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第6話:カジノ②

Penulis: ももちく
last update Tanggal publikasi: 2026-06-20 17:05:23

 赤、ピンク、紫といったいかがわしいネオンが眩しいデカすぎる建物の前に自分は立っていた。さらにこの建物がカジノであることがこれまたデカすぎる看板で示されていた。

 正直、怖気付いてしまいそうになる。女神に自分はダメンズではないことを証明しようとして、ひとりでカジノの前までやってきた。

「当カジノ:当たるも八卦、当たらぬも八卦にようこそ。身分証の提示をお願いします」

「嫌なカジノ名だなおい!?」

「冗談です。本当の名前はここのオーナーの名前を文字ったものです」

 入口のドアの横に燕尾服を着た青年が礼儀正しくこちらにコンタクトしてきた。冗談交じりのところが憎い。誘われるようにマイナンバーカードを提示する。

「おや? 当店に入場するには18歳以上でなければいけませんが……保護者の方などいらっしゃいますか?」

「ええ!? もしかして、俺ひとりだと、入店すらできない!?」

「はい。国法でそう定められていますので。って、ちょっと待ってください!?」

 黒服の従業員が慌てている。何が起こったのか自分でもよくわからない。だが、黒服の従業員は咳払いをした後、「失礼しました」と頭を深々と下げてきた。

 こちらはキョトンと首を傾げるしかない。

「こちらの見間違いでした。あなたの年齢は現在20歳。お酒もばっちりですね」

「どういうことだってばよ!?」

「マイナンバーカードに記載されていることは事実である。ただそれだけでございます。では、今夜はおおいにお楽しみください」

「お、おう?」

 黒服の従業員が丁寧な身振りで、こちらにマイナンバーカードを返してくれた。何が起きたのか、さっぱりわからない。

 だが、返されたマイナンバーカードの生年月日の方を見る。月日は変わらず、生年の方だけ変わっていやがった……。

 焼きゴテのようなものが押し付けられた後がついていやがった。女神からこのカードをもらった時はもっとキレイなカードであったのに……。

(恐ろしや……これが女神の力ってやーつ?)

 とりあえず、女神に感謝しつつ、カジノのドアを通って、カジノ内に入る。するとそこはまさに別世界が広がっていた。

 いくつものテーブルがあり、そこには美男美女のディーラーたちがその場を支配していた。

 冷めやらぬ熱気にフロア全体が包まれている。ある場所から悲鳴が上がったと思えば、別の場所からは大歓声が沸き起こる。

 悲哀と歓喜が入り混じる空間だということを一瞬で理解できた。

(さて……まずは軍資金を増やそう)

 女神から借りている2万ゴリアテ全てをメダルに変えた。現在のメダルの枚数は2000枚しかない。これを一晩で100万枚まで増やすつもりで、この場所にやってきた。

 メダル狩りの最初の獲物は『スロット』であった。カジノビギナーの自分がビギナーズラックで大当たりをうっかり引いても問題ない獲物にふさわしい。

(透視でスロット台の設定をチェックチェック♪)

 両目に力を込める。熱が眼球に宿るのがわかる。視線の先にスロット台があった。

(ふはは! 見える! 見えるぞ、スロット台の設定がーーー!)

 思わず、口元が緩んでしまった。このカジノにはスロット台が20台も並んでいたが、その内19台が渋い、もしくはツラい設定であった。こんな台に座ったところで勝ち筋などない。

 だが……20台中1台だけ、設定が『ここ掘れワンワン』というものが見えた。さすが透視能力。甘い設定の台を見逃さなくて済んだ。

 さっそくとばかりにここ掘れワンワン設定台の前を陣取る。丸椅子に尻を乗せて、メダルを数枚、指で掬い取る。

 投入口からメダルを滑り込ませる。レバーをガチャリと下へと動かす。すると画面の絵札がくるくると様変わりする。

 ポンポンポンとリズム良く三つの赤いボタンを押す。それに合わせて絵札がビタッと止まる。

 7が三つ横に並んだ。そして、けたたましいほどにファンファーレが鳴り響く。

「19番台のお客様、大当たりでございます! さあ、ボーナスゲームでどこまで伸ばせるか!?」

 黒服の従業員がドル箱と呼ばれるオレンジ色の容器を手に持って近づいてくる。その従業員に向かって、満面の笑みを送っておく。あちらも満面の笑みで受けてくれた。

(まあ、その顔を真っ青にさせちゃうんですけどね!?)

 ここ掘れワンワン設定台の状態は透視能力で丸裸だった。

 設定値、配当率、内部状態、ボーナス残数全てが見えている。

 この台は吐き出すメダルの量を間違っていると言っていいほどにメダルを吐き出してくれた。

 黒服の従業員たちがせわしなく行ったり来たりしている。それも全部、この座っている台のボーナスゲームが終わることを知らないからだ。

「あ、あのお客様。そろそろその辺で……」

「えっ? まだボーナスゲームは終わってないんだけど?」

「いえ……それ以上出されますと、当店も困ってしまいますので」

「ふーん。天井付きってことかぁ。じゃあ、勘弁してやるよ」

 自分の脇にはドル箱が合計100箱以上が詰み上がっていた。ここまでで1時間。最初は2000枚しかなかったメダルだった。しかし、今、自分が手にしているのは11万飛んで17枚。

 十分なほど稼がせてもらった。だが、夜は始まったばかりだ。

「さてと……今夜は100万枚目標なんだよねっ」

「お客様。それは豪胆すぎますね?」

「おーん? って、めっちゃ美人さん!?」

「うふふ。スロット台で稼いだ分で私と遊んでくださらない?」

「はーーーい! 全部出しちゃうくらいに遊んでしまいまーす!」

 あまりにもグラマラスで妖艶な女性に誘われたことで理性が一瞬でどこかに飛んでいってしまった。

 自分は美女ディーラーに誘われるまま、ポーカー席に着く。ひそひそと周りが自分を嘲笑している。

"かわいそうに"

"彼女は通称:蟻地獄"

"掴んだ獲物は逃さない"

"せっかくスロットで大当たりを引いたってのに"

 同情する声ばかりが聞こえてくる。しかし、負けるつもりは一切なかった。目標の100万枚まであと88万9983枚。

 ポーカー席で第2ラウンドが始まろうとしていた。

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