらの両肩に両手を乗せてきた。「勇者アルト・キサラギが聖女の旅を助けてくれます。彼はハズレ職業のエスパーですが、それでもきっとたぶん聖女のためにその命を捧げてくれるでしょう!」 「……えっと、女神様」 「はい? なんでしょうか、勇者アルト・キサラギ」 「キャラクターシートでエスパーをお勧めしてくれてまし